上 下
135 / 735
2:カブキーフェスタへの道

135:龍脈の棟梁(シガミー)、シシガニャンVS妖狐2

しおりを挟む
 ごごごごごぉぉぅん。
 地鳴じなりのように、ふるえる感覚かんかく
 けど、ここは空中ちゅうだ。ふるえる地面じめんがねぇ。

 ごごごごごぉぉぅん。
 総毛立そうけだつ。
 ちかくで大筒おおづつでも、ぶっぱなされてるみたいだ。

 〝聖剣切ぶったぎり〟が〝分断ぶんだんされて視界しかいがズレる〟、あの予感よかんなら――
 このふるえは――その場に居続いつづけると、確実かくじつにからだねつがなくなる――〝死そのもの〟だ。

 足下あそもとを見やる。

「いけねっ、伯爵夫人きつねびどこいった?」
 一度いちど発火しひをつけたらてき自分じぶんのどちらかが、〝めっす〟まで止まらない。
 真言しんごんっていうのは、その覚悟かくごのことだ。
 つまり、狐火きつねびはどこかでくすぶってる。

「――敵影消失てきえいロスト余力よりょくをつかい、滞空たいくうします――」
 このふくくびのうしろには迅雷ジンライが埋め込まれてるから、落ちるのをおそくすることが出来できる。

 迅雷ジンライが掘った縦穴たてあなは――
「――ふかさは120メートルです――」
 その10ばいって言うと――
「――ガムランちょう直径ちょっけい……ながさほどです――」

「(そんなにたかところから落ちて平気へいきなのに、なんでこのあいだ、落っこちたときに、全部ぜんぶ細腕かいな使つかい切った?)」
 ふた首大鷲くびおおわしから逃げて、渓谷けいこくから落ちたとき、迅雷ジンライ細腕かいな――つまり天狗一式こんごうりきが使えなくなって、ひどい目にあった。

「――あのとキは、サきに落チた、ルコル少年しょウねんたスけるタめに全速力ぜんそくりょクがケ駆け下りたから・・・・・・・でス――」
 そういや、そうだった。じゃ、ただ落ちるだけなら、大抵たいていたかささに耐えられるんだな。
 この服……〝猪蟹屋ししがにゃん〟を着てれば、余計よけいに。

 『▼』――ぴぴぴっ♪
「――ルリーロノ動体反応どうたいはんノう建設予定地けんせつよていチ中央ちゅうおう移動中いどうちゅウ――」

 こぉぉぉぉぉぉん、こぉぉぉぉぉぉん、こぉぉぉぉぉぉん、こぉぉぉぉぉぉん、こぉぉぉぉぉぉん、こぉぉぉぉぉぉん、こぉぉぉぉぉぉん――――――――――――!!!

「おかあさま……いえ、ははの――遠吠とおぼえですわぁ――!?」
 ジタバタしだすひめさん。
「だからしゃべるな、あばれるな!」
 どうしたってんだ?

 こぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん――――――――――――!!!
 こんな、きつねの鳴きごえくらいで。

「――リカルルの脈拍みゃくはく呼吸数こきゅうすうともに上昇じょうしょう恐怖きょうふかんじじているようです――」

 ぽぅぽぅぽぅぽぅぽぅぽぅぽぅ――。
 ちいさな狐火きつねび大穴おおあなの真んなか、ぼくたちの落下予定地らっかよていちからはなたれた。
 ちいさな『もーしょんなんたら』が張りついて、追いかけていく。

心配しんぱいすんな! 姫さんリカルル母上ははうえさまは、かみ眷属けんぞく名乗なのってる。けっしてわるいもんじゃねぇし、そもそもむすめが居るのに――滅多めったなことをするはずがねぇだろぅ?」

「おかあ……ははは、スパルタなんでぇすぅのぉよぉ――――!」
 酢原焚すぱるた
 じたばたじたばたじたばった――あぶねぇ落ちる!

「――スパルタ教育きょういく……きびしい戒律かいりつもとにおこなわれる――修行しゅぎょうのことです。地表ちひょうまで34びょう――」
 脇腹わきばらのあたりが――ヴ。
 ふくから、毛皮けがわみたいな細腕かいなが生えて――
 にゅにゅにゅにゅにゅぅーっ――――っきゃぁぁっぁぁぁぁぁぁぁっ!?
 細腕かいなひめさんを、しっかりと押さえ込んで――うるせえ。

 それにしても、修行ぎょうか。
 生半可なまはんかなことでは身につかないじゅつを、手にするための唯一ゆいいつ方法ほうほう
 おれぁ一廉ひとかどのものになるまで、20ねんついやした。
 ソレをかんがえたら、姫さんリカルルがこのとし聖剣切ぶったぎりや、ほかのおくの手を身につけてるのは――
「――賞賛しょうさンあたイしマす。もっトも生マれ持っタ資質スきルに寄ルとこロも、大きイのでしょうが――」

「はっ、はははっはははははははははっはやく逃げないと、死んでぇしまいまぁすわぁーっ!」
 じたじたばた――――!
 必死ひっしにもがくさまは――すこし無様ぶざまで、気品きひんのかけらも無かった。
 ――どれだけこわいんだよ。

「――リカルルヲ拘束こうそクするノに、神力しんりょク消費中しょうヒちゅう滞空たいくウ使用しヨうでキる余力ヨりょくが18%減少パーセントげんシょう地表ちひょウまデ16びょウ――」
 ガクン、ひゅぉぉぉぉぉぉっ――――落ちる速度はやさが、はやまった。

「まったく、おれはそんなに信用しんようねぇのか? かりにも御前おまえさんを――一度いちどたおしたおとこだぜっ!」
 かおを寄せ、言いはなつ。
「っきゅん――――!」
 獲物えもの仕留しとめたときみたいな、こえにならないこえ

「――現在げんざイ、シガみーは男性だんセいではアりません。リカルルノ脈拍みゃくハく呼吸数こきゅうスうとモにじょウ――――」
 んなのは後回あとまわしだ――もうやべぇ、落ちる。
 落ちるさきには――――妖狐ようこが待ちかまえていた。

 ぼぉう――ぼぉう――ぼぉう――ぼぉう――ぼぉう――ぼぉう――ごぉわぁぁぁぁぁぁぁぁっ――――――――!

 ながたかく立ちのぼる、あお仄暗ほのぐらほのお

 そのあいだを、何本なんぼんもの魔法の神髄ひかりのすじが伸びていく。
 幾重いくえにも寄りあつまった活力マナながれは――龍脈りゅうみゃくそのものだ・・・・・

「あらっ、いつものバリバリビリビリする魔方陣まほうじんじゃありませぇんわぁ!? な、なんですのぉ、この一本筋いっぽんすじ魔方陣まほうじんわぁー!?」
 みぃたぁこぉとぉがぁありぃまぁせぇんーわぁぁぁーっ!
 放心状態ほうしんじょうたいから復活ふっかつした姫さんリカルルが――うるせえ。

「こんなのは、〝ほしかたち〟に決まってるだろうが!」
「星《ほし》のかたちって、なぁんーでぇすぅーのぉー!?」
星座せイざのことでス」
「コォンなかたちのぉ、星座なんてぇーありまぁせんでぇーしてぇーよぉーぅ!?」

 にちがつぼっごんすい
 つながるほのおが、あらわしているのは――七曜しちようほし

きょくもってんことわりすくう、柄杓ひしゃくかたち。まちがいねぇ――こいつぁ、鍵星かぎぼしだぜっ!」
 ごごごぉぉぅん、ごごごぉぉうん、どごごごごごっごごががががぁぁん!
 また、あの地鳴じなりだ。どんどんおおきくなってる。

 地表ちひょうにあらわれた、目に見える龍脈りゅうみゃく
 そのすぐそばに、ちいさなふたつのほしがきらめく。

 薄暗ほのぐらいあなそこでも――
 狐火きつねびのひかりのなかにあっても――
 まぎれることなく、ソコにある――昼中ひるなかに見えないはずの双月ふたつぼし
 言葉こえわさずとも、「くつくつ、けたけた」とつたわってくる。
 獲物えものを見る、けものの目だ。

「くすくすくす、クツクツクツクツ、シガミーちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん♪ わたぁくしぃーにぃー勝ったらぁー、なぁんでもひとつ、いうことをきいてあげぇるぅぅぅぅうっ――――!」
 自分じぶんからだよりおおきな山菜束つえを――――フォフォフォフォッフォォォォォォォン!
 頭上ずじょうに伸ばしたゆびうえで、クルクルと回転かいてんさせる伯爵夫人ルリーロ狐耳きつねみみ狐尻尾きつねしっぽ)。

「あーもー、母娘おやこそっくりじゃねぇーか!」
 まえが見づれぇ、ひめさんを背中せなか背負せおえるか?
「わ、わたぁくしぃわぁー、あそこまで凶暴きょうぼうでわぁありませぇんわぁー!」

 にょにょにょにょにょにょりん、がしり♪
 ちょっ、どこをさわっているんでぇすぅのぉー!?
 うるせえ、いてえ――あたまたたくな!
 毛皮腕かいな協力きょうりょくして、伯爵リカルル・リ令嬢・コントゥル背中せなかにまわす。
 これなら直撃ちょくげきを喰らっても、いくらかふせげるだろ。

「――でハ、頭部防具とうブぼうぐ再装備さいソうびしまス――」

 ぷぴぽぽーん♪
『>〝頭部防具:シシガニャン・へっど〟を装備します』
 ギュッ――ばくん♪
 兜頭あたまがうしろから、きゅうに閉じた!
 真っくらになって――ヴュパパパパッ♪

 耳栓みみせんが――すぽんとはずされ――「っぎゃぁぁぁぁっ、シシガミー!? いますぐたすけてさしあげますわっ!」――そとのおとが聞こえてきた。
 また、ソレやんのか。
喰われてねえふみゃみゃぎゃ喰われてねえにゃみゃぁーご魔物じゃないよにゃるるるるぅ

 ごごごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉうん、どごごごごごっごごががががぁぁん!
 地鳴じなりが、止まなくなり――――ごばぎゃぎぼごごぅおぅわぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ――――――――かちゃり♪
 妖狐ルリーロが手にした山菜束まほうつえ先端さきが――――――ひろがっていく!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ@10シリーズ書籍化
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

遺跡に置き去りにされた奴隷、最強SSS級冒険者へ至る

柚木
ファンタジー
 幼い頃から奴隷として伯爵家に仕える、心優しい青年レイン。神獣の世話や、毒味役、与えられる日々の仕事を懸命にこなしていた。  ある時、伯爵家の息子と護衛の冒険者と共に遺跡へ魔物討伐に出掛ける。  そこで待ち受ける裏切り、絶望ーー。遺跡へ置き去りにされたレインが死に物狂いで辿り着いたのは、古びた洋館だった。  虐げられ無力だった青年が美しくも残酷な世界で最強の頂へ登る、異世界ダークファンタジー。  ※最強は20話以降・それまで胸糞、鬱注意  !6月3日に新四章の差し込みと、以降のお話の微修正のため工事を行いました。ご迷惑をお掛け致しました。おおよそのあらすじに変更はありません。  

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

異世界で勇者をやって帰ってきましたが、隣の四姉妹の様子がおかしいんですけど?

レオナール D
ファンタジー
異世界に召喚されて魔王を倒す……そんなありふれた冒険を終えた主人公・八雲勇治は日本へと帰還した。 異世界に残って英雄として暮らし、お姫様と結婚したり、ハーレムを築くことだってできたというのに、あえて日本に帰ることを選択した。その理由は家族同然に付き合っている隣の四姉妹と再会するためである。 隣に住んでいる日下部家の四姉妹には子供の頃から世話になっており、恩返しがしたい、これからも見守ってあげたいと思っていたのだ。 だが……帰還した勇治に次々と襲いかかってくるのは四姉妹のハニートラップ? 奇跡としか思えないようなラッキースケベの連続だった。 おまけに、四姉妹は勇治と同じようにおかしな事情を抱えているようで……? はたして、勇治と四姉妹はこれからも平穏な日常を送ることができるのだろうか!? 

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

処理中です...