上 下
125 / 737
2:カブキーフェスタへの道

125:カブキ者(シガミー)、カブキーフェスタ前哨戦その2

しおりを挟む
 かべを蹴り――天井てんじょう着地ちゃくち――できたっ!
 かべつたって階段かいだんに降りたのの――上下逆じょうげぎゃく
 やっぱり、この子供シガミー体現たいげんするチカラは、異常いじょうなまでに研ぎ澄まされてる。

「――止まルと落ちマす。注意ちゅうイしてくダさい――」
 わかったよ。重心じゅうしんてんじょうに張りつかせる。
 〝草履ぞうり〟のあしうらで、〝地〟をつかむ感覚かんかく
 〝下駄げた〟だし〝天井てんじょう〟だけど――なんでかできる。
 これは、ひょっとしたら……LVレベル100の恩恵おんけいかもしれない。

 ――――――――ッシャァァァァァァァァァァァァァッ!
 まるで蝙蝠こうもりのようにぶら下がり、おおききく一回転いっかいてん
 天井てんじょうにはなにもないから、好きにすべれる。

「クカカカカッ――――!」
 さかしまにぶら下がり、天井てんじょうはしくろずくめの子供こども――まるで妖怪ようかいだ。
 狐耳帽子きつねみみぼうしいろくろくした)のくろづくめだから、さしずめ蝙蝠こうもりか。
 蝙蝠妖怪ぼく鬼娘オルコトリアが、追ってくる。

 下駄げた正面しょうめんで受けられる〝ゲタスベール〟は一回いっかい使つかっちまったから――のこしておきたい。
 なら、小太刀かたなでも一回いっかい、受けてみても良っか。

「(今度こんどかたなで)――受ける!」
 仕組しくみはややこしいが、〝ビッシリと栴檀草の実ひっつきむしがくっついてる〟そして、その〝向きを切り替えられる〟のさえ――わかれば使つかえる。

 小太刀こだちからパァンという、ちいさな感触おと
 何重いくえにもかさねられた〝ゲタスベール〟の一枚いちまいが剥がされ、すべる向きがぎゃくになった。
 これで小太刀こだちは、一切いっさいすべる事なく――鬼娘オルコ長剣ちょうけんに食いつくはず。

「――んぁ? なんのはなししてたんだっけ?」
 むくり――長机ながつくえうえで、わらいころげていた御神体さまいおのはらが、起きた気配けはい
 〝動くものをモーション見える化するなんたら〟が五百乃大角いおのはら輪郭りんかくを、浮かび上がらせる。

 最悪さいあく、アイツに場を強引ごういんに、おさめてもらうしか無くなるかもなー。
 まがりなりにもかみだからか、ああ見えてあたま相当良そうとうよくてくちもうまい。
 見返みかえりのめし豪華ごうかになるから、あんまりたよりたくはないが。
 ここの連中れんちゅう美の女神こいつの言うことなら、すんなり受け入れてくれるからなあ。

 ――ッシャッ……ズザザァ――ッ!
「あ、いけね。いきおいいが止まる」
 最初さいしょの〝階段かいだんをすべり降りたいきおい〟が切れた。
 もう行かないと――――ドォン!
 かべ、いや天井てんじょうを蹴り、直下の鬼オルコトリアへとびこむ!

 ごきり――ばきり――からだをひねり――直上ちょくじょうからせま烏天狗ぼくを、むかえ撃つおに――――コォォォォォォッォッ!
 その目とつのから、あやしいひかりがほとばしった!

「あはははははっはははっ――――!」
 わらってやがる。このまちには、戦闘狂せんとうきょうしか居ねぇのかっ。

 せま長剣ちょうけん――――ゴォォォォォォォォォォォウッ――――小太刀を放つうおっりゃぁ

「――あ、そうそう烏天狗からすてんぐ……って天狗てんぐの――かくし子じゃなかったっけ?」
 そんな御神体さまいおのはらの、言葉こえを聞いた鬼娘オルコひざが――ガクンと落ちた。

 やっべぇっ!
 うなりを上げるおに長剣つるぎと――もうはなっちまった、おれの小太刀いあいが〝だんだら(平行へいこう)〟になる。

 なんてことしてくれんだ、あの御神体さまいおのはらはよぉー!
 このままだと――かたながぶつからず、おたがいを斬りあう。

 鬼娘おまえも、御神体さまいおのはら与太話よたばなしくらいで、気をみだすなってんだよー!

 死中しちゅうかつ
 そんなものは、前世ぜんせ散々さんざんやってきた。
 〝決死《けっし》の覚悟かくご〟が無かったら、来世こっちに来てからの人生じんせいも、どこかでお陀仏だぶつだったはず。
 姫さんリカルル、ゴーブリンの群れ、化けウサギ、ふたくび大鷲おおわしなんかもいたな。

 蘇生薬エリクサーは、補充ほじゅうして、指輪ゆびわにしまってある。
 最悪さいあくふたつにされても、ひと呼吸いきさえ出来できりゃ――死なずに済むなんとかなる

 小太刀こだちを投げ捨て――――籠手こておおきく伸ばす。
 姿勢しせい安定あんていさせ――――あとは、この子供シガミーの〝体現たいげんするチカラ〟に賭ける!

「(やっぱ下駄げたで)――受ける!」
 その長剣つるぎ――へし折ってやる!

 鬼娘オルコトリアの、ふぬけたつらを、踏みつけるように――――下駄げたかかとをガチンと打合うちあわせた!
 ゴォウ――鬼の瞳にわれにかえる生気が宿るオルコトリア

「クカカカアッ――――――――!!!」
「ぅぉォッォぉオおオぉお――――――――!!!」
 ばきり――ごきり――――フォフォフォォォォオォンッ!
 振ったつるぎ剣筋けんすじを変える――――鬼娘の膂力こんごうりき

 なんだそりゃ――両目りょうめ見開みひらき、ねじ曲げられた切っさきを見つめる。
 まばたきしたら、下駄げたあいだを抜かれて、縦に・・真っぷたつだ。

 燕返つばめがえしの比ではない――おに変幻自在へんげんじざいけん

 その切っさきを、死に物狂ものぐるいで――――ギャキィンッ――――はさんだ(下駄げたの歯で)!

 ッシャァァァァァァッ――――ぐぎぎぎっ!?
 ながつるぎやいばうえを、すべり降りる・・・・・・――妖怪ようかい烏天狗からすてんぐ

「「「「「「「「「「「「「「けんうえを、すべったっ!?」」」」」」」」」」」」」」
 蟹股がにまたで、まるで小猿こざるみたいな格好かっこう
 目のまえを、工房長ノヴァド自慢じまんのジンライ鋼製こうせい剣身けんしんのぼっていく!

 あぶねえ――切れる切れちまう――――あしちからをちょっとでもゆるめたら、一刀両断いっとうりょうだんだ。

 踏ん張れぇ――――――――ッシャシャァァァッ――――ガッゴン!!!
 すぐ長剣ちょうけんつばに、ぶち当たった!

「くっ――!?」
 衝撃しょうげきによろめくおに
 ひらいたあしあいだに――――降り立つ、妖怪ようかい烏天狗からすてんぐ

 ゴゴッゴガァ――――ッ!!!
 かた石床ゆかに突き刺さる――妖怪くさび

 ビキバキゴキバキャァッ――――――――下駄げたの歯が石床ゆかしずんでいく。
 割れる石床ゆかに這いつくばる――妖怪おれ

 ▲――――ピピピピピピピピッ♪
 〝動くものをモーション見える化するなんたら〟が、危険きけんを知らせてくる!
「がぁぁぁぁぁぁぁっ――――!!!」
 オルコトリアおにむすめこえ
 振りおろされる、豪腕ごうわん気配けはい

「(やべぇぇぇっ――――あたまが無くなったら、蘇生薬エリクサー使つかえねぇ)――――!」
 真言マントラ発火はっかしてないし。
 いんもむすんでない。
 けど――――なんでか、あとからとなえると威力が変わる・・・・・・

 そんなゆめみたいなチカラが、この世界せかいにはある。
 じゅつだ。
 そしてコレは・・・、ソレともちがう――まさに――邪法じゃほう
 その呪文じゅもんを――となえてやった!

「――――――めっせよ!」

 冒険者ぼうけんしゃギルト(レイダとギルドちょういえでもある)が壊滅かいめつした。
 さいわい……死者ししゃは出なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

キャラ交換で大商人を目指します

杵築しゅん
ファンタジー
捨て子のアコルは、元Aランク冒険者の両親にスパルタ式で育てられ、少しばかり常識外れに育ってしまった。9歳で父を亡くし商団で働くことになり、早く商売を覚えて一人前になろうと頑張る。母親の言い付けで、自分の本当の力を隠し、別人格のキャラで地味に生きていく。が、しかし、何故かぽろぽろと地が出てしまい苦労する。天才的頭脳と魔法の力で、こっそりのはずが大胆に、アコルは成り上がっていく。そして王立高学院で、運命の出会いをしてしまう。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...