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1:輪廻転生、おいでませガムラン町
66:シガミー(元破戒僧)、岩場を疾走る
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「(そういや、このへんに日の本につうじる抜け穴でもあんのか?)」
ここは、最初に落ちてきた場所だ。子供のあしでえらくかかった距離が、一歩でとどいちまった。
リオとの〝D級になるまで入らねえ〟って約束を破っちまうが許せ。火急の事態だ。
「(いいえ。イオノファラーのライブラリーと、女神像より収得した情報に記述はありません。これ以上の空間転移や異世界検索ルーレットに関連項目は――上位権限により非公開です)」
話がわからん上に長ぇ――――けど、〝まわりの動きが、鈍く〟ならんぞ?
「(シガミーがふだん感じているのは、周囲の人物の意識との、思考速度差を埋めるための措置です」
「(そもさん?)」
「(説破です。ほかの生物から見られているときに、この思考による会話をおこなうと、周囲の時間が待たされます)」
「(待た……される?)」
なら、迅雷に長口上を言わしてる間に、火縄で狙いをさだめりゃ――?
「(不可能です。シガミーのからだの動きも、待たされます)」
「(ちっ、やっぱり早くなんのは、おまえとの話だけかよ)」
「(そういうことです。ですが、複数の敵にかこまれた場合など、瞬時に対応できるので有用ではあります)」
「(それな、まえにも言ったかもしんねえが、元からできんだよ。ようは、いくさ場で飛んでくる矢や槍や刀や雑兵なんかか、鈍くなるやつだろ?)」
「(シガミーが選ばれたのは……偶然ではないのかも知れません)」
「(なんのはなしだ?)右に狼の群れがきたぞ」
縁取りの中を赤く塗られた、四つ足の獣。
だたったた、だたったた――――足音か聞こえてきた!
ふぉ♪
『ドレッドウルフ/
四つ足。火を吐く。毛皮がとれる。
すじ張ってて、食べるところがない。』
まえに森の入り口で倒したヤツだ。
ふぉん♪
『バレットウルフ/
四つ足。火炎弾を吐く。毛皮がとれる。
すじ張ってて、食べるところがないが、
口から吐くまえの、ため込んだ火炎弾は稀少。』
こっちは似てるけど、別のヤツか。
縁取りの中が、赤と黒の縞んなってる。どうやらこいつが親玉らしい。
だだだっ――――ぐぅわぉう!
シュッカン!
飛びかかってきた狼もどきを、切った。
まえみてぇに刃先を、止められたりはしねえ。
「(シガミー)」
「(わかってる!)」
切ったのとは逆方向から、縁取りが三匹。
シュカカカーン!
振り向きざま、いっきに振り抜く。
金剛力がなかったら、この体でもできねえ芸当だ。
スタターン、ストトォーン!
足を止めてる時間はねえ、このままいく。
流れる地面。
どさどさどさっ――ぎゃぅぅん!
「(一匹のこったか)」
「(シガミー、火炎弾がきます)」
三角が上下左右から押しよせる!?
「(こりゃ、なんでぇ!?)」
「(〝背後からの遠距離攻撃〟を表しています)」
くるんっ、ストトトォォォーーン!
振り向きざま、たかく跳んだ!
ひゅぉぉぉぉぉぉぉぉ――――!
かぜの音。
目のまえには、一二、三四、五六……たくさんの青白い炎をまとった塊。
ゴゴォォォォォォッ!
あっちの方が、おれより、はやさがある。
すぽん――ヴッ♪
小太刀をしまい、錫杖を取りだす――――ジャリィン!
くるくるくるっ――――喝ぁーーーーっ!!
ごっがんばぎんどごがんずどごぉぉんっ!
「(お見事です、シガミー)」
砕かれた燃える石が、おちていく。
くるん、スタン!
くるん――――トォォォォォォォォォォッォン!
地を踏み、おもいきり跳ぶ。
そして、もういちど背後をふりかえる。
――ぐうわぁうぅぅぉぉぉぉぉうっ!
でけぇ口が、錫杖が届きそうなくらい近くに、せまってた。
親玉の体格は、ふたまわりくれぇ、でかかった。
さいしょに落ちてきたときに、こんなのと出くわしてたらと思うとぞっとする。
けど――口んなかは、狼もどきとおんなじだった。
ただ、喉のおくに、ぎらぎらひかる尖った石がみえてる。
「(錫杖ぶんなげたら、拾いにいく時間が惜しい。おまえの腕は届かねえか?)」
「(私の機械腕では、錫杖の速度に耐えられません。内臓の刃物も、0・5……半シガミーまでしか届きませんので――)」
「(しゃあねぇ――)この錫杖は定めて当たる、一撃必中――――」
石吐き狼の口の中に、魔法の神髄が描かれていく。
「(――口上の末尾に〝遅延回収〟と、つけ足してください)」
口上を並べてるときに、むずかしいこと言いやがって――!
「(――血怨戒・襲!)」
ぎゅり、狙いは定まってる。
あとは敵の守りを抜いて、まんなかを貫くだけだ。
ふんぬぉりりりゃやぁぁぁぁぁぁ――――ギャリリィン――――どがんっ!
錫杖の先が、石吐きの頭を貫き――――粉砕し――――バッゴォォォォン!
「痛ってっ!?」
まさか、火縄を撃たれたのか!?
耳もとで、なんかふっとんだぞ!?
「(錫杖先端の初速が時速1620㎞に到達しました)」
「(耳が聞こえんが、おまえの声は聞こえる。説明)」
「(ソニックブーム……錫杖のあまりの速度に空気が根を上げました)」
ふぉん♪
『>不発火炎弾×3を収得』
ーーー
火急/火が付いたように差し迫った状態。
火縄/縄に硝石を付着させたもの。火縄銃(火縄で点火する小銃)をさす事も。
ここは、最初に落ちてきた場所だ。子供のあしでえらくかかった距離が、一歩でとどいちまった。
リオとの〝D級になるまで入らねえ〟って約束を破っちまうが許せ。火急の事態だ。
「(いいえ。イオノファラーのライブラリーと、女神像より収得した情報に記述はありません。これ以上の空間転移や異世界検索ルーレットに関連項目は――上位権限により非公開です)」
話がわからん上に長ぇ――――けど、〝まわりの動きが、鈍く〟ならんぞ?
「(シガミーがふだん感じているのは、周囲の人物の意識との、思考速度差を埋めるための措置です」
「(そもさん?)」
「(説破です。ほかの生物から見られているときに、この思考による会話をおこなうと、周囲の時間が待たされます)」
「(待た……される?)」
なら、迅雷に長口上を言わしてる間に、火縄で狙いをさだめりゃ――?
「(不可能です。シガミーのからだの動きも、待たされます)」
「(ちっ、やっぱり早くなんのは、おまえとの話だけかよ)」
「(そういうことです。ですが、複数の敵にかこまれた場合など、瞬時に対応できるので有用ではあります)」
「(それな、まえにも言ったかもしんねえが、元からできんだよ。ようは、いくさ場で飛んでくる矢や槍や刀や雑兵なんかか、鈍くなるやつだろ?)」
「(シガミーが選ばれたのは……偶然ではないのかも知れません)」
「(なんのはなしだ?)右に狼の群れがきたぞ」
縁取りの中を赤く塗られた、四つ足の獣。
だたったた、だたったた――――足音か聞こえてきた!
ふぉ♪
『ドレッドウルフ/
四つ足。火を吐く。毛皮がとれる。
すじ張ってて、食べるところがない。』
まえに森の入り口で倒したヤツだ。
ふぉん♪
『バレットウルフ/
四つ足。火炎弾を吐く。毛皮がとれる。
すじ張ってて、食べるところがないが、
口から吐くまえの、ため込んだ火炎弾は稀少。』
こっちは似てるけど、別のヤツか。
縁取りの中が、赤と黒の縞んなってる。どうやらこいつが親玉らしい。
だだだっ――――ぐぅわぉう!
シュッカン!
飛びかかってきた狼もどきを、切った。
まえみてぇに刃先を、止められたりはしねえ。
「(シガミー)」
「(わかってる!)」
切ったのとは逆方向から、縁取りが三匹。
シュカカカーン!
振り向きざま、いっきに振り抜く。
金剛力がなかったら、この体でもできねえ芸当だ。
スタターン、ストトォーン!
足を止めてる時間はねえ、このままいく。
流れる地面。
どさどさどさっ――ぎゃぅぅん!
「(一匹のこったか)」
「(シガミー、火炎弾がきます)」
三角が上下左右から押しよせる!?
「(こりゃ、なんでぇ!?)」
「(〝背後からの遠距離攻撃〟を表しています)」
くるんっ、ストトトォォォーーン!
振り向きざま、たかく跳んだ!
ひゅぉぉぉぉぉぉぉぉ――――!
かぜの音。
目のまえには、一二、三四、五六……たくさんの青白い炎をまとった塊。
ゴゴォォォォォォッ!
あっちの方が、おれより、はやさがある。
すぽん――ヴッ♪
小太刀をしまい、錫杖を取りだす――――ジャリィン!
くるくるくるっ――――喝ぁーーーーっ!!
ごっがんばぎんどごがんずどごぉぉんっ!
「(お見事です、シガミー)」
砕かれた燃える石が、おちていく。
くるん、スタン!
くるん――――トォォォォォォォォォォッォン!
地を踏み、おもいきり跳ぶ。
そして、もういちど背後をふりかえる。
――ぐうわぁうぅぅぉぉぉぉぉうっ!
でけぇ口が、錫杖が届きそうなくらい近くに、せまってた。
親玉の体格は、ふたまわりくれぇ、でかかった。
さいしょに落ちてきたときに、こんなのと出くわしてたらと思うとぞっとする。
けど――口んなかは、狼もどきとおんなじだった。
ただ、喉のおくに、ぎらぎらひかる尖った石がみえてる。
「(錫杖ぶんなげたら、拾いにいく時間が惜しい。おまえの腕は届かねえか?)」
「(私の機械腕では、錫杖の速度に耐えられません。内臓の刃物も、0・5……半シガミーまでしか届きませんので――)」
「(しゃあねぇ――)この錫杖は定めて当たる、一撃必中――――」
石吐き狼の口の中に、魔法の神髄が描かれていく。
「(――口上の末尾に〝遅延回収〟と、つけ足してください)」
口上を並べてるときに、むずかしいこと言いやがって――!
「(――血怨戒・襲!)」
ぎゅり、狙いは定まってる。
あとは敵の守りを抜いて、まんなかを貫くだけだ。
ふんぬぉりりりゃやぁぁぁぁぁぁ――――ギャリリィン――――どがんっ!
錫杖の先が、石吐きの頭を貫き――――粉砕し――――バッゴォォォォン!
「痛ってっ!?」
まさか、火縄を撃たれたのか!?
耳もとで、なんかふっとんだぞ!?
「(錫杖先端の初速が時速1620㎞に到達しました)」
「(耳が聞こえんが、おまえの声は聞こえる。説明)」
「(ソニックブーム……錫杖のあまりの速度に空気が根を上げました)」
ふぉん♪
『>不発火炎弾×3を収得』
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火急/火が付いたように差し迫った状態。
火縄/縄に硝石を付着させたもの。火縄銃(火縄で点火する小銃)をさす事も。
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