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1:輪廻転生、おいでませガムラン町

12:転生幼女(破戒僧)、オワコンの真実

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「総額で30パケタになります。おたしかめください」
 両目かおに丸いびーどろを貼り付けたやつが、革袋かわぶくろをカウンターに置いた。

「(眼鏡めがねとよばれる、遠見とおみの道具です)」
 初めてみたが、珍しいモンなんだろうなあ。
 狐耳ひめさん達のようすから、眼鏡男こいつ上役うわやくだとわかる。

「ええと、一日ざっと3ヘクク必要として、えーっと……」
「(100日の生活費せいかつひ相当そうとうします)」

「100日分にもなりやがった!」
「はいはい、よかったわね」
 と鬼娘オルコ
「おめでとう。けど無駄遣いしてはいけませんよ?」
 と狐耳ひめさん

薬草師やくそうし実入みいりがすくなくて、もうからねえって話だったんじゃ?」
 おれはおもたい革袋かわぶくろを、持ち上げてみせる。

「そう簡単かんたんな話ではないのよねー」
 鬼娘オルコしぶかおをしている。

   §

 ぺたん、ちゃりん♪
 冒険者カードと、5ヘククが入った革袋をまる机テーブルのうえにおいた。

 じっと見つめていると、めしどころのわかい衆がやってきた。

「やあ、シガミー。らっしゃい♪」
「よう、わけぇの」
「ははっ。きょうは、ごはん食べに来たの?」
「おう、やすくてうまくて、女将おかみ相談そうだんもできるからな」
「いま、さかなの買いつけに出かけてるけど」
「そっか。なあ、おめえさんは、仕事がねえときはなにしてたんだ?」

「仕事がない? それってお休みの日って事じゃなくて、仕事にありつけてないときの話だよね?」
「そうだ」

「ぼくは近くの森で獲物えものを狩って、ギルドからお金をもらってたよ」
「だよなあ」
「シガミーは炎魔法ほのおまほうが使えるんだろ? ならポグバードくらい簡単に倒せるんじゃ?」
「(ポグバードは昨日さくじつしあがられた丸焼まるやきです。弓か攻撃系魔法で簡単に仕とめられる最弱さいじゃく獲物えものです)」

鬼娘オルコにあぶねえから使うなって言われてるんだよ。狐耳ひめさんには森に入ったら『凄いことするからね?』っておどされてるしよ」
「ひめさん……? まさかリカルルさん? コントゥル家のお嬢様で、受付嬢のぉー?」

「どうしたきゅうにグネグネしやがって、きしょくわりいなぁ」
「だ、だってリカルルさんっていったら、綺麗きれいさやしくて、貴族なのに僕たちにも、わけへだてなく接してくれるしさぁー」

「なぁーに言ってやがる!? そんなかわいいタマかよ。あいつぁマジ・・もんの戦闘狂せんとうきょうの――――」
 背後はいごにふくれあがる気配けはい

「シガミーちゃぁぁぁぁん? 奥のテーブルいきましょうかぁぁぁぁぁ? おごってあげるかるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――キィィィィィィン!」
 だから、その眼を昼中ひるなかにするんじゃねえよ!

   §

「このさき一年いちねんは『Fきゅうクエスト/薬草やくそう採取さいしゅ依頼いらい』が張り出されることはないわね……もぐもぐ」
 鬼娘オルコが昼から、めし処ここに来るのは珍しい。

「それを先にいえよ。ここ、一週間いっしゅうかんずーっと『Fきゅうクエスト掲示板けいじばん』に張りついちまったじゃねーか!」

「はい、あーん♪」
 おれをひざのうえにのせた狐耳ひめさんが、かおの前に三つ叉の一本箸フォークとかいうやつをつきだす。
 こいつをめし処みせでみたのは初めてだ。

「やめろ、ガキじゃねーんだか――もぎゅ、もぐもぐゴクン――うめえっ!」
 テーブルに置かれた『ムシュル貝のドラゴーラ焼き』を見つめる。
 中皿ちゅうざらなのに6ヘクク(二日分ふつかぶん生活費せいかつひにも相当そうとう)するだけのことはあった。
 店の最高級料理さいこうきゅうりょうりで、はたらいてたときでも滅多めったに見ることがなかったし、ましてや食べるのなんて初めてだ。

「(マスター)」
「(なんだ? いま味をみしめるのにいそがしい)」
「(先ほどのF級クエストにかんする情報じょうほうについて緊急懸案事項かきゅうのようけんがございます)」

ーーー
1パケタ=10ヘクク/(15000円)
1ヘクク=10キーヌ/(1500円)
1キーヌ=一文(もん)/(150円)
※諸説あります。
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