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2:カブキーフェスタへの道
189:龍脈の棟梁(シガミー)、もんぜんのこぞうならわぬきょうをよむ
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積みあがる荷物のほとんどが、皿と食材の備蓄が詰めこまれた木箱だ。
きゅふぉん♪
『>収納魔法はシガミーちゃんが、
使えるんじゃなかった?』
「おい一号。どうしたの?」
こき使われすぎて、壊れたか?
室内の様子をうかがってた、シシガニャン一号の頭をなでた。
「にゃぁー」
すかさず手が伸びてきて、二号の頭をなでかえす一号。
「――正常ニ作動しているようでス――」
「カラテェーが、二匹になったニャ?」
「ほんとだ、どっちがどっちかわからないコォン♪」
それ、言いたいだけだろ。
二号と一号は、色がちがう。
「羽根芋みたいな、うす緑色がシガミーだよ」
「これで、旧シガミー邸の荷物は全部ですか?」
シガミーの荷物を山車から出して、床やテーブルに積みあげるリオ。
「そっれっがっさぁー、聞いてよぉ! この自律型……じゃなくてシガミーがさぁー、急に収納魔法を使えなく、なっちゃったんだよねぇーん?」
荷物といっしょにテーブルに置かれた御神体が、そんなことを言いだした。
一号の背中には、ギルド再建用に作った、とんでもなく沢山の物を入れられる収納魔法箱が付いてる。そうかんたんに一杯になる訳はない。
「そうですわ、ベッドは新しいのがあるので、置いてきましたけれど……あら、ルコラコル。大変お久しぶりですわね。大叔父様は、お元気かしら?」
「コォン! リ、リリリリリリ、リカカッルウルコォォン!」
〝リ〟が多いよ?
「あいかわらずルコルは、リカルルさま相手だと、タジタジニャン♪」
たしかにタジタジだな。
狐耳がヘタリと垂れちゃってるし、目もずっとは合わせない。
けどなんだか、暴君に恐れおののいている様子ではなくて――
「――照れているようにも見えまス――」
姫さんは、見てくれだけは、完璧だからなあ。
ひょっとしたら、自分よりも強い幼なじみに対する憧れみたいな物かもしれない。
なんせ強さにかけては、いまココに居るなかで二番目だからな。
一番目がボクで、二番目が……まてよ、下手すると次点は一号にならないか?
それどころか、本気の本気でやりあったら、一号が最強なんて事になるかもしれない。
「――ソの危険はありマす――」
あまり強く押したり叩いたり、しないように気をつけよう。
「(じゃあ、まずは――おい、五百乃大角)」
テーブルの上の御神体を、キッと睨みつけた。
顔布はしたままだから、外からは見えない。
「なぁに? いま、一号に食べさせてあげるメニューの絞りこみに、余念がなっぁーいのですが。それが……なにか?」
ひろげた冊子に乗って、棍棒か魔法杖のような大きさの、字が書ける鉄筆をゴリゴリとすべらせている。
「(一号に食べさせる?)」
たしかにさっき、レイダが〝一号も上手に食べる〟とか言ってた。
そりゃ中身がシガミーだと思われてるなら、飯くらい食わないといけないけど。
きゅふぉん♪
『>シガミーちゃんは、
そんなにたくさん食べて、
お腹壊さないのかい?』
聞いてやる。
「え? ウケケケッ、平気よぅ♪ だって、背中に拡張用物理ストレージ……収納魔法箱を背負っているんですものん♪」
きゅふぉん♪
『>食べ残しを収納魔法箱に、押し込めてるってこと?
なら、それが一杯でシシガニャン一号に、
荷物が、入らなくなったんじゃないのかい?』
ギルド1個分の大穴が埋まるほどの食べ物は、町にはない。
なら、なんか〝悪いもんでも食わせた〟んじゃないのか?
「――はイ。一度ニ多種多様な物ヲ収納しタり、なニか特殊ナ物ヲ取りこんだ場合にハ……――」
ぽこん♪
「――ジャムる……詰まる可能性がぁー、ないと言い切る自信わぁないわぁ(キッパリ)――」
画面の中にも姿を見せる、五百乃大角の分け身。
ほれみろ、やっぱり詰まってんじゃねーか。
一体、なに食わせた?
「カラテェー、ソレ……とても便利ですわね?」
ルコルの頭をなでたり襟を直してやったりと、いたいけな少年を威圧していた、見てくれだけは完璧な伯爵ご令嬢が。
めざとく、文字板に目をつけた。
「修行中、話が出来ないと不便だから、自分で作ったんだよ」
きゅふぉん♪
『>話せなくて不便だから、
自分で作ったんだよ』
「ね、やっぱり便利でしょー? その板♪」
「そうですねぇー。けど、ご自分で作ったというのは、本当ですか?」
片付けを手伝ってくれてた、子供と給仕服が寄ってきた。
「ミュふふん、きいて驚くミャ! このカラテェーは、ウチの専属鍛冶職人ニャン♪」
「「「鍛冶職人?」」」
「あーあーあー、お母さ……名代が、隣町の職人に魔法杖を見てもらったら、すこぶる調子が良くなったと言ってましたわ、たしか」
「そ、そうだ、コォン。シガミーにも、この〝話せる板〟を作ってあげたらどうコォォン?」
リカルルに良い所を、見せたかったのかもしれない。
きゅふぉん♪
『>作るのは、簡単だよ』
けど気がかりが、ひとつ。
「(一号は、ふだん何を喋ってるんだ?)」
いままで気にもしなかったけど、なにか余計なことを喋られでもしたら、一号がシガミーじゃないって一発でバレちまうだろ。
「――ソレにつイては、心配アりまセん――」
ないのか?
ぽこん♪
「――ないわよ。作ってあげなさいよ。さっき念話で脅かしちゃった、お詫びにもなるでしょ?――」
うっかり脅かしたのは、五百乃大角だけどなー。
まあ、そういうことなら。
じゃ、作ってくれ。
ふぉん♪
『>電子インク木製ボードを一件作成しました
>運搬中
>1秒後に〝シシガニャン・へっど〟搬出口より、お届けします』
ぽぽぉん♪
あたまの後ろから天辺を通って、画面のむこうに『箱』の絵があらわれた。
大きく口を開けると――
「ぅんぐわぁにゃぁぁぁっ――――すっぽこん♪」
シシガニャン二号の口から、文字板か出た。
「ぎゃっ――怖いっ!」
「ひゃわっ――お、おどかさないでくださいませ!」
「うっわっ――気持ち悪いですわぁー!」
やっぱり、評判悪いぞ、この口から出すヤツ。
「何回見ても、その大口は面白いミャっ♪」
「もう一回、もう一回やってコォン♪」
不思議な物に慣れしたしんだ、喫茶店組には受けが良いな。
――ギルド長の前では、見せないようにしよう。
「コレで良いかな?」
さっそく取りだした平板を、一号の首に掛けてやった。
板を首に掛けられた黄緑色に、特に変化はない。
二号の板に手をそえて、〝やり返した〟だけだ。
「シガミー! ほら、なんか言ってみてよ♪」
子供が、促す。
「にゃみゃ? にゃみゃみゃやーにゃ♪」
きゅふぉぽこん♪
『>レイダ! ほら、
なんか言ってみてよ♪』
「そうじゃなくて、普通にしゃべってってばっ!」
「にゃにゃ、みゃみゃやーにゃふっにゃ!」
きゅふぉぽこん♪
『>そうじゃなくて、
普通にしゃべってってばっ!』
「あら、おもしろい♪ レーニアっ……リオレイニア、シガミーがとても楽しげな事になってますわよ!?」
「これは、たしかに面白いですけれど……?」
「コォン……?」「ミャッ……♪」
いっせいに二号を向かれても、何て答えりゃ良いんだ迅雷。
「そぉれぇにぃわぁー、わたぁくぅしぃーさぁまぁがぁあー、お答ぁえぇーいたしぃますぅー♪」
テーブルからぼくの肩に、飛び乗ろうとする御神体。
まて御前さま、自分の足の長さを考えてくれ!
「あっぶなっ――(御神体は、大事に扱ってよ)!?」
すんでの所で、文字板で受けとめた。
いくら頑丈だって言っても、万が一って事もあるからな。
ふぉん♪
『イオノ>だいじょぶだいじょぶ
>けど、ありがと♪』
返事が、画面の隅にあらわれ――
「それわぁー、仕様……じゃなかった、シガミーたちの故郷に伝わるぅー修行のお作法でぇすぅー♪」
「「「「修行の、お作法?」」」」
真似をする……修行の作法?
作法なんて言われても……手習いの剣に、仏門に入ってからの禅や座学くらいしかわからん。
真似をして学ぶ……学ぶ真似?
「あー、〝門前の小僧、習わぬ経を読む〟ってやつか」
きゅふぉん♪
『>収納魔法はシガミーちゃんが、
使えるんじゃなかった?』
「おい一号。どうしたの?」
こき使われすぎて、壊れたか?
室内の様子をうかがってた、シシガニャン一号の頭をなでた。
「にゃぁー」
すかさず手が伸びてきて、二号の頭をなでかえす一号。
「――正常ニ作動しているようでス――」
「カラテェーが、二匹になったニャ?」
「ほんとだ、どっちがどっちかわからないコォン♪」
それ、言いたいだけだろ。
二号と一号は、色がちがう。
「羽根芋みたいな、うす緑色がシガミーだよ」
「これで、旧シガミー邸の荷物は全部ですか?」
シガミーの荷物を山車から出して、床やテーブルに積みあげるリオ。
「そっれっがっさぁー、聞いてよぉ! この自律型……じゃなくてシガミーがさぁー、急に収納魔法を使えなく、なっちゃったんだよねぇーん?」
荷物といっしょにテーブルに置かれた御神体が、そんなことを言いだした。
一号の背中には、ギルド再建用に作った、とんでもなく沢山の物を入れられる収納魔法箱が付いてる。そうかんたんに一杯になる訳はない。
「そうですわ、ベッドは新しいのがあるので、置いてきましたけれど……あら、ルコラコル。大変お久しぶりですわね。大叔父様は、お元気かしら?」
「コォン! リ、リリリリリリ、リカカッルウルコォォン!」
〝リ〟が多いよ?
「あいかわらずルコルは、リカルルさま相手だと、タジタジニャン♪」
たしかにタジタジだな。
狐耳がヘタリと垂れちゃってるし、目もずっとは合わせない。
けどなんだか、暴君に恐れおののいている様子ではなくて――
「――照れているようにも見えまス――」
姫さんは、見てくれだけは、完璧だからなあ。
ひょっとしたら、自分よりも強い幼なじみに対する憧れみたいな物かもしれない。
なんせ強さにかけては、いまココに居るなかで二番目だからな。
一番目がボクで、二番目が……まてよ、下手すると次点は一号にならないか?
それどころか、本気の本気でやりあったら、一号が最強なんて事になるかもしれない。
「――ソの危険はありマす――」
あまり強く押したり叩いたり、しないように気をつけよう。
「(じゃあ、まずは――おい、五百乃大角)」
テーブルの上の御神体を、キッと睨みつけた。
顔布はしたままだから、外からは見えない。
「なぁに? いま、一号に食べさせてあげるメニューの絞りこみに、余念がなっぁーいのですが。それが……なにか?」
ひろげた冊子に乗って、棍棒か魔法杖のような大きさの、字が書ける鉄筆をゴリゴリとすべらせている。
「(一号に食べさせる?)」
たしかにさっき、レイダが〝一号も上手に食べる〟とか言ってた。
そりゃ中身がシガミーだと思われてるなら、飯くらい食わないといけないけど。
きゅふぉん♪
『>シガミーちゃんは、
そんなにたくさん食べて、
お腹壊さないのかい?』
聞いてやる。
「え? ウケケケッ、平気よぅ♪ だって、背中に拡張用物理ストレージ……収納魔法箱を背負っているんですものん♪」
きゅふぉん♪
『>食べ残しを収納魔法箱に、押し込めてるってこと?
なら、それが一杯でシシガニャン一号に、
荷物が、入らなくなったんじゃないのかい?』
ギルド1個分の大穴が埋まるほどの食べ物は、町にはない。
なら、なんか〝悪いもんでも食わせた〟んじゃないのか?
「――はイ。一度ニ多種多様な物ヲ収納しタり、なニか特殊ナ物ヲ取りこんだ場合にハ……――」
ぽこん♪
「――ジャムる……詰まる可能性がぁー、ないと言い切る自信わぁないわぁ(キッパリ)――」
画面の中にも姿を見せる、五百乃大角の分け身。
ほれみろ、やっぱり詰まってんじゃねーか。
一体、なに食わせた?
「カラテェー、ソレ……とても便利ですわね?」
ルコルの頭をなでたり襟を直してやったりと、いたいけな少年を威圧していた、見てくれだけは完璧な伯爵ご令嬢が。
めざとく、文字板に目をつけた。
「修行中、話が出来ないと不便だから、自分で作ったんだよ」
きゅふぉん♪
『>話せなくて不便だから、
自分で作ったんだよ』
「ね、やっぱり便利でしょー? その板♪」
「そうですねぇー。けど、ご自分で作ったというのは、本当ですか?」
片付けを手伝ってくれてた、子供と給仕服が寄ってきた。
「ミュふふん、きいて驚くミャ! このカラテェーは、ウチの専属鍛冶職人ニャン♪」
「「「鍛冶職人?」」」
「あーあーあー、お母さ……名代が、隣町の職人に魔法杖を見てもらったら、すこぶる調子が良くなったと言ってましたわ、たしか」
「そ、そうだ、コォン。シガミーにも、この〝話せる板〟を作ってあげたらどうコォォン?」
リカルルに良い所を、見せたかったのかもしれない。
きゅふぉん♪
『>作るのは、簡単だよ』
けど気がかりが、ひとつ。
「(一号は、ふだん何を喋ってるんだ?)」
いままで気にもしなかったけど、なにか余計なことを喋られでもしたら、一号がシガミーじゃないって一発でバレちまうだろ。
「――ソレにつイては、心配アりまセん――」
ないのか?
ぽこん♪
「――ないわよ。作ってあげなさいよ。さっき念話で脅かしちゃった、お詫びにもなるでしょ?――」
うっかり脅かしたのは、五百乃大角だけどなー。
まあ、そういうことなら。
じゃ、作ってくれ。
ふぉん♪
『>電子インク木製ボードを一件作成しました
>運搬中
>1秒後に〝シシガニャン・へっど〟搬出口より、お届けします』
ぽぽぉん♪
あたまの後ろから天辺を通って、画面のむこうに『箱』の絵があらわれた。
大きく口を開けると――
「ぅんぐわぁにゃぁぁぁっ――――すっぽこん♪」
シシガニャン二号の口から、文字板か出た。
「ぎゃっ――怖いっ!」
「ひゃわっ――お、おどかさないでくださいませ!」
「うっわっ――気持ち悪いですわぁー!」
やっぱり、評判悪いぞ、この口から出すヤツ。
「何回見ても、その大口は面白いミャっ♪」
「もう一回、もう一回やってコォン♪」
不思議な物に慣れしたしんだ、喫茶店組には受けが良いな。
――ギルド長の前では、見せないようにしよう。
「コレで良いかな?」
さっそく取りだした平板を、一号の首に掛けてやった。
板を首に掛けられた黄緑色に、特に変化はない。
二号の板に手をそえて、〝やり返した〟だけだ。
「シガミー! ほら、なんか言ってみてよ♪」
子供が、促す。
「にゃみゃ? にゃみゃみゃやーにゃ♪」
きゅふぉぽこん♪
『>レイダ! ほら、
なんか言ってみてよ♪』
「そうじゃなくて、普通にしゃべってってばっ!」
「にゃにゃ、みゃみゃやーにゃふっにゃ!」
きゅふぉぽこん♪
『>そうじゃなくて、
普通にしゃべってってばっ!』
「あら、おもしろい♪ レーニアっ……リオレイニア、シガミーがとても楽しげな事になってますわよ!?」
「これは、たしかに面白いですけれど……?」
「コォン……?」「ミャッ……♪」
いっせいに二号を向かれても、何て答えりゃ良いんだ迅雷。
「そぉれぇにぃわぁー、わたぁくぅしぃーさぁまぁがぁあー、お答ぁえぇーいたしぃますぅー♪」
テーブルからぼくの肩に、飛び乗ろうとする御神体。
まて御前さま、自分の足の長さを考えてくれ!
「あっぶなっ――(御神体は、大事に扱ってよ)!?」
すんでの所で、文字板で受けとめた。
いくら頑丈だって言っても、万が一って事もあるからな。
ふぉん♪
『イオノ>だいじょぶだいじょぶ
>けど、ありがと♪』
返事が、画面の隅にあらわれ――
「それわぁー、仕様……じゃなかった、シガミーたちの故郷に伝わるぅー修行のお作法でぇすぅー♪」
「「「「修行の、お作法?」」」」
真似をする……修行の作法?
作法なんて言われても……手習いの剣に、仏門に入ってからの禅や座学くらいしかわからん。
真似をして学ぶ……学ぶ真似?
「あー、〝門前の小僧、習わぬ経を読む〟ってやつか」
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