滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ

文字の大きさ
上 下
43 / 741
1:輪廻転生、おいでませガムラン町

43:魔法使いの弟子(破戒僧)、修行生活みっかめ

しおりを挟む
「シガミーさま、朝食ちょうしょくのご用意よういができております」
「んぁっ!?」
「おはよウございマす、シガミー」

「(おはようじゃねぇやい! なんで起こさなかった?)」

「(半径はんけい150メートルに、リオレイニアと巡回じゅんかいちゅう衛兵えいへい以外いがい生体せいたい反応はんのう……気配けはいはありません)」

「(そーいうこっちゃねぇんだが……まあいいや)また、のぼるまでちまった」

   §

 姫さんお付きの白いの……リオなんたらが、うちに来るようになって三日みっかがすぎた。

 トトトットトトン!
 靴音くつおと
 ポゥポゥポゥッ!
 小さなほのお魔法まほうみっつ。

「のびろ迅雷ジンライ!」
 ヴルルッ――シュッカン!

「――この錫杖しゃくじょうさだめてたる、一撃いちげき必中ひっちゅう!」
 こいつぁ、錫杖ぼう遠閒とおまから投げあてるときの口上こうじょうだ。

 迅雷ジンライぼうだが錫杖しゃくじょうじゃねえし、投げるわけでもねえ。
 けど〝つめてえ生活せいかつ魔法まほう〟を飛ばすのに、ねらいををさだめる必要ひつようがある。

「つめてぇーたま!」
 いちかたとおなじように、ジンライ先端さきをとおくに置く。

「(シガミーのMPマジックポイントが1減少げんしょうしました。窒素ちっそ酸素さんそ、アルゴンの分子ぶんし速度そくど分布ぶんぷ偏重へんちょうがみられます)」

 迅雷ジンライさきをひっこめると、白煙はくえんがわきあがる。
 つめてえたまができた。あとはそれを前に押しだすだけだ。
 いた迅雷ジンライさきで、慎重しんちょうに押しだす――

「ふっ!」
 ぽむ♪
 かき消える白煙けむり

 つめてぇたまは、何もねえ……ただの空気くうきってしろもんだってのはわかった。
 じゃあ、その空気くうきをどうやって押すんだ?

「これ、迅雷ジンライ使つかわねえといけねえのか?」
 灯りの魔法ひかりのたまみてえに、素手すででやりゃ簡単かんたんじゃねーかとおもうんだが。

「ではやってみてください。ぱちん♪」
 ゆっくりちかづいてきていたほのお魔法たまが、ぜんぶ白煙けむりになって消えた。

   §

「うぉっりゃぁ~!」
 ゴォ――――ピキパキピキン。

「つ、つめてぇ!?」
 手にあつまった白煙けむりが、キラキラしたつぶになって、サラサラとおちていく。

「こんのやろぉう?」
 ちからをこめたら――――キュキッ!
 雪玉ゆきだまになって――――ごしゃりっ!
 地面じめんちた雪玉ゆきだまれ、かぜに吹かれてなくなった。

「(シガミーのMPマジックポイントが10減少げんしょう窒素ちっそ酸素さんそ、アルゴンの分子ぶんし速度そくど分布ぶんぷ偏重へんちょうがいちじるしく、空気中くうきちゅう水蒸気すいじょうき凝固ぎょうこしました)」

「(いまはいいが、あとでわかるように説明せつめいしろよ)……加減かげんがむずかしくて、ゆきになっちまうのか……あと、なんかいきぐるしいぞ?」

「はい。ですのでつめたい魔法まほうおぼえるまでは、素手すで使つかわないようにしてください。とくに室内しつないでは」

   §

「おはよう、シガミー……どうしたの?」
 これからあつくなる季節きせつに、毛布もうふにくるまってガタガタふるえてりゃ、へんなかおもされらぁな。

「あさの稽古けいこでちょっとな、ふぇっくしょぃ~ちくしょうめーぃ!」
 もー、またそんな声だしてっ、おじさんみたい!
 いつものように、レイダがなじる。

「……シガミーには、淑女レディとしてのたち振るまいの、お勉強べんきょうもひつようなようですね」
「そう、そうなの! シガミーはこんっなにカワイイけど、なかみがおじさんなの! ひどいときは、おじいさんかなって思うくらい!」
 しゃあめえよ、なかみは正真しょうしん正銘しょうめいまごてもおかしくねえくれえの、じじいだからな。

「まずは毎朝まいあさかみをとかすことからはじめましょうか」
 リオなんたらが、まだ開けてねえ荷物にもつの中からかがみを取りだした。

「こりゃあ、りっぱなもんだなぁ。こんなでけえかがみぁ、はじめてお目にかかるぜ?」

「(なにより、この町のかがみぁ、まるでむこうに瓜二うりふたつに化けたあやかし・・・・が居るみてえにはっきり見えやがるから、いまだになれねえ)」
「(表面ひょうめんがガラス……びーどろでコーティング……まくのようにおおわれているので、みがくのもよごれたときだけですみます)」
「(そいつぁ、ほんとうにりっぱなもんじゃねぇか……)」

「――たしかにちょっと大きいけど、姿見すがたみくらい、どこでもあるでしょ?」

女将の店しょくどうとか、宿屋やどやとか、ギルド……レイダんとか、あと狐耳ひめさんのところなんかにあるならわかるが、おれんちにあっていいようなもんじゃねぇだろう?」

「こちらは、鍛冶かじ工房長こうぼうちょうからの引越ひっこしいわいです。お気がねなく使つかわせていただいてよろしいのでは?」
工房長ノヴァドが?」
 ちかよってよくみると、木枠きわくのうらが相当そうとうがっちりしたてつ補強ほきょうされている。
 この頑丈がんじょうさは、たしかにあいつらの仕事しごとだ。

「ほんとうに、なかなかいいもんだなあぁ、うむうむ」
 つい顔が、ほころぶ。
 いやいや、いけねえや。
 これじゃまるで、家財かざい道具どうぐをもらって大よろびの子供ガキだ――おれぁいま子供ガキだが。

   §

「うふふ♪ シガミーさまのかみは、ほんとうにきれいですね」
 とかしたかみを持ちあげる白いの・・・――「(リオレイニアです、シガミー)」
 ほったらかしでボサボサだったおれのかみが、細指ほそゆびのあいだをすべり落ちていく。
 色の抜けた見なれない髪色かみを、はじめてほこらしくかんじた。

「おんにきるぜ、リオレイニア♪」
 素直すなお感謝かんしゃのことばをっておく。
 すると、白仮面リオレイニア自分じぶんほほを、両手りょうてででおおいかくした。

「…………あのう、レイダさま?」
 小屋へやのすみへけていったしろ給仕服きゅうじふくが、レイダを手招てまねきする。

「どうしたの、リオレイニアさん?」
 おなじくけていく子供レイダ

「シガミーさまは見方みかたによってはまるで……まるで精悍せいかん利発りはつ少年しょうねんのようではありません……か?」
 なんて言ってんのかは、よく聞こえねえけど。
 こっちを見る仮面かめんのした。
 ほほ高揚こうようし、口元くちもとがほころんでいる。

 子供レイダはなにも言わず、おれをふりかえった。
 そして白い給仕服リオレイニアと、がっちりと握手あくしゅわした。

ーーー
分子速度分布/温度に関係する確率を表したもの。偏ると熱くなるか、冷たくなるかする。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

処理中です...