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2:カブキーフェスタへの道
232:天狗(シガミー)という名の神さま、おにぎり杯本戦
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いやぁ、あったかい寝床わぁいいねぇー♪
じつに、いいねぇー♪
「すぅー、ぴぃー♪」
なんか誰かの寝息も、聞こえてくる。
いいねいいねぇー、ふわぁーぁふ。
どぉーれ、気合いを入れてねるぞぉ――♪
ごごごごわわぁぁぁぁ――――こねこがいっぴき、にゃんにゅうわぁーるどぉ、へぇい♪
天井から響いてくるのは、イベント会場からの騒音だ。
またその歌かぁー。
ノヴァドたちとか、央都のモサモサ神官どもにすっげー気に入られてる歌。
もう夜明けも近いってのに、観客の声援がスゴイ。
烏天狗として参戦した舞台で感じたけど、あの熱気は――まさにお祭りの雰囲気だ。
御神楽の獅子舞や、修験者が里で披露した曲芸とおなじ。
神霊を祭壇にまねき迎え――
祭りが終わったら、天上へかえす。
何てことのない、神降ろしと神上げの儀式。
はやい話が、五穀豊穣の厄除け祈願。
カブキーフェスタはいまのところ、おおむね大成功。
新ギルド会館と超女神像のお披露目に、ガムラン町名物の売りだし。
予定になかった温泉と温泉街までも、作り上げちまった。
そして、それに彩りを添えていたのは、驚いたことに――――あの高い所に座らされ、ご満悦だった〝おにぎり〟だ。
猫の獣人たちの共通語でしゃべる、一見すると魔物のようなやつ。
ものすごく癪だけど――あいつが、この祭りの顔なのは間違いない。
そしてそれを御する事で、祭りは終わりを迎え――
天狗という神を、ガムランの地に降ろすのだ。
よぉし、刀《かたな》でも研いでから寝直すかなぁ……むにゃり。
〝本戦〟と、場合によってはヤルことになる午後の〝ボス戦〟にそなえて――
ぽんぽぉん♪
隣で寝てたヤツがおれの布団をやさぁしく、ぽんぽんしやが――すやぁ♪
いやぁ、あったかい寝床わぁいいねぇー♪
じつにいいねぇー♪
§
「むにゃふぁっ――!?」
いけねぇっ――いま何時でぇい?
外れてた耳栓を、慌てて付けなおした。
チカチカチカッ――♪
耳栓から伸びる突起先端が、目尻を赤く照らす。
ふぉん♪
『現在時刻 11:02』
目のまえの景色に重なるように、表示された画面には――
おにぎりとの本戦終了時刻が、映し出されていた。
やっちまった、寝過ごした!
「(迅雷――おきろっ!)」
「(おはようございます、シガミー)」
ヴォン――――ッ♪
目のまえに飛んできたのは、銀色の棒。
美の女神、五百乃大角から賜った――独鈷杵型の〝因照減簾〟だ。
呼び名の意味はわからんが、とても便利な空飛ぶ棒なのは間違いない。
「会場はどうなってる?」
「(はい、子細とどこおりなく進行中です。プログラムはコチラに)」
ふぉふぉん♪
『――――/――――――
進行中>9:00~11:00/おにぎり杯本戦
――――/――――――』
表示された進行表。
おにぎり杯本戦の終了時間は過ぎてる。
「おにぎり戦は、どうなったっ!?」
あれだけの手練れぞろいだ、死人は出ないだろう。
唯一不安だったフォなんとかさんには、立派な防具を用意した。
気になる所はないが、しいて言うならニゲルが――おにぎりを切れたかどうかは知りたい。
「(ご安心ください、負傷者はおりません。おにぎりに付いても絶賛稼働中です)」
ふぅー。
一安心だけど、じゃあ〝全員がおにぎりに伸されて終わり〟って言う、五百乃大角の筋書き通りか。
「そりゃ、なによりだけど」
このまま天狗との一騎討ちっていう、大勝負をせずに終わらせたら――そうとうな尻すぼみだ。
どんな祭りにも、多少の手順と辻褄ってものがある。
§
「しかし冒険者筆頭の姫さんはじめ、勇者(書道初段)に一本角の鬼に、ガムラン最高LVの女将さん。そうそうたる面々が、手も足も出なかったかー」
ちょっと前にノヴァドに仕立ててもらった胸当ての、色を変えて装備した。
その裏には『烏』の字を入れて強化したし――
森で拾ったボロボロの兜を直して、やっぱり裏側に『天』の字を入れたし――
手甲は蟹の鋏みたいな形、高下駄は歯を二本にして、それぞれ新しくした。
ぶわさっ――全身を迅雷式隠れ蓑で包み、顔を目印である〝眼を描いた黒頭巾〟で覆い隠す。
烏天狗の、いくさ装束の完成だ。
「(おい迅雷。これはなかなか格好良いんじゃねぇか?)」
「(はい。先ほど様子を見に来たレイダやリオレイニアは、なにやら異論があるようでしたが。とても素敵と言わざるを得ないでしょう。戦国の世の歌舞伎武者たちに、決して引けを取っていません)」
だっろぉーぅ。特にこの蟹挟みは、なかなか良いぞ。
手首を引いてカチャカチャと、鋏を閉じてみた。
錫杖や刀をコイツにも、持たせておけば――
〝夕凪〟モードに変えなくても、次の刀をつかめる。
ウィィィィィィン――――♪
お? 魔法をつかう要領でMPをつかうと、鋏がクルクル回りやがる!
格好良い、じつに格好良い♪
寝起きにかり出されたときには、どうするかと思ったけど。
こうひと揃え着込んじまうと、やる気がみなぎらないでもない。
「そういや結局、オルコトリアでも勝てなかったか?」
「(はい――おにぎりAPIとの接続が可能になりましたので、キルカメラ映像を再生できます)」
ヴォォォン♪
画面の中に舞台があらわれた。
目のまえに角を光らせた、鬼の娘がいる。
「こりゃなんだ?」
「(おにぎりが見たものを、振りかえり見ています)」
そりゃ、便利なもんだなー。
ブゥォォォンッ――――――――パッ!!!
長大な剣を振り切らないうちに、うち捨て――
取り出される青い刀――小太刀か!?
迫る、青い切っさき。
どこまでも伸びる青色が、おにぎりの首に突き刺さる――はずが。
景色が遠のいていく。
これはおにぎりが鬼から、距離をとっているのか?
けどソレにしちゃ変だぞ!?
切っさきが――離れていかない。
「(はい、オルコトリアの放つ突きに対して、寸分のズレなく引き込みました)」
引き込んだだぁ?
「(はい。この後の動きを、よく見てください)」
画面の中。
急激に遠のく景色。
鬼の驚愕の表情。
手元にちいさく見え隠れしているのは、黄緑色のおにぎりの手か?
景色が下方向へ去って行く。
逆に近づいてくるのは、鬼の稲光る一本角。
「まさか突き込まれた刀ぁ、つかんで引っ張ったのか?」
画面がひっくり返り、逆さまになった鬼の顔は青ざめていた。
ふぉん♪
『第一戦目/オルコトリアVSおにぎり 3分02秒
頭突きからの一本背負い→逆腕ひしぎ』
なんだぁ、逆腕ひじきてぇのわぁ?
「(イオノファラーが所有するライブラリーより示唆された、相手を抵抗できなくする体術のようです)」
捕縛の術か。
いくさ場じゃつかえねぇが、試合なら有りだな。
ふぉん♪
『第二戦目/コッヘル夫人VSおにぎり 2分14秒
木さじ強奪からの殴打→逆腕ひしぎ』
ひでぇ、おなじ角度で殴り返されてやがる。
「怪我はないだろうな」
「(はい。仮にもLV70ちかいので、この程度で怪我を負うことはありません)」
なら良いけど――強ぇな〝逆ひじき〟。
「(〝逆腕ひしぎ〟です)」
ふぉん♪
『第三戦目/リカルル・リ・コントゥルVSおにぎり 0分36秒
狐火散らし(正拳突き)からのフランケンシュタイナー→四の字固め」』
あー、狐火のあとに、なんかやろうとしてたみたいだけど。
ぴょっこんぱっきょん飛び跳ねられて、ひっくり返されちまったなー。
「(怪我は――)(――舞台に仕掛けがあるので、見た目ほどの衝撃はありません)」
あれか、あのかたくなった餅みたいなヤツ。
「(はい。超硬質エラストマー製の衝撃吸収材です)」
舞台の一枚岩の下に、そんなのを敷き詰めさせられたっけ。
ふぉん♪
『第四戦目/フォチャカVSおにぎり 7分59秒
灼熱魔法返しからのジャイアントスイング→リングアウトKO」』
魔法杖を奪われて、外の地面に放り投げられたけど大丈夫か?
「(はい、シガミー……カラテェー作成の一式防具は、擦り傷ひとつ負わせませんでした)」
よし、なら良いだろ。
ふぉん♪
『第五戦目/ニゲルVSおにぎり 1分02秒
足払いからのウラカン・ラナ・インベルティダ→エビ固め」』
さて、ニゲル戦。
最初の踏み込みで、腕を切られるおにぎり。
五百乃大角と一緒に作った本式のシシガニャン一号でも、あっさり切られてるぞ。
シシガニャンの蓋が開いちまうとおにぎりは、また歩き方から教えなきゃならないんじゃ――!?
「――切らレた瞬間に、切断部分ヲ手でキュッと塞いだようデす――)
姫さんに使った捕縛術に似てるけど、いきおいありすぎない?
ニゲル、本当に死んでないよな?
「――はイ、双方ともに擦り傷ひとつありマせん――」
「そろそろいいかしらぁー?」
なんと、更衣室のついたての奥から出てきたのは、まさかのオルコトリアさん。
「まったく、あの面子で手も足も出ないなんてまったく!」
あれ? お怒りのご様子だけど、なんか――憑きものが落ちたって言うか。
「装備はソレで大丈夫? 私の長剣貸そうか? たぶん長剣が一番可能性があるかも」
あ――れ?
届かなかった自分の武器を、薦めてきたぞ。
鬼娘の眼差しはまっすぐ、ぼくを射貫いている。
それは、敗者が投げやりにみせる表情ではない。
「そうねぇ。空を飛べるフッカちゃんが一番良い所までいきましたけれど、魔法のたぐいが一切効かないんですものねぇー」
続いて出てきたのは、リカルル。
だから、迅雷が耳栓越しに切り替えたのか。
「カラテェーちゃんの装備のおかげで怪我ひとつしなかったわ、ありがとう」
姫さまのうしろから、顔色が良くなった女のひとが顔を出した。
ああ〝フッカちゃん〟てのは、〝フォなんとかさん〟のことか。
それなら言いやすくて良いな。
「(ふぅ、負けられない雰囲気になっちまった)」
どうしたもんかな。
じつに、いいねぇー♪
「すぅー、ぴぃー♪」
なんか誰かの寝息も、聞こえてくる。
いいねいいねぇー、ふわぁーぁふ。
どぉーれ、気合いを入れてねるぞぉ――♪
ごごごごわわぁぁぁぁ――――こねこがいっぴき、にゃんにゅうわぁーるどぉ、へぇい♪
天井から響いてくるのは、イベント会場からの騒音だ。
またその歌かぁー。
ノヴァドたちとか、央都のモサモサ神官どもにすっげー気に入られてる歌。
もう夜明けも近いってのに、観客の声援がスゴイ。
烏天狗として参戦した舞台で感じたけど、あの熱気は――まさにお祭りの雰囲気だ。
御神楽の獅子舞や、修験者が里で披露した曲芸とおなじ。
神霊を祭壇にまねき迎え――
祭りが終わったら、天上へかえす。
何てことのない、神降ろしと神上げの儀式。
はやい話が、五穀豊穣の厄除け祈願。
カブキーフェスタはいまのところ、おおむね大成功。
新ギルド会館と超女神像のお披露目に、ガムラン町名物の売りだし。
予定になかった温泉と温泉街までも、作り上げちまった。
そして、それに彩りを添えていたのは、驚いたことに――――あの高い所に座らされ、ご満悦だった〝おにぎり〟だ。
猫の獣人たちの共通語でしゃべる、一見すると魔物のようなやつ。
ものすごく癪だけど――あいつが、この祭りの顔なのは間違いない。
そしてそれを御する事で、祭りは終わりを迎え――
天狗という神を、ガムランの地に降ろすのだ。
よぉし、刀《かたな》でも研いでから寝直すかなぁ……むにゃり。
〝本戦〟と、場合によってはヤルことになる午後の〝ボス戦〟にそなえて――
ぽんぽぉん♪
隣で寝てたヤツがおれの布団をやさぁしく、ぽんぽんしやが――すやぁ♪
いやぁ、あったかい寝床わぁいいねぇー♪
じつにいいねぇー♪
§
「むにゃふぁっ――!?」
いけねぇっ――いま何時でぇい?
外れてた耳栓を、慌てて付けなおした。
チカチカチカッ――♪
耳栓から伸びる突起先端が、目尻を赤く照らす。
ふぉん♪
『現在時刻 11:02』
目のまえの景色に重なるように、表示された画面には――
おにぎりとの本戦終了時刻が、映し出されていた。
やっちまった、寝過ごした!
「(迅雷――おきろっ!)」
「(おはようございます、シガミー)」
ヴォン――――ッ♪
目のまえに飛んできたのは、銀色の棒。
美の女神、五百乃大角から賜った――独鈷杵型の〝因照減簾〟だ。
呼び名の意味はわからんが、とても便利な空飛ぶ棒なのは間違いない。
「会場はどうなってる?」
「(はい、子細とどこおりなく進行中です。プログラムはコチラに)」
ふぉふぉん♪
『――――/――――――
進行中>9:00~11:00/おにぎり杯本戦
――――/――――――』
表示された進行表。
おにぎり杯本戦の終了時間は過ぎてる。
「おにぎり戦は、どうなったっ!?」
あれだけの手練れぞろいだ、死人は出ないだろう。
唯一不安だったフォなんとかさんには、立派な防具を用意した。
気になる所はないが、しいて言うならニゲルが――おにぎりを切れたかどうかは知りたい。
「(ご安心ください、負傷者はおりません。おにぎりに付いても絶賛稼働中です)」
ふぅー。
一安心だけど、じゃあ〝全員がおにぎりに伸されて終わり〟って言う、五百乃大角の筋書き通りか。
「そりゃ、なによりだけど」
このまま天狗との一騎討ちっていう、大勝負をせずに終わらせたら――そうとうな尻すぼみだ。
どんな祭りにも、多少の手順と辻褄ってものがある。
§
「しかし冒険者筆頭の姫さんはじめ、勇者(書道初段)に一本角の鬼に、ガムラン最高LVの女将さん。そうそうたる面々が、手も足も出なかったかー」
ちょっと前にノヴァドに仕立ててもらった胸当ての、色を変えて装備した。
その裏には『烏』の字を入れて強化したし――
森で拾ったボロボロの兜を直して、やっぱり裏側に『天』の字を入れたし――
手甲は蟹の鋏みたいな形、高下駄は歯を二本にして、それぞれ新しくした。
ぶわさっ――全身を迅雷式隠れ蓑で包み、顔を目印である〝眼を描いた黒頭巾〟で覆い隠す。
烏天狗の、いくさ装束の完成だ。
「(おい迅雷。これはなかなか格好良いんじゃねぇか?)」
「(はい。先ほど様子を見に来たレイダやリオレイニアは、なにやら異論があるようでしたが。とても素敵と言わざるを得ないでしょう。戦国の世の歌舞伎武者たちに、決して引けを取っていません)」
だっろぉーぅ。特にこの蟹挟みは、なかなか良いぞ。
手首を引いてカチャカチャと、鋏を閉じてみた。
錫杖や刀をコイツにも、持たせておけば――
〝夕凪〟モードに変えなくても、次の刀をつかめる。
ウィィィィィィン――――♪
お? 魔法をつかう要領でMPをつかうと、鋏がクルクル回りやがる!
格好良い、じつに格好良い♪
寝起きにかり出されたときには、どうするかと思ったけど。
こうひと揃え着込んじまうと、やる気がみなぎらないでもない。
「そういや結局、オルコトリアでも勝てなかったか?」
「(はい――おにぎりAPIとの接続が可能になりましたので、キルカメラ映像を再生できます)」
ヴォォォン♪
画面の中に舞台があらわれた。
目のまえに角を光らせた、鬼の娘がいる。
「こりゃなんだ?」
「(おにぎりが見たものを、振りかえり見ています)」
そりゃ、便利なもんだなー。
ブゥォォォンッ――――――――パッ!!!
長大な剣を振り切らないうちに、うち捨て――
取り出される青い刀――小太刀か!?
迫る、青い切っさき。
どこまでも伸びる青色が、おにぎりの首に突き刺さる――はずが。
景色が遠のいていく。
これはおにぎりが鬼から、距離をとっているのか?
けどソレにしちゃ変だぞ!?
切っさきが――離れていかない。
「(はい、オルコトリアの放つ突きに対して、寸分のズレなく引き込みました)」
引き込んだだぁ?
「(はい。この後の動きを、よく見てください)」
画面の中。
急激に遠のく景色。
鬼の驚愕の表情。
手元にちいさく見え隠れしているのは、黄緑色のおにぎりの手か?
景色が下方向へ去って行く。
逆に近づいてくるのは、鬼の稲光る一本角。
「まさか突き込まれた刀ぁ、つかんで引っ張ったのか?」
画面がひっくり返り、逆さまになった鬼の顔は青ざめていた。
ふぉん♪
『第一戦目/オルコトリアVSおにぎり 3分02秒
頭突きからの一本背負い→逆腕ひしぎ』
なんだぁ、逆腕ひじきてぇのわぁ?
「(イオノファラーが所有するライブラリーより示唆された、相手を抵抗できなくする体術のようです)」
捕縛の術か。
いくさ場じゃつかえねぇが、試合なら有りだな。
ふぉん♪
『第二戦目/コッヘル夫人VSおにぎり 2分14秒
木さじ強奪からの殴打→逆腕ひしぎ』
ひでぇ、おなじ角度で殴り返されてやがる。
「怪我はないだろうな」
「(はい。仮にもLV70ちかいので、この程度で怪我を負うことはありません)」
なら良いけど――強ぇな〝逆ひじき〟。
「(〝逆腕ひしぎ〟です)」
ふぉん♪
『第三戦目/リカルル・リ・コントゥルVSおにぎり 0分36秒
狐火散らし(正拳突き)からのフランケンシュタイナー→四の字固め」』
あー、狐火のあとに、なんかやろうとしてたみたいだけど。
ぴょっこんぱっきょん飛び跳ねられて、ひっくり返されちまったなー。
「(怪我は――)(――舞台に仕掛けがあるので、見た目ほどの衝撃はありません)」
あれか、あのかたくなった餅みたいなヤツ。
「(はい。超硬質エラストマー製の衝撃吸収材です)」
舞台の一枚岩の下に、そんなのを敷き詰めさせられたっけ。
ふぉん♪
『第四戦目/フォチャカVSおにぎり 7分59秒
灼熱魔法返しからのジャイアントスイング→リングアウトKO」』
魔法杖を奪われて、外の地面に放り投げられたけど大丈夫か?
「(はい、シガミー……カラテェー作成の一式防具は、擦り傷ひとつ負わせませんでした)」
よし、なら良いだろ。
ふぉん♪
『第五戦目/ニゲルVSおにぎり 1分02秒
足払いからのウラカン・ラナ・インベルティダ→エビ固め」』
さて、ニゲル戦。
最初の踏み込みで、腕を切られるおにぎり。
五百乃大角と一緒に作った本式のシシガニャン一号でも、あっさり切られてるぞ。
シシガニャンの蓋が開いちまうとおにぎりは、また歩き方から教えなきゃならないんじゃ――!?
「――切らレた瞬間に、切断部分ヲ手でキュッと塞いだようデす――)
姫さんに使った捕縛術に似てるけど、いきおいありすぎない?
ニゲル、本当に死んでないよな?
「――はイ、双方ともに擦り傷ひとつありマせん――」
「そろそろいいかしらぁー?」
なんと、更衣室のついたての奥から出てきたのは、まさかのオルコトリアさん。
「まったく、あの面子で手も足も出ないなんてまったく!」
あれ? お怒りのご様子だけど、なんか――憑きものが落ちたって言うか。
「装備はソレで大丈夫? 私の長剣貸そうか? たぶん長剣が一番可能性があるかも」
あ――れ?
届かなかった自分の武器を、薦めてきたぞ。
鬼娘の眼差しはまっすぐ、ぼくを射貫いている。
それは、敗者が投げやりにみせる表情ではない。
「そうねぇ。空を飛べるフッカちゃんが一番良い所までいきましたけれど、魔法のたぐいが一切効かないんですものねぇー」
続いて出てきたのは、リカルル。
だから、迅雷が耳栓越しに切り替えたのか。
「カラテェーちゃんの装備のおかげで怪我ひとつしなかったわ、ありがとう」
姫さまのうしろから、顔色が良くなった女のひとが顔を出した。
ああ〝フッカちゃん〟てのは、〝フォなんとかさん〟のことか。
それなら言いやすくて良いな。
「(ふぅ、負けられない雰囲気になっちまった)」
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