滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

１：輪廻転生、おいでませガムラン町

９１：猪蟹屋店主（シガミー）、解析結果がでた

「へぇー、こりゃなかなか、おもしれぇもんだな」
　朝飯あさめしのあと、例の〝暴徒無芸ぼうとむげい〟を三人さんにんで遊あそんでる。

　賽さいをふって出た数かずのぶんだけ、盤面ばんに置いた駒こまをすすめりゃ良い。
　絵双六えすごろくと遊あそびかたは、同おなじだ。
　だが単純たんじゅんな道筋みちすじはひとつもなく、実際じっさいにやってみないとわからない面白おもしろさがあった。

「（ほかのプレイヤー……神かみさまたちと遊あそぶのに買ったんだけどさ、あたくしさまはさ、お一人様ひとりさまじゃん？　ずぅーっとアイテムボックスに入れたまんま、忘わすれちゃってたんだよねぇ～」
　暇ひまをつぶすのに、引っぱりだしたのか。

「そうなのさ、鬼娘おにっこちゃんはメイドちゃんに追いだされちゃったからさ、超ちょうヒマでさ。それでさ、はじめて遊あそんだのにさ、メイドちゃんがさ、なかなかの名勝負めいしょうぶを繰りひろげてくれちゃってさ、手に汗あせにぎっちゃったとさ♪）」
　今日きょうは筋肉痛きんにくつうのせいで休やすみにしたから、猪蟹屋おれたちも超ちょうヒマだったとさ。

「でっしょ、でっしょぉぉう？」
　あたらしい娯楽あそびに、子供レイダがはしゃいでる。
　盤面ばんめんには、たのしそうな絵が描いてあって、老若男女あらゆるひとが、よろこんでくれそうな気がする。

「けど、木彫りの駒コイツは――なんだ？」
　ひんそうな体からだに、ばかでかい頭あたま。
　土台どだいが無けりゃひっくり返かえっちまう、釣り合いのわるさ・・・・・・・・。
　肌はだや髪かみに色いろまでついてて、これじゃまるで――

「それはね、シガミーだよ。かわいい♪」
「はい昨夜さくや、元々もともとあった駒こまだけではつまらないとおっしゃった女め……天狗テェーングさまがつくってくださいました。おかわいらしぃ♪」

　おい女神めがみ。おれぁこんなに、ほっぺたと下したっ腹はらが膨ふくれちゃいねぇぞ？
「（ふふん、それはねぇー。〝めがみねんど〟って言うんだよ。カワイイでしょぉー？）」

「根付ねつけの猫ねこなんかと、同おなじ部類ぶるいか……」

「ネッケノネコって、なあに？」
「聞いたことが、有りませんね？」
「根付ねツけといウのは、家いえの鍵かギなどにつケる紐ひもとその留とめ具ぐのこトです。」

「（おっと、遊あそんでばかりもいられねぇや。迅雷ジンライ――そもさん）」
　五百乃大角いおのはらがなんで収納魔法しゅうのうまほうに入はいっちまったのか、とかの話はなしがまるでわからんままだ。

「（説破せっぱです、シガミー。〝女神格納現象めがみかくのうげんしょう〟の解析結果かいせきけっかは次つぎのようになります。）」
　くるくるくる――ザシュ！
　迅雷ジンライがおれの髪かみをまいて、簪かんざしがわりになる。

　目尻めじりまで伸びてきた、細ほそい機械腕かいながひかると――ヴヴュゥン。
　おれにしか見えない透明とうめいなビードロが、顔かおをおおった。

　ふぉふぉふぉふぉふぉぉん♪
『女神格納現象：解析結果１／
　＞子機である裏天狗を格納する際
　＞義骨格〝ＴＲＴＴ０１Ｋ〟に設定したＩＤ＃Ｉ０５００１と、
　　イオノファラーが使用中のアバター
　　〝イオノフアラー＃Ｉ０５００１〟が重複している為
　＞同一として処理され、双方とも格納されました。
　解析結果２／
　＞再出現時も同一名称として扱われた為
　＞義骨格積載ＳＤＫのコンソール、ひいては擬似的なＡＯＳとしてアタッチされ
　　子機である裏天狗の操作を可能にしました。』

「（イオノファラー、このアバターＩＤ＃アイディーナンバーはどこから入手にゅうしゅしましたか？。）」
「（えー、なんだったけ……たしかねー、公式こうしきのぉー攻略本こうりゃくぼんのスタートガイド（？）に書いてあったやつを、まるっと同おなじくしたら、ちゃんとキャラメイクの画面がめんになったよ？）」

「（Ｉアイ０５番台ばんだいは、子機制御系こきせいぎょけい向けに予約よやくされています。おそらく、自律型じりつがた砲台タレット作成さくせいマニュアルを参照さんしょうしたと思おもわれます……イオノファラーは正規表現せいきひょうげんの基礎きそだけでなく、もくじ……本ほんの読み方かたも勉強べんきょうしてください。）」

　なんかおこられてるな。
　おおかた、また〝雑ざつ〟な仕事しごとをしたんだろう。
　まえにも、そのせいで清み酒さけが、酢になっちまったことがあった。

「（ええー？　そうなのぅ？　ごめぇーんね？）」
「（ですが、今回こんかいにかぎっては怪我けがの功名こうみょうです。本来ほんらい、不可能ふかのうだった実行環境プレイヤークラスのインスタンス化に成功せいこうしています。）」

「「（（わ・か・ら・ん））」」
　五百乃大角かみさんは、わかってねぇと、だめだろうがよ。

　　　§

「はい、シガミーの番ばんだよ！」
　レイダが、梅干うめぼしの大おおきさの賽さいを手渡してくる。

　ころん――星ほしふたつ。
　二枡ふたますすすめると――『一回休いっかいやすみ』の枡目ますめにとまる。
　まあ、考かんがえごとができて良いやな。

　シガミーおれそっくりの下ぶくれ・・・・をつかんで動うごかそうとしたら――かたかた……ぐぐっ、ぴょん♪
　おれはまだ、つかんでねぇ――かたかた、ぴょん♪

　駒おれが土台どだいごと、飛び跳ねた！

「うわっ――!?」
　おれ。
「ぎゃっ――!?」
　レイダ。
「きゃぁっ――!?」
　リオ。

「（うっぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ、こっ、怖こわっ！　うごぉけぇって念ねんじたら、うごいたっ、なんで!?）」
　いおのはら。
　てめえ、ひとの頭あたまん中なかで――うるせえぞっ！
　それと、念ねんじるな！

「（イオノファラー？　このシガミーを形取かたどった駒こまを作成さくせいする際さいに、また同おなじＩＤ＃アイディーナンバーを使用しようしましたね？）」

「（うん。め、面倒めんどうだったから、勝手じどうてきに入力にゅうりょくされてたまま、『作成さくせい』押したけど、ま、まずかった？）」
　わかる。
　話はなしの内容ないようじゃなくて、五百乃大角いおのはらの仕事しごとが――〝雑ざつ〟だって事ことだけは、よーくわかる。

「みなサま。お騒さわがせシました。こレは私わたシのあたラしい芸げいでス。お気にナさらず続つづけテください。」
　なんだもー、脅おどかさないでよ。
　はぁー、びっくりしましたねー。

　迅雷ジンライの言うことは、みんなすぐに信しんじてくれるな。
　たすかったが。

　ころん――――！

「ああー！」
　痛恨つうこんの三回休さんかいやすみを引き当てた、涙目なみだめのレイダ。
「はい。つぎはシガミーの番ばんですよ」
　おれの小さな手に、そっと賽さいを持たせてくれるリオ。
　ころん――――！
「ああー！」
　おれは駒シガミーをつかんですすめ、大猿レイダのよこに並さらべた。

「あら残念ざんねんでしたわね、シガミー」
　リオの細ほそい指ゆびが、賽さいをつまみあげる。
　ころん――――星ほしは六むっつ！
　こつこつこつ――どんどんすすんでいく山梟やまふくろう。

「わーっ！　リオレイニアさんがゴールだっ！　つよい！　すっごくつよい！」
　リオレイニアが、一番いちばんあがりになった。
　女神かみさんあいてに良い勝負しょうぶってのは、本当ほんとうだった。

　さすが〝女神の・加護〟を、持っているだけのことはあるな。
　おれの〝女神に・加護〟とは、ひと味あじもふた味あじもちがうぜ……。

ーーー
絵双六／すごろく。