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2:カブキーフェスタへの道

211:ギルド住まいの聖女(研修中)、ニゲル会談

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「あ、あのねリカルルちゃん、これはその、あたくしさまたちもついさっき知ったのぉー!」
 リカルルのただならぬ剣幕けんまくに、テーブルのうえを……ちてちてとてちちと右往左往うおうさおうする御神体びのめがみ

「お代官様だいかんさま――ひらひらにっ!」
 おい五百乃大角いおのはら、おまえさまがなんとかしろ。
 この世、すべてのかみさんだろが。

「にゃみゃにゃご♪」
 一号おにぎり、おまえはダメだ。たのむからいまは、じっとしててくれ――ください。

「でもさ、ぼくほかくにから来たのは、知ってるだろ?」
 両手りょうてをさまよわせ、なんとか弁明べんめいしようとする、ヒーノモトー出身者しゅっしんしゃ

「いいえ――キッパリ」
 眉毛まゆげは、つり上がったままだ。
「ええー!? ガムランに最初さいしょに来たときに、ギルドでちゃんと説明せつめいしたよねぇ!?」
初耳はつみみです――キッパリ」
 あ、興味きょうみがまるでなかったんだな。

 ふぉん♪
『イオノ>冗談じゃなくて本当に、前途多難ぽい』
 たしかに。
 ふぉん♪
『>作戦を練り直す必要があります』
 迅雷おまえもなんか、かんがえてやれ。

「ニゲルはガムランから見て央都おうと反対側はんたいがわ隣国りんごくちかくの寒村かんそんから来たというはなしだったのでは?」
 見かねたリオレイニアが、たすぶねをだす。

「そう、それなんだけどさ、ぼくにはうまく説明せつめいできなかったから、最初さいしょまよいこんだ場所ばしょ出身しゅっしんってことにしたって説明せつめいしたよねぇー?」
まよいこんだ……シガミーは防壁ぼうへきちかくの岩場いわばに、ほうり出されていたのでしたかしら?」
 つり上がった眉毛まゆげが、コッチを向いた。

「そう、そうなのでごぜぇますわ。どうももとには、ココへつうじるでも空いているようでして、いやはやまったくもう、どうなってるんだか。なぁ、五百乃大角いおのはらさま?」
 おれ……ぼく……わたし……なんでもいいか。
 テーブルのうえ右往左往うおうさおうする御神体ごしんたいさまに、はなしを振ってやる。
 いつもの頓知とんちで、この場を見事みごとおさめてくれ女神様めがみさま

「ひゅっひゅひゅひゅー♪」
 口笛くちぶえ、吹けてねぇじゃねぇーか。
 おまえ、なに逃げようとしてんだ?
 神々かみがみ知恵ちえは、どこ行った!?

 ふぉん♪
『イオノ>うり切れ中です。いろいろ立て込みすぎてて、
     考えておくのを忘れました』
 ふぉん♪
『>この世界、少なくともトッカータ大陸における死生観から、
  あまり逸脱しない範囲で、辻褄を合わせるべきです』

 ふぉん♪
『イオノ>そうね。死んだ魂をこの地で蘇らせたって言うのは、
     言わない方が良いのは素人の私でもわかるわ』
 はぁ? 素人しろうとってなんのだ?

 ふぉん♪
『イオノ>何って、宗教よ宗教。
     こちとら一般教養の授業で習ったこと以外は、
     てんで門外漢ですから……漢じゃないけど』
 はぁ? なに言ってやがる?
 かりにも御前様おまえさまは、〝女神様かみさんさん〟だろうが?

 ふぉん♪
『イオノ>そういわれても、知らない物は知らないし、
     シガミーは前世で、お坊さんだったんでしょ!
     絶対あたくしさまよりくわしいわ』
 迅雷ジンライが言ってた〝死生観いきしに〟ならわからんでもないが。
 じゃあ、どう説明せつめいするんだ?

 ふぉん♪
『>シガミーの〝大穴〟という表現は、
  そこそこ的を射た発言では?』
 ふぉん♪
『イオノ>じゃあ、それでいきましょう』

「あのね、いままだ調査中ちょうさちゅうではあるのだけどさぁー、ヒ-ノモトーこくからの転移陣てんいじんのようなものが、この世界せかいにはあるみたいなのねぇん」
 とてちてちて。

転移陣てんいじんですか……イオノファラーさまでしたらヒ-ノモトーこく場所ばしょが、おわかりになるのではないのですか?」
 じろり――射すくめられた五百乃大角いおのはらが、うしろに転んだごろん
 ひめさんのまなじりは、つり上がったままだ。

 仰向あおむけにころんで天井てんじょう見上みあげる、鏡餅かがみもちのような体型たいけい
 ごろん――一回転いっかいてんして――すとん。
 うまいこと立ちなおった五百乃大角いおのはらが、くちをひらく。

「あれよあれ、えっと……そう、女神像めがみぞうよ! ヒ-ノモトーこくには女神像がない・・・・・・から、向こうの様子ようすなにひとつ、つかめていない……のよ?」
 目をおよがすな。

「ふぅ……〝聖剣切りヴォルトの閃光カッター入隊試験にゅうたいしけんときにギルド規定きてい調査ちょうさは行われているはずです。たしか、央都騎士団おうときしだんからの正式せいしき推薦状すいせんじょう添付てんぷされていたと記憶きおくしています」
 リオがはなしを、つなげてくれる。

騎士団きしだんからの推薦状すいせんじょう? ならそれなりの地位ちいに居たはずで、ソレがなんでまたこんな辺境へんきょうに……あやしい」
 じろろり――?
 べつ疑惑ぎわくが持ちあがりつつあるのか、さらに吊りあがる姫さんリカルルの目。

「そ、そのへんはなしは、ちょっと勘弁かんべんしてほしいかな――央都おうとでは色々酷いろいろひどい目にあって、心機一転しんきいってん、このまちに来たんだよ!」
 涙目なみだのニゲル青年せいねん

 かお見合みあわせるひめ侍女じじょ
 ニゲルのひととなりを、いぶかしんでいるわけではあるまい。
 なにより、あの女将おかみもとはたらいているのだ。
 たとえくさっていたとしても、そんな性根しょうねはとっくに、たたきなおされているだろう。

「ならばシガミーがこのまちに来たとき、ニゲルなら同郷どうきょうの出だと、すぐにわかったはずでは?」
 じろり――リオレイニアの仮面越かめんごしの視線しせんが、饅頭屋店主まんじゅうやてんしゅに突き刺さる。

「つ、つくる食べものとかかたなとかさ、なんか元居もといたくにと似てるなーとおもったけどさ、それがまさかおなくにだとは、気づかなかったんだよ」
 耳栓渡みみせんわたしときゃ良かったんじゃねーか?
 ニゲルの言葉ことばひとつで、はなしがどうにでもころぶぞ?

「シガミーの食べもの? 串揚くしあげとオスーシ?」
 なりゆきを見守みまっていた子供レイダが、おそるおそるくちをはさんできた。

「そうだな、材料ざいりょうそろわなかったからいもこそ使つかったけど――本生もとうまれが寿司すしもわからねぇわけはねぇやな……っと、わからないなけはないのでななくて――しゃらぁ」
 気になってたことを、直接聞ちょくせつきく。
 とにかく、かくさなきゃならないのは〝輪廻転生りんねてんせい〟のくだりだ。
 それ以外いがいは、みんなにも聞いてもらえば、説明せつめい手間てまもはぶける。

「えー? 箱詰はこづめで、つけあわせの生姜ガリ唐揚からあげがはいってないと、お寿司すしって言わないよね?」
 ガリってのはなんでぇい?
 ふぉん♪
『>甘酢に漬けた生姜です』

 カラアゲてのは?
 ふぉん♪
『>油で揚げた、鶏肉です』
 うまそうだな。

 ふぉん♪
『イオノ>たぶん、スーパーのお惣菜コーナーの、
     お寿司しか食べたことが無かったのね。
     それとシガミーが居た頃のお寿司は、
     とんでもなく大きかったのよ』
 どういうこった?
 ふぉん♪
『>いまは郷土色の一種と、お考えください』

「――それは、たしかに聞いたことがねぇぜ。もとひろいからな……ないですわね――しゃらぁ」
「それでは、ヒ-ノモトーこくという名称めいしょうについては?」
 たしかにな。これも死んだ時代じだい……つまり輪廻転生りんねてんせいかかわることだ。

「ソレについてわぁ、わたくしさまがおしえてさしあげますわぁー」
 注目ちゅうもくをあつめる五百乃大角いおのはら

「ニゲルくんが居たところはさぁ、シガミーとはまたべつの〝なまり〟がつよくてさぁ。おなもとでも、いまいち言葉ことばつうじじないみたいなのよーん?」
 テーブルじょう御神体めがみを、そっと手に持つ給仕長リオレイニア

なまり……シガミーの〝ござる〟とかでしょうか?」
「ござるっ♪」
「ござるコォン♪」
「ござるミャ♪」

「そうだね。ぼくの居たところでは、〝ござる〟とか〝かたじけない〟って使つかひとはいなかったよ?」
 なまりだって言うなら、むしろ猪蟹こっちなまってるんだろうが……よくわからん。

「ふう、まったく。ヒ-ノモトーこくというのは――まったく」
 目を閉じ、かんがえこむひめさん。
「はい、これは央都関係者おうとかんけいしゃに知られると、こまったことになりかねません」
 おなじくかたわらに立ち、かんがえこむ給仕長リオレイニア

「なんでこまるんだ……こまるのでしょうか――しゃらぁ?」
「ぁん――?」
 見開みひらかれた、するど視線しせん
 ひとみひかったように見え――反射的はんしゃてきに、飛びのく!
 けど、金剛力こんごうりきのないいまは、せいぜい2シガミーしかはなれられなかった。

「まずシガミー、天狗てんぐさま、カラテェーくん三人さんにんだけでも大国たいこく匹敵ひってきしかねない大戦力だいせんりょくですのに、その出自しゅつじがすべて〝ヒ-ノモトーこく〟というのは、脅威きょういなわけです」
 まあ、その全部ぜんぶおれ・・だけどな。
 このリオレイニアの言葉ことばは、わからないでもない。
 ニゲル《わけぇの》とルリーロおくがたさまをのぞけば、本気ほんきのおれにかなうやつはいないからだ。

「ソコにくわえて、もとスーパールーキーまでがヒ-ノモトーこく出身しゅっしんとなれば、もうヒ-ノモトーこくへの警戒けいかいをしないほうがおかしいと言うことですわ、おわかり?」
 リオの言葉ことばをつなぐ、彼女ひめさんかおはとてもけわしい。
 そのかおを、チラチラとぬすみ見るわけぇのかおもおのずとけわしく……口元くちもとがニヤけている。
 「なんて、凜々しいんだろう」とか、かんがえてるんだろうな、ふぅ。

「それは、ぜんぜんおかわらない・・・・・・わね」
 御神体ごしんたいまで、むずかしいかおをしだした。

「けどよぅ、ルリーロ……奥方おくがたさまだってもとだろ? いまさら――」
 どがたん――――ぽぽぽぽぽっしゅるるるる、ぽぉぉう♪
 テーブルをたおし立ちあがった、ひめさんの目のまえ

 ころげ落ちた饅頭まんじゅうを、すんでのところでつかむ一号おにぎり
 そのへっどうえ――――ちいさなちいさな青白あおじろい。
 仄暗さ・・・はなく、陽光ようこうにきらめく水面すいめんのような。

 そんな灯火ともしびが――――空中ちゅうに浮かんでいる。
「にゃゆっ――!?」
 気配けはいをかんじたのか、ひく姿勢しせいのまま、一号おにぎりがあとずさる。

「そ――んなおはなし――は、聞――いていません――わ……よ?」
 やべぇ、おれなんかマズいこと言ったか?

 ふぉん♪
『>そのようです』
 ふぉん♪
『イオノ>失言乙♪』
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