滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

１：輪廻転生、おいでませガムラン町

３：輪廻転生、怒られた

「ちっ、僧兵そうへいの死にざま、とくと味わえやぁ――――！」
　酒瓶さかびんは割れちまった。
　手につかむものはない。

　こんな背格好なりじゃ、素手こぶしもつかえない。
　だが、印いんはむすべる。

「ＯＮおぉん」
　ふん。〝真言まんとら〟が発火しねえ・・・・・。
　そりゃそうだ。この地の理ことわりどころか、土地神とちがみの名すらわからねえ。

　きれいな顔の一本角おにが、からだをビクリとさせる。
「え、ちょっとまって？　この子供……まさか魔術師まじゅつし!?」

　なんだそいつぁ？
　〝魔ま〟の〝術じゅつ〟？
　そんな訳わからんモンといっしょにすんな。

　こちとら〝有言実行〟を体現・・するために普通なら死んじまう・・・・・・・・・ばかみてえな修行を生きぬいたんだぜ。
　いや……ここが地獄じごくなら死んでるのか――ええいややこしい！

　たとえここが地獄でも、自前の・・・回廊かいろぅで〝口上を練る・・・・・〟ことはできるだろ。

　ザシュッ――足もとの破片をおもいきり踏みつけた！
　いてえ、さすが地獄だ。死んでても、ちゃんと痛えんでやんの。

「いきはよいよい帰りは怖いってな」
　切った足のうらからながれだす血を、両手ですばやくぬぐう。
　もう〝帰り・・〟のことなんてしらねえ。

　あかく染まったちいさな手で、空中に輪をえがく。

　全方位ぜんほうい、全法位ぜんほうい。
　三千世界はムリでも、この手がとどく範囲はんいを――おれごと・・・・浄化してやる！

「ＯＮおぉん」
　ぎちり――――――――シュッボゥ！
　よし、発火した！

「っきゃぁぁぁぁぁ、な、なんて事してるの！」
「て、てえへんでさぁ！」
「おい、だれか鐘ならせ！」
　おれの行動にひるんでいた百鬼夜行どもが、いっせいにあわてふためいた。

　雑兵ぞうひょうには、この〝浄化じょうかの炎ほのお〟は見えねえはずなんだが……まあいい。

　鬼の形相ぎょうそうで、間合いをつめる鬼ども。
　いまさらあわてても、もうおせえ――――おれの両手は空あいてる。

「キリキリ――」
　一発しかうてねえ花火だ。さいこうに派手なのを！
　半径はんけい三丈じょうをいっしゅんで焦土しょうどにかえる〝瀑布ばくふ火炎かえんの印〟をむすんで――――

　――――どばっしゃぁぁぁぁぁぁぁん！

　ぷしゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……ぷすん。

「な、なんだこりゃ!?　水ぅー!?」
　ただの水で〝浄化じょうかの炎ほのお〟が、かき消された！

　おい、どうなってる！
　よく見りゃ、おれのひじから先とあたり一面が、まっ黒に焦げてた・・・・。

「あんたたち！　こいつぁ一体なんの騒ぎだい？」
　よくとおる凜としたこえ。

　路地のつきあたりから姿をあらわしたのは、おおきな鉄鍋てつなべをかついだ大女だった。

「おかみさん」「女将」「あねさん」「へへへ」
　かけよる鬼どもが、巨大な木さじでなぎ倒された。

　どっすん！
　おろされる鍋。

「お嬢ちゃんがやったのかい？」
　仁王立におうだちの給仕服おかみさんが、鬼の形相ぎょうそうでにらんでくる。

　いまの一閃いっせん、おれでも見えなかったぞ？
　角つのこそ生えてなかったが、いくさ場でもっとも出会いたくないたぐいの相手だった。

「か……かたじけない」
　謝罪の意味だと、わからなかったのかもしれない。

　さいごにみえたのは、木さじの木目だった。

ーーー
１丈／約３メートル。