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3:ダンジョンクローラーになろう
273:ダンジョンクローラー(シガミー御一行様)、お宝がない?
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「うぅわっつぉあ!? みんな死んでるー!?!?」
かりゅうのねどこ最下層、最奥。
火龍の間からみれば、小さな部屋。
ひのふのみのよの……いつ。
「やっぱり全員、死んでるー!」
一番近くの猫の魔物に、あわてて駆けよったら――
「む、むにゃがぁぁっ――♪」
ムクリと起きあがった、強化服二号に肉球で。
額をグリグゥリと押された……やわこい。
「し、死んでませんわよ、まったく!」
「な、なんて声を出すのですか?」
よろよろと起きあがる主従、赤いのと白いの。
「な、なんでぇい!? ビックリさせるんじゃねぇやい!」
死んでなかった。
「ビックリしたのは、コチラですわぁっ!」
つり上がった目。
むぎゅっ――やっぱり額を指で押された。
「そんな、ひっくり返るほどのこっちゃ、あるめぇー?」
人間生きてりゃ、道理が引っこむことぐらいある。
ソレを叱りつけるのも、修行のウチだ。
「ほ、ほんとうに死ぬかと思いましたよ」
「ま、まるで怪鳥の鳴き声、のようでした」
なんでぇい、オマエらまで。
たしかにおれぁ、虎鶫衆だが。
「そこまでか、そりゃ悪ぃことしたな。ウチの神さんが阿呆を言いやがったもんでついな」
頭を下げ、担いできた大荷物を漁る。
「あったぜ、神力棒」
それは細い角材みたいな形で、ほんの少し重い。
洞窟に入る前に確認したら、「戦闘状態ガ続いテも、二日ハ無給電デ行動可能デす」とか吐かしてたくせにアイツめ。
そんなことを言うから腰や指の収納魔法具には、全部おれの武器とポーションを詰めなおしちまった。
神力棒だけは肌身離さず持ってねぇと、だめだな。
まず迅雷を優先しねぇと、いざってときに金剛力ひとつ使えなくなっちまう。
ひんやり。
ここはかなり涼しい。
出来た拠点とやらを、眺めた。
地下二階に建てたのとちがって――床や壁に板を張り、厚布まで敷いてある。
人数分の寝床に、立派な竈付きの板場。
奥には鞴に、陶窯《とうよう》まである。
「おまえら……ここに住む気か?」
もう寝て起きたら町に引き返さねぇと、クエストの期限に間に合わねえ。
「まさか。けど――よいしょっ、ふう♪」
赤いのが、ガチャガチャと鎧を脱いだ、
手足が出た、しゃらあしゃらした格好。
「こほん」
咳払いをして背を向ける、黒い騎士。
ニゲルだったら一瞬、釘付《くぎづ》けになったあとで――飛び出していくだろうなぁ。
色恋沙汰は下っ腹所長に丸投げ……任せときゃ良いだろう。
「折角作った拠点ですもの、だれかに留まって頂いてもよくてよ?」
そんな挑発じみた視線を――さ、さささっ!
全員が避けるもんだから――おれにぶち当たった。
「そーねぇー万が一、またミノタウロースが出没するようでしたら――」
美しい目元が、やや引きつった。
「その役は、シガミーにしか務まりませんね」
美しい口元が、同じく引きつってる。
「え、縁起でもねぇ」
さすがにあの魔物は、もう勘弁してくれ。
§
「――シガミー、コの火山ダンジョンでハ火龍の生キ胆、火龍ノ翼膜、火龍ノ石なドの踏破報酬が見込まれていたノですが――」
生き返った迅雷が、コレからの算段を始めた。
「おう、その為に〝ミノタウ〟とも、やり合ったんだぜ?」
「――それラ産出さレるはズだった素材は……出ませン――」
「はぁぁぁあぁ?」
「――ウム、出ないぞ。店主ヨ――」
「ゲールまで!? なんでだぁっ?」
「――踏破報酬はボスエネミー撃破のボーナスとシて、設定されていまスので――」
「――ウム、ワレが存命のうちは、何も出ぬぞ――」
「そいつぁ困るぞ。素材が手に入らねぇんじゃ……」
何しにココまで来たか、わからん。
「ここまでの道中でも、めずらしい鉱石や植物も取れるって話だったじゃ……」
地上では少し取れたが洞窟に入ってからは、針吐き狼と密書みたいな魔物の素材しか取れなかった。
「――めぼしい鉱物や植物にはマナが大量に含まれておるから、ミノタウロースが全部喰らってしまったのダロウ――」
火龍が爪をガリガリと、地面に突き立てる。
わかる。ミノタウのことを考えると――おれもソウなる。
「ミノタウめ……あの寸足らずの魔物は、また出るのか?」
姫さんが余計なことを言いやがるから、聞かずには居られなかった。
「――ワレが存命のウチは、出ない――」
ふぅ、ソレが聞けただけでも助かる。
火龍の寝床を、もう一度見渡す。
火山の灼熱の流れが、すこし残ってるけど。
魔法具や、魔方陣の曼荼羅や、女神像……魔王像みたいな物はない。
「ふぅーっ。そしてミノタウロースはオマエが出したわけじゃ、ないんだよな?」
「――アレがドコから来たかはわからぬ。ただワレはアレの相手をしてヨワり果てた――」
やっぱりそうなのか。
よくは覚えちゃいねぇが、おれも腹を刺された。
「その割には、すり傷ひとつねえが?」
ツルリと光り輝いているようにさえ見える。
「――傷だらけになり、時期ではないのだが……脱皮した――」
「だっぴ?」
「――店主が作ってくれた、寝床の中身がソレだが――」
「は? ワラ代わりに落ちてたゴミを詰めたけど――?」
§
「これっ――――家宝どころしゃ、済みませんよっ!?」
「そうね、知られたら間違いなく――――国宝指定されます!」
魔術師組、白いのと黄緑色が騒いでる。
「決まりですわね――〝ミノタウロース素材〟に続いて、この〝火龍の抜け殻〟も他言無用でお願い致しますわっ!」
しゃらあしゃらした格好。やけた石の上を、鼻緒がない草履で歩いてくる。
もう、くつろぐ気満々の彼女が言ってることは――
「――シガミー、先ほドのイオノファラーの言葉でスが、ほんラい踏破報酬をみこンだB級探索クエストでしタし、イオノファラーはソレに変わるモノを欲しがったノだと思われマす――」
ってなると五百乃大角が言ってたのは、まさか。
「(火龍を倒さないための、話かっ!?)」
「――はイ、ミノタウロースの肉ヲ取り上ゲられないために、必死だったとシても――」
「(決してお宝をまるごと、かすめ取ろうとしてたわけじゃぁ……ねぇっぽい?)」
そもそもヤツの生きる目的は、うまい飯だ。
いちおうの筋は、通ってる。
「ちぃと、言い過ぎちまったかも知れん」
それと、やつぁ曲がりなりにも神だ。
「しゃぁねぇ、迎えに行ってやるかぁ」
あまり邪険にすると、祟らんとは限らねぇ。
ーーー
虎鶫/ヒタキ科ツグミ亜科の鳥。鵺と呼ばれる伝説上の怪物と似た、笛のような鳴き声を発する。
かりゅうのねどこ最下層、最奥。
火龍の間からみれば、小さな部屋。
ひのふのみのよの……いつ。
「やっぱり全員、死んでるー!」
一番近くの猫の魔物に、あわてて駆けよったら――
「む、むにゃがぁぁっ――♪」
ムクリと起きあがった、強化服二号に肉球で。
額をグリグゥリと押された……やわこい。
「し、死んでませんわよ、まったく!」
「な、なんて声を出すのですか?」
よろよろと起きあがる主従、赤いのと白いの。
「な、なんでぇい!? ビックリさせるんじゃねぇやい!」
死んでなかった。
「ビックリしたのは、コチラですわぁっ!」
つり上がった目。
むぎゅっ――やっぱり額を指で押された。
「そんな、ひっくり返るほどのこっちゃ、あるめぇー?」
人間生きてりゃ、道理が引っこむことぐらいある。
ソレを叱りつけるのも、修行のウチだ。
「ほ、ほんとうに死ぬかと思いましたよ」
「ま、まるで怪鳥の鳴き声、のようでした」
なんでぇい、オマエらまで。
たしかにおれぁ、虎鶫衆だが。
「そこまでか、そりゃ悪ぃことしたな。ウチの神さんが阿呆を言いやがったもんでついな」
頭を下げ、担いできた大荷物を漁る。
「あったぜ、神力棒」
それは細い角材みたいな形で、ほんの少し重い。
洞窟に入る前に確認したら、「戦闘状態ガ続いテも、二日ハ無給電デ行動可能デす」とか吐かしてたくせにアイツめ。
そんなことを言うから腰や指の収納魔法具には、全部おれの武器とポーションを詰めなおしちまった。
神力棒だけは肌身離さず持ってねぇと、だめだな。
まず迅雷を優先しねぇと、いざってときに金剛力ひとつ使えなくなっちまう。
ひんやり。
ここはかなり涼しい。
出来た拠点とやらを、眺めた。
地下二階に建てたのとちがって――床や壁に板を張り、厚布まで敷いてある。
人数分の寝床に、立派な竈付きの板場。
奥には鞴に、陶窯《とうよう》まである。
「おまえら……ここに住む気か?」
もう寝て起きたら町に引き返さねぇと、クエストの期限に間に合わねえ。
「まさか。けど――よいしょっ、ふう♪」
赤いのが、ガチャガチャと鎧を脱いだ、
手足が出た、しゃらあしゃらした格好。
「こほん」
咳払いをして背を向ける、黒い騎士。
ニゲルだったら一瞬、釘付《くぎづ》けになったあとで――飛び出していくだろうなぁ。
色恋沙汰は下っ腹所長に丸投げ……任せときゃ良いだろう。
「折角作った拠点ですもの、だれかに留まって頂いてもよくてよ?」
そんな挑発じみた視線を――さ、さささっ!
全員が避けるもんだから――おれにぶち当たった。
「そーねぇー万が一、またミノタウロースが出没するようでしたら――」
美しい目元が、やや引きつった。
「その役は、シガミーにしか務まりませんね」
美しい口元が、同じく引きつってる。
「え、縁起でもねぇ」
さすがにあの魔物は、もう勘弁してくれ。
§
「――シガミー、コの火山ダンジョンでハ火龍の生キ胆、火龍ノ翼膜、火龍ノ石なドの踏破報酬が見込まれていたノですが――」
生き返った迅雷が、コレからの算段を始めた。
「おう、その為に〝ミノタウ〟とも、やり合ったんだぜ?」
「――それラ産出さレるはズだった素材は……出ませン――」
「はぁぁぁあぁ?」
「――ウム、出ないぞ。店主ヨ――」
「ゲールまで!? なんでだぁっ?」
「――踏破報酬はボスエネミー撃破のボーナスとシて、設定されていまスので――」
「――ウム、ワレが存命のうちは、何も出ぬぞ――」
「そいつぁ困るぞ。素材が手に入らねぇんじゃ……」
何しにココまで来たか、わからん。
「ここまでの道中でも、めずらしい鉱石や植物も取れるって話だったじゃ……」
地上では少し取れたが洞窟に入ってからは、針吐き狼と密書みたいな魔物の素材しか取れなかった。
「――めぼしい鉱物や植物にはマナが大量に含まれておるから、ミノタウロースが全部喰らってしまったのダロウ――」
火龍が爪をガリガリと、地面に突き立てる。
わかる。ミノタウのことを考えると――おれもソウなる。
「ミノタウめ……あの寸足らずの魔物は、また出るのか?」
姫さんが余計なことを言いやがるから、聞かずには居られなかった。
「――ワレが存命のウチは、出ない――」
ふぅ、ソレが聞けただけでも助かる。
火龍の寝床を、もう一度見渡す。
火山の灼熱の流れが、すこし残ってるけど。
魔法具や、魔方陣の曼荼羅や、女神像……魔王像みたいな物はない。
「ふぅーっ。そしてミノタウロースはオマエが出したわけじゃ、ないんだよな?」
「――アレがドコから来たかはわからぬ。ただワレはアレの相手をしてヨワり果てた――」
やっぱりそうなのか。
よくは覚えちゃいねぇが、おれも腹を刺された。
「その割には、すり傷ひとつねえが?」
ツルリと光り輝いているようにさえ見える。
「――傷だらけになり、時期ではないのだが……脱皮した――」
「だっぴ?」
「――店主が作ってくれた、寝床の中身がソレだが――」
「は? ワラ代わりに落ちてたゴミを詰めたけど――?」
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「これっ――――家宝どころしゃ、済みませんよっ!?」
「そうね、知られたら間違いなく――――国宝指定されます!」
魔術師組、白いのと黄緑色が騒いでる。
「決まりですわね――〝ミノタウロース素材〟に続いて、この〝火龍の抜け殻〟も他言無用でお願い致しますわっ!」
しゃらあしゃらした格好。やけた石の上を、鼻緒がない草履で歩いてくる。
もう、くつろぐ気満々の彼女が言ってることは――
「――シガミー、先ほドのイオノファラーの言葉でスが、ほんラい踏破報酬をみこンだB級探索クエストでしタし、イオノファラーはソレに変わるモノを欲しがったノだと思われマす――」
ってなると五百乃大角が言ってたのは、まさか。
「(火龍を倒さないための、話かっ!?)」
「――はイ、ミノタウロースの肉ヲ取り上ゲられないために、必死だったとシても――」
「(決してお宝をまるごと、かすめ取ろうとしてたわけじゃぁ……ねぇっぽい?)」
そもそもヤツの生きる目的は、うまい飯だ。
いちおうの筋は、通ってる。
「ちぃと、言い過ぎちまったかも知れん」
それと、やつぁ曲がりなりにも神だ。
「しゃぁねぇ、迎えに行ってやるかぁ」
あまり邪険にすると、祟らんとは限らねぇ。
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虎鶫/ヒタキ科ツグミ亜科の鳥。鵺と呼ばれる伝説上の怪物と似た、笛のような鳴き声を発する。
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