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3:ダンジョンクローラーになろう

258:ダンジョンクローラー(シガミー御一行様)、聖剣切りとマジック・スクロール

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「(すむひせ、えやめほ、だゆわづ、さそへぎ)」
 きたぞ――また念話ねんわに割りこんできた!

「きぃぃぃぃっ――またこの殺気さっき!?」
 やっぱし、キレるんだな。
 ちかくで念話ねんわ使つかわれると。

 ドッゴォォォォォォァォォォォン!
 魔物ミノタウ爆音ばくおんとともに、姿すがたを消す。
 死線しせん一直線いっちょくせん、おれだけをねらってる!

 コッチも一歩踏いっぽふみこんで――――ギャッリィィィィィィィィンッ!
 力一杯ちからいっぱいはじきかえした!
 もうかわせねぇ。けりゃ姫さんリカルル串刺くしざしになりかねん。
 それに、ミノタウ間合まあいに巻き込んじまうから、一歩いっぽも下がれなくなった。

「それで、いつからだ!?」
 ぼうぼうぼごうわぁ――――四方八方しほうはっぽうからおれにぶち当たる魔物まものを、おいかける〝狐火きつねびしょう)〟。
 やっぱり、まるで追いついてねぇ。
 奥方おくがたさま……リカルルの母親ははおやである、正真正銘しょうしんしょうめい妖狐ようこにして狐火使きつねびつかい。
 あっちの本家本元ほんけほんもとの〝狐火きつねび特大とくだい)〟とか〝狐火きつねび極細ごくぼぞ)〟とかならとらえられそうだが――年季ねんきがちがいすぎる。

 ふぉん♪
『ヒント>狐火・仙花/仄暗い炎を重ね掛けすることにより、
     レーザーと化した鬼火怪光線。』
 不可視の鬼火みえねえおにびには、そんな名前なまえがついてたっけか。

「なにがですの、このいそしいときに!」
 きつくにぎりしめた両手りょうてをグイグイと、力任ちからまかせに振りまわしてる。
 妖狐ルリーロ狐火ほのおをしっぽであやつってた。
 ひめさんのしっぽは生えたばかり・・・・・・だからか、まだうまく使つかえてなさそうだ。

「いそがしいのはコッチもだぜっ、〝ぶった切り〟が使つかえなくなったのはいつからだって、聞いてるんだでごぜえますわぜ?」
「(シガミー、ひつじサる方角ほうがクかラ来マす)」
 念話ねんわだ――足場あしばががないはずの方向がわから、あらわれる魔物まものミノタウ。

「あっぶねっぇ――――!?」
 アイツ、コッチの念話中ねんわちゅうもおかまいなしだぜ、まるで止まらねぇぞ!?
 それと、どうやって空中ちゅうを蹴ってるのか、わからん。
 あのひづめも、なんかあるのか?

 ぐるるん――――ギャッリィィィィィィィィィィイィンッ!!!
 ゴリゴリギュリゴゴリュッ――――――――!
 錫杖しゃくじょうけずれちまうが、つのしんとらえてやった。

 ぼっごぅぅぅわっ――――っと、あぶねぇ!
 狐火きつねびがおれをかすめた。
 魔物アイツ使つか放題使ほうだいつかってるから――念話ねんわまぎれるかとおもったけどそうでもねぇ。
 うごかねぇまとになら、本当ほんとう正確せいかく狐火きつねびを当てて来やがる。

「あーもう! シガミーにだけは、知られたくなかったのに!」
 本勢もとぜいとの確執かくしつか……いや、まえにおれに負けてるからだな。
「いーから、はなせるウチにはなしとけ。この大角おおつのわぁ、〝たおせねぇくらいつよい〟って五百乃大角いおのはらが言ってる」

「そりゃミノタウロースなんて、伝説上でんせつじょう生物せいぶつですものっ――――出会であってしまったら、「うごくな、かみいのれ」と子供こどものころから言い聞かされたほどには、つよいに決まってますわぁ――――!」
 ……言い聞かせたのは、奥方さまルリーロじゃねぇな。
 彼女かのじょが言い聞かすなら、「うごけ、てき穿うがて」だ。

「――リカルル、耳栓経由みみせんけいゆでシガミーにだけこえとどけられまスので、小声こごえデどう――」
 耳栓みみせんから突きでた小枝こえだが、聞きみみを立てる仕組しくみだ。
 もっとも、とおくのこえを聞いたりおおききくしたりするのは、コッチの世界せかいほうおれの前世げんながんねんよかさきを行ってる。
 リカルルは神域惑星しんいきわくせい耳栓みみせんを、スグに使つかいこなしていたし。
 央都おうとはなせる通信機つうしんきとか、料理勝負りょうりしょうぶ舞台上ぶたいじょうで見た丸穴まるあながあいたぼうとかもあったしな。

 ギャリリリリィィィィインッ――――!!
「みんなは手を出すなよっ! コイツがおれをねらってるウチに、なんか手だてを考えるっ(迅雷と女神おまえらも、なんか手をかんがえとけ)!」
 邪魔じゃまになることを警戒けいかいしたのか、子供こどものころに聞かされる言いつたえにならったのか――
 リオレイニアとフッカは、魔法まほうはなってこなかった。
 実際じっさい魔法まほうでも撃たれておれがあしを止めてたら、串刺くしざしになって――とっくに全滅ぜんめつしてたかもしれない。

 ふぉん♪
『イオノ>そうわね。いざとなったらあたくしさまが、
     MSP使って新武器か新技を使えるように、
     してあげられるけど』
 それは、こんなとおくの地面の下ダンジョンにまでとどくのか?
 女神像めがみぞうちからおよ範囲はんいなら、こうして迅雷ジンライ画面越がめんごしにはなしくらいは出来できるだろうが。

 ふぉん♪
『イオノ>ふふん。超女神像の力をなめないでちょーだい♪
     念話は無理だし、スキル発動に時間は掛かりますけれど、ふふん♪』
 出来できるならそれは、心強こころづよいけど。
 とらの子の御前おまえさまのSPスキルポイントは、最後さいご手段しゅだんだ。絶対使せったいつかうなよ。

「――わたくし聖剣切せいけんぎりが、ひとみきざんだ呪文じゅもん行使こうしされていたのは、ごぞんじ?――」
 耳栓越みみせんごしにとど彼女ひめさんこえは、いつものよくとおこえとはちがってた。

「ああ、なんとなくだが」
 実際じっさいにぶった切りで斬られたときに、〝切るための魔術まじゅつ〟を乗っとるかたちやり返した・・・・・から知ってる。

「――ぶった切り……〝聖剣切せいけんぎり〟ってさー、ユニークスキル……えっと、唯一無二ゆいいつむに魔法まほうなのよねぇー?――」
 む、五百乃大角いおのはらめ。はなしに割りこんで、ややこしくするなよな。

「――イオノファラーさま。は、はい。聖剣切せいけんぎりはわたくしにしか使つかえない高等魔術こうとうまじゅつです……でした――」
 「そこで落ちこむな、さきをつづけてくれよっとぉっ!」――――ギャッリィィィィンッ!!

「――ふぅ、イオノファラーさまはなんでも、お見通みとおしなのですね――」

 ふぉん♪
『イオノ>えっ、何が?
     ちょっと気になった所を、確認しただけだけど?』
 いーから、やっぱり御前様おまえさまだまってろ、襤褸ぼろが出る。

「――つい先日せんじつ、〝つめたいほのお高等魔術こうとうまじゅつ〟……狐火きつねび使つかえるようになったのと引きかえに、〝聖剣切りヴォルトカッター〟は一切使いっさいつかえなくなってしまったわ――」

「――ふうん。ならそれさぁ、聖剣切せいけんぎりのための呪文じゅもんが、おな系統けいとう狐火きつねびにさぁー……上書きされた・・・・・・ってことじゃぁなぁいのぉぅ――」
 ふぉん♪
『イオノ>確証は全く全然これっぽっちも、ありませんけれど』
 くちはさむなってぇんだ。

「――あのとき目のまえ……というよりも目の中が・・・・とてもつめたくなって、つぎの日に狩りに出かけたときにはもう……――」
 あー、天火てんかが出たとき、目から火を吹きだしてたな――――!?

 ギャリィィィィィィィィンッ――――くそ、当たりがつよくて、さばくだけで一苦労ひとくろうだ。
 迅雷ジンライ錫杖しゃくじょう仕込しこがたなを、ばいふとさに出来できるか?
 ふぉん♪
『>可能ですが、金剛力をもってしても、取り回しに苦労すると思われます』
 かまわねぇ。前世ぜんせじゃばいばいじゃきかねぇくれぇのを、ぶんまわしてたんだ。

「(つぎに錫杖しゃくじょうを出すときは、ばいふとさの仕込み・・・にしてくれ)」
 ふぉん♪
『>了解しました』

狐火きつねびってのは――魔法まほうなのか?」
 もとじゃのろいっつうか、未練みれんっつうか――ひとのなれのはてっつうか。

「――わかりませんけれど、おかあさま……名代みょうだいが言うには、血肉ちにくそと宿やどる〝ごう〟というものらしいですわ――」
 ごうなぁ。五穀豊穣ごこくほうじょうかみ眷属けんぞくがどんなカルマかかえてたのかは知らねぇけど、子孫リカルル使つかえたわけだから、継承したついだんだろうなぁ。

ごうってのはよくわからねぇけど、聖剣切せいけんぎりりの魔法まほう呪文じゅもんをもう一回いっかい、目に書き込みゃぁ――また使つかえるようになるんじゃぁねぇのかい?」

「――それは無理むりですわね――」
即答そくとうだ――な!」
 ギャギャリィィィンッ――――ドゴッ!
 大角おおつの真下ましたはじいてみたら、一瞬いっしゅんだけどやつひづめが止まった。
 よぉし、錫杖しゃくじょうを出しなおして――――

「――だって魔王まおう居城きょじょうで見つけたマジック・スクロールは、ひとつきり・・・・・でしたもの――」
 コレにはおどろいた。
 折角せっかくつかんだかすかなすきを、無駄むだにしちまったぜ。
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