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2:カブキーフェスタへの道

227:ギルド住まいの聖女(研修中)、剣のさび

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「ああもう本当ほんとうにっ、ヒ-ノモトーこくはこれだから――――!」
 リオレイニアが立ちあがった。
 かとおもうと、へなへなとまたくずれ落ちる。

「……ど、道理どうりでカラテェーくんに会いに、奥方おくがたさまが乗りこんでくるわけですね。やっと合点がてんがいきました――はぁぁぁぁ」
 仮面かめんごとひたいをおさえ……途方とほうに暮れている?

「あのーう、コレでも足りないなら、本格的ほんかくてき素材そざいから吟味ぎんみしないといけなくて、場合ばあいによっては――一週間いっしゅうかんくらいかかっちゃうんだけど」
 そんなに時間じかんを掛けたら、とうぜん明日あした、いやもう本日ほんじつ最終さいしゅうイベントも終わってる。

「って言うことらしいのでぇー、今日きょうところはコレでご満足願まんぞくねがえないかしらぁ♪ あたくしさまと、リオ子ちゃんのなかじゃない? ねぇぇーん♡」
 べつに正式せいしき調達ちょうたつクエストとして受けたわけじゃないから、そこまで五百乃大角いおのはらに取りなしてもらう言われも必要ひつようも無いけど、ひとまず言わせておく。
 いちおうは美の女神めがみ関係者かんけいしゃである天狗てんぐさまの弟子でしってことで、無関係むかんけいでもない――ことになってるし。

「はぁぁぁぁ――――ぎゃくにこんな……〝伯爵家はくしゃくけ家宝かほうクラス〟以上の物を・・・・・一週間で作れる・・・・・・・と――――ぷっ、うふうふふ、くすくすくす?」
 椅子いすに這いあがり、腰掛こしかけるリオレイニア。
 うなだれた――おんななかおんな口元くちもとに、いかりとわらいとあきらめが入りじった、奇妙きみょう表情ひょうじょうがうかぶ。

 その様子ようすをうかがいながら――こっそりと黒板こくばん画面がめんぬすみ見る伯爵はくしゃく令嬢れいじょう
「へぇーっ♪ 本当ほんとうに、おおかあさま……名代みょうだい一張羅いっちょうら匹敵ひってきしかねない代物しろものですわねぇー」
 その両隣りょうはじから堂々どうどうぬすみ見る、女将おかみさんと魔術師まじゅつし女性じょせい
「あはははっはっ――――こりゃ、たまげるしかないねっ♪」
「あわわわわわっはわっ――――!?」

規格外きかくがいだけど、よろしいのではなくって? 発注通オーダーどおりに〝素敵すてき最高さいこう装備そうび〟にしあがっていますし♪」
 一式装備いっしきそうびかかえたひめさんが、目をまるくしたままの女性じょせいに押しつける。

「あのあの、こんな難度なんどSSSトリプルエスダンジョンのクリア報酬ボーナスみたいな宝物たからものは、ちょっと――」
 尻込しりごみする女性じょせい
 くるんと、振りかえるリカルル。
「コッヘル夫人ふじん、ウチのものはこんな様子ようすですので――もうわけありませんけれど、お着替きがえおねがいできますか?」

「はいよっ、まかせときな♪」
 おいでと手招てまねきする女将おかみさん。
 イヤイヤと、くびを振る女性じょせい

 いいからは・や・く、おいで――?
 休憩室きゅうけいしつへ連れて行かれる女性じょせいの「こぉまぁーりぃーま――――!?」というなさけないこえは――バタン!
 ドアにさえぎられた。

「じゃあ、ふく出来できは、あれで良かったの?」
 おそるおそる聞いてみた。
「ええ、カラテェー♪ アナタはとても素晴すばらしい仕事しごとをなさいましたわ」

「「「ぃやったぁー♪」」」
 よろこぶぼくと女神めがみ青年せいねん

「レーニア、わたくし個人会計こじんかいけいからアナタの裁量さいりょうで――正当せいとう報酬ほうしゅうを、はらってあげて♪」
 ついさっきまでの呆然ぼうぜんとした態度たいどや、主従逆転しゅじゅうぎゃくてんした立場たちばは消え――「かしこまりました、お嬢様じょうさま
 こしを落とし片足かたあしを引く――元侍女長もとじじょちょう

「(おい、あれでよかったみたいだぞ?)」
「(そうみたいね。ココから一番近いちばんちか火山かざんに有るダンジョンに、いどまなくて済んだわー、あぶないあぶない)」
 ダンジョンって魔物まものの巣だろ――なんかそれ、面白おもしろそうだなー♪

 カッカッカッカッコツーン!
 鳴りひびく、伯爵はくしゃく令嬢れいじょう靴音くつおと

「それにしてもニゲルは、〝呪いを切れる・・・・・・〟んですのね?」
「えーっと、ぼくにもよくわからないんだけどさ、出来できるものは出来できるんだから、仕方しかたが無いっていうかさ、有るものは使つかうっていうかさ――――!?」
 かべに、追いつめられる青年せいけん

のろいに有効ゆうこうと知っていたわたくしでさえ……狐火きつねび使つかうのを躊躇ちゅうちょしましたのに」
 狐火きつねびなぁ。のろいをはらい燃やし尽くすには、破邪顕正はじゃけんしょう剣並けんなみにうってつけだ。
 その専門家せんもんかである奥方おくがたさまから、使つかかたならったんだろう。

「じゃあ、あらためて、そのびたヤツ――ちょっとかしてみて?」
 ほそい手が伸びる。
「いやこれは、ぼくにしか使つかえないから――ドガタンゴトン!」
 器用きようにも、背後はいごたなをうしろあしで駆けあがるニゲル。
ぼくにしか使つかえない――安物やすものけん――なんて有るはずがないでしょうがっ!?」
 たなのぼった青年せいねんあしを、ギュッとつねる。

「痛ってっ!」
 こしかがめたところに、電光石火でんこうせっか平手打ちペチーン
「痛ったっ!」
 けんを持つ手を、はたき落とされ――

 落ちてきたけんつかを――がしり!?
 驚愕きょうがく伯爵令嬢はくしゃくれいじょう
 けんのあつかいではみぎに出るものが――(あまり)居ない彼女かのじょが、けんを落とした。

 ゴズズン!
 手をすり抜けたけんは、かなり頑丈がんじょうつくったはずのゆかに、ヒビを入れた。

 そりゃそうだ、なんせありゃ金剛力パワーアシストでも持ちあげるのが精一杯せいいっぱいの、代物しろものだ。
 生身なまみ金剛力こんごうりきをつかうオルコトリアでも、振りまわせるかはあやしい。
 とうぜん、細腕ほそうでひめさんには持ちあげることすら、出来できないだろう。

「だからいっただろ? あぶないよっ!」
 たなから飛びおりた青年せいねんが、指先ゆびさきでつまむように、軽々かるがるけんを持ちあげる。

「なによあれ――まるでノヴァド工房長こうぼうちょうの、鉄塊てっかいハンマーみたいじゃーないのっ……おっもしろいわねっ……あぶなぁーいけどっ♪」
 いつだかニゲルが、工房長こうぼうちょう腕相撲うでずもういどんだときのことをおもいだす。
「(ニゲルは、工房長こうぼうちょうとかオルコトリアみたいに、怪力かいりきわけじゃないよ)」

「そういえば、カラテェーやシガミーも言ってましたわね――ニゲルが相当そうとう手練てだれだって」
 む? ニゲル最強説さいきょうせつみとめられるのは、うれしいけど――まずい。
 がしり――スッ。
 テーブルうえ御神体ごしんたいをつかんで、みみちかづけた。
 これで迅雷ジンライ無しでも、内緒話おんせいつうわくらいできる。

 ザギザギザギギィィィン――――!
「これ、びがスゴイだろ? どれだけいでもスグ、こうなっちゃうんだよね。たぶんこの〝のろみにひどさび〟でたぶん、呪いを弾いてる・・・・・・・んだと……おもうよ?」
 目がおよいでる。くるしい言いわけだ。
 っていうかニゲルは本当ほんとうに、聖剣せいけん鑑定結果かんていけっかを知らないっぽいな。

「(あのけんが、かつてひめさんが執着しゅうちゃくした〝聖剣せいけんヴォルト〟だと知れたら、ひめさんはどうおもう?)」
「どうおもうって、どういうコトよ……ひそひそ……迅雷ジンライからぁ、けんかんする報告ほうこくわぁ受けてぇるぅけぇどー?」
「(かつてリカルルがとどかなかったところに、ニゲルはすでに到達とうたつしてることになるって言ってるんだよ)」

「え!? そんなの――あのプライドがたかい、おひめちゃんのことだもの――ニゲルをライバル視するに決まってるじゃない! ……ひそひそ」
「(だから大変たいへんだって、言ってるんだよ。ニゲル専用恋愛せんようれんあいなんたらとしちゃ――ここが分かれ目・・・・だろうがっ!)」

 シャァァァァァァァァァッ――――この緊迫きんぱくしたときに、なんおとだ!?
「あっ!」
 いけねぇ――舞台側ぶたいがわなにもないかべを見る!

 そこには、丸いあとが付いていて。
 そこからおとが、聞こえてくる!

「(おい、まさか迅雷ジンライ――!?)」
 かべがスコポンとひらいて、飛びこんできたのは――
 しろぬのを巻いた小柄こがらひとみたいなのと――子供こどもだった。
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