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1:輪廻転生、おいでませガムラン町

4:輪廻転生、女神さま降臨

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「あっははははははっ!」
「どぉわぁはっはっは!」
「きゃははははははは!」
 上機嫌な百鬼夜行ひゃっきやぎょうどもが、どんちゃん騒いでやがる。

「さかなうまいニャ」「うまいニョロー」「いけるでヒヒーン」
「カァァー冷えたエールも……」「……最っコォォン」
 ボヤ騒ぎの現場にいた連中は、焦げた路地とおりをザッと掃除させられ無罪放免むざいほうめんになった。

 ちっ、こちとら地獄ここに落ちてから、米粒のひとつも口に入れてねえってのに。

「シガミーちゃーん、これ5番さんに持ってってー!」
 よく通る声が、板場いたばの向こうから飛んできた。

「シガミーじゃねーよ! おれは『猪蟹ししがに』だっ、なんど言ったらわか――――」

 ブォォォォォォォォンッ!
 木さじが宙を舞い――――スッカーン!
 洗い場でさぼってた、わかい衆のうしろ頭に的中てきちゅうした。
 さじの剣筋けんすじが、まるで見えねえ。

「シガミーちゃーん、大至急よー? うふふぅー♪」
 目が笑ってねえ。どたどたばた。
 おお慌てで、できたての料理を取りに向かう。

「へ、へぇーい! うぉまっちぃー! 毎度どーも♪」
 門番もんばんの大男がくれた木札は、なんのことはねえ、口入くちい日雇ひやとふだだった。
 地獄だろうがハラも減る。
 飯と寝床ねどこの心配はしなきゃならねえところだったんだから、門番には感謝しかねえ。

「こちらの皿、お下げしまっせ?」
 かちゃかちゃかちゃ。
 地獄ここに落ちるまえにも似たこたぁやらされてたから、見よう見まねでなんとかなっちゃいる。
 なっちゃあいるが、いっさいがっさい説明がねえのもにおちねえ。

 神でも仏でもなんでもいい。ここにおれを連れてきたやつが居るのはまちがいねえ。
 それならまず最初に、説明のひとつもしやがれってんだ。
 あやうく地獄ここの気のよい住人おにどもと、差しちがえるところだったしよ。

「そこのちっこいのー、計算たのむよー」
 ぬ、ちっこいのって、おれのことか?

「あ、ちょっくらごめんなすってよ。へぇへぇ、どうもどうも」
 ちいさいからだにはすぐ慣れて、満員の店内でも自由に動きまわれるようになった。
 そんな姿と口調がおもしれえってんで、余計な客まで次から次へと――

「おまっとさん。えーっと……大皿がひとつとエイル三杯と……ひのふの……じゃあー1ヘククから7キーヌ引いて、3キーヌのおつりでさぁ!」
 勘定かんじょうのいろはてのは、僧侶そうりょなんてやってりゃかってに身につくもんで、そこそこ役にたつ。

「シガミーちゃんさー、魔術師なんかやめて、ここではたらいたらぁ~? ……もぐもぐ」
 くそ、さっきの綺麗な顔の鬼だ。
 うまそうに食いやがって。なんだよそのでっけえ魚。

「だよなぁ、何も使わないで計算できるのなんて、この町じゃ女将かギルド長くれえだろう? ……ぐびぐびゴクリ、ぷっはぁー♪」
 うつろな目で鉄塊かなづちにしなだれかかるのは、これもさっきいた小柄なやつ。
 それさー、エイルとかいう酒も、なんかまずそうだけどうまそうじゃねえか。

「ちきしょうめ……ぼそり……俺の飯はいつになったら出てくんだ! ……ぼそぼそ」
 なんだか、腹が減ったら腹が立ってきた。
 おれぁ、いまガキだから我慢がまんなんぞできねえんだよ!

「いいかげんにしろよ……ぼそり……俺をこんなところに落っことしたやつ! ……ぼそぼそ」
 いますぐ出てくるか、飯をよこすか二つに一つ、さっさとしろい!

「えーっ? さっきからここに居るけどー? ……もぐもぐもぐ」
 なんかすっとんきょうなこえが――
「あ、このご飯はダメよ。これはアタシの! アナタのはあと一時間……えっと……半刻はんときもすれば出てくるから!」

 おれのすぐうしろ。4人掛けのまる机をひとりで使う……ふざけた格好の女がいた。

「アナタの世界のよりどころ♪ 女神イオノファラァーさんでぇぇーすぅ♡」


板場/まな板があるところ。厨房。
口入れ屋/職業安定所。
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