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3:ダンジョンクローラーになろう

269:ダンジョンクローラー(シガミー御一行様)、火消しと共用語

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魔物まものはなすだぁ!?」
 「にゃがみゃが」言ってるウチの強化服ねことはわけがちがう。
魔王まおうはカタコトでしたけれど、共用語きょうようごはなしましたわよ?」
「えっ、そーなのか!?」

 ヴォッゴゥオオオオオオオオオオオオオオオオ――――灼熱しゃくねつの吹き上がりがしたから飛んでくる。
 それはほそくくなりするくなりとがることで――――キュドッ――――ンッ!
 いきおいを増した。

 ただ、飛ぶ方向ほうこう自在じざいあやれるわけではないらしく――――ボッゴワァァァァン!
 灼熱しゃくねつひかりすじおおきく逸れて、横壁よこかべをえぐった。

「レ、レーニアが魔法まほう使つかえないままでしたら――わたくしたちはイチコロだったかも知れませんわね」
 狐面きつねめんがドロドロに溶けた横壁よこかべを見て、冷やあせぬぐった。
 おい、仮面うえから拭いてどーする。
 相当慌そうとうあわててるぞ。

 けどたしかに、おれひとりじゃ全員ぜんいんささえられない。
 ひめさんのいうとおりに――お陀仏おだぶつだっただろう。

「(迅雷ジンライ。リオの魔法まほうどうなってる!?)」
 本気ほんきを出したんだとしても、威力いりょく段違けたちがいだ。

「――魔法まほウ翻訳ほんヤくというか詠唱速度えいしょウそくど……魔法まホうつエ威力いりょクヲ上げるタめの、呪文じゅもン変換効率へんかんコうりつを上げるためニはなニをしますか――」
 はぁ? なんだぁやぶからぼうに。
 いきなり、ややこしいことを聞きやがって。

「(呪文じゅもんとおりをはやくするために……活力かつりょくながれがとおるみぞを掘るっつうか……埋める?)」
 解析指南かいせきしなんに聞くまでもねぇ。
 魔法杖まほうつえ修理しゅうり強化きょうかをするなら、まずソレをしなきゃならねぇからわかる。

「――そウです、そノ活力マナナがれヲ良くするタめに埋めたものわたクし迅雷ジンライソレで・・・出来ている・・・・・とおかんがくだ――」
 合点がてんが行った。
「ようは、魔法まほう修行しゅぎょう成果せいかが――全部出せる・・・・・ってこったろ?」
「――シガミーノ慧眼けイがんは、仕事しゴとしすぎデは――」
 じゃあ、しばらくオマエはリオに使つかわれとけ。
 ふぉん♪
『>了解しました』

「ひのたまー!」
 エクレアのうで必死ひっしにつかまってたフッカが、つえを突き出す。
 ぼっごわぁー♪
「あっ使つかえる!? ココはちゃんと魔法使まほうつかえますよー!」
 そいつぁー良い!
 火龍かりゅう火球ひのたまを撃っても、意味いみはねーだろうけど。

炎曲えんきょく苗木なえぎ――!」
 ぼごぉうわぁぁっ――――ニョキニョキバキバキョッ!」
 つぎにフッカがはなったのは、くさびみたいなやつで。
 溶けたかべに当たったら、そこから木が生えた。
 木からはさらに蔓草つるくさが生いしげり――ほのおに焼かれて一瞬いっしゅんで燃え尽きる。

「なにがしてーんだ?」
 燃えてるところに木を生やしても、まきべるだけだろが?

消火しょうかでーす! ねつ苗床なえどこにしてあつさを軽減けいげんしまーす!」
 燃えちまってるけど――――すぐにすみのように真っくろになった。

「お、本当ほんとうだ。火が消えやがった!」
 火の魔法まほう使つかうであろう火龍かりゅうたいして、火の魔法まほう得意とくいだという彼女かのじょを連れてきてどうなのかとおもってたけど。
 なかなかどうして、使つかえる魔法まほうを持ってたな。

「それで魔王まおうは、なんてしゃべったんでぇい?」
 火龍したまでは、まだ半分はんぶんも来てねぇ。
 もうすこはなしても、かまわねぇだろ。

「えっと、たしか――――「セカイノハンブンヲ、キサマニヤロウ」とか言ってましたわねぇ」
 は?
 問答無用もんどうむようで攻めてきたワケじゃねぇのか?

 カシャ――『(Θ_Θ)』
 ヴォォォォン♪
 浮かぶたまが、ひめさんにまとわり付く。
「それ、興味深きょうみぶかすぎるんだけどぉ。それでおひめちゃんは、なんてこたえたぁのぉー?」
「もちろん、「じゃぁ、いただこうかしら」ってこたえたに、決まっていますわ」
「おい、たとえ半分はんぶんでも降参こうさんしちゃ、いかんだろーが!」

 ――――キュドッ――――ンッ!
 いきおいを増した、ひかりすじが――――ボッゴワァァァァン!
 やっぱりリオレイニアのひかりたてを、かすめもせずに横壁よこかべにぶち当たる。
 ボゴガァァン――――バラバララ――ジュジュッ!
 ねっせられてふっとんだ瓦礫がれきのが、あぶねぇくらいだ。

炎曲えんきょく苗木なえぎ――!」
 ――――ニョキニョキバキバキョッ!
 草木くさきが生いしげり――ほのおに焼かれて燃え尽きる。

「トッカータ大陸たいりくにおける人類じんるい生存圏せいぞんけんが、だいたい三割さんわりちょっとですもの。領地りょうちは増えるし、侵攻しんこうされることもなくなる。領主りょうしゅむすめとして、ガムラン冒険者代表ぼうけんしゃだいひょうとして――到底突とうていつっぱねられる提案ていあんではありませんわ」

「たしかにぃー、そう言われるとぉー、とても穏便おんびん和平交渉わへいこうしょうだわねぇー?」
「けど魔王まおうを、斬っちまったんだろう?」
 どういうわけだぜ?

「だって、「じゃぁ、いただこうかしら」って言ってるのに、何度なんど何度なんども「セカイノハンブンヲ――」って繰りかえすんですものっ!」
 どういうこったぜ?

「くりかえす? それ……ぱらぱらり……載ってないけど、たぶん強制コマンドぽい・・・・・・・・わよぉーぅ?」
 攻略本とらのまきには、なにも書かれてなかったか。

「どういうことですの? イオノファラーさまにはなにかおわかりになりましたのっ!?」

「そうわねぇー。魔王まおう質問しつもん返事へんじをしなければ、魔王まおう魔物まもの軍勢ぐんぜいを――未来永劫みらいえいごう……魔王まおう居城きょじょうとどめて置けたかも――知れないかも?」

「そ、それはどちらのほうが、良かったのかしら?」
 あたまを抱えた狐面きつねめん苦悩くのうは、はかり知れない。
「斬っちまったもんわぁ、仕方しかたがねぇやな! てき総大将そうだいしょうがもう居ねぇなら、ソレで良いじゃねぇーか!」

「(――――ノハナシ、――トウカ?)」
 んぁ?
 身がまえる狐面の派リカルル・リ手な甲冑姫・コントゥル
 御貴族おきぞくさまは暗殺あんさつ警戒けいかいするすべを、幼少ようしょうころからたたき込まれるらしい。
 そのせいか〝念話ねんわ〟という〝あたまごしに直接ちょくせつする会話かいわ〟を、ちかくでされると――

「なななっ――――殺気さっき!?」
 こしけんに、手が伸びる。
 やめとけ、この念話ねんわぬしは――
しただ! これはあいつの殺気さっきだ!」

 みればうだるような灼熱地獄しゃくねつじごくが、いくらか鳴りをひそめている。

 メキョメキョキョ、バギバギギッ、メキョメキョメキョキョキョ――――♪
 ぶすぶすぶすぶす――――横壁よこかべを見たら、フッカが出した焦げた木が。
 とんでもないはやさで洞窟かべを、くだっていく。

「あれれっ? なんでこんなにひろがってくの? 大丈夫はいじょうぶなのコレ?」
 燃える木で火を消した張本人フッカが、あわてている。
「ちょっと、フォチャカさん! あの魔法まほうどういう物・・・・・なんですか!?」
 生活魔法せいかつまほう高等魔術こうとうまじゅつ達人たつじんも、あわてている。

「これは、うちのちちが「おおきな火が出てこまるようなことがあったら、この魔法まほう使つかいなさい」って言って財産ざいさんをなげうってまで手に入れてくれた、マジック・スクロールでおぼえたもので――――止めかたはわかりませぇん!」
 あー、こと次第しだいが、なんとなくわかった。

 カシャ――『(Θ_Θ)』
「フゥ――、どうやってほのおよわめようかとおもってたけど――おもわぬ伏兵ふくへいねぇ♪」
 ヴォォォォン♪

「どーすんだこれ! 火山かざんの火はよわめても……平気へいきなのかぁ!?」
 それに火龍かりゅうがうなだれて、ますますよわっちまってるんだがぁ?

 カシャ――『(Θ_Θ)』
安心あんしんして良いわよ、アイツは全然ぜんぜんおいしくないらしいから」

 ふぉん♪
『火龍/
 四つ足、翼有り。火山の熱を取り込み活力へと変換する。
 肉は焦げ臭く、食べられるところはない。
 鱗表面の膜は耐熱素材としてだけでなく、
 熱⇔MP変換機能へ転用可能』

おにか、おまえさまはぁー! だれも味の心配・・・・なんぞしとらんわぃ!」
 おれはからだをすぼめて、したへ落ちる。

 ヒュォォォォォォォッ――――バササササササッ!
 リオレイニアの浮かぶ魔法まほうは、からだちいさくするとよわまる。
 それは羽ばたいて飛ぶときと、おなじだ。

「おい、オマエ。一時休戦いちじきゅうせんだ!」
 燃える大蜥蜴おおとかげを、見下みおろす。
ギャオゥヨカロウグギャウコチラモグゥワァウキキタイコトグワォゥガデキタ!」
 くびをちょっとだけ、こっちに向ける蜥蜴とかげ
 やっぱり目に、かわいげがある。

「シガミーッ、ひとりでは危険きけんですわぁ」
 姫さんリカルルまで、落ちてきた。
 心配しんぱいしなくても火龍コイツ、もうなんか――
 とうとうあたまを、地べたに付けちまったぞ。

 派手はで甲冑かっちゅうの取っ手をつかんで、かるく羽ばたく。
 バサササッ――スタ、スタリ。
 降りたったのは火山かざん階層深かいそうふかく……もないか。
 たかさがあるけど、地下三階分ちかさんかいぶんだからな。

グギャオウワレハグギャギャオウマオウグンギャギャギャウダイイチエリアゴギャアトウカツギュギャワォォォウゲートルーブダ!」
 くびを持ちあげ――またドスンと付けちまう。

「あらこれはご丁寧ていねいに。わたくしはリカルル・リ・コントゥルよ。ガムラン町冒険者ちょうぼうけんしゃ代表だいひょうにして、コントゥルに名をつらねているわ」
 こしを引き、ドレスのすそをつまむような仕草しぐさ

「おれは、シガミーだ」
 かくみのすそをつまんで、片膝かたひざを引く。
 ようやくおぼえた、しゃらあしゃらしたれいをした。
 ちかくで見たら火龍とかげのなんとか言うコイツは、ほかの魔物まものとちがってたからだ。
 たぶん彼女リカルルも、コイツのひとみに……こころかんじたんじゃねーかとおもう。

「けれどいまさら〝魔王軍マオウグン〟と言われましても……魔王まおうは、とうのむかしたおされてましてよ?」

グギャォォゥダレニダ?」
なにをかくそう、このわたくしにですわよ? ふふっふぅーん♪」
 あー、なさ容赦ようしゃねぇな。
 しかも仁王立におうだちのご令嬢れいじょうの、片目かためが閉じられた――バチィーン♡
 これは〝むしが目にはいった〟んじゃなくて――
 見得みえを切りやがった。

 かりにも魔王まおう配下はいか名乗なのったヤツ相手あいてに、その態度たいどわぁねぇんじゃねぇか。
 おにか? 鬼姫おにひめだな。
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