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2:カブキーフェスタへの道

194:龍脈の棟梁(シガミー)、聖剣ヴォルト(安物)

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いさましいもの? ニゲルがぁ?」
 たしかに豹変ひょうへんしたいまのニゲルなら、魔王まおう生物せいぶつ)とだってわたりあえそうだけど。

「(リカルルの不可視の斬撃ヴォルトカッター匹敵ひってきする、危険度きけんどです。降参こうさんします)」
 おう、できるもんならやってくれ。

 きゅふぉん♪
『>【ニゲル。この文字がよめますか?
   参った。降参します
   ――シシガニャン二号】』
 画面がめんにも表示ひょうじされている文字もじは、ときどき読めない字が混ざってるけど、たいていは五百乃大角いおのはらたちが使つか文字もじだ。

「ありゃ、日本語にほんごじゃん? なつかしいなー。本当ほんとうに「まいった」してくれるんだね?」

漢ににゃあ二言はねぇみゃにゃーご♪」
 二号ぼく諸手もろてをあげて、錫杖ぶきを落とす。

「ふう、よっこいせ――ふわぁーっかれたぁ♪ もうやらない。こんな本気ほんきたたかいは、一生死いっしょうしぬまでしない――この工房長こうぼうちょうが打ってくれたけんちかうよ――安物やすものだけどね♪」
 やっぱり、あんまりいさましくはない。
 まあ、ニゲルだしな。

「その字がでる木のいたって、ひょっとしてタブレットPCピーシー? あ、いや、そんなわけないよね。迅雷ジンライが動かしてる……のかな?」

「(判明はんめいしている事柄ことがらから、ニゲルはルリーロやシガミーひいては天狗テェーング烏天狗カラテェー故郷こきょうである〝ヒーノモトーこく〟が自分じぶんの生まれたくにおなじだとは、認識にんしきしていなかったようです)」
 それは女将おかみやコントゥル母娘おやこまちのみんなの様子ようすからも間違まちがいない。

 きゅふぉん♪
『>まさかニゲルが同じ国、
  いや同じ世界の生まれとは、
  思わなかったよ』

「まあ、そういうことも有るし、いろいろ納得なっとくしたよ。くわしいはなしを聞きたいところだけど、そろそろボクは行くよ――」
 がやがやがや。

「シガミーの呪文じゅもん爆発ばくはつひとあつまって来ちゃったから、一刻いっこくもはやくココをはなれたい」
 コッチもだった。いそいで一号いちごうをとっつかまえなきゃ。

 折角せっかくさびが落ちた聖剣せいけんを――ギャギジャギギギィガキン!
 さやにむりやり押しこむ。内側うちがわ相当そうとう、錆びてるんだとおもう。

 ふぉん♪
『┤▒▼――――<シシガニャン一号>』
「(シガミー。一号いちごウ城壁じょうへキからうごく気配けはいはありません)」
 なら、ちょっと時間じかんがあるか。

こっち来てにゃみゃご!」
 青年ニゲルの手をとり裏路地うらろじへ。

 きゅふぉん♪
『>【刀身は打ち合ってるウチに、さびが落ちたけど。
  さびた鞘に入れたら、また錆びちゃうでしょ?】』
 けんつかにも、すこしさびが浮いてるし。

 文字板を見せみじかくくされたうでを、ぽきゅりと差しだす。
「ひょっとして、さびを落としてくれるの?」
 ぽきゅりとうなづく。

「――じゃあ、おねがいしようかな?」
 ひょいと手渡てわたされた〝聖剣せいけんヴォルト〟が――
 すさまじいいきおいで――ドズズン!!!
 地に落ちた小剣けんに、押しつぶされる二号ぼく

「んっぎゅぅぅぅ!? どっせぇーい!」
 ニゲルの聖剣さびたけんは、金剛力こんごうりき使つかっても持ちあげるのがやっとだった。
 な、なるほど? あの踏みこみの異様いよう速さ・・は、この重さ・・か。

なにしてるんだい? あたらしいげい?」
 ひょいと指先ゆびさきで、摘まむように持ち上げられる安物のさびた聖剣《けん》。
 ニゲルが持てば、羽根はねのようにかるい。

 きゅふぉん♪
『>そのまま、持っててよ
  すぐ綺麗に出来るから』

 ヴッヴヴヴヴヴヴァァッツッ――――すぽん♪
 聖剣せいけん仕舞しまった迅雷ジンライ――二号ぼく後頭部うしろあたま地面じめんに突き刺さる!

痛ってぇぇぇぇぇっにゃみゃぁぁぁごぉぉぉ――――――――!?」
 衝撃しょうげきは地に落ちたたかぶん――せいぜい1シガミーだから屁でもないけど、おもみで反らされたからだは――とうぜんいたい。

「(まったく、この聖剣せいけんってなぁ一体いったいなんだっ!?)」
 コレをつくったヤツは、ふざけてるのか!?

 ヴッ――――仕舞しまうときには時間じかんが掛かったけど、出すのは一瞬いっしゅんで出――!?
にゃごっにゃごっ!?」

 寝そべりてんあおいでいた、あたまうえ
 あらわれた聖剣せいけんのさびは落ちていて、きらめいてい――――ぎゅぷりゅるん♪

 からだ回転かいてんさせ、すんでのところで落ちてきた――――ごどんっ!
 ビキバキャッ――――聖剣せいけんかわし、ごろごろドガッぷぎゅるりゅ♪
 ころがりすすんでかべにぶつかったけど、コッチは全然痛ぜんぜんいたくもかゆくもない。
 強化服シシガニャン二号にごうはちゃんと、ボクのからだまもってくれている――はぁはぁはぁ。

「だ、だいじょうぶかい?」
 さっきまで二号ぼくを、なます切りにしようとしていたヤツの言う台詞せりふではない。
 差しだされた手をとる――ぽぎゅむ♪

「これ、ありがとう。研ぎに出すのもおかねが掛かるからさ、ずっとほったらかしてたんだぁ、ははは」
 あたまをかく勇者ゆうしゃニゲル。

 きゅふぉん♪
『>【喜んでくれて良かった。
  じゃ本当に急いでるから、もう行くね。
  一号を追っかけてる途中なんだ】」

 一号いちごうにはだれはいってるの?
 なんて、ややこしいことを聞きそうな、子供こども鬼娘おにむすめ猫耳娘ねこみみむすめもココに居なくてたすかった。

「そっか、わるいことしたね……そんないそいでるときに、かさかさわるいんだけどさ――」

   §

 さっき迅雷ジンライのバチバチをされたばかりだ。
 ニゲルが、おびえるのも無理むりはない。

 きゅっぽぉん♪
 面白おもしろおと
 鏡代かがみがわわりにしようとしたのか、ニゲルが小剣せいけんをちょっとだけ抜いたけど――刀身とうしんはまだ光っててものうつさない。
 シュカッ――小太刀こだちを抜いて、青年じぶんかおを見せてやる。
 
「これ、ちゃんと落ちるのかい?」
 〝まいった〟の証拠しょうこに――肉球にくきゅうひたいに押し当ててやったのだ。
 きゅふぉん♪
『>【大丈夫、風呂で洗えば消えるから】』

 シシガニャンの足形あしがた……手形てがたは、まるで六つ星紋むつぼしもんみたいで、なんだかかわいらしかった。

   §

「(なあ、身分みぶんちがいは重々じゅうじゅうわかっちゃいるけど、ニゲルのことを応援おうえんしてやりてぇなあ)」
 ぽっきゅ――――トトォォン――――♪
 こんどこそ、さきをいそぐ。

「(そうですね。おそらく、聖剣せいけんがらみで色々いろいろあったと類推るいすいできますし)」
 おれにはこうしてかみかっこわらい)が使つかわした迅雷ジンライが居てくれたけど――ニゲルのまわりにそんなのが居た様子ようすはない。

「(うん、ひま出来できたらニゲルとはなしをして、なんでもいいからたすけてやろう。フェスタちゅうにやることが又増またふえちゃうけど、ほかならぬニゲルのためだし、同郷どうきょうという、おも……面白おもしろそうな事実じじつを知った五百乃大角いおのはらがほっとくとはおもえない)」

 さあ、一号いちごうはどこだ!?
 ふぉん♪
『┤▒▼――――<シシガニャン一号>』
「(まだ、城壁じょうへきの突きあたりを、うろついています)」
 地図ちずをよく見れば、ソコは、レイダとボクの狩り場でも有る、あの貝釣かいつあながあるあたりだった。

 ぽっきゅ――――トトォォン――とっとっとぉん――――くるくるくるるん、すたり♪
 たかく飛んで屋根やねを蹴りすすむこと、わずか五歩ごほ

居たっみゃっ!」
 かべまえ
 なにかをさがして、ペタペタペタとかべをまさぐっている一号シシガニャンを見て――
 気が抜けた。

「(ありゃ、なにしてんだ?)」
「(わかりません)」
 どうやら、ぼくとレイダがつくったかく通路つうろさがしてるっぽい?

ーーー
六つ星/日本の家紋のひとつ。大きな黒丸を小さな黒丸五つで囲んだかたち。
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