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2:カブキーフェスタへの道
116:カブキ者(シガミー)、五百乃大角にたすけられる
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「おはようございます、シガミー」
目を開けたら、やさしい声。
「おはよ……う?」
真っ白い顔が、こっちをじっと見てる。
「まったく、薬草を夜通し集めていたというのは本当ですか?」
真夜中でも、町近くの草原なら、ソコまで危険ではない。
けど、何の話?
「いくら、イオノファラーさまのおつかいでも、夜中に町の外に出たらダメなんだからね?」
むぎゅ――鼻を指先で押さないでよ。
「――えっ? なんだ? そう――なの?」
かがみ込むレイダの指先を、つかんで退かす。
「(そういうことになっているようです。命拾いしましたね)」
「夜詰みの薬草がねぇー、世のため人のために必要でしたぁ。そこで、あたくしさまは考えたのですわよ。えへん♪」
レイダの肩に乗る、まるっこい生き物。
「そっか、シガミーは薬草師だったっけ」
「そういうことですねぇ~♪ 薬草の専門家であるシガミープロにお願いしましたー♪」
「シガミープロ……というのはよくわかりませんが――夜中にひとりでというのは危険で――」
「――はありませんよ、リオレイニア。迅雷が付いているから、安全上の問題はありません、きっぱり!」
すげえ。五百乃大角が、はじめて役に立った。
「はイ。むシろ万一の際に、全力で迎撃できルため、町中よりモ安全かもしレません」
「安全――は言い過ぎですよ、迅雷。では今後、やむをえず夜間採取をおこなう時は、かならず私を同行させてください」
「わかりました、わかりましたぁー! 以後ぉ、気をぉつぅけぇーまぁすぅーっ♪」
両耳を押さえて、聞く耳を持たない御神体。
相変わらず、死ぬほどムカツクヤツだけど、こんなんでも神だから、リオも文句は言えない。
それでもリオのことは気に入ってるみたいだし、レイダとはいつも一緒に居る。
見かけが〝ねがみめんど〟とかなんとか言う、まるっこくて小さい姿になったのは――まさに神(〝美〟以外)の采配だったのかもしれない。
横柄な態度が逆に愛嬌があるって、店の客にも受け入れられたみたいだしな。
「(おい、なんか……おとがめ無しだぞ? 奇跡だ!)」
「(はい、さすがはイオノファラーです)」
「ふっふぅーんだ!」
御神体の尖る口元に、菓子の食べかすが付いてた。
飯の神なりに、もらったお土産の分の――御利益をしてくれたんだろうな。
おきあがり――ぱん、ぱしん♪
レイダの肩に向かって、柏手をうった。
§
「そっか。きょうは、ぼくが仕込みをしなかったから、売り物の串揚げがもう、終わっちゃったのか」
「「ぼくぅ――?」」
ぼくの言葉を聞いたふたりが、ぼくの額におでこを押しつける。
やめろ、やめて――「邪魔だよ?」
「ふたりとモ、シガミーは病気でハありません。夜通し、私と〝やサしい会話〟の練習をしたのでス」
「そうでぇ……そうなんだよ。レイダに女の客……女性のお客さんが逃げちゃうでしょって怒られたから、おれ……ぼくも考えたんだよ」
「ぶっふふふっ、こ、こんなのシガミーじゃない!」
やっぱり、笑われた。
「違和感が、とても良い仕事をしていますね、クスクスクス♪」
うるさいよ、リオレイニア。
「けど――いままでの、お爺さんみたいなしゃべり方よりは、よっぽど素敵!」
「ええ、シガミーは見た目だけはとっても可憐なので――内面も素敵になれば、きっと猪蟹屋発展の武器になりますよ」
「おれぁ……ぼくは、どっちでもいいんだよ。話し方なんてさ」
「男の子みたいだけど、ぜったいこっちの方が良いよ!」
はしゃぐレイダの肩から、御神体がころがり落ちる。
「はい、口調は間を取って、ニゲル青年の話し言葉を真似ることにしました」
「あーほんとだ、ニゲルそっくり」
「ほんとうですね……何の間かはわからないけれど」
「ぶっひゃひゃひゃひゃひゃひゃはやっ――――ソレまだやってたの!? ぷげら!」
寝床に転がる、御神体を鷲づかみにする。
「うるさいよ? 『猪蟹屋』の存亡は、五百乃大角の飯……ごはんの品数にも、関わってくるんだからね?」
五百乃大角をレイダに手わたす。
振りかえる五百乃大角。
「いーじゃない、ボクッ娘。シガミーのお店の猪蟹屋を盛りあげるには――まず、シガミーを大々的に売り出すことに、賛成のひとぉー?」
白いのと、子供と、御神体と、その眷属が挙手。
§
「こりゃ、どういう格好なんだい?」
レイダとお揃いの一張羅。
橙色の布を肩から下げた。
「あらぁんっ、どーしたのコレ? 超かわいいっ!」
しまっておいた帽子を、勝手に梅干しが引っ張りだした。
「「「「超かわいい!」」」です、シガみー」
よせやい、迅雷クンまで、なに言ってんだ!?
姿見に写る、ぼくの姿は――なんだろう。
猫耳が付いた神楽舞いの巫女装束みたいだった。
「猫頭の人たちの、お祭り……猫祭でもするの? 歌舞伎すぎだよ」
姫さんくらい華があるなら、着こなせるだろうが。
こりゃ、派手すぎる。
「「カブキー?」」
「シガミーの国の……なんだっけ、伝統芸能? お祭り?」
「「お祭り?」」
「はイ、歌舞伎と呼ばレる、色鮮やかナ衣装や、派手ナ音楽や、奇抜な踊りをたのシむ催しデす」
「へぇぇーっ♪ なによその楽しそうなの。そんなの聞いたら、町の総力を挙げて開催するしかないでしょう♪」
よく通る凜とした声がした。
窓が開いてて、派手な顔がコッチを見てた。
ーーー
歌舞伎/歌舞伎踊。歌舞伎劇。異様な身なりで自由に振る舞う〝傾く〟の連用形から。
目を開けたら、やさしい声。
「おはよ……う?」
真っ白い顔が、こっちをじっと見てる。
「まったく、薬草を夜通し集めていたというのは本当ですか?」
真夜中でも、町近くの草原なら、ソコまで危険ではない。
けど、何の話?
「いくら、イオノファラーさまのおつかいでも、夜中に町の外に出たらダメなんだからね?」
むぎゅ――鼻を指先で押さないでよ。
「――えっ? なんだ? そう――なの?」
かがみ込むレイダの指先を、つかんで退かす。
「(そういうことになっているようです。命拾いしましたね)」
「夜詰みの薬草がねぇー、世のため人のために必要でしたぁ。そこで、あたくしさまは考えたのですわよ。えへん♪」
レイダの肩に乗る、まるっこい生き物。
「そっか、シガミーは薬草師だったっけ」
「そういうことですねぇ~♪ 薬草の専門家であるシガミープロにお願いしましたー♪」
「シガミープロ……というのはよくわかりませんが――夜中にひとりでというのは危険で――」
「――はありませんよ、リオレイニア。迅雷が付いているから、安全上の問題はありません、きっぱり!」
すげえ。五百乃大角が、はじめて役に立った。
「はイ。むシろ万一の際に、全力で迎撃できルため、町中よりモ安全かもしレません」
「安全――は言い過ぎですよ、迅雷。では今後、やむをえず夜間採取をおこなう時は、かならず私を同行させてください」
「わかりました、わかりましたぁー! 以後ぉ、気をぉつぅけぇーまぁすぅーっ♪」
両耳を押さえて、聞く耳を持たない御神体。
相変わらず、死ぬほどムカツクヤツだけど、こんなんでも神だから、リオも文句は言えない。
それでもリオのことは気に入ってるみたいだし、レイダとはいつも一緒に居る。
見かけが〝ねがみめんど〟とかなんとか言う、まるっこくて小さい姿になったのは――まさに神(〝美〟以外)の采配だったのかもしれない。
横柄な態度が逆に愛嬌があるって、店の客にも受け入れられたみたいだしな。
「(おい、なんか……おとがめ無しだぞ? 奇跡だ!)」
「(はい、さすがはイオノファラーです)」
「ふっふぅーんだ!」
御神体の尖る口元に、菓子の食べかすが付いてた。
飯の神なりに、もらったお土産の分の――御利益をしてくれたんだろうな。
おきあがり――ぱん、ぱしん♪
レイダの肩に向かって、柏手をうった。
§
「そっか。きょうは、ぼくが仕込みをしなかったから、売り物の串揚げがもう、終わっちゃったのか」
「「ぼくぅ――?」」
ぼくの言葉を聞いたふたりが、ぼくの額におでこを押しつける。
やめろ、やめて――「邪魔だよ?」
「ふたりとモ、シガミーは病気でハありません。夜通し、私と〝やサしい会話〟の練習をしたのでス」
「そうでぇ……そうなんだよ。レイダに女の客……女性のお客さんが逃げちゃうでしょって怒られたから、おれ……ぼくも考えたんだよ」
「ぶっふふふっ、こ、こんなのシガミーじゃない!」
やっぱり、笑われた。
「違和感が、とても良い仕事をしていますね、クスクスクス♪」
うるさいよ、リオレイニア。
「けど――いままでの、お爺さんみたいなしゃべり方よりは、よっぽど素敵!」
「ええ、シガミーは見た目だけはとっても可憐なので――内面も素敵になれば、きっと猪蟹屋発展の武器になりますよ」
「おれぁ……ぼくは、どっちでもいいんだよ。話し方なんてさ」
「男の子みたいだけど、ぜったいこっちの方が良いよ!」
はしゃぐレイダの肩から、御神体がころがり落ちる。
「はい、口調は間を取って、ニゲル青年の話し言葉を真似ることにしました」
「あーほんとだ、ニゲルそっくり」
「ほんとうですね……何の間かはわからないけれど」
「ぶっひゃひゃひゃひゃひゃひゃはやっ――――ソレまだやってたの!? ぷげら!」
寝床に転がる、御神体を鷲づかみにする。
「うるさいよ? 『猪蟹屋』の存亡は、五百乃大角の飯……ごはんの品数にも、関わってくるんだからね?」
五百乃大角をレイダに手わたす。
振りかえる五百乃大角。
「いーじゃない、ボクッ娘。シガミーのお店の猪蟹屋を盛りあげるには――まず、シガミーを大々的に売り出すことに、賛成のひとぉー?」
白いのと、子供と、御神体と、その眷属が挙手。
§
「こりゃ、どういう格好なんだい?」
レイダとお揃いの一張羅。
橙色の布を肩から下げた。
「あらぁんっ、どーしたのコレ? 超かわいいっ!」
しまっておいた帽子を、勝手に梅干しが引っ張りだした。
「「「「超かわいい!」」」です、シガみー」
よせやい、迅雷クンまで、なに言ってんだ!?
姿見に写る、ぼくの姿は――なんだろう。
猫耳が付いた神楽舞いの巫女装束みたいだった。
「猫頭の人たちの、お祭り……猫祭でもするの? 歌舞伎すぎだよ」
姫さんくらい華があるなら、着こなせるだろうが。
こりゃ、派手すぎる。
「「カブキー?」」
「シガミーの国の……なんだっけ、伝統芸能? お祭り?」
「「お祭り?」」
「はイ、歌舞伎と呼ばレる、色鮮やかナ衣装や、派手ナ音楽や、奇抜な踊りをたのシむ催しデす」
「へぇぇーっ♪ なによその楽しそうなの。そんなの聞いたら、町の総力を挙げて開催するしかないでしょう♪」
よく通る凜とした声がした。
窓が開いてて、派手な顔がコッチを見てた。
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歌舞伎/歌舞伎踊。歌舞伎劇。異様な身なりで自由に振る舞う〝傾く〟の連用形から。
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