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2:カブキーフェスタへの道

123:カブキ者(シガミー)、影武者ニャミカ推参!

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「……コンコン、はいってますコン?」
 ん? かんがえごといそがしいって言うのに、だれか来た。

「……まったく、あんニャに食べるから、おなかをこわすミャ?」
 ドア越しでこえがとおいけど、このこえには聞きおぼえがある。

「――シガみー――」
「(ああ、まったくなにやってんのかな、アイツらは――)」
 ギルドの一階いっかいにはトイレが、何カ所なんかしょかにある。
 けど隣町となりまちのギルドとはつくりがちがうので、彼等かれらは気がつかないかもしれない。

「(かわいそうだから、ひとまず出るか)――はい、出ますよー」
 ガチャリッ――キィィ。
「すまないコン。たすかったコォン」
 バタンッ――ガチャリッ!
 入れかわりに、トイレにかけこむルコル。

「あニャん? その帽子ぼうし――どっかで見たニャ」
「ぼくだよ、ニャミカ」
 みせに出る格好かっこうだと、後々シガミーと同一人物だとバレそうだから――カラテェの格好かっこうにした。
 ルコルにもらった獣耳けものみみ帽子ぼうしくろ覆面かおぬの
 そのしたもり採取さいしゅするときに、時々ときどき着てた袖長そでなが山袴ズボンにした。
 普段ふだんはやらないけど迅雷ジンライ使つかえば、こんなふう早着替はやきがえができる。

「あらっ、カラテェじゃニャいの! ひさしぶりニャッ♪」
「まだ半日はんにちも、過ぎてないよ?」

「……えっ――カラテェコォン?」
 とびらなかから覇気はきのない、あわてごえが聞こえた。
「そうだよ。おなか大丈夫だいじょうぶ?」
 この時間じかんがないときに――けど、せっかく出来でき友達ともだちだ。
 こまってるならたすけてやりたい――本当ほんとう時間じかんないけど。

「――そうでスね。かりにモやトぬシ同僚どウりょうでモ、あるわけでスし――」
 本当ほんとうに〝かり〟だけど、そうなるなー。
 ぼくは仮にも、ルコルの喫茶店カフェ『ノーナノルン』の専属せんぞく鍛冶職人かじしょくにんだ。
「ちょっと、食べ過ぎただけだから――大丈夫だいじょうぶコォォン」
 いつにも増して、覇気はきがなかった。

「じゃあコレ――毒消どくけそうからつくった、おなかのくすりをあげるよ――あとみずも」
 ヴ――小さなコップにつくり置きの丸薬がんやく――ころん。
 生活魔法みずのたまを――ちょろり――そそいでやる。

 ガチャリッ――キィィ。
「ありがとうコン。おんにきるコォォン」
 あいたドアからのびる手に、わたしてあげる。

 さっ――バタンッ――ガチャリッ!
 再び閉じられるドア
「(食べ過ぎ、飲み過ぎ、下痢げり便秘べんぴとなんにでも効くから、たぶんコレで大丈夫だいじょうぶ――だよね?)」

「――はイ。ありとあらユる毒物中和どくぶつちゅうワ整腸作用せいチょうさようもあるのデ、5ふンヤすめバ回復かいフくするとおモわれまス――)」

「ふぅ――それで、お目当めあてのものは――おいしく食べられた?」
「それはそれは、おいしかったニャン♪」
「……それはそれは、食べ過ぎるほどコォォォォォォン――――!?」
 ドアの向こうから、覇気の無い雄叫びが聞こえてきたので――ぼくとニャミカは広間ロビーまでもどった。

   §

「ふぅん。まちひとへの、お師匠さま・・・・・からのことづてをたのまれたコォン?」
 あのあとすぐ、ルコルはスッキリとした顔で、トイレから出てきた。

「けど、お弟子さん・・・・・だって証拠しょうこになる手紙てがみを無くしたのニャ?」
 ぼくたちは階段下かいだんした長椅子ながいすすわって、はなしをしている。

「そうなんだよ。どうしようかなって」
 かんがえごとがかおに出てたみたいで、ものすごく心配しんぱいされたから、そういうことにしておいた。
 覆面かおぬの越しによくわかるなとおもうけど、獣人族じゅうじんぞく相手あいての気もちを推しはかる能力ちからはとてもたかい。

 …………獣人族じゅうじんぞくのリカルルの傍若無人ぼうじゃくぶじん行動こうどうは、相手あいての気もちを推しはかったうえおこなわれているので――
「――タチがわルいでスね――」
 まあ、そういうな。アレはアレでなかなか出来できることじゃない。
 ぼくに、コントゥル家の家宝かほうである『死んでも生きかえるむすびひも』をタダでくれたりしたし、よわものたいしての責任感せきにんかんみたいなものがちゃんとある。

「――そうですネ。中世程度ちゅうせいていド……戦国時代せんゴくじだい文化水準ぶんかスいじゅんで、これホど子供こドも女性じょせイやオ年寄としヨりへの配慮はイりょが行きとドいテいるというのは賞賛しょうさンあタいしまス――」

『現在時刻 15:46:58』
 そろそろ、御神体いおのはら説明せつめいがおわるころだ。
「――どうしましょウか、シガみー?――」
 もうお手上てあげだ。天狗てんぐ烏天狗からすてんぐ装束しょうぞくを、なんとかしてSDKすだぁーこなしで、でっち上げ――

「ニャむむぅ……そのお師匠さま・・・・・は、どれくらいの背丈せたけミャ?」
 なんだろ、背丈せたけ
「ちょうどニャミカくらいだけど……?」

「ニャら、なんとかなるミャ。じつニャミカは――ひとまねが得意とくいニャァン♪」

   §

「カカカカッカカッ――――われこそは、テェーングなりミャ!」

「――シガみー……――」
「(なにも言うな……もう、押しとおす)」

「クカカカカッ――――その弟子でし、カラテェ――見参けんざん!」
 ギルドの階段かいだんから、姿すがたをあらわした二人組くろずくめ

 ぽかーんとコチラを見上みあげる、会議参加者かいぎさんかしゃ見物客けんぶつきゃくたち。
 ヴュゥゥゥ――ッ♪
 迅雷ジンライが、五百乃大角いおのはらうごきを拡大かくだい――御神体いおのはらちいさなくちも、いたままじなくなった。

なんでも、わしをさがしていたそうじゃな――ミャ?」
 語尾ごびが冴えわたる!
「(おい、五百乃大角いおのはらすけを連れてきた。この場は、これで切り抜け……よう?)」
 ごちん――ひっくりかえり、あたま長机ながつくえに打ちつける御神体いおのはら
 さかさまの鏡餅かがみもちみたいな全身からだが、ぷるぷるふるえてる――アイツ、わらってやがるな!

「あら、て、テェーングのおじいさま! せ、せせせせせ、先日せんじつはどうも――――あれ、なんか?」
 オルコトリアが立ち上がり、天狗ニャミカをみつめる。
 なにその、あかいかお風邪かぜでもひいたのか?

「ちょっと、まって。なんか――ちがう?」
 おい、なんで今日きょうは、その長剣ながいの持ち歩いてんだ?
 ふだんはギルドのなかでは、帯剣たいけんしないはず。

「(さすがに、あんな大根役者でーこんやくしゃじゃ……無理むりがあったな)――待たれい、我が師はまこと天狗テングなり!」
 ニャミカとぼくのこえは、覆面かおぬのでさえぎるように迅雷ジンライがうまい事やってくれてる。

 コレは、覆面かおぬのが持つ機能ちからだってことにした。
 大声おおごえのしわがれごえは、老獪ろうかい老人ろうじん天狗声てんぐこえに。

 カラテェぼくこえは、少年しょうねんこえに変えてもらった。
 そのワケは、あとではなすことにしたんだけど、二人ふたりとも「「生きてればかくごとなんて、100や200あって当たりまえコォン」――ミャ」と気にしないでくれた。

 掛け値なしに、気の良いやつらだ。
「――はイ。ですがだまされやすそうで、喫茶店カふェ経営けイえいすコ心配しんパいになりまス――」
「うん。アイツらにはちかいウチに、シガミーとカラテェが同じだって・・・・・はなすよ。迅雷ジンライは、みせのことでなにかあればたすけてやっ――――」

 スラァァァァァリッ――――!
 いま念話ねんわ使つかえるのは、ぼくがわだけだから――すこしはなしこむと、こうしてどんどんと状況じょうきょうすすんでいく。

本物ほんものかどうかなんて、一回いっかいけんまじえれば――すぐにわかるわよねぇー?」
 長剣ちょうけんを抜いた、鬼娘オルコトリアの腕が――ごきり――ふくれあがる!

「ば、ばれたミャッ――――どうするミャ?」
 ヴ――ぱしん♪

 くろ小太刀こだちを取りだし――カカン♪
 階段かいだんの手すりに、一本下駄いっぽんげたで立つ。

「あいやぁ、待たれぇい! われわぁ一番弟子いちばんでしのぉ烏天狗からすてんぐなぁりぃ――師への侮辱ぶじょくはソコまでにしてもらおーか!」
 「切結きりむすべばわかる」って言うなら、ソウさせてもらう。
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