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2:カブキーフェスタへの道

217:ギルド住まいの聖女(研修中)、通路ブックメーカー

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「シガミーの物置小屋ものおきごやくらいおっきくて、馬車ばしゃみたいにはしるゴーレムも居たけど――」
 それは、すごく便利べんりそうだな。

「――それにもやっぱり、おなじかおが付いてたわね……ふたつも」
 それは、どれだけ便利べんりだとしても、すごくいやだな。

「よくもこんなデザインを、王様おうさまゆるしてるわね……いえ、それ以前いぜんにギ術開発部じゅつかいはつぶのおえらいさんが止めるのが普通ふつうよね。まあ、あたくしさまには、す・べ・て・お見通みとおしなんだぁけどねぇー、ふふん
 なんだぁ、もったいぶりやがって。
 それに、おえらいさんって、ミャニラだろ――?
 モサモサ神官しんかんどもの、見た目にはまだ可愛げ・・・があった。

「ひょっとして…………ごぞんじ、なのですか?」
「まぁねぇん――えっへん♪」
 かくしてないで、とっととおしえろ。

「どういうわけで、こんなおそろしいものつくることを、ゆるしてるんだい?」
「それわぁ、あたくしさまのくちからわぁ言えませぇん。なぜなら恋愛相談れんあいそうだん契約けいやくにわぁ守秘義務しゅひぎむがぁあるかるぁーです――フフン♪」
 それを言ったら、青年ニゲルがらみ・・・だって白状はくじょうしてるも同然どうぜんだけどな。
 オルコのはなしじゃ、ゴーレムを相当嫌そうとうきらってるみたいだし。

恋愛れんあい……相談そうだん――?」
 ピクリとかたをふるわせる、あお麗鬼おに

「じゃあ、そっちは聞かないけど、さっきの頓知アイデアがどうこうってのは、なんなんでしょうか?」
 くさっても五百乃大角いおのはらは、女神めがみだからな。
 シガミーでも無けりゃ、うやまっとく。
「それなんだけどっさー、おにぎりちゃんとたたかいたいひとつのって、参加費さんかひ支払しはらってもらうのわぁ、どおかしらっ? そして、勝ったひとが総取そうどりって寸法すんぽう~よぉん♪」

「それはこまる。せっかく見つけた〝いどむにあたいする御仁ごじんとの勝負しょうぶ〟によこやりを入れようというのなら、ソレがたとえイオノファラーさまでも、容赦ようしゃ出来できかねます――ごきり♪」
 あーもう、物騒ぶっそうなヤツだな。かみさん相手あいてほねをならすなって。

「ち、ちちちち、ちがうのよ。けっして、おにっ子ちゃんの決闘けっとう邪魔じゃましようって言うわけじゃなくってねっ
 ふぉん♪
『イオノ>こら、アンタたち。あたくしさまをお助けしなさい!
     鬼っ子ちゃんの角が、ビリビリ光ってて怖いんだけど?』

「お師匠ししょうさまから聞いてるけど、女神めがみさまの御心みこころにしたがうって言ってたよ」
「なにっ!? て、天狗殿てんぐどのわぁー、ほかに、な、なにかいってなかったか?」
「いや、べつに」
 かたを落とし、一本角つののビリビリが消える。

「オルコトリアさんはさ、本気ほんきのお師匠ししょうさまと一騎討いっきうちちさえできれば、文句もんくはないんだよね?」
「それはそうだけど……ごにょごにょ」

「そう、そうなのっ! おまつりの出しものにしようって魂胆わけじゃなくってね、えっとね……」
 目をおよがすな。コッチみんな。
「にゃやーぅ?」
 おにぎりも、ときどきくちをはさんでるけど、だれかの真似まねしかえしてる・・・・・・だけだ。

午前ごぜんの部わねっ、みんなでおにぎりちゃんにいどんでもらってねっ、たおすかもしくはおにぎりちゃんに参った・・・させたらねっ、午後ごごの部に勝ちすすめるのよねっ!」

「午~後~の~部~ぅ?」
 ビキバキッ――ヴァチッ!
 雷光つのに照らされる、通路つうろ
「そうっ、午後ごご本戦ほんせんでわぁ、ちゃあんといとしの天狗テングさまと一騎討いっきうちをさせてあげるっ!」

「い、いとしの――!?」
 ぽふん――つのひかりが消えた。
「そうよ! その参加費用さんかひようをみこめば、一世一代いっせいちだいの晴れ舞台ぶたいにふさわしい決闘場けっとうじょう用意よういしてあげられるわ」
 やっと御神体かみさんくちが、まわってきたな。

「どれだけ大暴おおあばれしてもこわれない、すんごいのぉおー――この子たちに・・・・・・つくらせるわっ!」
 烏天狗ぼく一号おにぎりに――カシャ――『(Θ_<ばちーん♪)』
 〝浮かぶ玉なんたら〟が、片目かためを閉じてみせる。
 ギルド屋舎おくしゃなかに、むしは居ないだろうが?

「晴れの舞台ぶたい……い、いやいや、やっぱりダメだ! 決闘けっとう先客せんきゃくがいたら、まんいちということもかんがえられるわ」
「んー? おにぎりを切れるヤツ・・・・・なんて――ニゲル……さんくらいのもんだとおもうけどなー」
 つい、正直しょうじき感想かんそうがもれた。

「え? ニゲルが、あのさびたけんで!? ――ブッフフフッフフハハヒ♪」
 あれ? オルコトリアが、こういうことで他人ひと馬鹿ばかにするのは、めずらしいな。
 それに、こちとらおにぎりとほぼおな強化服ふくを着てたのに、現実げんじつなます切り・・・・・にされた。
 なんかちょっと――カチンと来ないでもないなー。

「じゃあ、ぼくは――ニゲル……さんに掛けようかな」
 画面がめんなかの、収納魔法具の中ファイリングシステム
 おおきな革袋かわぶくろに、シガミーの個人資産てもち
 その五分ごぶん一程度いちていどを、詰めこんだ。

 ヴッ――ゴッチャリン♪
 おにぎりのはらなかあずかかってる、オルコトリアの財布さいふばいくらいか。

「にゃみゃにゃぁ――♪」
 すぽん♪
 掛けきんくちはさむむ間もなく、おにぎりのはらおさまった。
 そして、くちからジジジジィィィ――ッと、吐き出されたのは――
 ニゲルがにぎりしめてた、『一日デート券』みたいな細長ほそながかみ

『最終日午前の部:掛け金 100,000パケタ
 投票 木さじ食堂所属/ニゲル』
 所属しょぞくが、木さじ食堂しょくどうになってるのは、早朝あさ仕込しこみの手伝てつだいはつづけているからかもしれない。

「あらぁん、いいわね、いいわぁねぇー♪ 勝敗予想しょうはいよそうの掛けきんも足せば、むこう一万年いちまんねんこわれない決戦場コロシアムがでぇーきぃーるぅーわぁー♪」
 ふぉん♪
『ヒント>コロシアム/円形の競技場』
 御前おまえさまは、一万年後いちまんねんご元気げんきはらを空かせてるんだろうなぁ……諸行無常しょぎょうむじょうとは。

「ふふ、これで賭けは成立せいりつだよ。ニゲル……さんに掛けるひとがすくなければ、結構けっこうなもうけも出るし♪」

「けどさ、カラテェーくんわぁさ、天狗てんぐさまに掛けないといけないんじゃなぁいのぉ?」
 は? そっか。烏天狗おれわぁ、天狗ししょうの弟子だったか――ややこしいにもほどがある。
 ひとりで何人分なんにんぶんやってんのか、わからなくなってくるな。

「いや、ぼくのかんだと、お師匠ししょうさまよりニゲルはつよい……かもしれないよ」
 ニゲルの実力ちから見誤みあやまってたのは、ぼくもおなじだけど、このさい鬼娘オルコをあおる。

「はぁぁぁぁっ!? わたしより、ましてや天狗殿てんぐどのよりニゲルのほうが、つよいっていうのっ?」
 ヴァチィ――!
 またひかりだすつの。まぶしい。

 ドガチャンッ――――♪
 おにふところから取りだされた、おおきな革袋かわぶくろ

「その掛け! 受けてあげようじゃないのっ!」
 よし、おにがまんまと乗ってきた。
「(シガミー)」
「(なんだ迅雷ジンライ?)」
「(ニゲルは最終日さいしゅうびにリカルルとのデートをひかえているので、決闘けっとう参加さんかしているひまはないのでは?)」
 あ、そうだった。

「(あーそれね、そーいうはなしならばわぁー大丈夫だいじょうぶよぉ。まかせてちょうだぁぁぁぁい♪)」
「(どう、大丈夫だいじょうぶなんだ?)」
「(おひめちゃんも、ぜったいに参加したがるから・・・・・・・・よ♪)」

「にゃみゃにゃぁ――♪」
 すぽん♪
 おに革袋かねも、おにぎりのはらおさまった。
 そして、くちからジジジジィィィ――ッと、吐き出されるのは――

『最終日午前の部:掛け金 累計124,703パケタ
 投票 ガムラン町ギルド支部職員/オルコトリア』
 やっぱりおなじ、細長ほそながかみだった。

ーーー
諸行無常/万物は流転し、一刻もとどまらないこと。仏教の基となる思想の一つ。俳句の初句のひとつ。
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