滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

２：カブキーフェスタへの道

１９２：龍脈の棟梁（シガミー）、ニゲルＶＳシシガニャン二号

「なんだにゃん、ニゲルかやにゃみゃ。脅かさないでよみゃんやーにゃ」
　ギルドからは、金剛力こんごうりきで二歩にほも離はなれてたから――
　ニゲル青年せいねんだとは思おもわなかった。
　結構けっこう、足あしが速はやいぞ？

「シガミーには悪わるいけど、今回こんかいは引けない。全部ぜんぶの力チカラでやらせてもらうから」
　ザリザリザリッ――ザキィィン！

　あー、剣けんの錆さびくらい落としといてやるんだった。
「――そうでスね、彼かレにハ日頃ひゴろお世話せワになっているのでスし――」

「悪いけどにゃみゃぉ、急いでるんだみゃんやにゃ」
　きゅふぉん♪
『＞わるいけど、いそいでるんだ』

「こっちもだ！　リカルル様さまを狙ねらう不届ふとどき者ものがすぐに群むらがってくるから、その前まえに終わらせる――だってリカルル様さまは、す、すすすすすすすすっ、素敵すてきすぎるからっ！」
　はぁ？　すが多おおいよ。
　何なんの話はなしをしてるんだ、ニゲルは？
　リカルルは見てくれだけは完璧かんぺきだけど、中身なかみを含ふくめるとソコまで素敵すてきではない。
　御貴族おきぞくさまとしては、気さくで強つよくて申もうし分ぶんないけど。

　ふぉん♪
『┤▒▼――――＜シシガニャン一号＞』
「――シガみー。一号いちごウが城壁じょうへキに、たドり着きまシた――」
　急いそがないと。

「……いまのボクじゃシガミーに、敵かなうかどうかわからない。それに勝てたとしても……リカルル様さまをボクが、エスコートできるとも思おもえない。けど、それでも――参まいったと言ってもらう！」
　ニゲルごめん。マジ・・で立て込んでるんだ。
　新しんメニューの相談そうだんに、女将おかみの食堂ところに顔かおを出すかもしれないから、そのときにでも話はなしを聞くよ。

「じゃぁにゃぁ、行くねみゃっ？」
　ぽっきゅむんっ――ストォ――♪

「あれ？」
　速度そくどが上がらない。視界しかいも傾かたむく。
「――どうしマした、シガミー？――」
　二号にごうのフサフサの毛皮けがわは――ルリーロの〝仄暗ほのぐらい炎ほのお〟にも、姫さんリカルルの〝聖剣切せいけんぎり〟にも耐えた。

　それが、両断されている・・・・・・・。

　ピピピビーッ――ふぉふぉん♪
『＞極所作業用汎用強化服に、
　　重大な損傷が生じました』
　右足みぎあしの先さきが、短みじかくされてる。

　姫ひめさんを抱かかえたときに走はしりやすかったから、二号にごうでも伸ばしておいた部分あしさき。
　その先さきがなくなってて、迅雷ジンライの金剛力こんごうりきの元もと……細腕かいながばらばらと、こぼれ落ちている。

　ピピピッ――ふぉん♪
『＞破損箇所を破棄、緊急修復しました
　＞１秒後、再起動します』

　一瞬いっしゅんの暗闇くらやみ――ヴュゥウゥン♪
　ふぉん♪
　画面がめん横よこに強化服シシガニャン二号にごうの、全身すがたが表示ひょうじされる。

　直なおされた足あしとは反対側はんたいがわが――赤あかくなって引っ込んだ。
　傾かたいていたカラダが、水平すいへいを取りもどす。
　ぽきゅぽきゅん♪
　面白おもしろい音おとは強化服二号シシガニャンにごうの両足あしが、揃そろったことを伝つたえてくる。

「（ん？　んぅ？　どういうこった!?）」
　相手あいてはニゲルだ。
　気の良い奴やつだし本当ほんとうに困こまったときには、リオやレイダより先さきに頼たよるかもしれないくらいには、気の知れた相手あいてだ。

　正直言しょうじきいって、姫ひめさんやオルコトリアから聞かされた評判ひょうばんほどには――使えなかったはず・・・・・・・・。
　その・・さびた剣けんの切っ先さきが、眼前がんぜんに迫せまる、
　大丈夫だいじょうぶ、万まんが一いち斬きられても首くびには、〝追憶のノットオブ結び紐リメンブランス〟が――――

　ちょっとまて。
　ニゲルに〝首くびを切られる算段さんだん〟をしたのか、いま？
　悪鬼羅刹あっきらせつと恐おそれられた、猪蟹おれが？
　あああ゛――――!?

「（――――いやいやまてまて、違ちがうだろうが。ニゲルは大事だいじな友達ともだちだ）」
「（ひとまず〝参まいった〟をしてみては、いかがでしょうか？）」
　迅雷ジンライが、念話ねんわをつかう。
　それだけ、ヤバイって事ことだ。

「（〝参まいった〟ってなぁ、なんだ？）」
「（おそらく、〝一日いちにちデート券けん〟の事ことだと思おもわれます）」
　あ、そうか。リカルルとのなんか・・・って、五百乃大角いおのはらが言った余計よけいななことでたきつけられたってワケだ。
　それにしたって、この豹変ひょうへんぶりは異様いようだが――

「まにや、参ったよにゃぁにゃ、降参降参みゃぁみゃぁ！」
　きゅふぉん♪
『＞参ったするよ、降参。
　　剣を収めてよ』
　言葉ことばもちゃんと、わかりやすくニゲル語で書いた。

　ニゲルには二号にごうに入はいってるのが烏天狗カラテェーだという事ことは話はなしてないから、中身なかみはたぶんシガミーだと思おもわれてる。
　なおさら、ここは引いておく。

「「にゃ、にゃぁ」じゃ、困こまる！　「参まいった」と言ってもらおうか？」
　息いきが掛かるほどの近ちかさ。
　ニゲルの細身ほそみの面構つらがまえが、揺れる。
　さびた剣けんが、腕うでを切り裂いていく。
　ギャリザキィィン――――！
　中なかの手甲てっこうごと、持っていかれた！

　ピピピビーッ――ふぉふぉん♪
『＞極所作業用汎用強化服に――――』
　今度こんどは、右手みぎての先さきが短みじかくなった。

　寸断すんだんされた強化服シシガニャンから、小ちいさな指先ゆびさきが覗のぞく。
　やっぱり細腕かいながばらばらと、こぼれ落ちていく。
「（細腕かいなの在庫かずは？）」
「（すでに強化服内部きょうかふくないぶへ展開済てんかいずみが３シガミー分ぶん。再起動さいきどうが必要ひつようですが、４５０シガミーの在庫ストックを確保かくほし――――）」

　ピピピッ――ふぉん♪
『＞破損箇所を破棄、緊急修復しました
　＞１秒後、再起動します』
　ひと呼吸・・・・をこれほど長く感じた・・・・・のは、久ひさしぶりだ。

　一瞬いっしゅんの暗闇くらやみ――復活する視界ヴュゥウゥン♪

　ふぉん♪
　画面がめん横よこに強化服シシガニャン二号にごうの、全身すがたが表示ひょうじされる。
　直なおされた腕うでの反対側はんたいがわ――もう片方かたほうも赤あかくなって消えた。
　ぽぽきゅん♪
　面白おもしろいい音おとは、強化服二号きょうかふくにごうの両腕うでが揃そろったことを伝つたえてくる。
　ザラザラしていた画面がめんが、元もとに戻もどったとき――

　やべぇ、ニゲルが居ねぇ！
『▲――ピピピッ♪』
「（下したで――）」

　ズドォ――――――――ンッ！
　ぐらりぃ――――低ひくい位置いちからの、剣けんの柄つかをつかった突きあげ。
　強化服シシガニャンを通とおす、強力きょうりょくな当て技わざ。
　この甲冑かっちゅうの中なかへ浸透しんとうする衝撃しょうげきには――覚おぼえがある。

　ぐるん――――天地てんちが倒さかしまになる。
　腕うでをつかまれ、投げ落とされようとしている――まるで合戦中かっせんちゅうの、僧兵そうへいのような動うごきだった。

「（ニゲルのカラダを、つかんで・・・・ください！）」
　きゅぽ♪
　キュキュン――――ヴァリッ♪
　きゅふぉん♪
『＞両手肉球内部にフライバックトランス回路を形成
　＞神力を１５ｍＡに昇圧、放電しました』

「っぎゃっ――!?」
　ニゲルが、腕うでを放はなしてくれた。
　ごろごろろっ――――きゅぽすたん♪
　かろうじて抜けだした、二号ぼくは体勢を立てなおす。

「（この間合まあいと、太刀筋たちすじと切れ味あじ――そして流ながれるような組討くみうち。まるで日ひの本もとの――）」
　ヴッ――じゃりりぃぃぃん♪
　錫杖しゃくじょうを取りだす――くるくるぱしん。

「さ、さすがはシガミー。相手あいてにとって不足ふそくはないよ」
　落とした剣けんをひろい、構かまえる敵ニゲル。
　死ぬ気で防ふせがねぇと――――真っ二ぷたつにされる。

「ニゲルーにゃみゃう、これ読んでみゃやーう！」
　きゅふぉん♪
『＞参ったするよ、降参です。
　　剣を収めてください』
　文字もじもちゃんと、わかりやすくニゲル語・・・・で書いたのに――ちゃんと読め。

「わるいけどさ、ボク日本人にほんじんだからさ――難むずしい文字もじは読めないよ」
　聞く耳みみを持たないニゲルが剣けんを振ると、剣けんの錆びがボロボロと落ちた。

ーーー
組討／合戦場で敵将を押さえ込むこと。または投げや素手での打ち込みのこと。