51 / 740
1:輪廻転生、おいでませガムラン町
51:冒険者パーティー『シガミー御一行様』、リオレイニアがあらわれた
しおりを挟む
「シガミーがおしえてくれた、お寿司をまた作ってみたのですけれど――――」
「そんなことより、うちのシガミーがごめんなさい!」
ほら、シガミーもあやまって!
おれを押し倒し、草原に這いつくばる子供。
子供とはいえ、この世界の先輩だ。
ときどき頼りにならねえこともねえし、言うことをきいておく。
せっかくひろった来世だ、もうすこし生きて見てまわりてえ。
レイダのまねをして、組んだ手を鼻につけ、這いつくばる。
「けど、オスーシって何? ちょっときになる……ひそひそ」
たよりになる先輩が、顔をこっちに向けて話しかけてくる。
気を散らすんじゃねえ。やっぱ子供だな。
それにしても、五百乃大角といい鬼娘といい、ここの女どもは、やたらと食い意地がはってる気がする。
「(シガミー。〝五百乃大角〟は美をあらわす字句として辞書登録されています。大食漢という文脈には不適切と思われます)」
「うるせえな、てめえはだぁってろい……ひそひそ」
「ちょっと、シガミー! 黙ってろってどういうコト!?」
「あ、いやおめえに言ったんじゃなくてな――」
また声に出ちまった。
「わ、私には、なにがなにやらわかりま――――」
急にはいつくばったと思ったら、突然ケンカをはじめる子供ども。
そりゃ、困った顔をさせるに決まってらぁ。
§
「驚かせないでくださいませ。そのことでしたら、先ほどリカルルさまと、お話ししてきましたよ」
「な、なんでえ。姫さんも、いちおう許してはくれたし、心配はしてなかったんだがよ……ふぅーっ!」
よし、崖っぷちだが生きのびたぜ。
「(けど迅雷、念のため姫さんのアレを抜くことを当座の目標にするぞ)」
「(はい。最優先項目……〝おお急ぎ〟に設定しました。しかしまだ〝不可視の剣尖〟……見えない切先の解析中……頓知が終了するまで約6時間、お待ちください)」
「(六時間……三刻だな。いいぜ。そんだけ待ちゃ、あの〝間がねえ剣〟を止められるってんなら、安いもんだ)」
よしよし。とにかく何がなんでもいきのびる。
万が一、何ひとつ手がねえってときは、なごり惜しいが、ガムラン町とこいつらはあきらめる。
隣町にゃ子供もたくさん居るから、まぎれることくれえできんだろ。
五百乃大角には、隣町名物のうまいものを食わせ……供えときゃ、文句も言わねえだろうしな。
「――――はい、これで私も晴れて、冒険者パーティー『シガミー御一行様』の一員です」
胸元からむにゅりと取りだされたそいつは、おれやレイダの木の板とは違っていた。
『リオレイニア・サキラテ LV:47――』
小判みてえな黄金のかがやき。
『――|魔法使い★★★★ /簡易詠唱/全属性使用可能/ロックオン無効/レンジ補正/クリティカル発生率補正/魅了の神眼/女神の加護/女神の祝福――』
やたらとたくさん付いてる技能。その最後。
『――所属:シガミー御一行様』
おれが言った冗談をレイダが、むりやりパーティー名に登録しちまったのと――同じ名。
「「はぁーーーーっ!?」」
§
「ちょっとまて? どうしてそうなった!?」
「リカルルさまのご友人のオルコトリアさんに、ご相談いたしましたところ――――」
イヤな予感しかしねえ。
「「そりゃ、おもしろい事になりそうね~♪」と、その場で手続きをしていただきました。お嬢さまには、すでにご了解をいただいてありましたし――」
〝ご了解をいただいてありましたし?〟
だらだらだらだらり。
脂汗がとまらねえ。
「LV差でパーティは組めないはずじゃ!?」
そうだ、いってやれレイダ。
おれたちのLVは6と7。リオレイニアは47。40も差がある。
「レベル差が解消されるまでは、私が得る経験値は自動的に、お金に変換されます。その変換率が――「(割合のことです)」――とても少ないので、事実上できないと言われているだけだったようです」
「そ、そう……なのぅ? なら、リオレイニアさんが入ってくれるなら、ものすごくうれしいけど……ちらり」
こっちみんな、先輩。
そして、もっとちゃんと姫さんの――
お貴族さまの腹ん中と面子と金勘定の機微ってもんを――
考えろってんだ。
おれも見誤ってたが。
「つきましてはパーティー加入の、ご了承をいただきたく存じます♪」
「「ご了承?」」
ふたたび差しだされた金ぴかを、よーくみる。
『所属:シガミー御一行様』
なんか文字が、薄くなったり濃くなったりしてやがる。
薄くなったときに、刻印済みの『聖剣切りの閃光』の文字がかすかに浮かぶ。
なんとなくだ。
それはほんとうに言葉にできねえほどの――微かさ。
気の迷いみてぇな――それでも、あらがえねぇ気配。
そんなのに突きうごかされて、かるく横に飛ぶと――――
――――ィン!
おれが居たところの景色が斜めにずれた。
――――ぼこり。
へこむ草地。
――――ィイィイィン!
――――ぼこぼこっぼこり。
だっだっだだだだっ!
もう止まれねえ。止まったら――――まっぷたつになっちまう。
「(迅雷!)」
「(はい、シガ――――)」
――――――――ィィィィィィィィッィィィィィィィィイイイイイイイインンンンッ!!!
迅雷の内緒話に割りこんできた存在感!
背後の、ずっと遠くの森の木々が、なぎ倒された。
「そんなことより、うちのシガミーがごめんなさい!」
ほら、シガミーもあやまって!
おれを押し倒し、草原に這いつくばる子供。
子供とはいえ、この世界の先輩だ。
ときどき頼りにならねえこともねえし、言うことをきいておく。
せっかくひろった来世だ、もうすこし生きて見てまわりてえ。
レイダのまねをして、組んだ手を鼻につけ、這いつくばる。
「けど、オスーシって何? ちょっときになる……ひそひそ」
たよりになる先輩が、顔をこっちに向けて話しかけてくる。
気を散らすんじゃねえ。やっぱ子供だな。
それにしても、五百乃大角といい鬼娘といい、ここの女どもは、やたらと食い意地がはってる気がする。
「(シガミー。〝五百乃大角〟は美をあらわす字句として辞書登録されています。大食漢という文脈には不適切と思われます)」
「うるせえな、てめえはだぁってろい……ひそひそ」
「ちょっと、シガミー! 黙ってろってどういうコト!?」
「あ、いやおめえに言ったんじゃなくてな――」
また声に出ちまった。
「わ、私には、なにがなにやらわかりま――――」
急にはいつくばったと思ったら、突然ケンカをはじめる子供ども。
そりゃ、困った顔をさせるに決まってらぁ。
§
「驚かせないでくださいませ。そのことでしたら、先ほどリカルルさまと、お話ししてきましたよ」
「な、なんでえ。姫さんも、いちおう許してはくれたし、心配はしてなかったんだがよ……ふぅーっ!」
よし、崖っぷちだが生きのびたぜ。
「(けど迅雷、念のため姫さんのアレを抜くことを当座の目標にするぞ)」
「(はい。最優先項目……〝おお急ぎ〟に設定しました。しかしまだ〝不可視の剣尖〟……見えない切先の解析中……頓知が終了するまで約6時間、お待ちください)」
「(六時間……三刻だな。いいぜ。そんだけ待ちゃ、あの〝間がねえ剣〟を止められるってんなら、安いもんだ)」
よしよし。とにかく何がなんでもいきのびる。
万が一、何ひとつ手がねえってときは、なごり惜しいが、ガムラン町とこいつらはあきらめる。
隣町にゃ子供もたくさん居るから、まぎれることくれえできんだろ。
五百乃大角には、隣町名物のうまいものを食わせ……供えときゃ、文句も言わねえだろうしな。
「――――はい、これで私も晴れて、冒険者パーティー『シガミー御一行様』の一員です」
胸元からむにゅりと取りだされたそいつは、おれやレイダの木の板とは違っていた。
『リオレイニア・サキラテ LV:47――』
小判みてえな黄金のかがやき。
『――|魔法使い★★★★ /簡易詠唱/全属性使用可能/ロックオン無効/レンジ補正/クリティカル発生率補正/魅了の神眼/女神の加護/女神の祝福――』
やたらとたくさん付いてる技能。その最後。
『――所属:シガミー御一行様』
おれが言った冗談をレイダが、むりやりパーティー名に登録しちまったのと――同じ名。
「「はぁーーーーっ!?」」
§
「ちょっとまて? どうしてそうなった!?」
「リカルルさまのご友人のオルコトリアさんに、ご相談いたしましたところ――――」
イヤな予感しかしねえ。
「「そりゃ、おもしろい事になりそうね~♪」と、その場で手続きをしていただきました。お嬢さまには、すでにご了解をいただいてありましたし――」
〝ご了解をいただいてありましたし?〟
だらだらだらだらり。
脂汗がとまらねえ。
「LV差でパーティは組めないはずじゃ!?」
そうだ、いってやれレイダ。
おれたちのLVは6と7。リオレイニアは47。40も差がある。
「レベル差が解消されるまでは、私が得る経験値は自動的に、お金に変換されます。その変換率が――「(割合のことです)」――とても少ないので、事実上できないと言われているだけだったようです」
「そ、そう……なのぅ? なら、リオレイニアさんが入ってくれるなら、ものすごくうれしいけど……ちらり」
こっちみんな、先輩。
そして、もっとちゃんと姫さんの――
お貴族さまの腹ん中と面子と金勘定の機微ってもんを――
考えろってんだ。
おれも見誤ってたが。
「つきましてはパーティー加入の、ご了承をいただきたく存じます♪」
「「ご了承?」」
ふたたび差しだされた金ぴかを、よーくみる。
『所属:シガミー御一行様』
なんか文字が、薄くなったり濃くなったりしてやがる。
薄くなったときに、刻印済みの『聖剣切りの閃光』の文字がかすかに浮かぶ。
なんとなくだ。
それはほんとうに言葉にできねえほどの――微かさ。
気の迷いみてぇな――それでも、あらがえねぇ気配。
そんなのに突きうごかされて、かるく横に飛ぶと――――
――――ィン!
おれが居たところの景色が斜めにずれた。
――――ぼこり。
へこむ草地。
――――ィイィイィン!
――――ぼこぼこっぼこり。
だっだっだだだだっ!
もう止まれねえ。止まったら――――まっぷたつになっちまう。
「(迅雷!)」
「(はい、シガ――――)」
――――――――ィィィィィィィィッィィィィィィィィイイイイイイイインンンンッ!!!
迅雷の内緒話に割りこんできた存在感!
背後の、ずっと遠くの森の木々が、なぎ倒された。
1
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる