46 / 741
1:輪廻転生、おいでませガムラン町
46:魔法使いの弟子(破戒僧)、まほうの神髄と女神と女神
しおりを挟む
「はい、おめでとうレイダ。これで見習いは卒業ね」
鬼娘が採取クエスト依頼書に大きな判を押したら、なんでかしらんが経験値が足されて、レイダのLVが7になった。
おれの板ぺらも、LVの横の欠けた丸が、すこし埋まった。
仕事を達成したとたんに〝修行の成果〟が現実になるってのぁ、どーにも合点がいかねえが、ここじゃあそういうもんらしい。
〝女神の祝福〟だなんてのが本当なら、あの大飯ぐらいも、ちゃんと仕事をしてるのかもしれねえなあ(上位権限により非公開です)。
§
魔法は状況によって、子細につかいわけられれば、すくない労力で最大の効果を発揮する。
つまり敵との距離が近いほど、瞬間的な判断がひつようになり、幾重にも複雑化していく。
§
「白いのは魔法を飛ばすのがうまいから、生活魔法でも戦えるってわけだよなー?」
森に入ったおれたちは、姫さんとギルド長の小言を聞く羽目になった。
白いのが事こまかに狐耳に報告するもんだから、どうしようもねえ。
これで、狼もどきの群れに襲われてなきゃ、リオレイニアも黙ってるつもりだったらしいが。
一週間のクエスト禁止と、おれがLV7になるまでは森へ近寄ることすら禁止された。
まあ、しかたねえ。
レイダも今日は、家でおとなしくしてるって話だし、おれもこうして魔法の理屈の勉強をしてる……どうした? そんな烏が火縄をくらったみてえな顔して。
「……魔法の神髄を、そんな、こともなげに……」
「神髄《しんずい》ったって、あの狼……四つ足の獣が口んなかで炎の魔法を、どうやって作るのかをみたら、門外漢のおれだってわからぁな」
魔法の杖の先端。ひかる筋で書いた円。
それを閉じて〝あまった長さ〟が、尻尾んなって――
飛ばす原動力になんのは、まちがいねーだろーし。
「いつも驚かしてくれるから、〝シガミーさまは本当におもしろい〟と、お嬢さまが、つねづねおっしゃっておりましたが……」
かちり、キュキュキュキュー、カチャリ。
白いのが白い面をはずして、目頭をおさえた。
「ふう、マスタークラスの魔術師ですら、そこまでの境地には至ることはないのに――――」
「では、そレがわかるリオレイニアは、その境地に届いてイるというわケですね――――」
「まておまえら、そんな話してる場合か――――!」
「シガみー?」
迅雷がよってきて視界をふさぐ――べちり!
手でおいはらった。
§
おれは白いのを、まっすぐに見つめていた。
つよい意志を感じさせる、おおきな瞳に吸いよせられる。
楚々とした細眉や目尻の曲線。
非の打ち所のねぇ鼻や頬や顎すじの造形。
「――どうかされましたか?」
桃源のしらべが、聞こえる。
見なれた口もとさえ、熟れた果実のようにかんじた。
朝露にゆれる新緑のような、みずみずしさ。
その水滴のひとつひとつに焦点が合い――目が離せなくなった。
「リオは、ほんっとうに美の女神じゃねぇかよ! なんだその面! 綺麗すぎんだろーが!?」
〝色の白いは七難隠す〟なんてどこかで聞いたことがあるが、そういうこっちゃねえ。
氾濫する慈愛と唯一無二《むに》の美貌が、目のまえにすわってる。
「はきゅ!? な、なななな、なにをおっしゃって、おられるのですかっ?」
「五百乃大角なんてぇ、ただ食い意地がはっただけのやつより、千倍きれいだぜっ!」
「あら、ごあいさつね、シガミー♪ ってうっわ、本当に綺麗! だぁれこれ、ひょっとして女神さまっ!?」
女神は、おめーだろうが!
でた、とうとう新居にまで出やがった!
ーーー
桃源/桃源郷。外界と隔絶された別天地。理想郷。
しらべ/演奏。楽曲。詩歌をうたう事。
鬼娘が採取クエスト依頼書に大きな判を押したら、なんでかしらんが経験値が足されて、レイダのLVが7になった。
おれの板ぺらも、LVの横の欠けた丸が、すこし埋まった。
仕事を達成したとたんに〝修行の成果〟が現実になるってのぁ、どーにも合点がいかねえが、ここじゃあそういうもんらしい。
〝女神の祝福〟だなんてのが本当なら、あの大飯ぐらいも、ちゃんと仕事をしてるのかもしれねえなあ(上位権限により非公開です)。
§
魔法は状況によって、子細につかいわけられれば、すくない労力で最大の効果を発揮する。
つまり敵との距離が近いほど、瞬間的な判断がひつようになり、幾重にも複雑化していく。
§
「白いのは魔法を飛ばすのがうまいから、生活魔法でも戦えるってわけだよなー?」
森に入ったおれたちは、姫さんとギルド長の小言を聞く羽目になった。
白いのが事こまかに狐耳に報告するもんだから、どうしようもねえ。
これで、狼もどきの群れに襲われてなきゃ、リオレイニアも黙ってるつもりだったらしいが。
一週間のクエスト禁止と、おれがLV7になるまでは森へ近寄ることすら禁止された。
まあ、しかたねえ。
レイダも今日は、家でおとなしくしてるって話だし、おれもこうして魔法の理屈の勉強をしてる……どうした? そんな烏が火縄をくらったみてえな顔して。
「……魔法の神髄を、そんな、こともなげに……」
「神髄《しんずい》ったって、あの狼……四つ足の獣が口んなかで炎の魔法を、どうやって作るのかをみたら、門外漢のおれだってわからぁな」
魔法の杖の先端。ひかる筋で書いた円。
それを閉じて〝あまった長さ〟が、尻尾んなって――
飛ばす原動力になんのは、まちがいねーだろーし。
「いつも驚かしてくれるから、〝シガミーさまは本当におもしろい〟と、お嬢さまが、つねづねおっしゃっておりましたが……」
かちり、キュキュキュキュー、カチャリ。
白いのが白い面をはずして、目頭をおさえた。
「ふう、マスタークラスの魔術師ですら、そこまでの境地には至ることはないのに――――」
「では、そレがわかるリオレイニアは、その境地に届いてイるというわケですね――――」
「まておまえら、そんな話してる場合か――――!」
「シガみー?」
迅雷がよってきて視界をふさぐ――べちり!
手でおいはらった。
§
おれは白いのを、まっすぐに見つめていた。
つよい意志を感じさせる、おおきな瞳に吸いよせられる。
楚々とした細眉や目尻の曲線。
非の打ち所のねぇ鼻や頬や顎すじの造形。
「――どうかされましたか?」
桃源のしらべが、聞こえる。
見なれた口もとさえ、熟れた果実のようにかんじた。
朝露にゆれる新緑のような、みずみずしさ。
その水滴のひとつひとつに焦点が合い――目が離せなくなった。
「リオは、ほんっとうに美の女神じゃねぇかよ! なんだその面! 綺麗すぎんだろーが!?」
〝色の白いは七難隠す〟なんてどこかで聞いたことがあるが、そういうこっちゃねえ。
氾濫する慈愛と唯一無二《むに》の美貌が、目のまえにすわってる。
「はきゅ!? な、なななな、なにをおっしゃって、おられるのですかっ?」
「五百乃大角なんてぇ、ただ食い意地がはっただけのやつより、千倍きれいだぜっ!」
「あら、ごあいさつね、シガミー♪ ってうっわ、本当に綺麗! だぁれこれ、ひょっとして女神さまっ!?」
女神は、おめーだろうが!
でた、とうとう新居にまで出やがった!
ーーー
桃源/桃源郷。外界と隔絶された別天地。理想郷。
しらべ/演奏。楽曲。詩歌をうたう事。
1
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~
藤ノ木文
ファンタジー
一ノ瀬敏夫(いちのせとしお)は、ある日ボイスチャットで繋がるネトゲー仲間と新作オンラインRPGのサービス開始時刻と同時に接続した。
仲間たちと話しをしながらキャラクタークリエイトを終えた次の瞬間、夏の日差しが照りつける大自然の中に立っていた。
自宅ではない場所に混乱していると、同じように混乱する仲間の声が聞こえてくる。
だが周囲を見渡すも友人たちの姿はどこにも無い。
どうやら自分たちは異世界に来てしまったようだ。
しかも転移した場所は4人ともばらばら、距離も合流が絶望的ときたもんだ。
それでも再会を誓う4人の異世界ライフ、ここに開幕。
これは突然異世界に飛ばされた4人の青年が、世界を救う――かもしれない物語である。
※ヒロインが一部を除いてモンスター娘です。
※過度なネコ成分が含まれます。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる