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1:輪廻転生、おいでませガムラン町
68:シガミー(元破戒僧)、洞窟をクリア
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こっちを見てんのは、冒険者たちか?
わかりませんが洞窟内での、こちらの索敵範囲は約100メートル。
そのそとからコチラを、認識しているとは思えません。
そうだな、おれたちゃあ、ほとんどまっくろだからな。
迅雷は勝手に黒くなるし、おれは〝迅雷式隠れ蓑〟で闇に溶けこんでるはず。
ザッ、ザッ、ザザッ。
しばらく進むと――
ぐぅわるるぅぅぅーー!
でけぇ岩の影に、火吐き狼の縁取りが見えた。
岩ごと切れりゃ世話ねぇんだが、さすがに小太刀が折れる。
「(姫さんの、ぶった切りなら岩ごといけるんだろうなあ)」
敵にするとおっかねえが――いいよな、あれ。
「(嗅覚……鼻や耳でコチラを捉えられた場合にも――擬似的なタキサイキア現象が発生し、周囲が待たされるようです)」
「(わからんが……目でも鼻でも耳でも、とにかくみつかりゃ――迅雷との無駄話が、鳴子がわりになるってこったろ)」
わかった……ことにする。
トォン!
岩をとびこえ――一閃!
こっちを仰ぎみた火吐き狼を、両断。
並みの獣よか、はやくうごけるなら、岩ごと切るひつようもねえか。
もう少し進むと、道が分かれてた。
「こっちだな」
足跡についていく。
§
「シガミー、外気の流入を検出……外につうじる道を発見しました」
ポォン♪
顔をおおう、おれにしか見えねぇびーどろの右下。
黄の▼が、したを向いてる。
「(こりゃなんだ?)」
「(地図……辺りの地形を模した絵です。中央がシガミーの現在地点です)」
「(地形を模した……絵?)」
そいつは、おだやかじゃねぇな。
これほどの細かさのもんは、みたことがねえ。
大名付きの大工の頭領でも、お目にかかれるかどうかって代物だぜ。
「AOSにはオートマッピング機能が……歩きまわった場所の地図を勝手に作成します」
「そりゃ、ひと財産じゃねーか!」
――――ねぇーか、ねか、か、ぁ!
つい大声を、出しちまった。
「(町の女神像で、紙に書き出すこともできます)」
よし、『猪蟹屋』の次の売り物が決まったぞ!
「(町政に関わる事柄ですので……リオレイニアに必ず相談してください)」
「(ん? そうだな、いくらの値を付けたら良いか、見当も付かねえからな!)」
そうときまりゃ、こんなクエストはさっさと終わらして、とっととかえらねえとな。
§
「(――血怨戒・襲!)」
ぎゅり、狙いは天井にぶらさがる、頭に花を咲かせた大蝙蝠。
ふんぬぉりりりゃやぁぁぁぁぁぁ――――ギャリリィン――――どがんっ!
錫杖の先が、大蝙蝠を貫き――――粉砕し――――バッゴォォォォン!
「いけねえ、やりすぎたぜ!」
がらららっ、ゴドガドズズン!
よっはっとっは!
避ける、避けねえと死ぬ。
崩れる天井。
無数の氷柱石が――――ひゅうん、とすん、ととととん、すとととととととっ!!!
うぉりゃとりゃうひぃぬっはぁ!
死ぬ気で避ける、避けねえと死ぬ。
はぁはぁ、あやうく生き埋めか、串刺しになるところだった。
ふぉん♪
『>花コウモリの小花【特級】×4を収得』
「(特に危険な生物ではなかったようですね)」
「(けど、頭の上に張りつかれてたら、どうしても気になるぜ)」
ポォン♪
びーどろ右下。
黄の▼が、さきをいそげと催促しやがる。
「わかったよ」
すたたた、ストトットォォォォ----ンッ!
§
たまたま宙を飛んでた花コウモリを数匹。
火吐き狼を、もう一匹。
鷹の首が二本あるヤツ一匹と、緑の猿、赤と緑の水たまりを切り捨てた。
「(よおし、洞窟を抜けたぞ!)」
そこは木々がうっそうと茂る、まさに森のどまん中。
「(足跡は、ふたてにわかれたようです)」
ひとつは数人。あとは残りのぜんぶ。
「(どっちがやべえと思う?)」
「(この先はおそらく、高レベルの魔物が出没します。数名で行動できるのは、高レベルの冒険者以外にあり得ません)」
「おう、こっちの少ねえ方が姫さんなのはまちがいねえ」
方角から察するに目的地の砦に向かったらしい。
「じゃ、こっちの連中はどこ行ったんだ?」
「(現在の情報だけではわかりかねます)」
「(じゃ、まずはこっちだ!)」
すたたたっ、ストトォォォーーーーン!
木や岩や藪のあいだ。視線がとおる一直線をぬけていく。
したを遠征隊の足跡が流れる。
これだけの足跡を、のこすほどの大軍だ。
行軍速度には、限界がある。
まだ、ちかくに居るかもしれねえ――――居た!
ぱしん――――くるん、すたん!
木をつかんでまわる。
いきおいを殺して、そっと太枝にとりつく。
「ぎゃぎゃっ!」
それは冒険者じゃなかった。
洞窟で倒した、緑の猿だ。
「ぎゃ、ぎゃ、うんぎゃ、ぺらっぴ、がぎゃぁ、がや、ぎゃ、ぺぎっ!」
一匹や二匹じゃねえ――群れだ。
それも、大いくさでも、はじめようかってくれぇの数。
地面が、茂みと猿の緑でうめつくされていく。
「(どれくらい居る?)」
「(見える範囲で、ざっと――2500。類推で全3000体です)」
ーーー
タキサイキア現象/衝突事故などの窮地に際し、周囲がスローに見える現象。TPSゲームでいうところのバレットタイム。
わかりませんが洞窟内での、こちらの索敵範囲は約100メートル。
そのそとからコチラを、認識しているとは思えません。
そうだな、おれたちゃあ、ほとんどまっくろだからな。
迅雷は勝手に黒くなるし、おれは〝迅雷式隠れ蓑〟で闇に溶けこんでるはず。
ザッ、ザッ、ザザッ。
しばらく進むと――
ぐぅわるるぅぅぅーー!
でけぇ岩の影に、火吐き狼の縁取りが見えた。
岩ごと切れりゃ世話ねぇんだが、さすがに小太刀が折れる。
「(姫さんの、ぶった切りなら岩ごといけるんだろうなあ)」
敵にするとおっかねえが――いいよな、あれ。
「(嗅覚……鼻や耳でコチラを捉えられた場合にも――擬似的なタキサイキア現象が発生し、周囲が待たされるようです)」
「(わからんが……目でも鼻でも耳でも、とにかくみつかりゃ――迅雷との無駄話が、鳴子がわりになるってこったろ)」
わかった……ことにする。
トォン!
岩をとびこえ――一閃!
こっちを仰ぎみた火吐き狼を、両断。
並みの獣よか、はやくうごけるなら、岩ごと切るひつようもねえか。
もう少し進むと、道が分かれてた。
「こっちだな」
足跡についていく。
§
「シガミー、外気の流入を検出……外につうじる道を発見しました」
ポォン♪
顔をおおう、おれにしか見えねぇびーどろの右下。
黄の▼が、したを向いてる。
「(こりゃなんだ?)」
「(地図……辺りの地形を模した絵です。中央がシガミーの現在地点です)」
「(地形を模した……絵?)」
そいつは、おだやかじゃねぇな。
これほどの細かさのもんは、みたことがねえ。
大名付きの大工の頭領でも、お目にかかれるかどうかって代物だぜ。
「AOSにはオートマッピング機能が……歩きまわった場所の地図を勝手に作成します」
「そりゃ、ひと財産じゃねーか!」
――――ねぇーか、ねか、か、ぁ!
つい大声を、出しちまった。
「(町の女神像で、紙に書き出すこともできます)」
よし、『猪蟹屋』の次の売り物が決まったぞ!
「(町政に関わる事柄ですので……リオレイニアに必ず相談してください)」
「(ん? そうだな、いくらの値を付けたら良いか、見当も付かねえからな!)」
そうときまりゃ、こんなクエストはさっさと終わらして、とっととかえらねえとな。
§
「(――血怨戒・襲!)」
ぎゅり、狙いは天井にぶらさがる、頭に花を咲かせた大蝙蝠。
ふんぬぉりりりゃやぁぁぁぁぁぁ――――ギャリリィン――――どがんっ!
錫杖の先が、大蝙蝠を貫き――――粉砕し――――バッゴォォォォン!
「いけねえ、やりすぎたぜ!」
がらららっ、ゴドガドズズン!
よっはっとっは!
避ける、避けねえと死ぬ。
崩れる天井。
無数の氷柱石が――――ひゅうん、とすん、ととととん、すとととととととっ!!!
うぉりゃとりゃうひぃぬっはぁ!
死ぬ気で避ける、避けねえと死ぬ。
はぁはぁ、あやうく生き埋めか、串刺しになるところだった。
ふぉん♪
『>花コウモリの小花【特級】×4を収得』
「(特に危険な生物ではなかったようですね)」
「(けど、頭の上に張りつかれてたら、どうしても気になるぜ)」
ポォン♪
びーどろ右下。
黄の▼が、さきをいそげと催促しやがる。
「わかったよ」
すたたた、ストトットォォォォ----ンッ!
§
たまたま宙を飛んでた花コウモリを数匹。
火吐き狼を、もう一匹。
鷹の首が二本あるヤツ一匹と、緑の猿、赤と緑の水たまりを切り捨てた。
「(よおし、洞窟を抜けたぞ!)」
そこは木々がうっそうと茂る、まさに森のどまん中。
「(足跡は、ふたてにわかれたようです)」
ひとつは数人。あとは残りのぜんぶ。
「(どっちがやべえと思う?)」
「(この先はおそらく、高レベルの魔物が出没します。数名で行動できるのは、高レベルの冒険者以外にあり得ません)」
「おう、こっちの少ねえ方が姫さんなのはまちがいねえ」
方角から察するに目的地の砦に向かったらしい。
「じゃ、こっちの連中はどこ行ったんだ?」
「(現在の情報だけではわかりかねます)」
「(じゃ、まずはこっちだ!)」
すたたたっ、ストトォォォーーーーン!
木や岩や藪のあいだ。視線がとおる一直線をぬけていく。
したを遠征隊の足跡が流れる。
これだけの足跡を、のこすほどの大軍だ。
行軍速度には、限界がある。
まだ、ちかくに居るかもしれねえ――――居た!
ぱしん――――くるん、すたん!
木をつかんでまわる。
いきおいを殺して、そっと太枝にとりつく。
「ぎゃぎゃっ!」
それは冒険者じゃなかった。
洞窟で倒した、緑の猿だ。
「ぎゃ、ぎゃ、うんぎゃ、ぺらっぴ、がぎゃぁ、がや、ぎゃ、ぺぎっ!」
一匹や二匹じゃねえ――群れだ。
それも、大いくさでも、はじめようかってくれぇの数。
地面が、茂みと猿の緑でうめつくされていく。
「(どれくらい居る?)」
「(見える範囲で、ざっと――2500。類推で全3000体です)」
ーーー
タキサイキア現象/衝突事故などの窮地に際し、周囲がスローに見える現象。TPSゲームでいうところのバレットタイム。
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