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2:カブキーフェスタへの道

208:神域探訪、待望のおやつ

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 現在時刻げんざいじこく午後ごご2時。
 八つ時オヤツまでは、あと三十分さんじゅっぷんもない。

石狩鍋いしかりナべ材料ざイりょうは、ホぼ|そろいまし
「そうだな。あま菓子かし使つかえそうなものは、まるで見つからなかったけど」
 かといって、こんなに日がたかいうちから、鱒鍋ますなべ(?)にするのも――はらぁ減ってねぇ……ないし。

菓子かし材料ざいりょお? そろってるじゃないのよ。タタッタちゃん、そっちの出窓開でまどあけてくれる

「はい、イオノファラーさま……タタッタではなく、タターです」
 カチャリ――キィー。

「そこ――たくさん生えてるでしょうが」
 窓辺まどべまであるき消えかかる、所長いおのはら映像えいぞう
 ヴュザ――ゆびさしたのは――とおくのおか斜面しゃめん
 おれたちがさかなやマンドラゴーラやうしを、つかまえたのとはべつ方角ほうがく

 ヴュッザザッ――日当ひあたりの良い草地くさち大写おおうつしにする画面がめんがあらわれた。
「うわ」「きゃ」
 まだ見なれないのか、青年せいねん少女しょうじょ光の板がめんにおどろく。
 たしかに、女神像めがみぞうまえくらいでしか画面がめんはでないからな。
 アーティファクトに日々触ひびふれているルコルなら、見なれてるんだろうけど。

「こりゃぁ……マンドラゴーラじゃねぇ、普通ふつう大根だいこんじゃねぇか。すこしでかすぎるけど――」
 どうも、神域ここの生きものくさでもさかなでもうしでも――そうじておおきい。
「(イオノファラーの、〝たくサん食べタい〟トいう気持キもチのあラわれではなイか)」

「えー、どこだい? あ、あれかな?」
 空中ちゅうに浮かんだ画像がぞうは見ずに目をほそめ、直接ちょくせつとおくを見つめるニゲル青年せいねん
「――大根だいこん……じゃないよアレ。大根だいこん大根だいこんでも砂糖大根さとうだいこんだろう?」

「はい、ニゲルくんせいかぁーい♪」

 ふぉん♪
『てん菜/ヒユ科アカザ亜科フダンソウ属の植物
     ショ糖を蓄える根をしぼり、
     煮詰めると砂糖が出来る』

不純物ふじゅんぶツ濾過ロかするノに、入り組ンだ工程こウていヲ得なければナらないとコろでスが、そレはわタし収納魔法ストレージが有レば事足ことタりま

「じゃあ、調理場ちょうりばつくるか」
 ヴッ――――ゴドドン、カタカタカタカタタタタンッ!
 五百乃大角いおのはらとニゲルがすわっていたフカフカな椅子いす立派りっぱなテーブル。
 その向こうの、なにもない部屋角へやかどに――かまどをつくる。
 特大とくだいのテーブルをふたつと――料理道具りょうりどうぐ一式いっしきを取りだした。

「よしつぎは、あのあま大根だいこんを取ってくりゃ――」
「はいコレ――で足りるかい?」
 ごどごどごごろろろ♪
 ひとかかえは有る丸々太まるまるふとった大根だいこん……あま大根だいこんを、どこからか持ってくる青年せいねん

「ありゃ? どこから持ってきた?」
「え、いま取ってきたんだけど」
 もう一度いちど、開いたまどからとおくのおかを見つめ――たとおもったら。
 浮かぶ画面がめんなか
 大写おおうつしになったニゲルが、あま大根だいこんを引っこ抜いている。

 ごどん♪
 追加ついか一個いっこを、調理台ちょうりだいに置くニゲル。

「え? いまのなぁに?」
 画面がめんまどそとをみくらべ、ニゲルへ問うメイドさん。
「にゃ、みゃやーう?」
 一号おにぎり一緒いっしょになって、小首こくびをかしげてる。

「いまのはぼくのスキル――〝勇者ブレイブ歩みステップ〟って言うんだけど……」
 やっぱりはやすぎる。あいだがない。
 けど姫さんリカルル先制攻撃せんせいこうげきとは、どこか違う。
 五百乃大角いおのはらを見ると、手のひらをうえに向けてかたを持ち上げてる。

「(かたこりか? せっかく出た温泉おんせん湯治とうじでもしてくれ)」
 御神体あのからだに効くかは、わからねぇけど。

「それ良いのか、あっさり白状はくじょうしちまって。かくだまは取っといたほうが良いんじゃ?」
「良いんだコレは。だれ記憶きおくにものこらないからね――」
 記憶に残らない?
 どういうこった?

「(〝ブレイブステップ〟を収得しゅうとくすれば、その効果こうかをたしかめられますが――スキル収得しゅうとくしますカ)」
 いやまて、このスキルは普通じゃねえ・・・・・・かもしれない。
「(五百乃大角いおのはらは、なにか聞いたのか?)」
「(こし込み入ったはなしになるから、あとではなすわぁー。あとそのスキルは取っちゃダメよぉーん)」
 神速ふみこみ剣速きれあじは、そのスキルにるものだろう。
 まあ、タネと仕掛しかけけがわかったなら、ひとまず置いとく。

「(では調理ちょうりさい必要ひつようなスキルの習得しゅうとくは、いかがいたしましょうか)」
「(ぉれぇわぁー、最優先さいゆうせんで取ってね~)」
 そっちは要るヤツを、全部取ぜんぶとってかまわないぞ。

 ふぉん♪
『>〝濾過術〟〝分離術〟〝高速結晶化〟〝状態変化(大)〟〝調理術〟
  消費スキルポイント/64pt』
 結構けっこうポイントを使つかったな。

「(高度こうど薬物生成やくぶつにも転用可能てんようかのうなスキルですので、今後利用こんごりようする機会きかい多々たたあるとおもわれま)」
 なら、かまわねぇ。

 ヴォヴォン!
『本日のお品書き/甘くてかわいくて、
         ガムラン町名物になりそうなお菓子』

「さぁ、どうすれば良いんだ? どうせ、五百乃大角いおのはらさまがこうなったら・・・・・・、テコでもうごかねぇ。あまいお菓子かしをとにかくつくるぞ」
 もう、3時オヤツどきまで時間じかんがない。

 ほほをふくらませた五百乃大角いおのはら映像えいぞう)が取りだした真っくろ文字板いた映像えいぞう)には、筆書ふでがきでそう書かれていた。

   §

 シシガニャンの絵が付いた前掛まえかけを、パタパタとはらう少女しょうじょ
 白煙はくえんが、かすかに舞う。
 このしろいのは迅雷ジンライが取りだした、やたらと上等じょうとうこなだ。

 石臼いしうす何度なんどもかないと、ここまできめこまかくはならない。

「いやぁ、マジ・・たすかった!」
 タターの手慣てなれた生活魔法せいかつまほうは、目を見張みはるものがあって――調理ちょうり手際てぎわだけをみるなら、師であるリオレイニアよりも熟達じゅくたつしているかもしれない。

 そのうごきを真似まねして、さらというさらをひっくりかえしていた一号おにぎり
 そのつぶらなひとみが見つめるのは、隙間すきまだらけの木枠きわく

源泉げンせん温度おンどが100℃ちかイので、湯気ゆゲニ15ふんほどさラせば――綺麗きレいに蒸しあがりま
 なべにのせた木枠きわく三段重さんだんがさねで――こりゃ蒸籠せいろか。
 一番上いちばんうえのふたを持ちあげる。

 ふんわぁぁ。
 たちのぼる、あまい湯気ゆげ
 お八つどき三十分過さんじゅっぷんすぎたけど、どうにか完成かんせいした。

「オイしそうな、いろねぇぇぇぇ――♪」
 若草色わかくさいろ薄桜色さくらいろ
 このふたつの饅頭まんじゅう
 ひとつは〝しおあん〟。
 もうひとつは〝あまくてつぶがないあん〟だ。
 あんの具にはさっき見つけた、枝豆えだまめをつかった。

 ぱくり――――んんんんっ……もぐもぐもぐ♪
 ためしにつくったのは、人数分にんずうぶんの10個。
「こんなことしてる場合ばあいじゃないんだけどな……お祭りフェスタちゅうにデートにさそわなきゃいけないんだし……もぐもぐもぐ……これ、結構けっこういける♪」

「リカルルさまとデートなんて、出過ですぎた真似まねをしようというのなら……あまものをプレゼントするのは、良い手かもしれませんよニゲルくん……ほんと、おいしいっ♪」

「このなまクリーム入りのしょっぱいほう予想みためはんしていけるわよぉぉぉぉ……もぐもぐ、ぱくぱく♪」
 うしちちしぼってからのいそがしさにはまいったけど、つくかたはそれほどむずかしくはなかった。

「お菓子かしわねぇー、材料ざいりょう分量ぶんりょう……目方めかたさえ合ってれば、意外いがい上手じょうずにぃーでっきるのよねぇー♪」
 あー、三つ目、四つ目に手がのびた。
 映像がめんであるイオノファラーがもの食える・・・のは不気味だった・・・・・・けど、ひとまずはうまく行って良かった。

「ほら、どっちがいいんだ?」
 若草色わかくさいろ薄桜色さくらいろのふたつを差しだすと、一号おにぎりは――
 自分じぶん黄緑色きみどりいろ毛皮からだと、饅頭まんじゅうを見くらべてから――
 若草色にたいろほうを手に取った。
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