上 下
117 / 736
2:カブキーフェスタへの道

117:カブキ者(シガミー)、カブキーフェスタ企画会議

しおりを挟む
「えー、第一回だいいっかいカブキーフェスタ開催かいさいのための企画会議きかくかいぎに、ご参加さんかいただきましてまことにありがとうございますですわぁ――♪」
 ここはガムランちょう冒険者ぼうけんしゃギルド地下ちか作戦会議室さくせんかいぎしつだ。

 長机ながつくえ四角しかくく組んだ中央ちゅうおうが、おおきく空いている。
 ソコへすすみ出る、あか細身ほそみのドレス。
 革製かわせい胸当むねあて(がら入り)だけで、甲冑かっちゅうは着てない。

総員そういん拍手はくしゅ――」
 拍手はくしゅをうながすのは、しぶかおのギルドちょう
 かれしたえた姫さんリカルルが――仁王立におうだちである。

 わー、パチパチパチ♪
 彼女かのじょあんなんでも・・・・・・名実めいじつともにココ――魔物境界線ガムランちょうのエースだ。
 人徳じんとくもあるし、行動力こうどうりょくもある。
 見てるぶんには面白おもしろくて、きらいではない……すこしこわいけど。

「「「「「うぉぉぉぉ、なんかはじまったぁー!!!」」」」」
 別段べつだんかべがあるわけでもないから、遠巻とおまきに冒険者ぼうけんしゃ見物けんぶつしに来てる。
 しかも、倉庫そうこ一角いっかくでもあるため、吹き抜けの搬入口はんにゅうぐちから物資ぶっしがときどきはこびこまれる。

 おーい、ソッチをつえささえてくれー。
 了解りょうかいでさぁー。おろすぞぉー。
 つまり、なんだか騒々そうぞうしい。

 上空うえからゆっくりと、はこびこまれる魔物素材まものそざい――みょうながいとおもったら、あれは化けウサギ(変異種バリアント)のつのだ。

 チーン♪
 チーン♪
 チチーン♪
 鑑定持かんていもちが、けっこう居るな。

「――はイ。リオレイニアとギルドチょう、そシてテイカー商会しょウかい付きの商人しょウにんめイが、鑑定持かンていもちのようデす――」
 アーティファクトによる狙撃そげき警戒けいかいするじゅつを持つ、ひめさんに配慮はいりょしてぼくは、また耳栓みみせんをしてる。
 そとおと普通ふつうに聞こえるけど、迅雷ジンライからの・・・内緒話ないしょばなしがつかえない。

 ふぉん♪
『角ウサギ【変異種】の角<New>/
 非常に希少かつ長大な、雷撃系魔力素材。
 神力の伝導率は測定不能。』

「シガミー、なんてかおしてるの?」
 あ、まずい。〝シメシメうっひっひがお〟を見られた。
 上級鑑定じょうきゅうかんていをするには、鑑定かんていしたいものを〝値踏ねぶみ〟しなければならないのだ。

「ごめんごめん。ぼくぅ、まだ上級鑑定じょうきゅうかんていのやりかたに慣れてなくてさ、わるーいかおになっちゃうんだよね、えへへ♪」

「ぼくぅ――だとぉう!?」
 となりにいた工房長ボヴァドの目が、けわしく見開みひらかれる!
「シガミーじゃない!? まさか――!?」
 階段かいだんから野次馬やじうまをしてた、ニゲル青年せいねんさけぶ。

また・・魔物まものがでたぁぞぉ――――総員配置そういんはいちにつけぇー!」
 ガッチャガチャガチャ、ドカドカドカドカッ!
 衛兵えいへいまで降りてきた。

 ここひとたちとも付きあいが、ながくなってきたとおもうんだけど。
 丁寧ていねいなしゃべりかたをすると、なんでか――――化けた魔物まもの間違まちがえられる。
 子供こども姿すがたでもぼくの中身なかみは、もと生まれの『僧侶そうりょ猪蟹ししがにやく40さい)』だ。

 この世界せかいに生まれ変わり、ガムランちょうにたどり着いてから、ずっと粗野そや口調くちょうだったから、仕方しかたないんだけど――てめぇら!

 長机テーブルに――ドカリ!
 ちいさなしりをのせ、かたいからせひざをつかむ。

「やっかましぃやぁ、おれだぜおれぇ! この猪蟹シガミーさまのどぉこぉがぁ――魔物まものに見えるっていうんでぇぇぇぇぇぇっいっ!!!」
 すずのような、かろやかな怒声どせいはっしてやる。

「な、なんだよー、おどかさないでよ。シガミーじゃんか」
 かくれたニゲルが、また階段かいだんから身を乗りだした。
「はぁー、まったくだぜぇ!」
 工房長ノヴァド片手かたてかまえた巨大きょだい鉄塊てっかい……金槌かなづちをおろした。
 ドズズゥン!

 パパン♪
 手をたたき、注目ちゅうもくをあつめるあかいドレス。
「はーい。おバカはそのくらいにして、とっとと決めてしまいますわよ?」
 ドレスのすそをひるがえし、壁板かべいたけずれるいし文字もじを書くリカルル。

 あの真っくろく塗られた、おおきな木のいたは――猪蟹屋みせにあっても良いな。
 ――はイ、シガみー。大口おおぐチ注文ちゅうモんなどを、書き留めることができると便利べンりデす――。

 きゅ、きゅ、きゅきゅきゅー♪
 けずれるいしくろいたしろ文字もじが、書き込まれていく。

『第一回カブキーフェスタ企画会議
 フェスタ開催の目的=楽しそうだから!』

 たなびくドレス。揺れるほそいかた――そしてはずしり
 ははぁん。ニゲルが食堂しょくどう仕事しごとをさぼってまでココに居るのは、姫さんリカルルのプルンプルンしたあれながめに来てたのか。
 たしかに、見てるぶんには全身ぜんしんどこを取っても――はながある。
 ピコピコと、よくうごく狐耳みみはかわいらしいとさえおもえるしな~――見てるぶんにはだけど。

 狐耳みみかたちがルコルそっくりなのは、やっぱり〝血筋ちすじ〟なんだろうな。

「(……領主りょうしゅである伯爵はくしゃく名前なまえは……なんだっけ?)」
「――ラウラル・ジーン・コントゥル伯爵はくシゃくでス――」
 そんな名前なまえだったっけ?
 すっかりわすれてたよ。

「――そレが、どうカしましタか?――」
「(いやさ、伯爵とのさんあたまには、狐耳きつねみみが付いてなかったなーとおもって)」。

 ――ドガァァン!
 ――バキゴガカァン!

「なんだろ?」
地上うえほうが、さわがしいですね?」
 となりにすわるリオが、くびかしげた。

 ――ォンヴォン♪
 ソレは、突然とつぜんあらわれた。
 木さじ食堂しょくどう女将おかみが、木さじを振りまわすときの剣筋けんすじ
 目で追えない速度そくどを持つ、いくさ場ではあまり会いたくないたぐいいの。

 伸びすぎたひつじつのか、たばねた山菜ぜんまいみたいな空飛そらとぶ――魔法杖まほうつえ
 それをぼくは、見たことがあった――一日前いちにちまえに。

「リカルルちゃぁん――――♪」
 リオとおなじくらいのとし
 つまりリカルルと同年代どうねんだい女性じょせいが――『ルードホルドの魔法杖まほうつえ』――に乗っていた。

「うっぎゃぁぁぁぁっ――――!? お、おかあさまっ!? 一体いったいどこからおきになられましたのーっ!?」
 まるで、町娘まちむすめのような――リオが買いものに出かけるときと、おなじような格好かっこうの。

 むぎゅりっ――――「ひぃさぁしぃーぶぅーりぃーねぇー♪」
 巨大きょだいつえで、企画会議議長きかくかいぎぎちょうを踏みつぶしたのは。

「あらっ、リオレイニアちゃんもいるー♪」
 ひとかおかたちも、あたまうえ狐耳きつねみみも――姫さんリカルル、そっくりだった。

「ご無沙汰ぶさたしております、奥方おくがたさま」
 リオが片足かたあしを引いて、こしを落とした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。  応援していただけたら執筆の励みになります。 《俺、貸します!》 これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ) ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非! 「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」 この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。 しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。 レベル35と見せかけているが、本当は350。 水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。 あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。 それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。 リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。 その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。 あえなく、追放されてしまう。 しかし、それにより制限の消えたヨシュア。 一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。 その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。 まさに、ヨシュアにとっての天職であった。 自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。 生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。 目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。 元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。 そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。 一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。 ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。 そのときには、もう遅いのであった。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...