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難度SSSダンジョン最下層で発見された░░░░に、命を狙われている件について。
第3頁
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つぎの日の朝、僕は隣の部屋を訪ねた。
二階には4部屋あって、階段側から僕の部屋、ロットリンデさんの部屋、残りは空き部屋となっている。
ちなみに、別棟の一階から三階までが宿泊施設で、全部で27室。
田舎村の宿屋としてはとても立派だけど、半分すら埋まったことはない。
「僕は今日も初心者ダンジョンに行くけど……ロットリンデさんはどうするの?」
開いたドアの向こうには、鋭い目つきの淑女が一人立っている。
「ツーン」
そう口で言って、プイとソッポを向かれてしまった。
「えっとー、じゃあ行ってくるね?」
まわれ右して廊下を戻る。
――――ガシリ。
担いだ木刀の切っ先をつかまれた――どっしん!
「いってぇぇっ!」
ビロロ♪(HP5/12)。
尻餅をついた僕の体力が、かなり減った。
あぶねっ、ダンジョンに入る前に死ぬところだ。
ダンジョンの外でも蘇生は出来るけど、有料になるから二回も死んだら宿賃(相当割り引いてもらってるけど)が払えなくて人生が詰んでしまう。
「あらあら、いいザマね。フーンだ!」
あれ? やっぱりなんか怒ってる?
普段の横柄さの中にも品のある感じじゃなくて、すごくトゲトゲしい。
コレは昨日、ティーナさんが言ってたことに関係してるんだろうけど――。
「ひどいなぁ、痛てて……何かの弾みで僕とロットリンデさんの方陣結界が繋がっちゃって迷惑をかけてるかも知れないけど、ソレはぼくのせいじゃないだろー!?」
この世の有りと有らゆる魔法を司るのは、方陣結界だ。
高速詠唱……えっと詠唱魔法っていうんだっけ?
ティーナさんお得意の心象風景を唱えて使う魔法なんて本当にレアで、大抵は人間の体内にある血流……つまり魔力を生み出す自前の血の方陣結界を力の源としている。
その体内のMPを、展開した方陣結界につなぐことで魔法は完成するのだ。
そんな〝魔法発動の為の仕組み〟が、状況的にも魔術的にも、こんがらかっているのが――今の僕たちらしい。
「んー? アナタがコレほどまでに脆弱なことは、コチラとしては本当に予想外だったけど、確かにソレは……アナタのせいじゃないわね――謝るわっ、フン!」
謝ってない、謝ってないよねソレ。またソッポ向いちゃってるしさ。
§
「ひょえわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
初心者ダンジョン第一階層に入る直前の、ちょっと長めの階段の途中。
出くわした、小っさいリキラに頭をついばまれている。
さすがに、小鳥みたいなモンスターに突っつかれたくらいじゃ死なない。
けどソレが群れだと、僕なんてひとたまりもない。
バタバタバタバタバタバタバタバタッ!
キキキキキキキキキキキキキキキッ――――♪
「っわーーーーーーーーーー!」
僕は階段を転げ落ちながら、必死に木刀を振り回した。
コレだけ密集してると、僕の剣の腕でも何匹かのリキラに当たって倒すことが出来た。
――ピロロロロロォーーーーン♪
さすがLV1。スグにLV2になって、体力と魔力が増えたことを〝冒険者の腕輪〟が知らせてきた。
その音に驚いたのか、真っ黒であまり食べるところのない小鳥の群れが、天井の穴に戻っていった。
「ようし、コレなら今日はごちそうに有りつけそうだ」
ニヤける僕。
腕輪にリキラ合計4匹の〝買い取り価格〟を尋ねたけど、値段が付かなかったらしくて回答がなかった。
「……ごちそうはムリでも、まかないのスープだけじゃなくて、ステーキも食べたい」
時々、〝お大尽〟っていう名前のお客さんが来たときだけ、僕にも肉厚なのを食べさせてくれるけど、それ以外は凄くシビアでスープ以外の食事は付かない。
本来まかない代だって宿賃にあてないといけないところをオマケしてくれているのだ。文句は言えない。
それでも、毎日アレだけのごちそうを見せられ、おあずけをされていたら、どうしたって食べたくなる。それとさっきケンカしちゃったし……。
「出来ることなら指二本分。ロットリンデさんと僕の分の肉厚最小単位でイイから、ステーキ代を――――」
「ゴゥワゥルルルゴゴルゴルルルルゥ――――!」
第一階層に片足を乗せた途端に、なにか不吉な音が暗闇から響いてきた。
足下の小さい方陣結界を踏んだ。
これは設置された仕掛けを作動させるだけのスイッチで、殆ど魔力を消費しない。
そのせいか、ロットリンデさんが近くに居ないにもかかわらず、小さく光を放って発動した。
ボウッ、ボウッ、ボウッ、ボウッ、ボウッ、ボゥワッ!
かがり火で、真っ暗だった第一階層フロアが照らされていく。
かなり広い円形の空間になっていて、遠くの方に小さな通路が開いている。
「ゴゥワゥルルルゴゴルゴルルルルゥ――――!」
不吉なうなり声の正体は、猛獣だった。
大森林の奥までいかないと見つけることが出来ない、森の主。
本来こんな所に居るはずがない〝ファローモ〟が、コッチを睨み付けヒヅメをドカドカと踏みならしている。
冒険者学校で見た図鑑に載ってたヤツよりは少し小さめだけど、2バーテルは有るし角まで入れたら3バーテル。
とても僕がかなう相手ではない。
「まあ倒されても初心者ボーナスで蘇生されるし、その度に一歩ずつでも自力で階段を上っていけば――――いける♪」
木刀を構え、ジリジリと後ずさる。
「そんなわけないでしょーがっ!」
僕の横を通り抜け、森の主へ突進する小柄な――メイドさん。
「トゥナっ!?」
それは音もなく駆け抜けていく、僕の幼なじみだった。
ヘルメットと同じ金属で出来た、手甲とブーツと胸当てを装備していて、普段より随分と勇ましい。
「ほら、ジュークなんて食べても美味しくないよ! コッチコッチ♪」
なんて軽口を叩きながら膝を叩く。
パリィンッ――彼女の足下に浮き出ていた方陣結界が破壊された。
――――ガッシャガッシャ、ガチャガチャガチャガチャッ!
ブーツにエンチャントされた〝無音〟という天恵を、自らキャンセルしたのだ。
そして、僕から遠ざかるように、闘技場みたいに湾曲した壁に沿って加速していく。
振り向きざまに投げられる小型ナイフ。
カコココッ!
投げられた全てが、ファローモの大きな角に阻まれた。
モヴォーーーーゥ!
激高した森の主が頭を振り上げ、刺さっていたナイフをまき散らす。
ガッシャガッシャガッシャガッシャ!
ドッガドカ、ドドドドドドドドドッ!
フロアの奥へ逃げるトゥナと、追っていく猛獣。
「――ほら、今のうちに逃げるわよっ!」
僕の手を後ろから引っ張ったのは、ロットリンデさんだった。
え、なんで!?
「君が出かけてスグに、警報が出たのよ」
ロットリンデさんが僕を引っ張って、長い階段を上っていく。
「警報?」
「――特Aクラスモンスター出現のぉー、お告げが出たのよーぅ」
のんびりした声がダンジョン入り口から聞こえてきた。
「ティーナさんまで!?」
これは本当に一大事らしい。
村の方から警鐘が鳴り続けている。
木刀を抱えて走り出したとき――――。
背後から「ッキャァアァァァァァァァァァッ――――」
出口に向かって突進してきた森の主の前に立ち塞がったらしいトゥナ。
けど年端もいかない少女の体重なんて、毛ほどの障害にもならない。
――――ドッドドドドドドドドドドドドドドゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
少女が押し込まれ、猛獣は一瞬で僕達に肉薄した。
――――ゴゴン!
かち上げられた彼女のお尻が、僕をはじき飛ばした。
とっさに角を避けて壁に激突したロットリンデさんが、コッチを見上げて何か言ってる。
でもその動きがゆっくりで、ちょっと面白かった。
コレは――死ぬな、確実に。
でも今のLVは2。まだ初心者ボーナスの恩恵がある。
これがLV3になっちゃうと、自動回復だけになっちゃうから金銭的な面で大変なんだけどさ。
バタバタバタバタバタバタバタバタッ!
キキキキキキキキキキキキキキキッ――――♪
「っわーーーーーーーーーー!」
森の主の地響きと雄叫びに驚いたリキラたちが、飛び出してきた。
運が良いのか悪いのか、僕が放さず持ってた木刀に、次々とぶち当たる真っ黒い鳥型モンスター。
――ピロロロロロォーーーーン♪
体力と魔力が増えたことを〝冒険者の腕輪〟が知らせてくる。
ズドンッ――――晴れて最弱初心者を脱出した僕のからだは、タイミング良く走り込んできた森の主の角で貫かれた。
――ビロロロッ♪(HP1/26)。
お? 首の皮一枚で生き延びた?
トゥナやロットリンデさんが、あいだに入ってくれたからかな。
でもこのまま地面に落ちたら、どっちにしろ死んじゃうんだけどさー。
蘇生代金の明細に『死因:落下死』って書かれちゃうのが、ちょっとかっこ悪い。
そんな僕の眼に映るのは――なんだろ?
ヒラヒラのスカート。まくれ上がるエプロンドレス。
少し横に伸びた……猫のプリント柄?
ふにょっ――!
柔らかい感触か顔に当たる。
――ビロッ♪(HP0/26)。
僕を包んでいた暖かい光が、急激に消えていく。
――――まるで季節はずれの水浴びでもしてるみたいに、寒くなってきた。
でも大丈夫、ココにはみんなが居るし、ティーナさんの高速詠唱にかかれば、LV3なんてイチコロで蘇生されるはず。
「――――こぉらぁーーーーっ! 見ぃるぅなぁーーーーーーっ!」
あー、この柔いのは、トゥナのお尻かー。
僕は冒険者になって、初めて正式に絶命した。
たぶん、蘇生代金の明細には、こう書かれる。
『死因:幼なじみの尻』って。
二階には4部屋あって、階段側から僕の部屋、ロットリンデさんの部屋、残りは空き部屋となっている。
ちなみに、別棟の一階から三階までが宿泊施設で、全部で27室。
田舎村の宿屋としてはとても立派だけど、半分すら埋まったことはない。
「僕は今日も初心者ダンジョンに行くけど……ロットリンデさんはどうするの?」
開いたドアの向こうには、鋭い目つきの淑女が一人立っている。
「ツーン」
そう口で言って、プイとソッポを向かれてしまった。
「えっとー、じゃあ行ってくるね?」
まわれ右して廊下を戻る。
――――ガシリ。
担いだ木刀の切っ先をつかまれた――どっしん!
「いってぇぇっ!」
ビロロ♪(HP5/12)。
尻餅をついた僕の体力が、かなり減った。
あぶねっ、ダンジョンに入る前に死ぬところだ。
ダンジョンの外でも蘇生は出来るけど、有料になるから二回も死んだら宿賃(相当割り引いてもらってるけど)が払えなくて人生が詰んでしまう。
「あらあら、いいザマね。フーンだ!」
あれ? やっぱりなんか怒ってる?
普段の横柄さの中にも品のある感じじゃなくて、すごくトゲトゲしい。
コレは昨日、ティーナさんが言ってたことに関係してるんだろうけど――。
「ひどいなぁ、痛てて……何かの弾みで僕とロットリンデさんの方陣結界が繋がっちゃって迷惑をかけてるかも知れないけど、ソレはぼくのせいじゃないだろー!?」
この世の有りと有らゆる魔法を司るのは、方陣結界だ。
高速詠唱……えっと詠唱魔法っていうんだっけ?
ティーナさんお得意の心象風景を唱えて使う魔法なんて本当にレアで、大抵は人間の体内にある血流……つまり魔力を生み出す自前の血の方陣結界を力の源としている。
その体内のMPを、展開した方陣結界につなぐことで魔法は完成するのだ。
そんな〝魔法発動の為の仕組み〟が、状況的にも魔術的にも、こんがらかっているのが――今の僕たちらしい。
「んー? アナタがコレほどまでに脆弱なことは、コチラとしては本当に予想外だったけど、確かにソレは……アナタのせいじゃないわね――謝るわっ、フン!」
謝ってない、謝ってないよねソレ。またソッポ向いちゃってるしさ。
§
「ひょえわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
初心者ダンジョン第一階層に入る直前の、ちょっと長めの階段の途中。
出くわした、小っさいリキラに頭をついばまれている。
さすがに、小鳥みたいなモンスターに突っつかれたくらいじゃ死なない。
けどソレが群れだと、僕なんてひとたまりもない。
バタバタバタバタバタバタバタバタッ!
キキキキキキキキキキキキキキキッ――――♪
「っわーーーーーーーーーー!」
僕は階段を転げ落ちながら、必死に木刀を振り回した。
コレだけ密集してると、僕の剣の腕でも何匹かのリキラに当たって倒すことが出来た。
――ピロロロロロォーーーーン♪
さすがLV1。スグにLV2になって、体力と魔力が増えたことを〝冒険者の腕輪〟が知らせてきた。
その音に驚いたのか、真っ黒であまり食べるところのない小鳥の群れが、天井の穴に戻っていった。
「ようし、コレなら今日はごちそうに有りつけそうだ」
ニヤける僕。
腕輪にリキラ合計4匹の〝買い取り価格〟を尋ねたけど、値段が付かなかったらしくて回答がなかった。
「……ごちそうはムリでも、まかないのスープだけじゃなくて、ステーキも食べたい」
時々、〝お大尽〟っていう名前のお客さんが来たときだけ、僕にも肉厚なのを食べさせてくれるけど、それ以外は凄くシビアでスープ以外の食事は付かない。
本来まかない代だって宿賃にあてないといけないところをオマケしてくれているのだ。文句は言えない。
それでも、毎日アレだけのごちそうを見せられ、おあずけをされていたら、どうしたって食べたくなる。それとさっきケンカしちゃったし……。
「出来ることなら指二本分。ロットリンデさんと僕の分の肉厚最小単位でイイから、ステーキ代を――――」
「ゴゥワゥルルルゴゴルゴルルルルゥ――――!」
第一階層に片足を乗せた途端に、なにか不吉な音が暗闇から響いてきた。
足下の小さい方陣結界を踏んだ。
これは設置された仕掛けを作動させるだけのスイッチで、殆ど魔力を消費しない。
そのせいか、ロットリンデさんが近くに居ないにもかかわらず、小さく光を放って発動した。
ボウッ、ボウッ、ボウッ、ボウッ、ボウッ、ボゥワッ!
かがり火で、真っ暗だった第一階層フロアが照らされていく。
かなり広い円形の空間になっていて、遠くの方に小さな通路が開いている。
「ゴゥワゥルルルゴゴルゴルルルルゥ――――!」
不吉なうなり声の正体は、猛獣だった。
大森林の奥までいかないと見つけることが出来ない、森の主。
本来こんな所に居るはずがない〝ファローモ〟が、コッチを睨み付けヒヅメをドカドカと踏みならしている。
冒険者学校で見た図鑑に載ってたヤツよりは少し小さめだけど、2バーテルは有るし角まで入れたら3バーテル。
とても僕がかなう相手ではない。
「まあ倒されても初心者ボーナスで蘇生されるし、その度に一歩ずつでも自力で階段を上っていけば――――いける♪」
木刀を構え、ジリジリと後ずさる。
「そんなわけないでしょーがっ!」
僕の横を通り抜け、森の主へ突進する小柄な――メイドさん。
「トゥナっ!?」
それは音もなく駆け抜けていく、僕の幼なじみだった。
ヘルメットと同じ金属で出来た、手甲とブーツと胸当てを装備していて、普段より随分と勇ましい。
「ほら、ジュークなんて食べても美味しくないよ! コッチコッチ♪」
なんて軽口を叩きながら膝を叩く。
パリィンッ――彼女の足下に浮き出ていた方陣結界が破壊された。
――――ガッシャガッシャ、ガチャガチャガチャガチャッ!
ブーツにエンチャントされた〝無音〟という天恵を、自らキャンセルしたのだ。
そして、僕から遠ざかるように、闘技場みたいに湾曲した壁に沿って加速していく。
振り向きざまに投げられる小型ナイフ。
カコココッ!
投げられた全てが、ファローモの大きな角に阻まれた。
モヴォーーーーゥ!
激高した森の主が頭を振り上げ、刺さっていたナイフをまき散らす。
ガッシャガッシャガッシャガッシャ!
ドッガドカ、ドドドドドドドドドッ!
フロアの奥へ逃げるトゥナと、追っていく猛獣。
「――ほら、今のうちに逃げるわよっ!」
僕の手を後ろから引っ張ったのは、ロットリンデさんだった。
え、なんで!?
「君が出かけてスグに、警報が出たのよ」
ロットリンデさんが僕を引っ張って、長い階段を上っていく。
「警報?」
「――特Aクラスモンスター出現のぉー、お告げが出たのよーぅ」
のんびりした声がダンジョン入り口から聞こえてきた。
「ティーナさんまで!?」
これは本当に一大事らしい。
村の方から警鐘が鳴り続けている。
木刀を抱えて走り出したとき――――。
背後から「ッキャァアァァァァァァァァァッ――――」
出口に向かって突進してきた森の主の前に立ち塞がったらしいトゥナ。
けど年端もいかない少女の体重なんて、毛ほどの障害にもならない。
――――ドッドドドドドドドドドドドドドドゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
少女が押し込まれ、猛獣は一瞬で僕達に肉薄した。
――――ゴゴン!
かち上げられた彼女のお尻が、僕をはじき飛ばした。
とっさに角を避けて壁に激突したロットリンデさんが、コッチを見上げて何か言ってる。
でもその動きがゆっくりで、ちょっと面白かった。
コレは――死ぬな、確実に。
でも今のLVは2。まだ初心者ボーナスの恩恵がある。
これがLV3になっちゃうと、自動回復だけになっちゃうから金銭的な面で大変なんだけどさ。
バタバタバタバタバタバタバタバタッ!
キキキキキキキキキキキキキキキッ――――♪
「っわーーーーーーーーーー!」
森の主の地響きと雄叫びに驚いたリキラたちが、飛び出してきた。
運が良いのか悪いのか、僕が放さず持ってた木刀に、次々とぶち当たる真っ黒い鳥型モンスター。
――ピロロロロロォーーーーン♪
体力と魔力が増えたことを〝冒険者の腕輪〟が知らせてくる。
ズドンッ――――晴れて最弱初心者を脱出した僕のからだは、タイミング良く走り込んできた森の主の角で貫かれた。
――ビロロロッ♪(HP1/26)。
お? 首の皮一枚で生き延びた?
トゥナやロットリンデさんが、あいだに入ってくれたからかな。
でもこのまま地面に落ちたら、どっちにしろ死んじゃうんだけどさー。
蘇生代金の明細に『死因:落下死』って書かれちゃうのが、ちょっとかっこ悪い。
そんな僕の眼に映るのは――なんだろ?
ヒラヒラのスカート。まくれ上がるエプロンドレス。
少し横に伸びた……猫のプリント柄?
ふにょっ――!
柔らかい感触か顔に当たる。
――ビロッ♪(HP0/26)。
僕を包んでいた暖かい光が、急激に消えていく。
――――まるで季節はずれの水浴びでもしてるみたいに、寒くなってきた。
でも大丈夫、ココにはみんなが居るし、ティーナさんの高速詠唱にかかれば、LV3なんてイチコロで蘇生されるはず。
「――――こぉらぁーーーーっ! 見ぃるぅなぁーーーーーーっ!」
あー、この柔いのは、トゥナのお尻かー。
僕は冒険者になって、初めて正式に絶命した。
たぶん、蘇生代金の明細には、こう書かれる。
『死因:幼なじみの尻』って。
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