滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ

文字の大きさ
上 下
26 / 740
1:輪廻転生、おいでませガムラン町

26:見習い冒険者(幼女)、女神様ふたたび

しおりを挟む
「やい、いつのまに注文ちゅうもんだしたんだよ?」
 まるテーブルの上、ところせましと料理りょうりがならぶ。

「まえにも言ったけどぉ、アタシの食事しょくじさまたげるモノは、この世にはそんざいしないのっさー♪」

「はいよ、ぅおっまちー!」
 女将おかみ最後さいごに出して来たのは、〝ムシュル貝のドラゴーラ焼き〟。
「うふん、ありがとう。それじゃ、いっただっきまーす♪」
 ぱくぱくぱくぱく。
 もぐもぐもぐもぎゅ。

 あたりまえに、女将おかみ料理りょうりをだして、かみさんが食べる。
 迅雷ジンライ密談みつだん中みてえに、周りが止まってるわけじゃねえ。

 かみさんがすわるテーブルは、もとから有ったわけじゃなかった。
 その周囲しゅういのモノを、まるく・・・よけて・・・どこかからいて出てきた。

 おれたちがいる長机カウンター女神めがみのテーブルを避けるようにへこんでいて、近くにあった柱も大きく曲がってる。

 神さんの食事のために、店も人も――存在そんざいしていた。

「なによ、これっ! このあいだの、〝おやさい巻いたお肉〟より、おいしいじゃないのよ!」
 一心いっしん不乱ふらんに飯を食う――美の女神めがみ

 たしかによく見りゃ、狐耳ひめさんまと気品きひんあるあでやかさや、鬼娘オルコ端正たんせいかおだちにも引けをとらない。
 美の女神を自称じしょうするだけのことは、たしかにある。

「もぎゅもぎゅもぎゅもぎゅ……ほれへ、ヒハヒーわ、さいひんほんははんひはほほ?」
 なに言ってるか、わからねえ。

「〝それで、シガミーは最近さいきん、どんな感じなのぅ?〟と言っています。」
 お、迅雷ジンライが間に入ると、食いながらでも話ができていいな――
 ――ってふざけてんのか?

「……ぼちぼち、やっていけてる」
 この町の女どもわぁ、ひとくせもふたくせも有って、手や足が先に出るようなのばっかだが――これ・・よかぁ、つつしみがあるぜ。

 がつがつがつがつ、ごっごっごっごごくん、ぷはぁ、う・ま・い♪

「ひゃんほ、ひほえへふははへ? ……もぎゅもぎゅもっぎゅもっぎゅ――」
 だからなに言ってんだ――迅雷ジンライ!?

「〝ちゃんと、聞こえてるからね?〟だそうです。」
 そうだった。かみさんは、心のこえを読むんだったか。

「あー、うん。わりいわりい。別に悪口わるくちじゃねえ。ようするにアレだろ……んーっと、美食びしょく同源どうげんってわけだ、な?」

 おれの修行ぎょうは〝有言ゆうげん実行じっこう〟を体現たいげんするためのもんだ。
 正しい言葉……真言マントラがあって、すべてが現実になる。

かみさんの美貌びぼうも――腹に入れる美食うまいもんも――おなじように美しさを体現たいげんしてるって話だろう?」

「…………いがいと、あたまの回転かいてんがはやいのよね、あなた」
 くちからでまかせも言ってみるも――――いやまて、心を読むんだコイツは。

「し、神仏しんぶつのちがいはあれど、おなじ言葉ことばを話すなら、突き詰めちまえば大抵たいていのモノは似通にかよってくるからな」
 あれ、おなじ言葉? そしたらガムラン町ここは――〝もと〟か?

もと……日本にほん? ちがうわよ?」
 おお盛りだった〝ムシュル貝のドラゴーラ焼き〟をたいらげ、あいた皿を鉄の細腕ほそうでに手わたす。

 女神かみさん背中せなかはこから生える、あの腕みたいなのは、迅雷ジンライからも時々ときどき生えてくるやつだ。

「じゃあ、なんで、ここに居るやつら全員ぜんいん大和やまと言葉ことばをしゃべってんだ?」
 しかもなまりのねえ、みやこ言葉を――――あたりを見渡みわたす。

 どこかうつろな顔のレイダも、客や店員てんいんたちも、おれたちが見えていないようだった。

「そりゃあ、アタシが、よそのくに言葉ことばなんて聞いても、わからないからよ?」
 そんなの、あたりまえじゃないの。そんなつらだ。
 かみ女神めがみ。この世界うつつを作ったにしちゃ、どっか抜けて……いや、へたなことを考えるな。

 美の女神〝五百乃大角《イオノファラー》〟が何者なんでも、おれにこの来世いのちをくれた事に変わりはねえからな。

「もぐもぐもぐもぐ……さっきのかい料理りょうりは、……もぎゅもぎゅもぎゅもぎゅ……なんて言うの?」
「あれは〝ムシュル貝のドラゴーラ焼き〟だ。うめえだろう?」

「この町じゃ、あれが一番かしらね、あ、そういえば女将おかみさんに聞いてくれた? 〝おやさいでお肉を巻いた料理〟……ああ、これこれ、これのレシピ」
 奥にあった皿を一本箸フォークで差ししめす美の女神。
 かみさんの世界せかいにゃ、作法さほうってのがあんまりねえんだな。

「――そちらは〝ウーヌ鹿しか葉羽根はばねき〟です。レシピはクラウドへ転送てんそうみです。」
「そんなだったか。わりいな迅雷ジンライ全然ぜんぜんおぼえてなかったぜ」

「うふふ、仲良なかよくやってるみたいで、安心あんしんしたわ♪」
 ちょっと目をはなしたすきに、テーブルの上の料理りょうりをすべてからにする、大食漢たいしょくかん
 いや、おとこではねえか……大食たいしょく女神めがみか。

 すわるさまは、よくよく見りゃあ、この世のモノとは思えねえくれえの美貌びぼうだ。
 たしかにそうなんだが――

「やっぱり、したっ腹が……」
 いけねえ、つい声にでてた。

「かまいませんよ、アタシは美の女神ですから♪ ウケケケケッ――どろん!」
 けむりがきえたとたんに――――がやがやがやがや。
 周囲しゅうい喧噪けんそうがもどり、ひらひらと伝票が舞い降りてきた。

 なんだよあの笑い声。
 悪鬼あっき羅刹らせつと言われたおれでさえ、身震みぶるいしちまった。

「おや、なんだいこの伝票でんぴょう?」
 まるテーブルに重ねられた皿の山。

女将おかみ、わりい。そいつぁおれがはらう」
 料理りょうりは、しめて4パケタ。
 おお盛りの〝ムシュル貝のドラゴーラ焼き〟が痛かった。

ーーー
大食漢/大めし喰らいの男。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。

円城寺正市
ファンタジー
勇者が行方不明になって数年。 魔物が勢力圏を拡大し、滅亡の危機に瀕する国、ソルブルグ王国。 洞窟の中で目覚めた主人公は、自分が亡霊になっていることに気が付いた。 身動きもとれず、記憶も無い。 ある日、身動きできない彼の前に、ゴブリンの群れに追いかけられてエルフの少女が転がり込んできた。 亡霊を見つけたエルフの少女ミーシャは、死体に乗り移る方法を教え、身体を得た彼は、圧倒的な剣技を披露して、ゴブリンの群れを撃退した。 そして、「旅の目的は言えない」というミーシャに同行することになった亡霊は、次々に倒した敵の身体に乗り換えながら、復讐すべき相手へと辿り着く。 ※この作品は「小説家になろう」からの転載です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...