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難度SSSダンジョン最下層で発見された░░░░に、命を狙われている件について。
第1頁
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「こぉらぁーーーーーーーーーーっ! ぅおっ待ちなっさぁいぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーっ!!」
うわぁぁぁぁっぁあぁぁっ!
僕は逃げた。
初心者向けダンジョンに足を一歩踏み入れた途端に発動したのは、見たこともない方陣結界。
飛ばされた先には二つの宝箱が置いてあって、今晩の食事にも事欠く冒険者一日目の僕は当然、大きい方を選んだのだ。
そして、突然飛び出してきた宝箱の中身に、僕は追われている。
「むわぁてぇーーーーーーーーい!」
ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!
に、逃げなければ。〝スライム〟どころか〝魔山椒〟の一匹すら倒したことのない僕には経験値が足りてない。
レベルは1だし、頼みの綱の支給品の木刀すら重くて、途中で投げ捨ててしまった。
「それにしても、このダンジョン……はぁはぁ、……曲がり角がひとつも無いなっ」
カーブした通路は、どこまでも一直線、いや……一曲線に続いている。
「待てというのが、聞こえんのかぁぁぁぁっ!」
スッカーン♪
「痛でっ!」
後頭部に激痛が走る。
宝箱から出てきた魔物に、遠距離攻撃されたのだ。
薄れゆく意識の中、目の前に落ちてきたのは僕の木刀。
魔物が投げたみたいだ。
剣として使わなければ、攻撃力なんてほとんどないけど。
それでも、僕の微々たるHPをゼロにするには十分だった。
み、短い人生だった。バタリ。
§
「――それは、私たちの恋心~~♪」
後頭部が柔らかい。
それに、ドコまでも透き通る天上の歌声が耳に心地よい。
なんだか、イイにおいもするし――。
「あら、気が付いた?」
僕は見たこともないような凄く綺麗な女の人に、ひざ枕をされていた。
「あ、そっか。僕は死んだのか。天使が目の前に居るし……羽は生えてないけど」
「やーね、天使だなんて――そんな当たり前のお世辞で、この私を口説こうっていうわけ!?」
天使がペチリと僕の頬をはたいた。
天使じゃない!
天使じゃないモノが僕を床に放り出し、仁王立ちになった。
この綺麗な女の人、いやコイツは、さっき僕を追いかけてきた〝宝箱の魔物〟だ!
「ひゃぁぁー、ま、魔物!」
這いつくばって逃げる。
「どぉわぁれぇがぁ、魔物かーーーーーーーーっ!」
僕は背中を蹴飛ばされ、倒れた。
ビロロロロッ♪
初心者ボーナスで蘇生&自動回復したHPが、再びゼロになった。
バタリ。
§
「――アナタ、そんなひ弱なのに、こんなダンジョン最下層にまで、よくたどりつけたわね」
生き返りヨロヨロと起き上がった僕に魔物……じゃなかった、乱暴な女の人が変なことを言い出した。
「最下層~!? いくら初心者向けダンジョンだからってレベル1の僕がそんな所にまで、降りられるハズがはずないよ」
「そっちこそ何を言っているの? ココはヴァミヤラーク洞穴最下層の地の底よ?」
「なにそれ、ウケる。さっき冒険者になったばかりの僕が、〝王国騎士団が10年がかりでとうとう到達できずに攻略を断念した難度SSSのダンジョン〟になんて、足を踏み入れられるはずがないよう」
ヴァカだなっ、アハハッ♪
指を差して笑ったら、また平手を喰らった。ビロッ――バタリ。
「ほんっとーに、ひ弱ね。レベル以前に体質が虚弱すぎる!」
「よ、よく言われるよ。だから冒険者になったんだ」
「そんなに弱いのに?」
「それはこの〝初心者ボーナス〟の恩恵に、あずかれるからさ……痛てて」
僕の体から淡い光が、泡のように立ちのぼった。
ジワジワとした頬の痛みが、スッと引いていく。
体力が緑色の液体で満たされる感覚。
僕くらい弱いと逆に、その変動が良くわかる。
「あらホント、その蘇生効果ってエンチャント装備による天恵じゃないわね。……私が寝てる間に方律が変わったのかしら……ブツブツ」
なんか、ブツブツ言いだしたけど、ひとまず彼女の質問ターンは終了したみたいだ。
「じゃ今度は、コッチが質問する番だ。君はなんで、こんな地の底に居るの? なんで宝箱になんて入ってたの? ココから出る方法は?」
「クスッ、すごい質問攻めね。いいわ、ひ弱な冒険者様。答えてあげる」
姿勢を正した彼女はまるで、どこかのお姫様のようだった。
「――私がココに居るのは、私がそう望んだから。――なんで宝箱に入っていたのかは、自分の体を朽ちらせないため。――そして、ココから出る方法は……今のところ無いわね♪」
何でか知らないけど残念そうに僕を見つめた後で、両手を投げやりに広げた。
「出る方法がない? そんな所に閉じこもってたんだ……」
ひょっとしてバカなのかな?
可哀想な視線を向けたら、小さい方の宝箱を投げつけられた。
「ひっ!?」
ガキンッ、ゴトリッ!
僕は咄嗟に木刀でガードした。
「バカはアナタでしょ! 私がココに居るのは私が望んだからって言ったでしょ!?」
いけね、声に出てた?
「あぶないなあっ。じゃあ君は、どうやって来たっていうのさ?」
一通り見たけど、床も天井も壁も岩盤がむき出しで、通路はさっきの丸くなった一本道だけだ。
この部屋の中には階段もなければ、帰還のための方陣結界も無い。完全に密室だった。
「一度限りの方陣結界を使ってよ。一方通行の跳躍なんて複雑すぎて、私だって覚えられないわ、よって帰還方法はありません」
そう、描き方さえ間違えなければ、初心者の僕にだって使う事が出来る方陣結界だけど、何重にも安全装置がかけられている。
〝帰還不可能な跳躍〟なんて、安全装置を回避するための文様が複雑すぎて、レリーフ細工のような有り様だった。
「ふうん、そうなんだ。じゃあ、僕が飛び込んだのと同じヤツかも知れないね……たしかこんなカタチしてたかな?」
僕は〝方陣記述魔法〟で、地面に大きく図形を描いた。
手のひらの上に現れた光の平面を、指先で描いた細かな図形で埋めていく。
それは、驚いた彼女が足を踏み入れた途端に、発動した。
✧
「――やっぱりだ。僕が乗ったのはこの方陣結界だよ」
僕は帰ってきた。
初心者ダンジョンの入り口に。
外はまだ明るく、街の喧騒もかすかに聞こえてくる。
「え、なんで!? ココ外なの? ちょっと待って、一体どうなって!?」
見てるコッチが慌てるほどの、狼狽ぶり。
「あの……大丈夫? ひょっとして、魔物のお仕事の邪魔しちゃった?」
「どーわれが、魔物かっ!」
こわいこわい、オークの形相で詰めよられた。
「――あらコレ……〝モンスターを閉じ込めておく方陣結界〟が上書きに次ぐ上書きで、まるで別モノになってるじゃない!」
足下を指さし、目をつり上げる。
「それって……マズいの?」
「マズいなんてモノじゃ有りませんわよ! 現にアナタ、私が居た高難度ダンジョンに迷い込んだじゃない!」
そう言われると、確かにマズい気もする――
「でも初心者ダンジョンに用があるのなんて、僕くらいしか居ないからなー」
年に一人も利用者がいなかった設備に、手厚い整備を期待はできない。
――パリィン♪
かろうじて方陣結界として成立していた図案が、ガラスみたいに壊れて消えた。
「はっ、それどころじゃ有りませんでしたわっ! ココは何領!? 今は光陣暦何年!?」
「えぇーー? また、ばかにして、そんなの子供だって知ってるじゃないかよう」
肩を掴まれガタガタと揺らされる。
「いーーーーーーーーっから! 早く答えなさいっ!」
ガタガタガタガタガッタガタ!
「ココわぁっ、ルヴロザード領のぉっフカフ村だっよぅ……、光陣暦わっミカン四つとっブドウ一個っ半だっよぅ」
ガタガタガタガタガガタガ――ピタリ。
「ルヴロザード……聞いたことないわね? それに光陣暦が、えっとひのふの、103・5年!?」
僕を掴んだ指先が、指折り数えるみたいに食い込む。
痛い痛い、放して放して。
「まってまってまってまって、ちょっとまって! それじゃ、まだ30年も過ぎてないじゃないのっ!」
ガタガタガタガタガガタガガタガタガタガ――再開されるガッタガタ。
「はーなーしーてーー!」
「もー、なんて事かしら、アイツらまだ、ピンピンしてるじゃないのっ!」
ソレが誰かは分からないけど、僕はもう虫の息だよう。
「この私の一世一代の大芝居に、横ヤリ入れた責任、取ってもらいますからねっ!」
大芝居? じゃあやっぱり、魔物の代わりに冒険者を脅かす、〝魔物の仕事〟を邪魔しちゃったのかも知れない。
生き返ったら謝ろう――ガクリ。
うわぁぁぁぁっぁあぁぁっ!
僕は逃げた。
初心者向けダンジョンに足を一歩踏み入れた途端に発動したのは、見たこともない方陣結界。
飛ばされた先には二つの宝箱が置いてあって、今晩の食事にも事欠く冒険者一日目の僕は当然、大きい方を選んだのだ。
そして、突然飛び出してきた宝箱の中身に、僕は追われている。
「むわぁてぇーーーーーーーーい!」
ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!
に、逃げなければ。〝スライム〟どころか〝魔山椒〟の一匹すら倒したことのない僕には経験値が足りてない。
レベルは1だし、頼みの綱の支給品の木刀すら重くて、途中で投げ捨ててしまった。
「それにしても、このダンジョン……はぁはぁ、……曲がり角がひとつも無いなっ」
カーブした通路は、どこまでも一直線、いや……一曲線に続いている。
「待てというのが、聞こえんのかぁぁぁぁっ!」
スッカーン♪
「痛でっ!」
後頭部に激痛が走る。
宝箱から出てきた魔物に、遠距離攻撃されたのだ。
薄れゆく意識の中、目の前に落ちてきたのは僕の木刀。
魔物が投げたみたいだ。
剣として使わなければ、攻撃力なんてほとんどないけど。
それでも、僕の微々たるHPをゼロにするには十分だった。
み、短い人生だった。バタリ。
§
「――それは、私たちの恋心~~♪」
後頭部が柔らかい。
それに、ドコまでも透き通る天上の歌声が耳に心地よい。
なんだか、イイにおいもするし――。
「あら、気が付いた?」
僕は見たこともないような凄く綺麗な女の人に、ひざ枕をされていた。
「あ、そっか。僕は死んだのか。天使が目の前に居るし……羽は生えてないけど」
「やーね、天使だなんて――そんな当たり前のお世辞で、この私を口説こうっていうわけ!?」
天使がペチリと僕の頬をはたいた。
天使じゃない!
天使じゃないモノが僕を床に放り出し、仁王立ちになった。
この綺麗な女の人、いやコイツは、さっき僕を追いかけてきた〝宝箱の魔物〟だ!
「ひゃぁぁー、ま、魔物!」
這いつくばって逃げる。
「どぉわぁれぇがぁ、魔物かーーーーーーーーっ!」
僕は背中を蹴飛ばされ、倒れた。
ビロロロロッ♪
初心者ボーナスで蘇生&自動回復したHPが、再びゼロになった。
バタリ。
§
「――アナタ、そんなひ弱なのに、こんなダンジョン最下層にまで、よくたどりつけたわね」
生き返りヨロヨロと起き上がった僕に魔物……じゃなかった、乱暴な女の人が変なことを言い出した。
「最下層~!? いくら初心者向けダンジョンだからってレベル1の僕がそんな所にまで、降りられるハズがはずないよ」
「そっちこそ何を言っているの? ココはヴァミヤラーク洞穴最下層の地の底よ?」
「なにそれ、ウケる。さっき冒険者になったばかりの僕が、〝王国騎士団が10年がかりでとうとう到達できずに攻略を断念した難度SSSのダンジョン〟になんて、足を踏み入れられるはずがないよう」
ヴァカだなっ、アハハッ♪
指を差して笑ったら、また平手を喰らった。ビロッ――バタリ。
「ほんっとーに、ひ弱ね。レベル以前に体質が虚弱すぎる!」
「よ、よく言われるよ。だから冒険者になったんだ」
「そんなに弱いのに?」
「それはこの〝初心者ボーナス〟の恩恵に、あずかれるからさ……痛てて」
僕の体から淡い光が、泡のように立ちのぼった。
ジワジワとした頬の痛みが、スッと引いていく。
体力が緑色の液体で満たされる感覚。
僕くらい弱いと逆に、その変動が良くわかる。
「あらホント、その蘇生効果ってエンチャント装備による天恵じゃないわね。……私が寝てる間に方律が変わったのかしら……ブツブツ」
なんか、ブツブツ言いだしたけど、ひとまず彼女の質問ターンは終了したみたいだ。
「じゃ今度は、コッチが質問する番だ。君はなんで、こんな地の底に居るの? なんで宝箱になんて入ってたの? ココから出る方法は?」
「クスッ、すごい質問攻めね。いいわ、ひ弱な冒険者様。答えてあげる」
姿勢を正した彼女はまるで、どこかのお姫様のようだった。
「――私がココに居るのは、私がそう望んだから。――なんで宝箱に入っていたのかは、自分の体を朽ちらせないため。――そして、ココから出る方法は……今のところ無いわね♪」
何でか知らないけど残念そうに僕を見つめた後で、両手を投げやりに広げた。
「出る方法がない? そんな所に閉じこもってたんだ……」
ひょっとしてバカなのかな?
可哀想な視線を向けたら、小さい方の宝箱を投げつけられた。
「ひっ!?」
ガキンッ、ゴトリッ!
僕は咄嗟に木刀でガードした。
「バカはアナタでしょ! 私がココに居るのは私が望んだからって言ったでしょ!?」
いけね、声に出てた?
「あぶないなあっ。じゃあ君は、どうやって来たっていうのさ?」
一通り見たけど、床も天井も壁も岩盤がむき出しで、通路はさっきの丸くなった一本道だけだ。
この部屋の中には階段もなければ、帰還のための方陣結界も無い。完全に密室だった。
「一度限りの方陣結界を使ってよ。一方通行の跳躍なんて複雑すぎて、私だって覚えられないわ、よって帰還方法はありません」
そう、描き方さえ間違えなければ、初心者の僕にだって使う事が出来る方陣結界だけど、何重にも安全装置がかけられている。
〝帰還不可能な跳躍〟なんて、安全装置を回避するための文様が複雑すぎて、レリーフ細工のような有り様だった。
「ふうん、そうなんだ。じゃあ、僕が飛び込んだのと同じヤツかも知れないね……たしかこんなカタチしてたかな?」
僕は〝方陣記述魔法〟で、地面に大きく図形を描いた。
手のひらの上に現れた光の平面を、指先で描いた細かな図形で埋めていく。
それは、驚いた彼女が足を踏み入れた途端に、発動した。
✧
「――やっぱりだ。僕が乗ったのはこの方陣結界だよ」
僕は帰ってきた。
初心者ダンジョンの入り口に。
外はまだ明るく、街の喧騒もかすかに聞こえてくる。
「え、なんで!? ココ外なの? ちょっと待って、一体どうなって!?」
見てるコッチが慌てるほどの、狼狽ぶり。
「あの……大丈夫? ひょっとして、魔物のお仕事の邪魔しちゃった?」
「どーわれが、魔物かっ!」
こわいこわい、オークの形相で詰めよられた。
「――あらコレ……〝モンスターを閉じ込めておく方陣結界〟が上書きに次ぐ上書きで、まるで別モノになってるじゃない!」
足下を指さし、目をつり上げる。
「それって……マズいの?」
「マズいなんてモノじゃ有りませんわよ! 現にアナタ、私が居た高難度ダンジョンに迷い込んだじゃない!」
そう言われると、確かにマズい気もする――
「でも初心者ダンジョンに用があるのなんて、僕くらいしか居ないからなー」
年に一人も利用者がいなかった設備に、手厚い整備を期待はできない。
――パリィン♪
かろうじて方陣結界として成立していた図案が、ガラスみたいに壊れて消えた。
「はっ、それどころじゃ有りませんでしたわっ! ココは何領!? 今は光陣暦何年!?」
「えぇーー? また、ばかにして、そんなの子供だって知ってるじゃないかよう」
肩を掴まれガタガタと揺らされる。
「いーーーーーーーーっから! 早く答えなさいっ!」
ガタガタガタガタガッタガタ!
「ココわぁっ、ルヴロザード領のぉっフカフ村だっよぅ……、光陣暦わっミカン四つとっブドウ一個っ半だっよぅ」
ガタガタガタガタガガタガ――ピタリ。
「ルヴロザード……聞いたことないわね? それに光陣暦が、えっとひのふの、103・5年!?」
僕を掴んだ指先が、指折り数えるみたいに食い込む。
痛い痛い、放して放して。
「まってまってまってまって、ちょっとまって! それじゃ、まだ30年も過ぎてないじゃないのっ!」
ガタガタガタガタガガタガガタガタガタガ――再開されるガッタガタ。
「はーなーしーてーー!」
「もー、なんて事かしら、アイツらまだ、ピンピンしてるじゃないのっ!」
ソレが誰かは分からないけど、僕はもう虫の息だよう。
「この私の一世一代の大芝居に、横ヤリ入れた責任、取ってもらいますからねっ!」
大芝居? じゃあやっぱり、魔物の代わりに冒険者を脅かす、〝魔物の仕事〟を邪魔しちゃったのかも知れない。
生き返ったら謝ろう――ガクリ。
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