243 / 739
2:カブキーフェスタへの道
243:天狗(シガミー)という名の神さま、独楽をまわす
しおりを挟む
どごん――――ピキパキパキョ♪
耳にのこる凍る音。
なんかのスキルが上手いこと、巨大な氷塊をつくるのに役立ってくれた。
物をつくり出すことに掛けちゃ、我ながら相当なもんだ。
観客たちも――――うぉぉぉぉぉぉぉおっ♪
と驚いてくれた。
さてどうする?
氷塊を削って雪にして、色とりどりの甘い汁を掛けてやりゃぁ良い。
それでこと足りる、簡単簡単――まず削れ。
氷を見つめ――解析指南。
「(この氷を粉にして雪みたいにするには、どうすりゃ良いかのぉ?)」
スキル画面に出たのは、氷を回転させて包丁を当てて削れというもの。
そりゃQ廷料理人とおなじ手順だ――解析指南。
「(別の方法はないかのぉ?)」
噴霧した水を冷却し――削る工程を省いて粉雪をつくる。
霧を――一気に冷やす……のか?
なるほどな。
けど、その手順のための手間が書かれた、スキル画面が――
舞台にめり込むほど長い、長すぎだろ。
豆腐を作るのに作らされた〝苦水〟もそこそこの手間だったけど、雲泥の差でコッチが難しい。
しかもその理屈が、スキルのおかげでわかるもんだから――
「ぐっ、ぎぎぎぎぎっ――――でぇいっ!」
おれ……いや、わしと迅雷と五百乃大角にしか見えないであろうスキル画面を、蹴っ飛ばしてキャンセルした。
「はぁはぁはぁはぁ――すっすぅーすっすぅーすっすぅぅぅぅぅっぅ――――!」
息をととのえる。あのまま考えを引っ張られてたら、危なかった。
時間を掛ければさっきの、〝霧から氷にする〟やつも出来るだろう。
けど時間制限がある以上、べつの手を打たないと負ける。
生活魔法おばけなら何もない所に、雪を降らすことくらい訳無いんだろうが。
手順を踏めば水を氷にして、取りだすことは出来た。
けど吐いた息が瞬時に凍るような、極寒の魔法を使えるスキルは取っていない。
この二つは似ているようで、違うのだ。
スキルのおかげでソレがわかる。
じゃあ、どうする。
物をつくるしか能がないなら、削る道具をつくるか。
見ばえがして、きめ細かに氷を削れる道具。
石臼に刃でも付けるか?
スキルは氷の重さで刃を食いこませる、ひっくり返った石臼みたいなのを脳裏に浮かびあがらせた。
これは作りが簡単で、作るとしたらどう作るかの図面――スキル画面も小さい。
けどな石臼をまわした所で、さっきのQ廷料理人さまに並び立てるわけがねぇ。
どうする!?
ぱぱぱん♪
「クツクツ――――♪」
「くすくす――――♪」
「ウケケケ――――♪」
うるせぇぞ、扇子組め。
迅雷を見ると、鍋を大鍋に浮かべて――何やってやがんだ?
なんにしても、あれじゃ地味だろ。
修験者が山を下りて、里で披露してたみたいな――
そうか、その手があったか。
修行の合間に、路銀を稼ぐってんで――
いろんな技を身につけた。
身につけなけりゃ――頭陀行しなきゃならなかったから、必死に覚えた。
§
「さてお立ち会い、ここに取りだしたるは特大の大独楽でござぁぃ~♪」
大独楽は師匠みたいなやつが、よく使ってたのを真似てつくった。
手甲の先で持たねぇと、怪我をするような鋭利な楔。
そこから独楽の傾斜に沿って斜めに生えた、鉋のような平刀。
「一巻き二巻き三巻き四巻き――巻けば巻くほど――♪」
ぐるぐるぐるぐると、太縄を巻き付ける。
刃物のような独楽だが、引いて回すだけなら太縄が切れることはない。
口上を始めるまえに、試しにテーブルの上に投げ落としたとき。
なんせ巨大な氷にあわせた超特大。
回りはするが、チョットした歪みが出ていた。
テーブルを一瞬で粉砕するも、あの氷塊を削りきるには心許ない。
スキルが直せといった箇所を、叩いたり削ったり強化したりしたら。
微動だにしない、えらく出来の良い独楽になった。
もういちど試しにと、抜いた小太刀の上を刃渡ししたら――とんでもなくウケた。
よーし、あとはコイツを力一杯回して、氷柱の天辺に乗せりゃぁ良い。
簡単簡単。
「みぃごと氷を削りましたらぁ、拍手喝采のほどぉおたのみもぅす!」
「もぅすでごわす♪」
もうすもうす、もうすでごわす♪
ちっ、子供め。
よけいな合いの手を、入れるんじゃねぇ。
「カァァァァァァァァっ――――!!」
天高く巨大独楽を放りあげ――スタタタットトォン――縄の端を持って、客席の方へ走りだす。
長さが足りなかったから、そのまま舞台から飛びおりた。
振りかえる――――ゴゴン!
よし乗ったな!
シャシャシャシャギ、シャギシャギシャギィィィィッ――――――――――――!!!
舞い落ちる粉雪。
あとはアレを器で受けるだけじゃ。
舞台へ駆けもどり、大きな盆の上に器を並べた。
足が高いビードロの器は気をつけないと、すぐに倒れる。
そこで――自分の迂闊さに気づいた。
大独楽は見事に粉雪をまいてくれた――
が、独楽は回転する。
とうぜん雪を追うなら盆を持って、とんでもない速度で氷柱のまわりを駆け回らないといけない。
出来なくはねぇが――美しくねぇやな。
出し物としちゃ、下の下だ。
どうにかならんか……うーん……ならんか?
あきらめ半分、盆を置いて小太刀を取りだす。
氷塊を切るくらいしか、出し物がなくなった。
ヴッ――――ぱしん♪
どうする?
独楽の上に開けた穴から、鉋屑は吹き出してる。
ならその向きを、一方向に留めりゃ良い。
ならどうする?
まわる独楽を――まわる勢いとは逆向きに――まわせば良いんじゃ?
そう考えたら、体が勝手に小太刀を抜いた。
「(初級位相幾何学で――)」
斜めに小太刀を差しこむ。
「(体感で超感覚――)」
ぐるっと一回転。音もなく氷塊を切った。
ぐらつきもしない柱。
独楽の勢いはどんどん増していき、みるまに柱の高さが縮んでいく。
いそがねぇと。
「ちぃぇい――!」
取り出した苦無を、ゴスゴスゴスゴスン!
切った柱の上の部分を一周するように、全部で六本打ちこんだ。
ヒビが入り、さすがにぐらつく氷の柱をっ――
「(耐性強化、不壊付与、幸運効果付与、強運行使)」
ヒビが消えた柱――そのまわりに突き出た苦無。
独楽回しにつかった太縄を巻きつける。
「(ロープワークからの、ジャイロマスター呼出)」
力一杯、けどこんどは逆向きに――多少の加減をしてひっぱった!
ゴゴゴゴゴゴゴゴリリリリリリィリッ――――!!
柱は倒れることなく回転し――
シャシャシャシャギ、シャギシャギシャギィィィィッ――――――――――――!!!
くるくると四方へ舞い落ちていた粉雪が、一カ所に降り積もりはじめた。
「(体感でジャイロマスター呼出)――いまじゃぁぁぁぁっ!」
盆に並べたビードロの器で、粉雪を受け止める。
おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ――――――――♪
パチパチパチパチパチパチ――――Q廷料理人の出し物に勝るとも劣らない芸を、見せられたのではないだろうか。
見る間に出来上がった雪山へ、甘く煮た豆をかけた。
「どうじゃっあ、わしの手に掛かれば――――」
出来た凍った菓子を、いそいで配膳していく。
「あのう、テェーングさま――」
手をあげ何かを訴えるフッカさん。
「女子や、どうしなすった?」
体を抱え縮こまる、女子。
「ふぇくちゅん! ――たらぁん」
突然の声の主をみれば、それは鼻を垂らす子供。
「お師匠さま、舞台上の気温が平均より5℃も下がっております」
なぬっ!?
振りかえる。
巨大な氷柱から、しみ出す冷気。
そして、霧のように舞う粉雪。
みれば、息巻いていた扇子組の鼻からも、たらぁーん。
「食というものは、食事を取る環境を整えることから始まります、お師匠さま」
あわてて氷柱を消そうとしたけど――いかん、この大きさの物を収納する魔法具をわしは持ってない。
ぱちり――――閉じた扇子を氷柱へ向ける、伯爵夫人。
「コォォォォン♪」
ぼっごぉぉっぉぉぅわぁぁぁぁっ――――!
青白い炎が、氷や飛び散った雪をかき消した。
グワラランと落ちる、大独楽と苦無。
「ひぇっくしょい――!」
五百乃大角まで、鼻を垂らしてる。
わし、ひょっとしてやってしまったかのぅ?
ことり。
「お師匠さま、ドンマイです。どうぞボクのつくった〝アイスクリーム〟をご賞味くださいませ」
迅雷が差しだした、ビードロの器に乗っていたのは。
見たことのない――凍った真っ白い味噌。
それは女将さんの菓子よりも、わしの菓子よりもうまくて。
『烏』『烏』『烏』『天』『烏』『烏』
どうなんだこりゃ――四本目も大敗。
しかも出し物合戦にも、惨敗ときた。
女将さんが一票入れてくれたのは、刀や独楽をつかった芸に感じ入る所でもあったからじゃなかろうか。
これで、一勝三敗。
ひとます、審査員席の方々に謝っておく。
「か、かたじけないぇ――っくしょぉぉい――!」
わしまで寒くなってきおったわい。
「カタジーケ――っくちゅん♪」
子供がまた、くしゃみをする。
ほんとうに、かたじけないことをした。
ーーー
頭陀行/托鉢。民家を回り食料を鉢にもらう修行。
耳にのこる凍る音。
なんかのスキルが上手いこと、巨大な氷塊をつくるのに役立ってくれた。
物をつくり出すことに掛けちゃ、我ながら相当なもんだ。
観客たちも――――うぉぉぉぉぉぉぉおっ♪
と驚いてくれた。
さてどうする?
氷塊を削って雪にして、色とりどりの甘い汁を掛けてやりゃぁ良い。
それでこと足りる、簡単簡単――まず削れ。
氷を見つめ――解析指南。
「(この氷を粉にして雪みたいにするには、どうすりゃ良いかのぉ?)」
スキル画面に出たのは、氷を回転させて包丁を当てて削れというもの。
そりゃQ廷料理人とおなじ手順だ――解析指南。
「(別の方法はないかのぉ?)」
噴霧した水を冷却し――削る工程を省いて粉雪をつくる。
霧を――一気に冷やす……のか?
なるほどな。
けど、その手順のための手間が書かれた、スキル画面が――
舞台にめり込むほど長い、長すぎだろ。
豆腐を作るのに作らされた〝苦水〟もそこそこの手間だったけど、雲泥の差でコッチが難しい。
しかもその理屈が、スキルのおかげでわかるもんだから――
「ぐっ、ぎぎぎぎぎっ――――でぇいっ!」
おれ……いや、わしと迅雷と五百乃大角にしか見えないであろうスキル画面を、蹴っ飛ばしてキャンセルした。
「はぁはぁはぁはぁ――すっすぅーすっすぅーすっすぅぅぅぅぅっぅ――――!」
息をととのえる。あのまま考えを引っ張られてたら、危なかった。
時間を掛ければさっきの、〝霧から氷にする〟やつも出来るだろう。
けど時間制限がある以上、べつの手を打たないと負ける。
生活魔法おばけなら何もない所に、雪を降らすことくらい訳無いんだろうが。
手順を踏めば水を氷にして、取りだすことは出来た。
けど吐いた息が瞬時に凍るような、極寒の魔法を使えるスキルは取っていない。
この二つは似ているようで、違うのだ。
スキルのおかげでソレがわかる。
じゃあ、どうする。
物をつくるしか能がないなら、削る道具をつくるか。
見ばえがして、きめ細かに氷を削れる道具。
石臼に刃でも付けるか?
スキルは氷の重さで刃を食いこませる、ひっくり返った石臼みたいなのを脳裏に浮かびあがらせた。
これは作りが簡単で、作るとしたらどう作るかの図面――スキル画面も小さい。
けどな石臼をまわした所で、さっきのQ廷料理人さまに並び立てるわけがねぇ。
どうする!?
ぱぱぱん♪
「クツクツ――――♪」
「くすくす――――♪」
「ウケケケ――――♪」
うるせぇぞ、扇子組め。
迅雷を見ると、鍋を大鍋に浮かべて――何やってやがんだ?
なんにしても、あれじゃ地味だろ。
修験者が山を下りて、里で披露してたみたいな――
そうか、その手があったか。
修行の合間に、路銀を稼ぐってんで――
いろんな技を身につけた。
身につけなけりゃ――頭陀行しなきゃならなかったから、必死に覚えた。
§
「さてお立ち会い、ここに取りだしたるは特大の大独楽でござぁぃ~♪」
大独楽は師匠みたいなやつが、よく使ってたのを真似てつくった。
手甲の先で持たねぇと、怪我をするような鋭利な楔。
そこから独楽の傾斜に沿って斜めに生えた、鉋のような平刀。
「一巻き二巻き三巻き四巻き――巻けば巻くほど――♪」
ぐるぐるぐるぐると、太縄を巻き付ける。
刃物のような独楽だが、引いて回すだけなら太縄が切れることはない。
口上を始めるまえに、試しにテーブルの上に投げ落としたとき。
なんせ巨大な氷にあわせた超特大。
回りはするが、チョットした歪みが出ていた。
テーブルを一瞬で粉砕するも、あの氷塊を削りきるには心許ない。
スキルが直せといった箇所を、叩いたり削ったり強化したりしたら。
微動だにしない、えらく出来の良い独楽になった。
もういちど試しにと、抜いた小太刀の上を刃渡ししたら――とんでもなくウケた。
よーし、あとはコイツを力一杯回して、氷柱の天辺に乗せりゃぁ良い。
簡単簡単。
「みぃごと氷を削りましたらぁ、拍手喝采のほどぉおたのみもぅす!」
「もぅすでごわす♪」
もうすもうす、もうすでごわす♪
ちっ、子供め。
よけいな合いの手を、入れるんじゃねぇ。
「カァァァァァァァァっ――――!!」
天高く巨大独楽を放りあげ――スタタタットトォン――縄の端を持って、客席の方へ走りだす。
長さが足りなかったから、そのまま舞台から飛びおりた。
振りかえる――――ゴゴン!
よし乗ったな!
シャシャシャシャギ、シャギシャギシャギィィィィッ――――――――――――!!!
舞い落ちる粉雪。
あとはアレを器で受けるだけじゃ。
舞台へ駆けもどり、大きな盆の上に器を並べた。
足が高いビードロの器は気をつけないと、すぐに倒れる。
そこで――自分の迂闊さに気づいた。
大独楽は見事に粉雪をまいてくれた――
が、独楽は回転する。
とうぜん雪を追うなら盆を持って、とんでもない速度で氷柱のまわりを駆け回らないといけない。
出来なくはねぇが――美しくねぇやな。
出し物としちゃ、下の下だ。
どうにかならんか……うーん……ならんか?
あきらめ半分、盆を置いて小太刀を取りだす。
氷塊を切るくらいしか、出し物がなくなった。
ヴッ――――ぱしん♪
どうする?
独楽の上に開けた穴から、鉋屑は吹き出してる。
ならその向きを、一方向に留めりゃ良い。
ならどうする?
まわる独楽を――まわる勢いとは逆向きに――まわせば良いんじゃ?
そう考えたら、体が勝手に小太刀を抜いた。
「(初級位相幾何学で――)」
斜めに小太刀を差しこむ。
「(体感で超感覚――)」
ぐるっと一回転。音もなく氷塊を切った。
ぐらつきもしない柱。
独楽の勢いはどんどん増していき、みるまに柱の高さが縮んでいく。
いそがねぇと。
「ちぃぇい――!」
取り出した苦無を、ゴスゴスゴスゴスン!
切った柱の上の部分を一周するように、全部で六本打ちこんだ。
ヒビが入り、さすがにぐらつく氷の柱をっ――
「(耐性強化、不壊付与、幸運効果付与、強運行使)」
ヒビが消えた柱――そのまわりに突き出た苦無。
独楽回しにつかった太縄を巻きつける。
「(ロープワークからの、ジャイロマスター呼出)」
力一杯、けどこんどは逆向きに――多少の加減をしてひっぱった!
ゴゴゴゴゴゴゴゴリリリリリリィリッ――――!!
柱は倒れることなく回転し――
シャシャシャシャギ、シャギシャギシャギィィィィッ――――――――――――!!!
くるくると四方へ舞い落ちていた粉雪が、一カ所に降り積もりはじめた。
「(体感でジャイロマスター呼出)――いまじゃぁぁぁぁっ!」
盆に並べたビードロの器で、粉雪を受け止める。
おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ――――――――♪
パチパチパチパチパチパチ――――Q廷料理人の出し物に勝るとも劣らない芸を、見せられたのではないだろうか。
見る間に出来上がった雪山へ、甘く煮た豆をかけた。
「どうじゃっあ、わしの手に掛かれば――――」
出来た凍った菓子を、いそいで配膳していく。
「あのう、テェーングさま――」
手をあげ何かを訴えるフッカさん。
「女子や、どうしなすった?」
体を抱え縮こまる、女子。
「ふぇくちゅん! ――たらぁん」
突然の声の主をみれば、それは鼻を垂らす子供。
「お師匠さま、舞台上の気温が平均より5℃も下がっております」
なぬっ!?
振りかえる。
巨大な氷柱から、しみ出す冷気。
そして、霧のように舞う粉雪。
みれば、息巻いていた扇子組の鼻からも、たらぁーん。
「食というものは、食事を取る環境を整えることから始まります、お師匠さま」
あわてて氷柱を消そうとしたけど――いかん、この大きさの物を収納する魔法具をわしは持ってない。
ぱちり――――閉じた扇子を氷柱へ向ける、伯爵夫人。
「コォォォォン♪」
ぼっごぉぉっぉぉぅわぁぁぁぁっ――――!
青白い炎が、氷や飛び散った雪をかき消した。
グワラランと落ちる、大独楽と苦無。
「ひぇっくしょい――!」
五百乃大角まで、鼻を垂らしてる。
わし、ひょっとしてやってしまったかのぅ?
ことり。
「お師匠さま、ドンマイです。どうぞボクのつくった〝アイスクリーム〟をご賞味くださいませ」
迅雷が差しだした、ビードロの器に乗っていたのは。
見たことのない――凍った真っ白い味噌。
それは女将さんの菓子よりも、わしの菓子よりもうまくて。
『烏』『烏』『烏』『天』『烏』『烏』
どうなんだこりゃ――四本目も大敗。
しかも出し物合戦にも、惨敗ときた。
女将さんが一票入れてくれたのは、刀や独楽をつかった芸に感じ入る所でもあったからじゃなかろうか。
これで、一勝三敗。
ひとます、審査員席の方々に謝っておく。
「か、かたじけないぇ――っくしょぉぉい――!」
わしまで寒くなってきおったわい。
「カタジーケ――っくちゅん♪」
子供がまた、くしゃみをする。
ほんとうに、かたじけないことをした。
ーーー
頭陀行/托鉢。民家を回り食料を鉢にもらう修行。
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~
すなる
ファンタジー
追記《イラストを追加しました。主要キャラのイラストも可能であれば徐々に追加していきます》
猫を庇って死んでしまった男は、ある願いをしたことで何もない世界に転生してしまうことに。
不憫に思った神が特例で加護の力を授けた。実はそれはとてつもない力を秘めた創造神の加護だった。
何もない異世界で暮らし始めた男はその力使って第二の人生を歩み出す。
ある日、偶然にも生前助けた猫を加護の力で召喚してしまう。
人が居ない寂しさから猫に話しかけていると、その猫は加護の力で人に進化してしまった。
そんな猫との共同生活からはじまり徐々に動き出す異世界生活。
男は様々な異世界で沢山の人と出会いと加護の力ですべてを解決しながら第二の人生を謳歌していく。
そんな男の人柄に惹かれ沢山の者が集まり、いつしか男が作った街は伝説の都市と語られる存在になってく。
(
役立たず王子のおいしい経営術~幸せレシピでもふもふ国家再建します!!~
延野 正行
ファンタジー
第七王子ルヴィンは王族で唯一7つのギフトを授かりながら、謙虚に過ごしていた。
ある時、国王の代わりに受けた呪いによって【料理】のギフトしか使えなくなる。
人心は離れ、国王からも見限られたルヴィンの前に現れたのは、獣人国の女王だった。
「君は今日から女王陛下《ボク》の料理番だ」
温かく迎えられるルヴィンだったが、獣人国は軍事力こそ最強でも、周辺国からは馬鹿にされるほど未開の国だった。
しかし【料理】のギフトを極めたルヴィンは、能力を使い『農業のレシピ』『牧畜のレシピ』『おもてなしのレシピ』を生み出し、獣人国を一流の国へと導いていく。
「僕には見えます。この国が大陸一の国になっていくレシピが!」
これは獣人国のちいさな料理番が、地元食材を使った料理をふるい、もふもふ女王を支え、大国へと成長させていく物語である。
旧タイトル
「役立たずと言われた王子、最強のもふもふ国家を再建する~ハズレスキル【料理】のレシピは実は万能でした~」
【全12話/完結】リタイア勇者たちの飲み会
雲井咲穂(くもいさほ)
ファンタジー
◇12/20:::HOT90位ありがとうございました!RPGで言うところの全クリをした後、富も名声も女も時間も何もかもを満喫しつくした「元勇者=リタイア勇者」たちと、設定上やられ役=悪役キャラの魔王や魔女たちが繰り広げる、ほのぼの居酒屋同窓会。
自己中神様にハレンチ女神。不倫二股ヒロインたちも登場して、毎夜毎夜飲みまくる、胃袋ブレイク。
(いろいろ増えるよ。登場するよ)
※加筆修正を加えながら、ゆっくり更新中です。
※第二回お仕事コン楽ノベ文庫賞の受賞候補作品でした。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
転生貴族の魔石魔法~魔法のスキルが無いので家を追い出されました
月城 夕実
ファンタジー
僕はトワ・ウィンザー15歳の異世界転生者だ。貴族に生まれたけど、魔力無しの為家を出ることになった。家を出た僕は呪いを解呪出来ないか探すことにした。解呪出来れば魔法が使えるようになるからだ。町でウェンディを助け、共に行動をしていく。ひょんなことから魔石を手に入れて魔法が使えるようになったのだが・・。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる