118 / 736
2:カブキーフェスタへの道
118:カブキ者(シガミー)、コントゥル伯爵夫人
しおりを挟む
「レディ、コントゥル――お戯れが過ぎます」
リオレイニアが姫さん付きの、白っぽい筆頭なら――
この甲冑を着た、黒っぽい護衛の筆頭である――すっごい厳ついのが彼だ。
いままで話したことはないけど、姫さんがなんかしたときに、絶えず矢表に立っていた。
もちろん、そのとき彼が正対するのは、姫さんだけど。
姫さんから周囲をまもる細身で長大な盾は、名誉の傷で埋め尽くされている。
アレそのうち、直してあげたいな。装備をなんでも、直せるようになったし。
「――そうでスね。彼にハ何度命ヲ救われタか、わかりマせん――」
えー、ソコまでじゃないよね?
草原で姫さんに襲われたときに、助けてくれなかったし?
「――あのときはリカルルが強引に、おそらく甲冑の機能をつかい、全力で彼をまいたのでしょう――」
『聖剣切りの閃光』の一員《パーティーメンバー》でもある、彼をまいたってことは――やっぱりあのとき本気で首を取りに(生きかえるけど)来てたんだな。
「――はイ。そしテ彼の行動には一定の誠実さ――騎士道……武士道精神が感じラれ、それヲ間近で見てイたリカルルの人格形成に、少なかラぬ影響をヲ与《あた》えていタと考えマす――」
そういうはなしか。あのとき、潔く負けを認められた姫さんは、すこし立派だったからな。
「エクレア・トルティーヤ!」
伯爵夫人に飛びつかれる、黒いの筆頭。
ざわめく周囲。
落ちる『ルードホルドの魔法杖』――ごどん――ぷぎゅるりっ!
結構な重さがあったからな――下敷きの姫さんは大丈夫か?
「いつものように、なまえでよんで♡」
伯爵令嬢を踏み潰し、その護衛に――愛をささやく伯爵夫人。
どよめく周囲。
「……今のわたしは、リカルルさま付きの護衛です。それに、ご自分のお立場という物を、お考えください――」
カパリと面を跳ねあげる――柄繰レア。
きゃぁぁぁぁぁっ――――周囲の女供……女性の方々が、甘ったるい金切り声を張りあげた。
「うるっせぇ!? なんだ、何が起きた?」
「――彼のイケメンぶり……優形な容姿と、伯爵夫人との関係性に感銘を受けていると思われます――」
んぅ? まあ、〝前世のおれ〟と比べりゃたしかに面は良いが、あいつやべぇーだ……やばいよね?
ココの領主は、話がわかる名君だ。
それでも、越えたらいけねぇ、身分って物がある。
「レディ、コントゥル――」
見かけだけは、立派な町娘の伯爵令嬢に、ひっ付かれた黒甲冑が――微動だにしなくなった。
「ちゃんと、名前で呼んでくれないと――一生離れてあげません♡」
きゃぁぁぁぁぁぁぁ――――♡
湧く、女性の方々。
この感じなら――柄繰レアは命までは取られないで、済むのかもしれない。
そもそも公爵夫人はどう見ても、公爵令嬢やお付き筆頭とおなじ年頃にしか見えない。
なんか、おかしい。
長机の面々をみわたす――――慌ててるヤツは、ひとりもいなかった。
いや、ひとり慌ててるのが居るな。
ニゲルが姫さんに駆けよって、魔法杖を退かそうとしてる。
「ルリーロ・イナリィ・コントゥル! ――いくら元パーティーメンバーでも、これは頂けません。なにより私には愛する――――婚約者がいるのですから――――っ!」
あれ? 禁断の恋じゃないっぽいよ?
えー、あの護衛の人、折角すっごいイケメンて発覚したのに――お手つきじゃん。
あー、解散解散ー。
今の今まで、湧きに湧いてた女供……女性の方々が散り散りに、散っていった。
「ひょっとして、まえにお手紙に書いてた、央都のギルドの受付嬢ちゃん――?」
「いえ、まー、そうです。次の休みにも彼女の家に、挨拶に行くつもりです」
「それは、それは――盛大に派手なお式を――――」
ふわぁっさぁり。
夫人のうしろに、なんかいる。
それに、さっき――〝稲荷〟って言ったか?
「(おい迅雷クン、こいつぁ――――!?)」
いつまでも歳を取らず――
稲荷を名のり――
そして――ふっさふさの尻尾。
おれはコイツを知ってるぞ。
「――シ――」
迅雷が返事を――――できなかった。
目のまえに――ぼぉうわっ♪
青白い炎が灯る。
ソレは――灯りの魔法や炎の魔法とは、べつの理によるものだと――わかる。
かつて前世で、何度もやりあったことのある――俗に言う、狐狸妖怪の類いだ。
ぼぉうぼぉうぼぉうぼぉうぼぉう――――!!!
おれの周囲に、次々と灯る――つめたい。
「まちがいねぇ――――こりゃ、狐火だ!」
日の本の生まれなら、この〝冷たい火〟が何なのか――わかる。
おれの真言と、本質的には同じ物だ。
ソレは――命の灯火と言っても良い物で。
ソレは――自分の命とは限らない。
青白い炎が、あたりの明るさを打ち消していく。
だらだらだらだら――――イヤな汗が、からだの芯まで凍りつかせる。
「リカルルちゃぁぁん!? その子わぁ、だぁれぇ?」
昼中には、見ることのできないはずの、月の光をたたえた瞳。
伯爵夫人が首だけを、こっちに向けていた。
あたりは薄暗く、ココには〝■■■■■■■の眷属〟と、〝おれ〟の二人しかいない。
町娘のような服。
その袖が持ちあがり――――〝焔の印〟をむすんだ。
リオレイニアが姫さん付きの、白っぽい筆頭なら――
この甲冑を着た、黒っぽい護衛の筆頭である――すっごい厳ついのが彼だ。
いままで話したことはないけど、姫さんがなんかしたときに、絶えず矢表に立っていた。
もちろん、そのとき彼が正対するのは、姫さんだけど。
姫さんから周囲をまもる細身で長大な盾は、名誉の傷で埋め尽くされている。
アレそのうち、直してあげたいな。装備をなんでも、直せるようになったし。
「――そうでスね。彼にハ何度命ヲ救われタか、わかりマせん――」
えー、ソコまでじゃないよね?
草原で姫さんに襲われたときに、助けてくれなかったし?
「――あのときはリカルルが強引に、おそらく甲冑の機能をつかい、全力で彼をまいたのでしょう――」
『聖剣切りの閃光』の一員《パーティーメンバー》でもある、彼をまいたってことは――やっぱりあのとき本気で首を取りに(生きかえるけど)来てたんだな。
「――はイ。そしテ彼の行動には一定の誠実さ――騎士道……武士道精神が感じラれ、それヲ間近で見てイたリカルルの人格形成に、少なかラぬ影響をヲ与《あた》えていタと考えマす――」
そういうはなしか。あのとき、潔く負けを認められた姫さんは、すこし立派だったからな。
「エクレア・トルティーヤ!」
伯爵夫人に飛びつかれる、黒いの筆頭。
ざわめく周囲。
落ちる『ルードホルドの魔法杖』――ごどん――ぷぎゅるりっ!
結構な重さがあったからな――下敷きの姫さんは大丈夫か?
「いつものように、なまえでよんで♡」
伯爵令嬢を踏み潰し、その護衛に――愛をささやく伯爵夫人。
どよめく周囲。
「……今のわたしは、リカルルさま付きの護衛です。それに、ご自分のお立場という物を、お考えください――」
カパリと面を跳ねあげる――柄繰レア。
きゃぁぁぁぁぁっ――――周囲の女供……女性の方々が、甘ったるい金切り声を張りあげた。
「うるっせぇ!? なんだ、何が起きた?」
「――彼のイケメンぶり……優形な容姿と、伯爵夫人との関係性に感銘を受けていると思われます――」
んぅ? まあ、〝前世のおれ〟と比べりゃたしかに面は良いが、あいつやべぇーだ……やばいよね?
ココの領主は、話がわかる名君だ。
それでも、越えたらいけねぇ、身分って物がある。
「レディ、コントゥル――」
見かけだけは、立派な町娘の伯爵令嬢に、ひっ付かれた黒甲冑が――微動だにしなくなった。
「ちゃんと、名前で呼んでくれないと――一生離れてあげません♡」
きゃぁぁぁぁぁぁぁ――――♡
湧く、女性の方々。
この感じなら――柄繰レアは命までは取られないで、済むのかもしれない。
そもそも公爵夫人はどう見ても、公爵令嬢やお付き筆頭とおなじ年頃にしか見えない。
なんか、おかしい。
長机の面々をみわたす――――慌ててるヤツは、ひとりもいなかった。
いや、ひとり慌ててるのが居るな。
ニゲルが姫さんに駆けよって、魔法杖を退かそうとしてる。
「ルリーロ・イナリィ・コントゥル! ――いくら元パーティーメンバーでも、これは頂けません。なにより私には愛する――――婚約者がいるのですから――――っ!」
あれ? 禁断の恋じゃないっぽいよ?
えー、あの護衛の人、折角すっごいイケメンて発覚したのに――お手つきじゃん。
あー、解散解散ー。
今の今まで、湧きに湧いてた女供……女性の方々が散り散りに、散っていった。
「ひょっとして、まえにお手紙に書いてた、央都のギルドの受付嬢ちゃん――?」
「いえ、まー、そうです。次の休みにも彼女の家に、挨拶に行くつもりです」
「それは、それは――盛大に派手なお式を――――」
ふわぁっさぁり。
夫人のうしろに、なんかいる。
それに、さっき――〝稲荷〟って言ったか?
「(おい迅雷クン、こいつぁ――――!?)」
いつまでも歳を取らず――
稲荷を名のり――
そして――ふっさふさの尻尾。
おれはコイツを知ってるぞ。
「――シ――」
迅雷が返事を――――できなかった。
目のまえに――ぼぉうわっ♪
青白い炎が灯る。
ソレは――灯りの魔法や炎の魔法とは、べつの理によるものだと――わかる。
かつて前世で、何度もやりあったことのある――俗に言う、狐狸妖怪の類いだ。
ぼぉうぼぉうぼぉうぼぉうぼぉう――――!!!
おれの周囲に、次々と灯る――つめたい。
「まちがいねぇ――――こりゃ、狐火だ!」
日の本の生まれなら、この〝冷たい火〟が何なのか――わかる。
おれの真言と、本質的には同じ物だ。
ソレは――命の灯火と言っても良い物で。
ソレは――自分の命とは限らない。
青白い炎が、あたりの明るさを打ち消していく。
だらだらだらだら――――イヤな汗が、からだの芯まで凍りつかせる。
「リカルルちゃぁぁん!? その子わぁ、だぁれぇ?」
昼中には、見ることのできないはずの、月の光をたたえた瞳。
伯爵夫人が首だけを、こっちに向けていた。
あたりは薄暗く、ココには〝■■■■■■■の眷属〟と、〝おれ〟の二人しかいない。
町娘のような服。
その袖が持ちあがり――――〝焔の印〟をむすんだ。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。
応援していただけたら執筆の励みになります。
《俺、貸します!》
これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ)
ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非!
「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」
この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。
しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。
レベル35と見せかけているが、本当は350。
水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。
あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。
それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。
リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。
その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。
あえなく、追放されてしまう。
しかし、それにより制限の消えたヨシュア。
一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。
その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。
まさに、ヨシュアにとっての天職であった。
自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。
生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。
目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。
元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。
そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。
一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。
ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。
そのときには、もう遅いのであった。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる