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2:カブキーフェスタへの道
233:天狗(シガミー)という名の神さま、烏天狗(シガミー)VSおにぎり(シシガニャン一号)
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「たいへんながらく、お待たせいたしました。バトルロイヤルおにぎり杯本戦、最後の挑戦者の入場です――が、姿が見えませんねー?」
ギルド職員の声が会場中に響きわたる。
五百乃大角も伯爵夫人も、どこかに行ってるのか姿が見えない。
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――――!
轟く歓声!
「いくニャー、ぶちのめすニャァー♪」
「配当金倍額も夢じゃないコォォォォン♪」
あーうん。まだいたのか君ら。
「(ルコルの掛け金がもどるのには、これで勝たないといけないのか?)」
「――そうでスね。負けルと約4割程度ノ回収に留まりマす――」
「(勝ったら、いくらになるんだ?)」
「――ルコルが掛けた300,000パケタに対しオッズは3・2。勝てば約1,000,000パケタになります――」
100万パケタか。
それだけありゃ、アーティファクトの仕入れにも困らないだろーな。
「――はイ。好事家向ケに取引されルと、高騰すル場合もありますシ――」
おにぎり型のSDKとおなじ物がたくさん有れば、おにぎりもたくさん作れる。
けど戦力としては、そこまでたくさんは要らない気もするな。
魔王もいないし、変異種も滅多に出ないし。
人手なら〝おもち〟が居てくれれば、事足りるってわかったし。
「(――ハい。コの足元ニ設置しタ4D超音波フェ-ズドアレイモジュール付き光源ユニットの照射半径内なラ、何体デも同時ニ操作できますノで――)」
ここは舞台上空、例の昼間のように明るく照らす箱。
それを取り付けるために建てた、柱のうえ。
柱は角状で、大柄なオルコトリアの背丈くらいの幅があって、鉤形に舞台の上までせり出してる。
呼びに来たギルド職員が「どこから入場しても構わない」って言うから、〝上〟を取った。
「クカカカカカカッ――――ココだ! 師が召喚せし使役獣、おにぎりよ!」
神々の叡知で、ぼくの声が会場中に木霊する。
「――カナル型ヘッドセット……耳栓の突起に話しかけると、会場中に声が轟きます――」
舞台にぽつんと立つ黄緑色へ向かって、啖呵を切ってやった。
ピカァァァァァァッ――――!
観客席側から舞台を照らしていた、何個もの〝灯りの魔法具箱〟。
それがいっせいに、柱の上を向いた。
まぶしい――けど、目立って良いやな。
どうせやるなら、思いっきり豪快に。
せいぜい祭りを盛りあげて、新商品の饅頭の売りあげにつなげるぞ。
「にゃんやーう、みゃやにゃう?」
おいやめろ興がそがれる、小首をかしげるんじゃねぇ。
それにこの会場には、猫語を話せるヤツがごまんと居る。
うかつな発言から、おにぎりの正体が〝ゴーレムと似たもの〟だとバレてもいけない。
ほんとうにゴーレムは、嫌われてるらしいからな――。
「いま一号の奴、なんていった?」
ふぉん♪
『ヒント>自動翻訳:そんな高い所にのぼって、お空の白い雲をたべるの?』
両手を天に向かって突きだす、黄緑色の猫みたいな。
ありゃ、「かかってこい」ってんじゃなくてやっぱり――
「――はイ。「おにぎりにモ白イ雲ヲ、わけてチょーだい」ノ意味かト――」
はぁー。
「クカカカカッ――――師より受け継ぎし修験の技、うけてみろ!」
カンッ――――ヒュォォォォォォォォォッ!!!
柱を蹴って、一直線に落ちる。
烏天狗の装束に身を包もうが、天狗の姿に化けようが、なかみはみんな同じ。
どうせ1シガミー力でしかない。
手甲と高下駄のつかいかたにも差はないし、それぞれの名義で偽装したスキルにも、しばられる必要はない。
いつもと同じ金剛力と、柔軟なシガミーの体と、猪蟹の修験の技。
それを全部つかうだけだ。
ただ今回は蟹挟み付きの手甲と二枚刃の高下駄と、拾って直した兜があたらしい。
ちなみに、ルコルにもらったケモ耳帽子は破いたら大変だから、大事に仕舞ってある。
ババッッサァァァァッ――――ヒュォォォォォォォォォッ!!!
蟹挟みと高下駄を大きく伸ばし、風に乗る。
なびく隠れ蓑には、ジンライの細腕が仕込まれていて――――ボッファ!
まるで武佐左妣みたいに、空中に浮かぶことまでできた。
スィーっと横にすべるように移動しても、ほとんど高さが変わらない。
くるくる旋回すると、源泉から立ちのぼる湯気が見えたり隠れたりを繰りかえす。
下を見ると、独楽みたいにまわる――黄緑色《おにぎり》を視界に捉えた。
狙いは上空からの一撃。
しかもこのクルクル回ってる、ねじり込みまで乗せられる。
つまりアレをやるぞ。
ヴッ――錫杖を取り出す!
「――せッかく作っタ舞台ニ大穴ヲ開けル、おつもりデすか?――」
いーや石床の硬さと、おにぎりの毛皮の硬さをあわせりゃ――いけるっ!
壊れたら一号に直させりゃ良い。
ピピピプ――――ッ♪
『<ロックオンされました。回避してください>』
画面に出た赤い文字。
意味はわからんが――伯爵夫人が放ったのと、おなじ殺気だ。
やべぇ、殺られる。
いくさ場で、何度か感じたことがある。
あのときはおにぎりが、妖狐をどついてくれて助かったけど――
「――気ヲつけてください、おにぎりもコチラに一撃必殺ノ何かヲ放とうとしていマす――」
あの、やり返すことしかしなかったおにぎりが?
ぽこ――ふぉん♪
「イオノ>すでに演算単位は1を越えてるから、
いつ大化けするかわからないわよぉー?
気おつけてねー♡」
どこに居やがる、五百乃大角。
午後のことも含めて、ヤツとは詰めたい話がいろいろある。
ヴッ――おにぎりが刀を取りだした。
やべぇ、あっちの収納魔法箱に入れたっけか!?
「――よク見てくだサい――」
ふぉん♪
『>コッヘル夫人の木さじです』
さっき女将さんから、ぶんどったヤツか!
たしかにいろいろ考えて……やり返してきてやがる。
本戦、一試合目から五試合目まで。
おにぎりのなかに、さっき見た〝みんなの技〟が詰まってるというなら――
「カカカカカカカカッ――――相手にとって不足なし!」
ボッファァァ――――隠れ蓑をはためかせ、体を下に向けた。
「――二の構え。」
錫杖の頭についた輪を持ち、ぶらさげて垂直を取る。
二の型は〝なんにでも穴を穿つ〟技だ。
温泉を穿った二の型を、こんどは全力全霊十割増しで放つ。
なんかのスキルのおかげか、めまぐるしく回る景色の中で目が回らないのは助かった。
―――ひゅるるるりゅっ♪
一号が立つ地面が迫る。
手のひらでつかんだ錫杖の頭を、おもいきり突き出した!
振り上げられる木さじ。
木さじのながさは約2シガミー。
オルコトリアの長剣ほどじゃないけど、そこそこ長い。
唸る木さじ。
その剣筋は、ギルド壊滅の時のオルコトリアの――
シュォォンッ――――すっぽおぉぉぉぉぉん♪
ごぉお――すっぽ抜けた木さじが、空へふっとんでいく。
どわっはははははははははっ♪
歓声が笑いに。
まさか、まえの五試合全部こんな感じか!?
ゴズむッ――――錫杖が猫耳頭の広いひたいの、真ん中を突く。
ぽっきゅムムんっ!!!
凹む〝シシガニャンへっど〟。
「にゃみゃにゃ、にゃあやーご?」
――ぱっしぃぃん♪
おい、何の真似だ?
まさか〝無刀取り〟か?
どわっはははははははははっ♪
「そこニャァー♪」
「がんばるコォン♪」
錫杖が当たってるのに、衝撃が伝播しない。
ぎゅゔぎゅるる――ゔるっ♪
聞いたことのない音。
猫耳頭の顔のよじれが止まる。
完全に回転を殺され――回っていた世界が、ピタリと止まった。
ぐらわらぁりぃ~ん♪
さすがに頭がクラクラし――
『▲▲▲――ピピピッ!』
おにぎりの大きな顔。
それに重なる、おれの画面の中。
烏天狗の体が小さく映しだされ――下から赤い矢印が。
ふぉん♪
『動体感知――ヒント>自動追尾された木さじが、死角から飛来』
ぼごん――――!?!?
痛ぇ――戻ってくる木さじは、女将さんの技かっ!
ぎゅぎゅむっ――突き込んだ錫杖のいきおいが、すべて散らされ――
ぼっぎゅむん――――――――っ♪
おれ……ぼくは、天高くはじき返された。
ギルド職員の声が会場中に響きわたる。
五百乃大角も伯爵夫人も、どこかに行ってるのか姿が見えない。
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――――!
轟く歓声!
「いくニャー、ぶちのめすニャァー♪」
「配当金倍額も夢じゃないコォォォォン♪」
あーうん。まだいたのか君ら。
「(ルコルの掛け金がもどるのには、これで勝たないといけないのか?)」
「――そうでスね。負けルと約4割程度ノ回収に留まりマす――」
「(勝ったら、いくらになるんだ?)」
「――ルコルが掛けた300,000パケタに対しオッズは3・2。勝てば約1,000,000パケタになります――」
100万パケタか。
それだけありゃ、アーティファクトの仕入れにも困らないだろーな。
「――はイ。好事家向ケに取引されルと、高騰すル場合もありますシ――」
おにぎり型のSDKとおなじ物がたくさん有れば、おにぎりもたくさん作れる。
けど戦力としては、そこまでたくさんは要らない気もするな。
魔王もいないし、変異種も滅多に出ないし。
人手なら〝おもち〟が居てくれれば、事足りるってわかったし。
「(――ハい。コの足元ニ設置しタ4D超音波フェ-ズドアレイモジュール付き光源ユニットの照射半径内なラ、何体デも同時ニ操作できますノで――)」
ここは舞台上空、例の昼間のように明るく照らす箱。
それを取り付けるために建てた、柱のうえ。
柱は角状で、大柄なオルコトリアの背丈くらいの幅があって、鉤形に舞台の上までせり出してる。
呼びに来たギルド職員が「どこから入場しても構わない」って言うから、〝上〟を取った。
「クカカカカカカッ――――ココだ! 師が召喚せし使役獣、おにぎりよ!」
神々の叡知で、ぼくの声が会場中に木霊する。
「――カナル型ヘッドセット……耳栓の突起に話しかけると、会場中に声が轟きます――」
舞台にぽつんと立つ黄緑色へ向かって、啖呵を切ってやった。
ピカァァァァァァッ――――!
観客席側から舞台を照らしていた、何個もの〝灯りの魔法具箱〟。
それがいっせいに、柱の上を向いた。
まぶしい――けど、目立って良いやな。
どうせやるなら、思いっきり豪快に。
せいぜい祭りを盛りあげて、新商品の饅頭の売りあげにつなげるぞ。
「にゃんやーう、みゃやにゃう?」
おいやめろ興がそがれる、小首をかしげるんじゃねぇ。
それにこの会場には、猫語を話せるヤツがごまんと居る。
うかつな発言から、おにぎりの正体が〝ゴーレムと似たもの〟だとバレてもいけない。
ほんとうにゴーレムは、嫌われてるらしいからな――。
「いま一号の奴、なんていった?」
ふぉん♪
『ヒント>自動翻訳:そんな高い所にのぼって、お空の白い雲をたべるの?』
両手を天に向かって突きだす、黄緑色の猫みたいな。
ありゃ、「かかってこい」ってんじゃなくてやっぱり――
「――はイ。「おにぎりにモ白イ雲ヲ、わけてチょーだい」ノ意味かト――」
はぁー。
「クカカカカッ――――師より受け継ぎし修験の技、うけてみろ!」
カンッ――――ヒュォォォォォォォォォッ!!!
柱を蹴って、一直線に落ちる。
烏天狗の装束に身を包もうが、天狗の姿に化けようが、なかみはみんな同じ。
どうせ1シガミー力でしかない。
手甲と高下駄のつかいかたにも差はないし、それぞれの名義で偽装したスキルにも、しばられる必要はない。
いつもと同じ金剛力と、柔軟なシガミーの体と、猪蟹の修験の技。
それを全部つかうだけだ。
ただ今回は蟹挟み付きの手甲と二枚刃の高下駄と、拾って直した兜があたらしい。
ちなみに、ルコルにもらったケモ耳帽子は破いたら大変だから、大事に仕舞ってある。
ババッッサァァァァッ――――ヒュォォォォォォォォォッ!!!
蟹挟みと高下駄を大きく伸ばし、風に乗る。
なびく隠れ蓑には、ジンライの細腕が仕込まれていて――――ボッファ!
まるで武佐左妣みたいに、空中に浮かぶことまでできた。
スィーっと横にすべるように移動しても、ほとんど高さが変わらない。
くるくる旋回すると、源泉から立ちのぼる湯気が見えたり隠れたりを繰りかえす。
下を見ると、独楽みたいにまわる――黄緑色《おにぎり》を視界に捉えた。
狙いは上空からの一撃。
しかもこのクルクル回ってる、ねじり込みまで乗せられる。
つまりアレをやるぞ。
ヴッ――錫杖を取り出す!
「――せッかく作っタ舞台ニ大穴ヲ開けル、おつもりデすか?――」
いーや石床の硬さと、おにぎりの毛皮の硬さをあわせりゃ――いけるっ!
壊れたら一号に直させりゃ良い。
ピピピプ――――ッ♪
『<ロックオンされました。回避してください>』
画面に出た赤い文字。
意味はわからんが――伯爵夫人が放ったのと、おなじ殺気だ。
やべぇ、殺られる。
いくさ場で、何度か感じたことがある。
あのときはおにぎりが、妖狐をどついてくれて助かったけど――
「――気ヲつけてください、おにぎりもコチラに一撃必殺ノ何かヲ放とうとしていマす――」
あの、やり返すことしかしなかったおにぎりが?
ぽこ――ふぉん♪
「イオノ>すでに演算単位は1を越えてるから、
いつ大化けするかわからないわよぉー?
気おつけてねー♡」
どこに居やがる、五百乃大角。
午後のことも含めて、ヤツとは詰めたい話がいろいろある。
ヴッ――おにぎりが刀を取りだした。
やべぇ、あっちの収納魔法箱に入れたっけか!?
「――よク見てくだサい――」
ふぉん♪
『>コッヘル夫人の木さじです』
さっき女将さんから、ぶんどったヤツか!
たしかにいろいろ考えて……やり返してきてやがる。
本戦、一試合目から五試合目まで。
おにぎりのなかに、さっき見た〝みんなの技〟が詰まってるというなら――
「カカカカカカカカッ――――相手にとって不足なし!」
ボッファァァ――――隠れ蓑をはためかせ、体を下に向けた。
「――二の構え。」
錫杖の頭についた輪を持ち、ぶらさげて垂直を取る。
二の型は〝なんにでも穴を穿つ〟技だ。
温泉を穿った二の型を、こんどは全力全霊十割増しで放つ。
なんかのスキルのおかげか、めまぐるしく回る景色の中で目が回らないのは助かった。
―――ひゅるるるりゅっ♪
一号が立つ地面が迫る。
手のひらでつかんだ錫杖の頭を、おもいきり突き出した!
振り上げられる木さじ。
木さじのながさは約2シガミー。
オルコトリアの長剣ほどじゃないけど、そこそこ長い。
唸る木さじ。
その剣筋は、ギルド壊滅の時のオルコトリアの――
シュォォンッ――――すっぽおぉぉぉぉぉん♪
ごぉお――すっぽ抜けた木さじが、空へふっとんでいく。
どわっはははははははははっ♪
歓声が笑いに。
まさか、まえの五試合全部こんな感じか!?
ゴズむッ――――錫杖が猫耳頭の広いひたいの、真ん中を突く。
ぽっきゅムムんっ!!!
凹む〝シシガニャンへっど〟。
「にゃみゃにゃ、にゃあやーご?」
――ぱっしぃぃん♪
おい、何の真似だ?
まさか〝無刀取り〟か?
どわっはははははははははっ♪
「そこニャァー♪」
「がんばるコォン♪」
錫杖が当たってるのに、衝撃が伝播しない。
ぎゅゔぎゅるる――ゔるっ♪
聞いたことのない音。
猫耳頭の顔のよじれが止まる。
完全に回転を殺され――回っていた世界が、ピタリと止まった。
ぐらわらぁりぃ~ん♪
さすがに頭がクラクラし――
『▲▲▲――ピピピッ!』
おにぎりの大きな顔。
それに重なる、おれの画面の中。
烏天狗の体が小さく映しだされ――下から赤い矢印が。
ふぉん♪
『動体感知――ヒント>自動追尾された木さじが、死角から飛来』
ぼごん――――!?!?
痛ぇ――戻ってくる木さじは、女将さんの技かっ!
ぎゅぎゅむっ――突き込んだ錫杖のいきおいが、すべて散らされ――
ぼっぎゅむん――――――――っ♪
おれ……ぼくは、天高くはじき返された。
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