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1:輪廻転生、おいでませガムラン町
93:神使いシガミー、めしのかみ降臨
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「――この場をどうにかできたら――〝ムシュル貝のドラゴーラ焼き〟を腹一杯食わせてやる」
シガミーの声だぜ?
どよめく観衆。
なんでいなんでい?
いつのまにか軒先に、人垣ができてやがる。
「――〝豪勢な料理とお酒の席〟を設けるので」
つぎはリオレイニアの声だよ?
どよめく観衆。
「みなさん、ウワサを聞きつけていらしたようですよ」
これは、リオレイニア本人の声。
「その宴会はもちろん……おれがもつ」
またシガミーの声――!
どよどよ、がやがや。
「――食堂《しょくどう》の食べ放題とは別だからね――――ばちぃーん♪」
おれを睨みつけ、片目をとじる御神体♡
どうした、また虫か? また目に虫でも入ったのか?
片目をとじて不気味に、わらうんじゃねぇやい。
「迅雷どのぉ――なんじゃあ、この脅威のメカニズムはぁーっ!?」
興奮した工房長が、長机を指さした。
「イオノファラーの宣告にヨり、シがミーが作成しまシた」
〝てちてち、ぽきゅぽん♪〟と歩きまわる女神憑き――もとい御神体。
「ありがとう、ありがとう! このあたくしさまに、盛大なおかわりを――♪」
手をふり愛想をふりまく……饅頭。
串揚げが、つぎからつぎへと売れていく。
「うををををぉぉぉぉぉ――――食べたぞぉぉぉぉっ!?」
そして、つぎからつぎへと饅頭の下っ腹に収まっていく。
きゃぁぁっ――♪
おかわいらしいぞぉぉぉぉぉ――♪
イオノファラーちゃぁぁん――♪
「はぁあぁいぃー♡ もぐもぐもぐもぎゅっ――!」
串揚げをかっこむ早業は、まさに神業で。
「リオレイニア」
「なんでしょうか、シガミー」
「……こりゃ、街の治安や経済をおびやかした罪で、しょっ引かれたりしねぇか?」
「……詐欺や騒乱罪には当たらないと思いますよ……明言はできませんが、ふぅ」
頬に手をあて思案する、仮面美女。
「だいじょうぶだよ。御神体さまに、ごはんをあげると――本当に御利益があるんだもん♪」
レイダの手にした籠には、例のかたい菓子が山のようにつまってる。
なんでも、ギルド職員が棚の奥から大量にみつけた物で、居合わせたレイダがもらってきたのだ。
「むシろ、御利益が騒乱を引きオこす懸念がありマす」
名実ともに〝飯の神〟降臨だな……〝美〟はどこいったんでぇい?
「ふふん――なんの問題もありませんでしてよ。食べ物に関するちょっとした幸運が舞いこむだけのようですし――クスクス」
喧噪の中でもよく通る、凜とした声。
「では私も――」
串揚げを買う行列に、ちゃんとならぶ姫さま。
ああいう所は、立派なもんだと思う。
リカルルさまだ。
ほんとだ。
今日もなんて可憐なんだ――ニゲルが来てるな。
§
「いやぁー、実によくはたらいたわっ! それで、本日のまかないは――な・あ・に?」
「そうですねぇ――ではすこしおまちください」
シガミー……今日は、お酢は手に入りますか?
手に入るかってのは、こういうことだ――がたん。
おれは木箱から酒瓶を取りだした。
とくとくとくん――なかみを猪口にそそぐ。
ふわぁん。鼻をぬける香り。
それは――――まちにまった、清み酒だった。
そのまま、くいっと一杯ひっかける。
うっめーぇ――――ふにゃり。
いかん、子供のからだが酔いに耐えられねぇ――――ぱたり。
「リオレイニア、その透明な酒はビードロ……ガラス瓶にうつシて、冷暗所で保管しておいてくダさい」
リオが酒瓶のなかみを別の瓶にいれて、「せぇーのっ」――ガッシャァン!
空にした酒瓶を金槌で壊す音が、きこえた気がする――――ふにゃり。
「ちょっと、リオレイニアさん!? それ、シガミーが大事にしてた瓶なんじゃ?」
「心配いりませんよ。次の日には、元どおりになります」
割れた瓶が入った木箱を、棚にもどす音――ごとん。
「酢やお酒のほかにもねぇー、いろいろな調味料がはいってたりねぇー、するわよぉーん。ちなみに割れても元にもどる瓶わぁねぇー、あたくしさまのしわざなんですぅねぇー。えへん♪」
長机をつたって近くまでやってきた、〝飯の神〟がなんか言ってる気がする――ふにゃぁり。
「はい、とても助かっています。ですが残念ながら、お寿司はできませんので今日の所は、串揚げと芋団子で我慢していただけませんか?」
リオが小さな女神さまにおうかがいを立てているような気がする――――ふにゃぁり。
「ならさぁ、油鍋でさぁ――――」
――――ふにゃぁあり。
§
「んぁあ? なんでぇい? このうまそうな香りわぁ」
むくり。おきると、店の奥に居た。
「おきましたか、シガミー。よろしければどうぞ――」
ことん。
串揚げを二本、小皿に取りわけてくれるリオ。
「うまい物でも、こう連日食ってるとぁ――――がぶり」
な、なんだこりゃ!?
――――ひょっとして、こいつぁ芋か!?
てちてち、ぽきゅぽん♪
「どうよ、シガミー。ポテトカツのお味わぁ?」
この料理は、女神憑きが考えたらしい。
「超うめぇ!」
カリッと揚がった衣に、ほっくほくの芋。
〝たまごソ-ス〟との相性が最高だった。
さすがは飯の神だぜ。こと飯に関してだけは超信頼できる。
シガミーの声だぜ?
どよめく観衆。
なんでいなんでい?
いつのまにか軒先に、人垣ができてやがる。
「――〝豪勢な料理とお酒の席〟を設けるので」
つぎはリオレイニアの声だよ?
どよめく観衆。
「みなさん、ウワサを聞きつけていらしたようですよ」
これは、リオレイニア本人の声。
「その宴会はもちろん……おれがもつ」
またシガミーの声――!
どよどよ、がやがや。
「――食堂《しょくどう》の食べ放題とは別だからね――――ばちぃーん♪」
おれを睨みつけ、片目をとじる御神体♡
どうした、また虫か? また目に虫でも入ったのか?
片目をとじて不気味に、わらうんじゃねぇやい。
「迅雷どのぉ――なんじゃあ、この脅威のメカニズムはぁーっ!?」
興奮した工房長が、長机を指さした。
「イオノファラーの宣告にヨり、シがミーが作成しまシた」
〝てちてち、ぽきゅぽん♪〟と歩きまわる女神憑き――もとい御神体。
「ありがとう、ありがとう! このあたくしさまに、盛大なおかわりを――♪」
手をふり愛想をふりまく……饅頭。
串揚げが、つぎからつぎへと売れていく。
「うををををぉぉぉぉぉ――――食べたぞぉぉぉぉっ!?」
そして、つぎからつぎへと饅頭の下っ腹に収まっていく。
きゃぁぁっ――♪
おかわいらしいぞぉぉぉぉぉ――♪
イオノファラーちゃぁぁん――♪
「はぁあぁいぃー♡ もぐもぐもぐもぎゅっ――!」
串揚げをかっこむ早業は、まさに神業で。
「リオレイニア」
「なんでしょうか、シガミー」
「……こりゃ、街の治安や経済をおびやかした罪で、しょっ引かれたりしねぇか?」
「……詐欺や騒乱罪には当たらないと思いますよ……明言はできませんが、ふぅ」
頬に手をあて思案する、仮面美女。
「だいじょうぶだよ。御神体さまに、ごはんをあげると――本当に御利益があるんだもん♪」
レイダの手にした籠には、例のかたい菓子が山のようにつまってる。
なんでも、ギルド職員が棚の奥から大量にみつけた物で、居合わせたレイダがもらってきたのだ。
「むシろ、御利益が騒乱を引きオこす懸念がありマす」
名実ともに〝飯の神〟降臨だな……〝美〟はどこいったんでぇい?
「ふふん――なんの問題もありませんでしてよ。食べ物に関するちょっとした幸運が舞いこむだけのようですし――クスクス」
喧噪の中でもよく通る、凜とした声。
「では私も――」
串揚げを買う行列に、ちゃんとならぶ姫さま。
ああいう所は、立派なもんだと思う。
リカルルさまだ。
ほんとだ。
今日もなんて可憐なんだ――ニゲルが来てるな。
§
「いやぁー、実によくはたらいたわっ! それで、本日のまかないは――な・あ・に?」
「そうですねぇ――ではすこしおまちください」
シガミー……今日は、お酢は手に入りますか?
手に入るかってのは、こういうことだ――がたん。
おれは木箱から酒瓶を取りだした。
とくとくとくん――なかみを猪口にそそぐ。
ふわぁん。鼻をぬける香り。
それは――――まちにまった、清み酒だった。
そのまま、くいっと一杯ひっかける。
うっめーぇ――――ふにゃり。
いかん、子供のからだが酔いに耐えられねぇ――――ぱたり。
「リオレイニア、その透明な酒はビードロ……ガラス瓶にうつシて、冷暗所で保管しておいてくダさい」
リオが酒瓶のなかみを別の瓶にいれて、「せぇーのっ」――ガッシャァン!
空にした酒瓶を金槌で壊す音が、きこえた気がする――――ふにゃり。
「ちょっと、リオレイニアさん!? それ、シガミーが大事にしてた瓶なんじゃ?」
「心配いりませんよ。次の日には、元どおりになります」
割れた瓶が入った木箱を、棚にもどす音――ごとん。
「酢やお酒のほかにもねぇー、いろいろな調味料がはいってたりねぇー、するわよぉーん。ちなみに割れても元にもどる瓶わぁねぇー、あたくしさまのしわざなんですぅねぇー。えへん♪」
長机をつたって近くまでやってきた、〝飯の神〟がなんか言ってる気がする――ふにゃぁり。
「はい、とても助かっています。ですが残念ながら、お寿司はできませんので今日の所は、串揚げと芋団子で我慢していただけませんか?」
リオが小さな女神さまにおうかがいを立てているような気がする――――ふにゃぁり。
「ならさぁ、油鍋でさぁ――――」
――――ふにゃぁあり。
§
「んぁあ? なんでぇい? このうまそうな香りわぁ」
むくり。おきると、店の奥に居た。
「おきましたか、シガミー。よろしければどうぞ――」
ことん。
串揚げを二本、小皿に取りわけてくれるリオ。
「うまい物でも、こう連日食ってるとぁ――――がぶり」
な、なんだこりゃ!?
――――ひょっとして、こいつぁ芋か!?
てちてち、ぽきゅぽん♪
「どうよ、シガミー。ポテトカツのお味わぁ?」
この料理は、女神憑きが考えたらしい。
「超うめぇ!」
カリッと揚がった衣に、ほっくほくの芋。
〝たまごソ-ス〟との相性が最高だった。
さすがは飯の神だぜ。こと飯に関してだけは超信頼できる。
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