滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

２：カブキーフェスタへの道

２１９：ギルド住まいの聖女（研修中）、使い捨てシシガニャン

「五百乃大角いおのはら――？」
　光ひかる魔法具まほうぐをつくるなら、「こっち来い」と言うもんだから。

　言われたとおりに、なにもない通路つうろの行きどまりでまってると――スコポン！
　乾かわいた音おとがして、壁かべに穴あなが空いた。
　中なかを見ると、えらく長い階段かいだんが下したへつづいてる。

　ここは二号店にごうてんが有る地下五階ちかごかいのさらに、ひとつ下した。
　来てはみたけど――何なにもないな。

　ガランとした少すこし広ひろめの部屋へや。
　高たかさも幅はばや奥行おくゆきと同おなじくらいで、真四角ましかくだ。
　板張いたばりの床ゆかを踏むと、きしきしと鳴る。

　とおくの壁かべに、いつのまにか穴あなが空いてて。
　きしきし――きしきし――ん？
　床ゆかを鳴らして、なんかが歩あるいてくる。

「鬼おにっ娘ちゃんのぉ、ご相談そうだんにわぁー、あーんまり乗れてあげられなかったから――せめて間にあわせるわよぉー、予選開始よせんかいしまでにわぁ～」
　それは――真っ白しろくて。
「なにをだ？」
　それは――目鼻立めはなだちがなくて。
「晴れの舞台ぶたいに、決まってるでしょ」
　それは――五百乃大角いおのはら声ごえでしゃべる。
「おまえは、五百乃大角いおのはらか？」
　それは――三匹目さんびきめの強化服シシガニャンだった。

「こぉんなナイスバデーわぁ、美の女神めがみであらせられちゃう、あたくしさまに決まってるでしょうがっ！」
　とすんと軽かるく、四股しこを踏む三匹目さんびきめ。
　みればたしかに、ほんの少すこし下したっぱらが出ている気もする。
「たしかに、五百乃大角おまえさまだな」
「（美の女神とは――？・）」
　言ってやるな迅雷ジンライ。

「そーでしょぉう？　わっかればぁー、いーのよっ♪」
　どぉすぅこぉぉーい！
　大股おおまたを開ひらいて膝ひざを床よかに打ちつける、美の女神めがみ。

　ぎっしぎしぎしっ♪
　床ゆかが鳴るだけで、ぽきゅぽきゅとした音おとが聞こえない。
　これなら、色いろさえ黒くろかったら――夜営やえいや夜襲やしゅうにも使つかえるな。

　ふぉん♪
『ヒント＞使い捨て汎用作業服試作一号』
「つかいすて？」
　真っ白しろい毛皮けがわをみつめる。

「（はい。シシガニャンの強靱きょうじんな毛皮けがわを作成さくせいするのには、希少素材レアそざいを使用しようするので・――）」
「――節約せつやくってわけよ。どーぞ、触さわってみてちょーだい♪」
　すっ――差しだされた白しろい腕うでをつかむ。
「こりゃ、紙かみか？」
「（正解せいかいです。プロジェクションＢＯＴボット……浮かぶ玉たまや、御神体ごしんたいすがたでは、物ものをつくるのに支障ししょうが出るので、急遽きゅうきょ、試作しさくしました・）」

「ソレ……紙かみなら、いくらでも作つくれるのか？」
「よくぞ聞いてくれましたねぇ。なぁんと、木の椅子いす一個分いっこぶんの木材もくざいでぇぇぇぇー――――何個なんこつくれるのぉ？」
　わからねぇのかよ。

　きしきしきし――それは。
　きしきしきし――とても。
　きしきしきし――しずかな音おとと。
　きしきしきし――うごき。
　きゅきゅきゅきゅ――ぴしりっ♪
　とおくに空いてた穴あなから――紙製かみせいのシシガニャンが。
「（約やく４体たいつくれます・）」
　〝木の椅子いす一個分いっこぶん〟、出てきた。

　こりゃ――沢山たくさんだな。
　仕事しごとを手伝てつだってもらえるなら、便利べんりそうだ。

　それにしても、ここは、かなり明あかるい。
「それで、ここはなんだ？」
「ここわねぇ、自動工作機械プロダクトマシン……無人工房併設むじんこうぼうへいせつのＸＲエックスアール対応たいおう……作業場さぎょうばみたいなぁ物ものよ」
　なるほど。上うえの二号店裏にごうてんうらじゃ、とても仕事しごとにならないからな。
　ここは、ギルドを建てたときには無かった場所ばしょだ。

　天井うえをみれば継ぎ目はなく、一面いちめんがあかるく光ひかってる。
　……きゅぽきゅぽきゅぽきゅ――――♪
　他ほかの階かいの天井てんじょうには、迅雷ジンライがつくった光ひかる魔法具まほうぐを、いくつも張りつけた。
　ぽきゅぽきゅ――――ききききぃぃぃぃぃっ♪
　せっかく静しずかに、仕事しごとができると思おもったのに。

　ぼがぁん――――ごろごろろろっ♪
　きしきしきしっ――――ぽころろっ♪
　おくれて来た一号いちごうが勢いきおいあまって、使つかい捨てたちをなぎ倒たおした。

「うるせえ」
「にゃみゃうー？」
　細こまかい仕事しごとをするときは、おまえ邪魔じゃまじゃね？
　たぶん今いまからする作業さぎょうは、そうとう細こまかい。

　わらわらと入り乱みだれる、シシガニャンたち。
「で、改あらためて聞くが、〝使つかい捨て〟にはぜんぶ、五百乃大角おまえさまが入はいってるのか？」
「いーえ。この一体いったいだけよ。ぜんぶ動うごかすことも出来できなくもないけどねっ――きゃはぁ♪・」
　あの、他ほかのをひっくり返かえして遊あそんでる下っ腹したっぱらが、五百乃大角いおのはらで――

「（私わたしが居なくても指示しじをだせば、女神像めがみぞうが操作そうさしてくれます・）」
　ほかのは迅雷ジンライの指示さしずで、女神像めがみぞうが動うごかしていると。ふぅん。

　きしきしきしきしきしきしきしきし。
　真っ白しろい作業服つかいすてが、いそがしく走はしり始はじめた。
　なんか箱はことか棒ぼうとか布ぬのみたいのを、どこかから集あつめてきている。
「女神像経由めがみぞうけいゆで自律じりつさせられるのは、この作業場さぎょうばだけだけどねぇーん」

「紙かみのやつらは、ぽきゅぽきゅ音おとがしないな？」
　それに目も口くちもない……耳みみは付いてるけど。
「（はい。ＡＯＳエーオーエスによる安全音モーションノートも解除かいじょされますし、プロダクトアームのサーボ音おんもしませんので・」
　わからんが、アーティファクトじゃないっぽい。

「機械腕かいなじゃないなら、何なにで動うごいてるんだ？」
「それねー、この作業場さぎょうばを取りかこんでる……えっと、ぺらぺらぺら……あった――計けい４０９，６００よんせんとんで，０００，０００きゅうじゅうろくおく個この振動子しんどうしを配列はいれつした４Ｄディー超音波ちょうおんぱフェーズドアレイで……ぺらぺらり……動うごいてるわね、えへん♪」
　わからんが。
　悪魔あくまの所業しょぎょう……神々かみがみの叡知えいちによるものだろう。
　五百乃大角いおのはらが攻略本とらのまきをめくって、ちゃんと使つかえりゃそれでいい。

「さぁ時間じかんがないから急いそいで作つくるぅわぁよぉう。まぁるで昼日中ひるまのよーに明あかるく照らすぅ魔法具まほうぐちゃんをっさぁー♪」
　猫ねこの魔物まものみたいなのが走はしりまわる作業場さぎょうばに、ひっくり返かえった馬車ばしゃみたいなのが出来上できあがっていく。

　　　§

「そういやさぁー、シガミーわぁさぁー、いまどんなスキル持ってんの？　ぐぅうぇへへっへ♡」
　とんてんかんてん、とんてんかんてん♪

　ひっくりかえった馬車ばしゃに、恐おそろしく細こまかい装飾そうしょくのついた板いたっぺらを何枚なんまいも張りつけていた使い捨ていおのはらが、そんなことを聞いてきた。
　そういや、ぜんぶ迅雷ジンライまかせで、まるで確認かくにんしてなかったな。

　ふぉふぉふぉふぉふぉふぉぉぉん♪
『シガミー　ＬＶ：１００　☆：３
　薬草師★★★★★　／状態異常無効／生産数最大／女神に加護／七天抜刀根術免許皆伝／星間陸路開拓者
　追加スキル　／遅延回収／自動回収／即死回避／自動回復／体力増強／上級鑑定／自爆耐性／上級解体／スキル隠蔽
　　　　　　　／ＬＶ詐称／人名詐称／石窟加工／炸薬生成／初級造形／木工彫刻／石礫破砕／防具修復／高速修復／上級修復
　　　　　　　／頭部防具強化／防具筋力強化付与／防具体力強化付与／防具攻撃力強化付与／防具知恵強化付与／防具防御力付与／幸運効果付与／幸運効果永続／幸運効果増大／幸運倍化
　　　　　　　／幸運リミットブレイク／強運行使／防具幸運強化付与／耐性強化付与／耐性強化永続／耐性強化／耐性倍化／伝説の職人／不壊付与／不壊永続
　　　　　　　／植物図鑑／武器修復／研ぎ師／切れ味持続／自動修復（小）付与／収穫量倍化／基礎工学／基礎光学／金属加工／合金錬成
　　　　　　　／天衣無縫／初級位相幾何学／女神像機能解放／女神像機能呼出／先端工学概論／先端光学概論／撮像転写制限解除／システム猶予／投げ縄／ロープワーク――――――――――――』

　一覧リストが書ききれなくなるたびに、表示枠カードがどんどん大おおきくなっていく。
　逆ぎゃくに文字もじは小ちいさくなっていき、いつまでも終わらなくなった。

　ふぉふぉふぉふぉぉぉん♪
『――――――／捕縛術／水泳上達／体温維持／遠泳術／肺活量上昇／潜水術／食物転化／分離倍化／急速熟成／超抽出
　　　　　　　／高速調理／さじ加減／基礎化学／有機化学／医食同源／かくはん王／生活の知恵／試薬調合／分析術／解析指南
　　　　　　　／超味覚／サバイバルＬＶ３／生存確率上昇／濾過術／分離術／高速結晶化／状態変化（大）／調理術
　――所属：シガミー御一行様』

「これさぁ冒険者ぼうけんしゃカードさぁ、ちゃぁんと偽装ぎそうしてるんでしょぉねぇー？」
　女神めがみさまが、そんな細こまかな気づかいを見せるほどには、沢山たくさんのスキルを持ってた。