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2:カブキーフェスタへの道
172:龍脈の棟梁(シガミー)、オルコトリアVSシシガニャン
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「コイツを――切ってみろ。傷のひとつでもつけられたら、わしが手ずから相手をしてやる――わい」
ここは、ガムラン町の目のまえ。
いつもの草原。
はぁはぁ。もう、肩で息をするほど疲れきっていた。
たぶん明日は、五百乃大角に〝卵酒〟を作ってもらわなきゃならん。
つまり、金剛力を使いまくったあとの……あの凄まじい筋肉痛が待っている。
岩場から草原まで普通に歩いたら、15分程度。
たったそれだけの道すがらで――天狗と迅雷は疲れはてた。
「(おい、死ぬっほど大変だったじゃぁねーかっ!)」
一時間はかかってねーと思うけど。
「日が暮れるから」ってんで、鬼娘の肩まで借りる羽目になった。
「(はい、まさかこれまでの金剛力の使用で培われた、既存のデータセットが使えないとは思いませんでしたので――)」
わからん。シシガニャンを抱えて一歩あるくたびに、いろんな表示が出て、うるさかったから――一切合切の表示を切った。
案内表示も出ないから、本当にわけわからんまま。
「(まさか、迅雷なしで〝イチから歩き方を、覚えさせなきゃならねぇ〟とわ――やってくれるぜ――はぁはぁ)」
ペチペチと……猫耳頭の後頭部を、憎しみをこめて叩く。
「カカカッ――まったく此奴めっ! 手間を掛けさせおって……ふぅ」
はぁはぁ、天狗が弱ってるのを知られると、面倒なことになりそうだから――せいぜい虚勢を張って、鬼娘に気づかれないようにしないと。
「にゃっ、にゃにゃにゅにゃっ?」
誰にも着られていない――強い服。
「(正式名称は――極所作業用汎用強化服:シシガニャン〟です)」
叩かれた猫耳頭が、たたらを踏んで後頭部をさすってる。
まあ、とにかく。いろいろあって、どうにかこうにか、シシガニャンを草原に立たせた。
ヴッ――椅子代わりの丸太(輪切り)を出して、腰掛けた。
「(くっはぁー、つ、つかれたぜ……わよぜぇーっ!)」
はぁはぁはぁはぁ。
「でも、いいのか? コレは天狗殿の〝使い魔〟なのだろう?」
なんだか、猫耳頭をなでたそうなしぐさ。
背負った大量の剣が、カチャカチャ音を立てる。
「カカカッ――かまわぬ。切れる物なら切ってみせい。なんなら小太刀も貸してやるわぃ」
ヴヴヴッっ――――ガチャガチャガチャッ!
赤、青、黄、橙、緑、空、紫、虹。
収まる刀身まで、白鞘と同じ色。
物は試しと塗り分けた、色とりどりの居合刀だ。
すべてノヴァドが打ち、迅雷が研いだ物で。
たぶん、この世界に、これ以上の切れ味を持つ刃物は無い。
スキルや魔法やアーティファクトを介さない斬り合いなら、負けることは無い業物。
「えぇー? 草原に来るまでに、なんだか少し懐かれた気もするのよねー」
やっぱり、シシガニャンの頭か腹を、なでたそうにしている。
「まぁ、好きにせい。わしが勝負を受ける条件は、びた一文まからぬぞ」
ふぅぅぅー。やっと、息が整ってきた。
「もちろん、切るけど……一方的ってのもなぁ」
ガチャガチャと、居合刀を拾い集める鬼。
「やい鬼。それ、貸してやるだけじゃからな? 勘違いするでないぞ?」
「わかってる♪ わかってるわよ?」
なんだよその、ほくほく顔。
「言っとくがその魔物なぁ、たぶんわしの渾身の一撃でも……切れるかどうかあやしいぞぃ?」
そう。神々の理を秘めた、異質な物。
姫さんがシガミーにくれた、〝死んでも生きかえる紐〟ほどじゃねぇけど。
「(「〝追憶の結び紐〟です」 )」
そうそれ、反魂の術が使える紐。
いまも、おれの首に冒険者カードを吊り下げてる、人の世に有っちゃいけねぇLVの代物。
死者を蘇らせるほど、道理を曲げはしないけど。
絶対に切れない鎧も、ソレだけでじゅうぶんヤバイ。
シガミーのLVは100。
変異種の化け角兎を狩ったら、これ以上あがらない所まであがった。
それでも、いまだに五百乃大角や迅雷には、敵う気がしない。
筋肉痛に対する手だてが、いまだに五百乃大角印の卵酒しか無かったりもするし。
中々どうして、この来世も極めるには、わからねぇことだらけで――
「それを早く言って欲しかったわ、天狗殿――――」
――――ごきり、ばきり♪
小気味よく膨れあがる――鬼娘。
「――――遠慮は、いらないってワケねっ!」
ザギィィッィン♪
長剣が抜き放たれ――――ドスドス――――うぅおぉおぉおぉおわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
ただの突進から、繰り出された横薙ぎ。
流れるような剣に、目を奪われた。
「ふっ――ぎゃぁご♪」
くの字に折れまがる――猫耳頭《シシガニャン》!
鬼娘が長剣を、振り抜く――――!!!
フッォォォォン!?
あれ、猫耳頭どこ行った?
まさか、あまりの剣圧に、粉々に引き裂かれた!?
ゴッ、バガゴパァッ――――!
地を割る、オルコの差足。
おれの高下駄より、化け物じみてた。
陥没する――草原一帯。
「――――ふっぎゃにゃっゝ@ぴょぴょ☆ん∮※#!!!???」
猫だか鳥だが、なんだかよくわからない鳴き声と、木々がなぎ倒される音が遅れて聞こえてきた。
天狗と鬼娘が、割れた地面に飲み込まれていく。
あーもー、どうすんだよ。
おれとレイダの狩り場を、荒らしやがって。
ここは、ガムラン町の目のまえ。
いつもの草原。
はぁはぁ。もう、肩で息をするほど疲れきっていた。
たぶん明日は、五百乃大角に〝卵酒〟を作ってもらわなきゃならん。
つまり、金剛力を使いまくったあとの……あの凄まじい筋肉痛が待っている。
岩場から草原まで普通に歩いたら、15分程度。
たったそれだけの道すがらで――天狗と迅雷は疲れはてた。
「(おい、死ぬっほど大変だったじゃぁねーかっ!)」
一時間はかかってねーと思うけど。
「日が暮れるから」ってんで、鬼娘の肩まで借りる羽目になった。
「(はい、まさかこれまでの金剛力の使用で培われた、既存のデータセットが使えないとは思いませんでしたので――)」
わからん。シシガニャンを抱えて一歩あるくたびに、いろんな表示が出て、うるさかったから――一切合切の表示を切った。
案内表示も出ないから、本当にわけわからんまま。
「(まさか、迅雷なしで〝イチから歩き方を、覚えさせなきゃならねぇ〟とわ――やってくれるぜ――はぁはぁ)」
ペチペチと……猫耳頭の後頭部を、憎しみをこめて叩く。
「カカカッ――まったく此奴めっ! 手間を掛けさせおって……ふぅ」
はぁはぁ、天狗が弱ってるのを知られると、面倒なことになりそうだから――せいぜい虚勢を張って、鬼娘に気づかれないようにしないと。
「にゃっ、にゃにゃにゅにゃっ?」
誰にも着られていない――強い服。
「(正式名称は――極所作業用汎用強化服:シシガニャン〟です)」
叩かれた猫耳頭が、たたらを踏んで後頭部をさすってる。
まあ、とにかく。いろいろあって、どうにかこうにか、シシガニャンを草原に立たせた。
ヴッ――椅子代わりの丸太(輪切り)を出して、腰掛けた。
「(くっはぁー、つ、つかれたぜ……わよぜぇーっ!)」
はぁはぁはぁはぁ。
「でも、いいのか? コレは天狗殿の〝使い魔〟なのだろう?」
なんだか、猫耳頭をなでたそうなしぐさ。
背負った大量の剣が、カチャカチャ音を立てる。
「カカカッ――かまわぬ。切れる物なら切ってみせい。なんなら小太刀も貸してやるわぃ」
ヴヴヴッっ――――ガチャガチャガチャッ!
赤、青、黄、橙、緑、空、紫、虹。
収まる刀身まで、白鞘と同じ色。
物は試しと塗り分けた、色とりどりの居合刀だ。
すべてノヴァドが打ち、迅雷が研いだ物で。
たぶん、この世界に、これ以上の切れ味を持つ刃物は無い。
スキルや魔法やアーティファクトを介さない斬り合いなら、負けることは無い業物。
「えぇー? 草原に来るまでに、なんだか少し懐かれた気もするのよねー」
やっぱり、シシガニャンの頭か腹を、なでたそうにしている。
「まぁ、好きにせい。わしが勝負を受ける条件は、びた一文まからぬぞ」
ふぅぅぅー。やっと、息が整ってきた。
「もちろん、切るけど……一方的ってのもなぁ」
ガチャガチャと、居合刀を拾い集める鬼。
「やい鬼。それ、貸してやるだけじゃからな? 勘違いするでないぞ?」
「わかってる♪ わかってるわよ?」
なんだよその、ほくほく顔。
「言っとくがその魔物なぁ、たぶんわしの渾身の一撃でも……切れるかどうかあやしいぞぃ?」
そう。神々の理を秘めた、異質な物。
姫さんがシガミーにくれた、〝死んでも生きかえる紐〟ほどじゃねぇけど。
「(「〝追憶の結び紐〟です」 )」
そうそれ、反魂の術が使える紐。
いまも、おれの首に冒険者カードを吊り下げてる、人の世に有っちゃいけねぇLVの代物。
死者を蘇らせるほど、道理を曲げはしないけど。
絶対に切れない鎧も、ソレだけでじゅうぶんヤバイ。
シガミーのLVは100。
変異種の化け角兎を狩ったら、これ以上あがらない所まであがった。
それでも、いまだに五百乃大角や迅雷には、敵う気がしない。
筋肉痛に対する手だてが、いまだに五百乃大角印の卵酒しか無かったりもするし。
中々どうして、この来世も極めるには、わからねぇことだらけで――
「それを早く言って欲しかったわ、天狗殿――――」
――――ごきり、ばきり♪
小気味よく膨れあがる――鬼娘。
「――――遠慮は、いらないってワケねっ!」
ザギィィッィン♪
長剣が抜き放たれ――――ドスドス――――うぅおぉおぉおぉおわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
ただの突進から、繰り出された横薙ぎ。
流れるような剣に、目を奪われた。
「ふっ――ぎゃぁご♪」
くの字に折れまがる――猫耳頭《シシガニャン》!
鬼娘が長剣を、振り抜く――――!!!
フッォォォォン!?
あれ、猫耳頭どこ行った?
まさか、あまりの剣圧に、粉々に引き裂かれた!?
ゴッ、バガゴパァッ――――!
地を割る、オルコの差足。
おれの高下駄より、化け物じみてた。
陥没する――草原一帯。
「――――ふっぎゃにゃっゝ@ぴょぴょ☆ん∮※#!!!???」
猫だか鳥だが、なんだかよくわからない鳴き声と、木々がなぎ倒される音が遅れて聞こえてきた。
天狗と鬼娘が、割れた地面に飲み込まれていく。
あーもー、どうすんだよ。
おれとレイダの狩り場を、荒らしやがって。
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