滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

１：輪廻転生、おいでませガムラン町

３３：Ｅ級冒険者（幼女）、小太刀かんせい

　ブォォォォォォン――――ガガガンッ！
　おれの体よりでけえ金槌かなづちが振るわれる。

「やろうどもっ！　いっきに仕上しあげるぜ！」
「「「「おうよぉ！」」」」
　ゴゴゴゴゴゴガガガガガガッ、ギャリィィ――――!!!
　ゴゴゴゴゴゴガガガガガガッ、ギャリィィ――――!!!
　ゴンゴンゴゴッガガッガッゴォォォォォォン!!!
　ゴンゴンゴゴッガガッガッゴォォォォォォン!!!

　いちどに何本なんぼんも同時どうじにつくるのが、この鍛冶工房かじこうぼうのやり方らしい。

　まどの、そとでは白木しらきの木材もくざいを削けずってるのもいる。
　これなら工房長ノヴァドの見立みたてどおりに、半日もかからねえで居合刀かたなが完成かんせいしそうだ。

「つぎよこせぇ！」
「「「「はいよぉ！」」」」
　ゴゴゴゴゴゴガガガガガガッ、ギャリィィ――――!!!
　ゴゴゴゴゴゴガガガガガガッ、ギャリィィ――――!!!

　節ふしのきざみが、僧侶そうりょが唱となえる経文きょうもんに似てなくもねえ。
　わるくねえぜ、こういうのぁ！
　年甲斐としがいもなく血がたぎるってもんだ――おれぁ、いまガキだがな。

「――ほのおのるつぼ！」
　ふだんなら使つかわねえ木炭すみが、魔法まほうで赤あかく熱ねっせられる。

　――――シュゴッガァアァァ――――ッ！
　燃える木炭もくたんに、はげしく突き込まれる、使い古しの金属棒オリハルコン。

　使い古しオリハルコンを、使い古しオリハルコン二枚にまいではさむ。
　それを焼やいて成形せいけいし、数度すうどの焼き入れを行うことで――粘ねばりりのある金属きんぞくを刀かたなの形かたちに作りあげる。

　ただ、すこし見たことのねえ工程しごとが混まじってた。

「――つめたいかぜ！」
　鉄てつが熱あついうちに何度なんども折おりかさね、冷気の魔法で冷やしては、ときおり泥どろを塗ぬる。
　そっちは門外漢もんがいかんで、ほんとうにかけらもわからねえ。

　さらに切っ先にも、使い古しの鉄オリハルコンを、つぎたしたりしてる。
　迅雷ジンライのこまかな指示しじどおりに、屈強くっきょうなな男たちが、はたらきつづけ火花ひばなを散ちらす――――ばたり。

　　　§

「んぁ……涼すずしぃー？」
「おきた、シガミー？」
　おれは工房こうぼうそとの長椅子ながいすに、寝ねかされていた。

　かたわらにすわるレイダが、ひんやりした風かぜを手から発だしている。

「いけねっ!?　寝ちまってた――――」
「こら、まだじっとしてて！　あんな暑いなかで魔法まほうを使わなかったら、倒たおれるのはあたりまえだよ！」
　そうはいっても、おれはつめてえ魔法まほうはまだつかえねえから、しかたねえだろ。
　しかたねえから、そのまま頭あたまをレイダの膝ひざにあずけた。

　ざばっ、ぶっしゅっ、ぐつぐつっ、じゅぅるるるるりゅーーーーっ！
　工房こうぼうから、焼き入れの音おとがきこえる。

　しごとは、滞とどこおりなくすすんでるみてえだ。
　おれは、刀かたなつくるのに要いらねえからな。

　おれの仕事しごとは、居合刀かたなができてからだ・・・・・・。

「どれくれえ寝ねてた？」
「ほんの５分くらいだよ」
　５分ってえと茶ちゃをのむくれえの、みじけぇ時間じかんだ。

　レイダのやわけえ膝ひざで、もう少し横になるかと目をとじる。
　その途端とたん――――ガッギュリッ!?

　工房こうぼうの中からとんでもなく、とがった金属きんぞく音おんがとんできた！
「うるっせぇな!?」

　――――――――ギュギュギリリリリリリリィィィィィィィィｘギャギャギャギャガｙギャリリィィィィィーーーーッ！
　金属音きんぞくおんははげしさを増し、いつまでもつづいた。

「うるっせぇえぇーっ！」
「きゃぁぁぁぁーっ！」
　レイダが、おれをほうりだして、にげてった。
　まわりにいた野次馬やじうまも、散り散りにいなくなった。

　ギュリン、ギャルンッ、ギュジュギュギュギュガガガガガァァァァァァァーーーー!!!
　あの、大根マンドラゴーラの気持きもちのわるい叫さけび声ごえ。それに匹敵ひってきするほどの騒々そうぞうしさ。

　あたまの中で、大根マンドラゴーラが叫さけんでるんじゃねーかと、錯覚さっかくする。
　二重にじゅう三重さんじゅうにうるさくなって――おれも鍛冶かじ工房こうぼうからにげた。

　〝研とぎ〟は、やり方を教おしえるのに時間じかんがかかるってんで、迅雷ジンライが自分てめえでやったらしい。

　　　§

　長さはおれのからだの、ちょうど半分はんぶん。
　小太刀こだちにしてもらった。
　おもってたよか、ちょうど良い重さと長さと太さだ。

　カシッ――――すらぁぁぁぁぁぁぁぁっ！
　居合刀いあいとう。白木しらきの柄つかに鞘さや。
　おれ用だから小太刀こだちにしては、ちいとみじけえが、こいつぁ正真しょうしん正銘しょうめいの日本刀にほんとうだ。
　つよめの反そりがあり抜刀ばっとうしやすく、おもさがやたらと軽かるい。

　使い古しのオリハルコンが、居合いあいができる刀かたなになった。
　鬼娘オルコに聞いたかんじだと、盾たてや鎧よろいを一刀いっとう両断りょうだんするような剣術けんじゅつは存在そんざいしない。

　そとの野次馬やじうまをおしのけた、ど真まん中なか。
　くさびを打込うちこみ、土台となる柱はしらを設置せっち。

　この町で一番いちばんかたくて値段ねだんがたかい、上等りっぱな盾たてが取りつけられた。

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経文／経典に書かれている文。お経。
るつぼ／金属を溶かすための耐熱の器。
焼き入れ／鉄鋼をかたくするために、熱した後、水や油に入れ急激に冷やすこと。
門外漢／その分野を専門にしていないこと。
居合／剣術、しゃがんだまま相手を素早く切ること。
小太刀／短い、ふと刀。