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2:カブキーフェスタへの道
184:龍脈の棟梁(シガミー)、新冒険者ギルド屋舎展望台
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「予定が未定で、海の藻屑と消えたニャン!」
ガムラン町に海はない。
夢と希望が表裏に書かれた紙が、ひらひらと床に落ちた。
ぼきゅこん♪
でかい頭がテーブルに当たった。
痛ぇな、痛くないけど。
きゅふぉん♪
『>よっこらしょっと』
拾った『テナント募集/転移陣のお知らせ』を、テーブルに置く。
分厚い冊子と、テナント募集の紙。
ふたつの間を、さまよう視線。
いまだテーブルに突っ伏す、二匹のケモノ耳。
きゅふぉん♪
『>ひとまず、
どうしようか?』
二人の目が、板をみた。
「カラテェーは、どうしたらいいと思うコォン?」
知らない、そんなことをぼくに聞かれても困る。
すると――カチャン!
階段の手すりに付いてる、面妖な杖みたいなのにつかまるギルド職員。
六つのうつろな瞳を向けられた彼女(まえにポグバードを査定してもらったことが有る)は――――ポーン♪
目をそらし、上へ昇っていった。
「アレは、なんニャ?」
きゅふぉん♪
『>新しいギルド屋舎は、
最上階が15階にもなるから、
階段の手すりに、上り下りする、
踏み台を付けたんだよ』
「ふぅん。なんだか我の魔法杖みたいだコォン?」
しおれていた狐の耳が、ピクピクと動きだす。
「アレは乗ると、お金が掛かるのかニャ?」
しおれていた猫の(以下略)。
きゅふぉん♪
『>掛からないよ』
一瞬の目配せ――狐と猫の目が光った。
どたたたどたたたたっ!
ボク以外の二匹が、手すりに向かって駆けだした。
何かの商売につながるとでも、思ったのかな。
連携の取れた、そつのない動き。
ああ見えて彼らには、勤勉な所が有――
「わ、我が先につかんだコォン!」
「いーや、あたしニャン!」
手すりに近い位置からスタートしたルコルが、ニャミカに追い越され――
「――踏ミ台に乗ったノはニャミカが、杖ヲ掴んだノはルコルが先でス――}
ポポーン♪
ウィィィィィィィィィィィィィン――――!
「コォォン!?」
「フッギャァー!?」
一瞬で姿を消す、二人。
この杖の付いた踏み台は、数本乗り継ぐだけで最上階まで、たどり着けるようになっている。
スゴイ勢いだけど、乗ってる間は揺れや風を一切感じないようになっていて――
――どんがらがっしゃぁぁぁぁぁん!
バケツとかホウキとか、狐とか猫とか。
そんなのが盛大に、すっ転んだ音がした。
「だ、大丈夫――!?」
きゅふぉん♪
『>大丈夫かい?』
「痛ったいミャ! ルコラコルが邪魔するからニャッ!」
「ニャミカこそ、割り込まないでくれたまえコォン!」
などと言い合いながら、掃除用具を片付け始める。
悪い奴らではない。しいて言うなら頭が……いやアーティファクトのややこしい操作を簡単にこなすのだから――阿呆ではない。
ないけど……かんがなしに突っ走るところが、あるだけなのだ。
「あれ? あっちのヤツは踏み台が広いニャン!?」
「ほんとだっ! みんなで乗れるコォン♪」
突っ走る人数分だけ、先走ってしまう人員構成。
「――シガミー。危険はナいと思われマすガ、放置すルのは――」
わかってる!
ポポーン♪
ウィィィィン――――!
「コォ――ン♪」
「ミャァ――♪」
きゅふぉん♪
『>まって、まって。
ぼくも乗せて!』
ポーン♪
ふう、ギリギリなんとか間に合った。
ウィィィィィィィィィィィィィン――――!
三匹は一瞬で、姿を消したことだろう。
§
「楽しい♪」って言って、昇ったり降りたり――
してるウチに、最上階に到着した。
ここは展望台。
〝普段は入れないけど、お祭りの期間中には誰でも入れます〟っていう張り紙がしてある。
「いやぁ、楽しかったコォォン♪」
「堪能したミャ♪」
満足してくれたみたいで、良かったけど。
「(こりゃ、こういう出し物に……なるんじゃないか?)」
「――そうデすね。のチほどギルド長に、相談してミましょう――」
さて、展望台。
ここは五百乃大角が最初に組み上げちゃったから、ぼくも来るのは初めてだ。
いつもの草原の向こう。
深い森の先が、どこまでも見える。
まえに砦の様子を確認するのに、避雷針の根元までのぼったときとは、比べものにならない。
川や山肌――天狗が開けた大穴まで、よく見えた。
「(アレ、今夜にでも塞いでおかなきゃな――一号を連れてった方が良いか?)」
「――ハい。収納魔法箱があレば、作業が速くすミます――」
よし、つぎは展望台の中を見て回る。
いま、最上階に詰めている衛兵は二人。
ガチャガチャガシャ!
定期的に位置を、入れ替えているようだ。
これなら、魔物の動きに変化があっても、すぐに発見できるだろう。
「――夜襲には、どう対処しましょうか?――」
城壁(城はないけど、この新ギルド屋舎が城みたいになった)の、光る魔法具じゃ森の奥までは見渡せないからな。
「(夜目が利いて、とおくを近くにする魔法具――ギルド長の眼鏡みたいなのは――〝無人工房〟で作れるか?)」
地下に建てた、人が居なくても物を作れる巨大な工房。
迅雷や五百乃大角が作るような物は無理だけど、簡単な物なら大量に作れる。
「――はイ、自動工作機械はハ正常《せイじょう》に稼働中デす。簡易的ナ暗視望遠鏡が作成できマす――」
うん、まあくわしいことは、任せるけど――三階分の場所をつぶして作ったからには、ぜひとも役立ってほしい。
さっそく作った、フェスタの冊子には、精巧な写し絵が満載で、どういう仕組みかわからないけど――二色も使って、濃淡や光沢まで描き込まれている。
「――現在はイオノファラーの指示デ、ギルド金庫のマスター鍵ヤ、キーホルダー……根付などヲ製造中でスので、その後、試作を開始しまス――」
わかった。いつ頃出来る?
「――約20分後ニ3階の新シガミー邸へ、お届け予定です――」
うん!? 早ぇ! 助かるけど――超早ぇーなっ!
ガムラン町に海はない。
夢と希望が表裏に書かれた紙が、ひらひらと床に落ちた。
ぼきゅこん♪
でかい頭がテーブルに当たった。
痛ぇな、痛くないけど。
きゅふぉん♪
『>よっこらしょっと』
拾った『テナント募集/転移陣のお知らせ』を、テーブルに置く。
分厚い冊子と、テナント募集の紙。
ふたつの間を、さまよう視線。
いまだテーブルに突っ伏す、二匹のケモノ耳。
きゅふぉん♪
『>ひとまず、
どうしようか?』
二人の目が、板をみた。
「カラテェーは、どうしたらいいと思うコォン?」
知らない、そんなことをぼくに聞かれても困る。
すると――カチャン!
階段の手すりに付いてる、面妖な杖みたいなのにつかまるギルド職員。
六つのうつろな瞳を向けられた彼女(まえにポグバードを査定してもらったことが有る)は――――ポーン♪
目をそらし、上へ昇っていった。
「アレは、なんニャ?」
きゅふぉん♪
『>新しいギルド屋舎は、
最上階が15階にもなるから、
階段の手すりに、上り下りする、
踏み台を付けたんだよ』
「ふぅん。なんだか我の魔法杖みたいだコォン?」
しおれていた狐の耳が、ピクピクと動きだす。
「アレは乗ると、お金が掛かるのかニャ?」
しおれていた猫の(以下略)。
きゅふぉん♪
『>掛からないよ』
一瞬の目配せ――狐と猫の目が光った。
どたたたどたたたたっ!
ボク以外の二匹が、手すりに向かって駆けだした。
何かの商売につながるとでも、思ったのかな。
連携の取れた、そつのない動き。
ああ見えて彼らには、勤勉な所が有――
「わ、我が先につかんだコォン!」
「いーや、あたしニャン!」
手すりに近い位置からスタートしたルコルが、ニャミカに追い越され――
「――踏ミ台に乗ったノはニャミカが、杖ヲ掴んだノはルコルが先でス――}
ポポーン♪
ウィィィィィィィィィィィィィン――――!
「コォォン!?」
「フッギャァー!?」
一瞬で姿を消す、二人。
この杖の付いた踏み台は、数本乗り継ぐだけで最上階まで、たどり着けるようになっている。
スゴイ勢いだけど、乗ってる間は揺れや風を一切感じないようになっていて――
――どんがらがっしゃぁぁぁぁぁん!
バケツとかホウキとか、狐とか猫とか。
そんなのが盛大に、すっ転んだ音がした。
「だ、大丈夫――!?」
きゅふぉん♪
『>大丈夫かい?』
「痛ったいミャ! ルコラコルが邪魔するからニャッ!」
「ニャミカこそ、割り込まないでくれたまえコォン!」
などと言い合いながら、掃除用具を片付け始める。
悪い奴らではない。しいて言うなら頭が……いやアーティファクトのややこしい操作を簡単にこなすのだから――阿呆ではない。
ないけど……かんがなしに突っ走るところが、あるだけなのだ。
「あれ? あっちのヤツは踏み台が広いニャン!?」
「ほんとだっ! みんなで乗れるコォン♪」
突っ走る人数分だけ、先走ってしまう人員構成。
「――シガミー。危険はナいと思われマすガ、放置すルのは――」
わかってる!
ポポーン♪
ウィィィィン――――!
「コォ――ン♪」
「ミャァ――♪」
きゅふぉん♪
『>まって、まって。
ぼくも乗せて!』
ポーン♪
ふう、ギリギリなんとか間に合った。
ウィィィィィィィィィィィィィン――――!
三匹は一瞬で、姿を消したことだろう。
§
「楽しい♪」って言って、昇ったり降りたり――
してるウチに、最上階に到着した。
ここは展望台。
〝普段は入れないけど、お祭りの期間中には誰でも入れます〟っていう張り紙がしてある。
「いやぁ、楽しかったコォォン♪」
「堪能したミャ♪」
満足してくれたみたいで、良かったけど。
「(こりゃ、こういう出し物に……なるんじゃないか?)」
「――そうデすね。のチほどギルド長に、相談してミましょう――」
さて、展望台。
ここは五百乃大角が最初に組み上げちゃったから、ぼくも来るのは初めてだ。
いつもの草原の向こう。
深い森の先が、どこまでも見える。
まえに砦の様子を確認するのに、避雷針の根元までのぼったときとは、比べものにならない。
川や山肌――天狗が開けた大穴まで、よく見えた。
「(アレ、今夜にでも塞いでおかなきゃな――一号を連れてった方が良いか?)」
「――ハい。収納魔法箱があレば、作業が速くすミます――」
よし、つぎは展望台の中を見て回る。
いま、最上階に詰めている衛兵は二人。
ガチャガチャガシャ!
定期的に位置を、入れ替えているようだ。
これなら、魔物の動きに変化があっても、すぐに発見できるだろう。
「――夜襲には、どう対処しましょうか?――」
城壁(城はないけど、この新ギルド屋舎が城みたいになった)の、光る魔法具じゃ森の奥までは見渡せないからな。
「(夜目が利いて、とおくを近くにする魔法具――ギルド長の眼鏡みたいなのは――〝無人工房〟で作れるか?)」
地下に建てた、人が居なくても物を作れる巨大な工房。
迅雷や五百乃大角が作るような物は無理だけど、簡単な物なら大量に作れる。
「――はイ、自動工作機械はハ正常《せイじょう》に稼働中デす。簡易的ナ暗視望遠鏡が作成できマす――」
うん、まあくわしいことは、任せるけど――三階分の場所をつぶして作ったからには、ぜひとも役立ってほしい。
さっそく作った、フェスタの冊子には、精巧な写し絵が満載で、どういう仕組みかわからないけど――二色も使って、濃淡や光沢まで描き込まれている。
「――現在はイオノファラーの指示デ、ギルド金庫のマスター鍵ヤ、キーホルダー……根付などヲ製造中でスので、その後、試作を開始しまス――」
わかった。いつ頃出来る?
「――約20分後ニ3階の新シガミー邸へ、お届け予定です――」
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