滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

１：輪廻転生、おいでませガムラン町

２７：Ｅ級冒険者（幼女）、ＶＳ角ウサギ

「シガミー。Ｅ級きゅう昇格おめでとー♪」
　きょうは鬼娘オルコしかいない。
　狐耳ひめさんや、ほかの受付うけつけ係がかりはみんな出払ではらっちまってるそうだ。

「かたじけない」
　おれは、かるく印いんをむすんで、応こたえる。
　受け取った札カードには『Ｅ』という記号きごうが刻きざまれていた。
　札カードにとおしたひもを、首からさげる。

「これでシガミーひとりでも、Ｅ級きゅうクエストが受けられるようになるわよ。けどまだ、ひとりで森に行ったら、だめだからね」
　いままでは、Ｅ級きゅう冒険者ぼうけんしゃであるレイダと徒党パーティを組んでいたから、Ｆ級きゅうのおれでもＥ級のクエストが受けられていたのだ。

「わかった。じゃあ、今日もコレたのむぜ」
『角つのウサギ素材そざい採取さいしゅクエスト』
　角つのが生えたウサギの、へたな絵が描いてある紙かみを差しだした。

　　　§

「おはよう、シガミー」
「おう。はええなレイダ」
　ここは大根マンドラゴーラがいたあたりの草原そうげん。

「あれから３日。一匹いっぴきも……いないわね」
　大根マンドラゴーラだけじゃなくて、角つのウサギなんかも一匹いっぴきも居ねえもんだから、おれのＬＶレベルはまったく上がらねえ。

「まいったぜ。そろそろ、金かねの心配しんぱいをしなきゃならねぇ」

「もう、あんなに飲み食いするからよ」
「うん、まあ、そうだな。はらぁへってたんだよ……」
　ここまで急きゅうに金かねがなくなったのは、美の女神めがみが飲み食いした分の払はらいが、おれに回ってきたからだ。

　レイダにだけは説明せつめいしようとしたんだが、美の女神めがみである五百乃大角いおのはらが、大食漢たいしょくかんのしたっ腹ぱら……大食たいしょく神しんだってのがどうにも伝わらなくて……もうあきらめた。

「（あきらめてください。イオノファラーの食事しょくじをさまたげる行為こういに該当がいとうするとおもわれます）」
「（そういうってことぁ、迅雷ジンライも、五百乃大角いおのはらが大食神たいしょくしんのしたっ腹ぱらってのは認めるんだな？）」

 ｢(上位権限じょういけんげんにより非公開ひこうかいです。それとイオノファラーです)｣ 

「じゃあ、そろそろまたムシュル貝、取りに行く？」
「――シガミー、左ひダり前方ぜんぽう、距離キょり１０メートル」

「――む？」
　そっちを見る――ヴヴッ。
　迅雷ジンライが震ふるえた方角ほうがくへ目をこらす。

「いたっ！　角つのウサギだ！」
「えっ、どこどこ？」
「私が指さしシめす先さきデす」
　まばらに雑草ざっそうが生えてきてるあたりに、茶色いのがうごいてる。

　身をかがめ、じりじりと距離きょりをつめる。

「ここから、レイダの魔法まほうで仕とめられるか？」
「もうすこし近くじゃないと、とどかない」

「（おい、迅雷ジンライ）」
「（なんでしょう、シガミー）」
「（おまえ、とおくに投げても自分じぶんで戻もどって、こられるよな？」
　迅雷ジンライは、はやさはでねえが空を飛ぶ。

「（岩いわなどに突き刺さりでもしなければ、可能かのうですが――――）」
「（――伸びろ迅雷ジンライ！）」
　ヴルルッ――シュッカン！

「――――――この錫杖しゃくじょうは定さだめて当あたる。生者せいじゃ必滅ひつめつ一発いっぱつ必中ひっちゅう！」

　敵の大将たいしょうを遠閒とおまから、なんども打ちぬいた、おれの錫杖ジンライがうなりをあげ――――――――へろろろっ。

「ちっ、ぜんっぜんまっすぐ飛ばねえじゃねーか！」
　ひょろろろ――すとん！

　ヤリ代わりジンライは、おれたちと角つのウサギの真ん中に突き刺さった。

「ギュキ――!?」
　角つのウサギが、わきめもふらずに逃げ出した。
　はええ、子供がきの足じゃとても追いつけねえ。

「かえんのたまー！」
　ボボボォォォォ――――ぷすん！

　立ち上がったレイダの、杖の先。
　飛びでた炎ほのおはとちゅうで鎮火ちんかした。

「シガミー、採取さイしゅクエストでもＬＶレベルアップは可能かのうです。地道じみちに体力たいりョくをツけましょう」
　戻もどってきた棒ぼうの小言こごとがうるせえ。

「うるせー！　いくぞレイダ、迅雷ジンライ！」
　おれは棒ジンライをひっつかんだ。

　　　§

「きょうは、ずいぶん遅かったのね……一体いったいどうしたの？」
　鬼娘オルコのおどろいた顔。

　一匹いっぴきの角つのウサギを、涙なみだまじりに持つふたりの子供こども。

　魔法まほう杖つえを背負せおい、あちこちに青あおあざをつくった子供こどもは、ウサギのひだり後ろ足を。
　あたまの毛をチリチリに焦こがした生意気そうな子供は、ウサギのみぎ後ろ足を――必死につかんでいた。

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錫杖／僧侶や修験者がもつ杖。上部に複数の金属製の輪が取り付けてあり、音が鳴るようになっている。