5 / 7
5 真実の愛はどこ?(妹視点)
しおりを挟む婚約を破棄されたお姉さまが泣いた。
王太子殿下から婚約破棄をされてしまった可哀想な私。私だけに愛を捧げてくれないのがいけないのに。手を差し伸べてくださった帝国の皇太子さまはすっかり私のことを忘れてしまったし、優しくしてくれるのは家族だけ。
そんな私をお姉さまは慰めてくださった。
私にはいつか、ちゃんと幸せにしてくれる王子様が現れると。
そして私は気が付いた。王子さまなら近くにいるわ。本物の王子様ではないけれど、優しくて、誠実で、信頼ができる素敵な王子様のような人だって、お姉さまがいつもおっしゃっていたもの。
だから彼と結ばれて子供を授かった時、お姉さまは喜んでくれると思ったのに。お姉さまは泣いてしまわれた。そして私を怒った。
どうして? お父さまもお母さまも私は悪くないっておっしゃってくださるわ。なのに、どうしてそんなに怖い顔で、悲しそうな顔で私を怒るの?
最初は頭にきたけれど、お姉さまが泣いているのを見たらふと昔を思い出した。
暖炉がきれいだったから、触ろうとしたらひどく怒鳴られ怒られた。そして、やけどしなくて良かったとお姉さまは泣いていた。
お姉さまが怒るのは私が考え無しの行動で何かをしでかしてしまった時だけ。だから、もしかしたら今回も私が悪かったのかもしれない。
落ち着いて話を聞いてみたら、お姉さまはちゃんと教えてくださった。
お姉さまの婚約者――メイズ様が好きになったのなら、両思いになったのなら、お姉さまとの関係を清算し、きちんと婚約を解消してから二人の関係を進めるべきだったのだと。
そういえば、いつの間にやら私は元婚約者たちから婚約破棄をされていて訳が分からなかったけど、お姉さまから話を聞いて悔しい思いをしたのは確か。ちゃんと手順を踏まないとメイズ様のお相手に同じ思いをさせてしまうらしい。
今回の場合、それはお姉さま。大変! 私はお姉さまが大好きなのに。
何がいけなかったのか分かったと謝ったら、お姉さまは許してくださった。そして私とメイズ様なら幸せになれるとおっしゃってくださった。
なのにお姉さまは家を出た。どうして? 許してくださったのではなかったの?
お姉さまが家を出てからメイズ様のご様子がおかしくなった。一緒にいるときは愛を囁いてくださるけれど、私が少し離れたり、ふとした時に遠くを見てため息をついていらっしゃる。
そして、お姉さまの名前をつぶやいているのをお聞きして分かったわ。メイズ様はまだお姉さまがお好きだったのよ。
酷い。それなのに私と結婚するなんて。私の真実の愛はどこにあるのかしら? そう思っていたら、あちこちから名乗りをあげられた。
私は喜んで受け入れた。でも、どれも偽物だったみたい。みんな、手紙を残して消えてしまった。
それでも、私に残された子供たちの愛は本物だわ。泣いたり怒ったり笑ったり。お姉さまみたいに私に色んな感情を見せてくれる。他の方は何故か愛しか見せてくださらないの。
私が偽物の愛に振り回される度にメイズ様は怒って離婚だっておっしゃっているそうだけど、私が謝れば受け入れてくださるし、変わらず愛を囁いてくださる。真実の愛ではないかもしれないけれど、子供たちに父親は必要よ。だからいくらでも謝るわ。きっと彼ならば子供たちも私も幸せにしてくださると思うの。
だって、お姉さまがそうおっしゃったから。
笑ったり、怒ったり、のびのび育ちまっすぐ私に愛を伝えてくれる子供達を見て、私は無性にお姉さまにお会いしたくなった。
そして、ようやく手がかりを掴んだの!!
お姉さまは帝国の魔術治療院で働いていらっしゃるのですって!!
169
お気に入りに追加
824
あなたにおすすめの小説

婚約者が私の妹と結婚したいと言い出したら、両親が快く応じた話
しがついつか
恋愛
「リーゼ、僕たちの婚約を解消しよう。僕はリーゼではなく、アルマを愛しているんだ」
「お姉様、ごめんなさい。でも私――私達は愛し合っているの」
父親達が友人であったため婚約を結んだリーゼ・マイヤーとダニエル・ミュラー。
ある日ダニエルに呼び出されたリーゼは、彼の口から婚約の解消と、彼女の妹のアルマと婚約を結び直すことを告げられた。
婚約者の交代は双方の両親から既に了承を得ているという。
両親も妹の味方なのだと暗い気持ちになったリーゼだったが…。

信じてくれてありがとうと感謝されたが、ただ信じていたわけではない
しがついつか
恋愛
「これからしばらくの間、私はあなたに不誠実な行いをせねばなりません」
茶会で婚約者にそう言われた翌月、とある女性が見目麗しい男性を数名を侍らしているという噂話を耳にした
。
男性達の中には、婚約者もいるのだとか…。
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。

私に『婚約破棄よ!』と言わせたい婚約者。 無視していたら殺されかけたのだけど、助けてくれた方が好みだったので、このまま死んだことにします。
迷い人
恋愛
結婚なんて御免こうむる!!
それは、私も婚約者も同意なのだけど……。 私に慰謝料を払わせたい婚約者は、婚約破棄を明言しないまま、遠まわしに嫌がらせを続ける。 そんなある日、私は事故に会い死んだ……はずだった。
死にかけの私は前世を思い出し、助けてくれた相手はめちゃ好みなタイプ。
なんで、このまま別人として生きていくことにしました。
祖父の残した財産を巡り、色々と噂を耳にするけれど、死んだ私には関係ない事ですね。
過去に書いたものを大幅改稿しUpしていく作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる