上 下
14 / 735
1:輪廻転生、おいでませガムラン町

14:食いつめ幼女、はじめての友達

しおりを挟む
「この菓子かし、ピリッとしててうめえ……酒でも欲しくなるな……もぐもぎゅ!」

「もーっほんとうに中身が男の子って言うより、おじいさんよあなた」
 ジトリとした目を向ける、生意気なまいきな子供。

 ここは冒険者ギルドの三階さんがい
 ほそい階段かいだんをクネクネとのぼり、着いたのはこじんまりとした生活せいかつ空間くうかん

「こんなに意識いしきのはっきりしたアーティファクトは、はじめて見たよ。うちのお父さんですら見た事ないんじゃないかな」
 フォフォフォ――フォォン。
 上下左右に揺れてみせる、短い棒すだれ

「おまえの親父おやじは、〝あて悪党あくとう〟にくわしいのか?」
「わたしは〝おまえ〟じゃないし、おとうさんは〝親父〟じゃないし、〝アテイフアクトウ〟じゃなくてアーティファクトよ」

「(すだれあて悪党あくとうってのは一体なんだ?)」
「(神々かみがみがつくり使役しえきしたとされる、自律型じりつがた工作こうさく機械きかいぐん……式神しきがみ使役獣しえきじゅうとお考え下さい)」

「さっぱりわからん……このお茶、あまくてうめえな」
 式鬼神しきがみってのは目には見えなかったが、みやこでなんどか感じた・・・ことがあるぞ。
 使役獣しえきじゅうは……たかいぬさるか?

「(――それら全てで構成こうせい……なりたっている、からくり仕掛じか けとお考えください)」

 つまるところ、五百乃大角いおのはら眷属けんぞくにちがいはねえんだろ?
「(はい。〝イオノファラー〟です、マスター)」

「わたしはレイダ・クエーサー。ここのギルド長の娘よ」
 名乗なのりを上げる生意気なまいきな、〝冒険者ぼうけんしゃギルト長の娘〟。
「へー、えらいんだなぁ」

「(先日せんじつ眼鏡男めがねおとこせいが同じです)」
「(あいつか。商売相手しょうばいあいてとなりゃ、その娘にも、ちぃーとばかし愛想あいそよくしておいても、バチはあたらねえか……よし)」
 おれは雄々おおしく立ちあがり、こえをる!

拙僧せっそうわぁ妙竹林みょうちくりん朧月ろうげつ寺がぁ虎鶫衆とらつぐみしゅう弐番隊にばんたい、し――――」
 眼鏡男の娘レイダ狐耳ひめさんがやってたみたいに、腰を落としたまではよかったが。

「……じゃなかった、おれぁ……いや、わたぁしわぁ……なにものでもねえ、ただのシガミーだわ、ぜ?」
 口上こうじょうがまるでのらなかった。
 そりゃそうだ。おれぁもう坊主ぼうずでもなけりゃ、いくさ人でもねえ。

「うふうふうふ、ぷふふっ!」
 おい、かおを押さえてわらうなってんだ!

狐耳ひめさんやおまえみたいな、こういうしゃらあしゃらしたのには、なれてねえんだ! しかたねえだろう!」

「ひめさんって リカルルさま?」
「それがどうした? じろじろ見んなってんだ」

「えー、コホン――――〝ちょっとまってぇ!? 金髪ぅさらさらのぉ、ほっぺたぷにぷにのぉ、小なまいきそうなお子さまがぁ、はぁはぁ、なんかちょっとスネたかんじでぇ、私をキッてニラみつけてくるのですけれどぉ、はぁはぁ、あーもういったいぜんたいどうしたらいいのかしらぁー?〟――――っていって飛びつかれなかった?」

「おう。一字一句いちじいっくおなじに飛びつかれて、すっげー怖かったな」
 ギルド長の娘レイダ狐耳ひめさん声色こわいろが、迫真はくしんすぎた。
 息を切らせてまでやることじゃねーけど、死ぬほど面白かった。

   §

「おや、楽しそうですね。お客さまですか?」
 とびらがかるく叩かれ、部屋に入ってきたのは――

「きょう友達ともだちになったの! 今日はもうお仕事しごとおわり?」
 眼鏡男ちちおやにかけよる娘。

「また出るけど三時間くらいあるから、晩ごはんを食べていきますよ」
「(〝一時間いちじかん〟は〝半刻はんとき〟だったか?)」
「(はい。ですので彼は〝一刻半いっときはん〟ほど、時間があるようです)」

「あ、じゃあ。おれ……わたしはそろそろ……」
「おや、お嬢さん。この間、お会いしましたがあらためて、ご挨拶させてください」
 ギルドの役人があたまにのせてる小さいかぶとみてえな帽子をとり、かるくあたまを下げる。

「わたしはレムゾー・クエーサー。当ギルドのおさつとめております。娘ともどもよろしくお願いいたしますよ」
 人の上に立つやつには二種類にしゅるいいて、彼はそのかず少ないがわの人間だった。

ーーー
式鬼神/陰陽師(おんみょうじ)が使役する鬼神のこと。
虎鶫/不気味な声で鳴く得体の知れないもののたとえ。鵼(ぬえ)とよばれる古来の幻獣。
一刻/日の出から日没、もしくは日の入りから日の出までを、それぞれ六分割した時間の単位。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ@10シリーズ書籍化
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

処理中です...