滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

２：カブキーフェスタへの道

１３４：龍脈の棟梁（シガミー）、シシガニャンＶＳ妖狐

「ほんとーわぁ、あのカラテェーちゃんっていう神出鬼没レアな子にぃー、お・ね・が・いがあってぇー、一張羅いっちょうらを着てきたのぉですけれどぉ――――♪」
　ちいさな肩かたを怒いからせてみせる、お狐きつねさま。

　一張羅いっちょうらだってぇ？
　姫さんリカルルの甲冑かっちゅうほど派手はでじゃないけど、似たような拵こしらえ。

　ふぉん♪
『狐月シリーズ一式【火宴】
　全防御力８４３（ー１１０）。魔法攻撃力５５６（＋１４４）。
　火属性魔法特化型の甲冑一式（アーティファクト）。
　追加効果／ＳＴＲ＋３５／ＡＴＫー２／ＶＩＴー６
　　　　　／ＩＮＴ＋１４４／ＤＥＦー１１０
　条件効果／【煉獄】初撃のみ火炎ダメージ３２％上昇。
　装備条件／ＩＮＴ４５、ＤＥＦ２５』

「――フル装備そうビデ臨のゾむ、おねがいトは？――」
　ろくなこっちゃねぇー……ないに決まってる。
　やっぱり、姫さんリカルルの戦闘狂せんとうきょうは、妖狐ようこ……えーっと？

「――ルリーロ・イナリィ・コントゥルでス――」
　そう、それ。あの〝月影つきかげの眼まなこ〟も母上ははうえゆずりってこった……ことだね。

「あ、まさか――（ひとり二役ふたやくだって……バレたのか？）」
　本当ほんとうは、天狗てんぐも入れた三役さんやくだけど。
「――いまノ段階だんかイでハ、確証かくシょうがアりません。ようスを見ましょウ――」

「うふふふっ、くすくすくす、クツクツクツクツ――――コォＯＮおぉん！」
　四つ足あしになり、尻尾しっぽを振りあげ唱となえられたのは、まさに真言しんごん。
　ぎちり――――――――シュッボゥ！
　発火はっかしたのは、狐火きつねび……つまり人魂ひとだまだ。

「姫ひめさん、逃げろっ！」
　まえと同おなじ瀑布火炎ばくふかえんの術じゅつなら、あたり一面いちめん、つめたい炎ほのおにつつまれる。
　ごぉぉぉぉぉぉぉっぉぉわわわわわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――!!!

「えっ？　きゃぁぁぁぁぁぁぁっ――――――――!?」
　ちっ、今日きょうは剣けんくらいしか装備どうぐがねぇんだったか。

　ぽっきゅむぅん――あぶねっ、跳ねちまった！
　上うえじゃなくて前まえに進すすまねぇと――――空中ちゅうで体からだをひねり、着地ちゃくち。
　ととたたぁたたぁーん――――すぽん♪
　姫ひめさんをすくい上げるように、両手りょうてで抱かかえた。

「でぇーじょーぶかい？　よいしょぉ！」
　ぼくの小ちいさいカラダだと、すこし上うえに持ち上げないと、姫さんリカルルの〝絢爛豪華けんらんごうか〟な尻しりが割れちまう。

　ふぉふぉん♪
『＞足の長さ：変えられます
　＞伸ばしますか？　Ｙ／Ｎ』

「やってくれ！」
　ぐん、ぐぅん、ぐぐぅぅうぅーん♪
　おわとっと！
　足を踏むたびに、カラダが持ち上がってく。

「わっ、きゃっ!?」
　うるせえ。耳元みみもとで騒さわぐな。くすぐってぇよわぜ。

　ふぉん♪
『＞膝下を３０センチ、リフトアップしました』
　天狗てんぐの高下駄たかげたと、烏天狗からすてんぐの下駄げたのあいだくらいか。
　地を蹴る感触かんじは、変わらない。
　コレで姫さんリカルルの豪華ごうかな尻しりが、割れずに済むぞ。

　ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっぉおぉっぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ――――!!!
　つめたい炎ほのおが濁流だくりゅうとなって、押しよせる。
　コレが瀑布火炎ばくふかえんの術じゅつだとしても、おれ……ぼくの技わざとはまるでちがった。

　ごごぅっ――――ごばぁぁっ、しゅごごぉぉぉぉうっ――――――――！
　避けても避けても、ドコまでも追ってくるのだ。
　だいたいおれぁ、尻尾しっぽなんか生えてねぇから、炎をあやつれねぇ・・・・・・・・。

　ぽきゅぽきゅっ、すたたとぉぉぉん――――！
　反対側はんたいがわの崖がけまで――速はやさがのれば、せいぜい８歩だ。

「し、シガミーは、お、お母かあさまの、あの〝つめたい炎ほのおの高等魔術こうとうまじゅつ〟を、し、知ってますぅのぉー？」
　舌したをかむぞ。
「――リカルルは、〝狐火きつネび〟ヲ知らない・・・・ようですネ――」
　ああ、けど――そばに姫さんむすめが居るのを承知しょうちで、いきなり真言マントラを唱となえやがった。

「――どうも奥方おくがたさまは、隠かくすつもりが無いみたいだから言うけど――ありゃ、ぼくの日の本こきょうで僧侶そうりょや修験者しゅげんしゃがつかう術じゅつだ」
　まえに化かバカされたときにも見た、指先ゆびさきでむすんだ焔ほむらの印いん。

　そもそも、江戸えど……東ひがしの都みやこってはっきり言ってたから、まちがいなく同郷どうきょうだ。
　種族しゅぞくはちがうみてぇ……みたいだけど。

「し、しし、シガミーが、いっつも自分じぶんの腕うでを燃やしていた、下手へたくそな魔術まじゅつですわよね？」
「へたくそは余計よけいだ……よね」

　しゅるしゅるしゅるるるるるるるるるるるるるっ、ぼごぅおわぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ――――!!

　巻きつくように、先回さきまわりされたので――――どっぉりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!

　すととぉぉぉぉん、ぽきゅむっ――――♪
　仄暗い炎ひとだまが届とどかないくらい高たかくまで、力一杯跳ちからいっぱいとんでやるっ！

　ふぉん♪
『＞追加されたプロダクトアームにより、跳躍力が倍化しています
　＞注意してください』
　だからな、そういうことは先さきに言えってん……言ってよ。

　むぎゅっ、すととぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉっぉぉおっぉぉんっ――――――――――――――――――――！
　深ふかい断崖絶壁だんがいぜっぺきを、ひといきにとび越え――――地面じめんの上うえにでた。
　あたりには誰だれもいない。いつもより、静しずかなガムラン町ちょう。

　ひゅぅぅぅぅぅぅっ――――ぶわぁさささっ！！
　吹きあがる風かぜが、ぼくや姫ひめさんの髪かみを、暴あばれさせる。

「――っきゃぁぁぁぁっ!?」
　うるせえ。ちょっと高たかく飛んだ、だけじゃねーか。
　けど、こうして必死ひっしにしがみ付かれると、なんだか普通ふつうの町娘まちむすめと変わらなく思おもえて――
「こらっ、シガミー！　もっとちゃんと持ってっ、あぶないですわよっ！」
　……ニゲルは、中々なかなかどうして……大物おおものかもしれない。

　こんなに高たかく飛べるなら、姫ひめさんを地上うえに降ろしてやれるな。
　真上まうえに跳んじまったから、いったん落ちなきゃなんないけど。

「もう一回跳いっかいとんで、地上ちじょうに下ろすよ。舌したをかむから少し、だまってて！」
　このまま両足りょうあしで落ちて、服ふくは大丈夫だいじょうぶか？
「――はイ。こノ１０倍ばイノ高タかさデも耐えられマす――」
　上等じょうとうだ……よね。

「――――――――っきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
　うるせえ。おれ……ぼくたちは深ふかい地の底そこに落ちていく。