上 下
82 / 736
1:輪廻転生、おいでませガムラン町

82:猪蟹屋店主(シガミー)、たおれる

しおりを挟む
 っじゅわぁぁぁぁぁあぁっ――――ぱちぱちぃぃ♪
 きつねいろになって――あぶらうえに浮かんできたら、ひっくりかえして引きあげる。

「はやく、はやくっ♪ キャキャッホーゥイ♪」
 やい、美の女神いおのはら
 みせなかおどるなまわるな、じゃまだ。
 もっとも、いまのところ見えてるのは、おれとリオレイニアだけだが。

 今回こんかいは、どういうわけか、いつまでも腹一杯はらいっぱいにならねえらしい。
 近寄ちかよららなけりゃ影響えいきょうはでねえが、どうにかして、おかえりいただかねえと。

「レイダ、揚がったぜ!」
 ぜんぶ食われちまわねえように、一度いちどにたくさん揚げる方法ほうほうをあみだした。
 こうすりゃ、五百乃大角いおのはら一個いっこ食ってるあいだに、みせぶん確保かくほできる。

 そういや迅雷ジンライも、ひめさんの揚げかたを覚えたあとで、天狗の体こんごうりきをつかって、たくさん揚げてやがったな。

「はぁい。あ、シガミー、〝たまごソ-ス〟切れてるよ?」
 たまごソースてのは、五百乃大角いおのはら情報じょうほうから迅雷ジンライつくったものだ。
 すっぱいが、みょうににうまくて、これも大入おおいりの原因げんいんだ。

 くそう、いそがしいぜ。
「おーい、鬼娘オルコトリア今日きょうはヒマなんだろ? 買いものたのまれてくれねぇか?」
 魔物討伐まものとうばつ遠征中えんせいちゅうに出くわした、ゴーブリンの異常発生いじょうはっせいつのウサギ変異種バリアントとの遭遇そうぐう
 報告ほうこくやなんかは、姫さんリカルル付きの聖剣切りの閃光パーティーメンバーが引きうけてくれたから、むこう一週間いっしゅうかん強制的に・・・・ひまらしい。

「じゃあ、串揚くしあげ10ぽんでどう?」
「わかった。じゃ、たまごしお果物酢くだものすを、買えるだけ買ってきてくれ!」
 かねはリオレイニアから、もらってくれぇ~。
 はぁひぃ――ほかのきゃくもまだまだ、ならんでる。

 っじゅわぁぁぁぁぁあぁっ――――ぱちぱちぃぃ♪
 揚げろ。
 っじゅわぁぁぁぁぁあぁっ――――ぱちぱちぃぃ♪
 揚げろ揚げろ。

「そういえばわたくし、テェーングさまの正体しょうたいがわかりましたわ!」
「ぶっふぉ――――っ!?」
 な、なんんだとぉう!?

 つい、吹きだしちまった!
 遠征えんせいからもどったばかりだってのに、うちのみせ手伝てつだってくれてるひめさんが、とんでもねぇことを言いだす。

 テングはシガミーおれかり姿すがただぜ――――!?
 さすがにバレたか!?

「かれはシガミーこくからのまよびと――かくしてその正体しょうたいわぁーーーー!?」
 もともと
 シガミーこくなんて、ねぇぞ。


 えー、なになに?
 ほらあの、くろずくめの……。
 あー、かおおおきな目が描いてあった人でしょ?
 がやがやがや、わちゃわちゃわちゃ♪

 じつはウサギにくや、ほか素材そざいはこんでやるのに、おれはガムランちょう一度訪れている・・・・・・・

 じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ――――姫さんリカルル狐耳きつねみみが、おれを正面しょうめんにとらえた。
 なんでそこで、おれをじっと見つめやがる?

 天狗テングすがたはくろずくめであやしくて、あいらしいシガミーおれとは、似ても似つかねえだろうが。

 たしかに〝小太刀かたな〟は色違いろちがいなだけで瓜二うりふたつだし、れた武器ぶきなおしかたもおなじだし、そもそも錫杖しゃくじょうなんてつかうのは、ここじゃおれだけだ――――同郷どうきょうってだけじゃ強引ごういんだったかもしれんが。

 姫さんリカルルらをたすけるためとはいえ、まちの決まりやリオレイニアとの約束やくそくやぶったおれがわりぃ――――はらをくくるか――目を閉じ、あぶらの跳ねるおとを聞く。

「みんな、聞いておどきなさい! テェーングの正体しょうたいは――――凄腕すごうでの、宮廷きゅうてい料理人りょうりにんよ!」
「はぁ――――――――――――!?」
 おれは、へなへなとゆかたおれこんだ。
 あぶねぇから、油鍋あぶらなべの火はつめてぇ魔法まほうで消した。

「だって、わたくし一度いちどつくってって見せた串揚くしあげげを、あれだけ完璧かんぺき再現さいげんして見せた、あの腕前うでまえ――――」
 なんでぇい、バレたわけじゃねぇのか。

「だぁはぁぁっ――――」
 安堵あんどいきをついたら――――びききききっ!
「ん? あれ? いてぇ? でででだだっ!?」

「シガミー、どーしたの!? このいそがしいそしいときに!?」
 レイダが駆けよってきて、おれのうであそてえところを、ぐりぐりとしてくる。

「い、いてえって言ってんだろうが!」
 大声おおごえを出したら、リオレイニアが飛んできた。

「シガミー! ど、どうなされたのですか?」
 見おろすかお蒼白そうはくなのは――おれを心配しんぱいしてくれてるだけじゃねぇ。

 コトン――よこを向くおれのみみうえ
 さらをおいて、おかわりを要求ようきゅうする――暴力神いおのはら姿すがたがみえているから……だとおもう。

   §

「みなサん、心配しンぱいにはおよびマせん。たダの筋肉痛きんにくツうでス。」
 おれのうしろあたまから、いつものこえひびいた。

「(そんなわけあるか、このいたみはふつうじゃねえ!)」
「(はい、ふつうではありません。ですがれっきとした筋肉痛きんにくつうです。)」

「もー、おどかすんじゃないわよ。シガミーは本当ほんとう体力たいりょくがないなあ」
 てめえ鬼娘おにむすめめ!

 どかんごとん、どさどさどさどささっ!
 買いものありがとう。けど、おまえはゆるさん。
 いつかひかりのたまのうらみを、晴らすからな。

「(――金剛力こんごうりき連続使用れんぞくしようによる深層筋インナーマッスル筋力低下きんりょくていかならびに、急激きゅうげきなオーバーワークによる弊害へいがいです。)」
 せ・つー、いてぇーっ!

「(長時間ちょうじかん金剛力こんごうりきをつかうと、体力増強たいりょくぞうきょうスキルがあっても筋力きんりょく維持いじできないほどの筋力低下きんりょくていか……からだがなまります。)」
「(あれだけからだをうごかしたのになまるってぇのか!? ――けどそりゃそうだな、おれがうごいたのはすこしだからな)」

「(一日いちにちにつき、合計ごうけいで30ぷん連続使用れんぞくしようは3ぷんまでにおさえるなら、問題もんだいないかと。)」
「(三分さんぷん十回じゅっかいまで? それでも使つかえるっちゃ使つかえるが――――そうだ、きのう買いこんだ〝襟草えりくさ〟があるじゃねーか、いますぐよこせ!」

「(金剛力こんごうりきとおなじ理由りゆう不可能ふかのうです。その筋肉痛いたみ蘇生薬エリクサー解消かいしょうした場合ばあい短期間たんきかん筋力きんりょく低下ていかするおそれがあります。)」
 おおけがを何回なんかいなおすと、からだがよわくなんのか?

「(いいえ、筋力増大きんりょくぞうだいのメカニズム……筋力ちからをつけるときのからだのしくみと食い合います・・・・・・。)」
 わからん。

「(じゃ、どーすんだよ。こんなんじゃ、みせのかき入れどきにおれぁ、なにもできねぇじゃねーか!)」
 よこにたおれたままの、おれのみみのうえ――カチャリ♪
 さら何枚なんまいかさねはじめた美の女神こいつも――このままにしておけねえ。

「(ソレについては、ひとつかんがえがあります。)」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

処理中です...