【完結】お前の妹と婚約破棄する!と言われても困ります。本人に言ってください

堀 和三盆

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5 真実の愛はどこ?(妹視点)

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 婚約を破棄されたお姉さまが泣いた。


 王太子殿下から婚約破棄をされてしまった可哀想な私。私だけに愛を捧げてくれないのがいけないのに。手を差し伸べてくださった帝国の皇太子さまはすっかり私のことを忘れてしまったし、優しくしてくれるのは家族だけ。
 そんな私をお姉さまは慰めてくださった。

 私にはいつか、ちゃんと幸せにしてくれる王子様が現れると。

 そして私は気が付いた。王子さまなら近くにいるわ。本物の王子様ではないけれど、優しくて、誠実で、信頼ができる素敵な王子様のような人だって、お姉さまがいつもおっしゃっていたもの。

 だから彼と結ばれて子供を授かった時、お姉さまは喜んでくれると思ったのに。お姉さまは泣いてしまわれた。そして私を怒った。

 どうして? お父さまもお母さまも私は悪くないっておっしゃってくださるわ。なのに、どうしてそんなに怖い顔で、悲しそうな顔で私を怒るの?

 最初は頭にきたけれど、お姉さまが泣いているのを見たらふと昔を思い出した。

 暖炉がきれいだったから、触ろうとしたらひどく怒鳴られ怒られた。そして、やけどしなくて良かったとお姉さまは泣いていた。

 お姉さまが怒るのは私が考え無しの行動で何かをしでかしてしまった時だけ。だから、もしかしたら今回も私が悪かったのかもしれない。

 落ち着いて話を聞いてみたら、お姉さまはちゃんと教えてくださった。

 お姉さまの婚約者――メイズ様が好きになったのなら、両思いになったのなら、お姉さまとの関係を清算し、きちんと婚約を解消してから二人の関係を進めるべきだったのだと。

 そういえば、いつの間にやら私は元婚約者たちから婚約破棄をされていて訳が分からなかったけど、お姉さまから話を聞いて悔しい思いをしたのは確か。ちゃんと手順を踏まないとメイズ様のお相手に同じ思いをさせてしまうらしい。

 今回の場合、それはお姉さま。大変! 私はお姉さまが大好きなのに。

 何がいけなかったのか分かったと謝ったら、お姉さまは許してくださった。そして私とメイズ様なら幸せになれるとおっしゃってくださった。

 なのにお姉さまは家を出た。どうして? 許してくださったのではなかったの?

 お姉さまが家を出てからメイズ様のご様子がおかしくなった。一緒にいるときは愛を囁いてくださるけれど、私が少し離れたり、ふとした時に遠くを見てため息をついていらっしゃる。

 そして、お姉さまの名前をつぶやいているのをお聞きして分かったわ。メイズ様はまだお姉さまがお好きだったのよ。

 酷い。それなのに私と結婚するなんて。私の真実の愛はどこにあるのかしら? そう思っていたら、あちこちから名乗りをあげられた。

 私は喜んで受け入れた。でも、どれも偽物だったみたい。みんな、手紙を残して消えてしまった。

 それでも、私に残された子供たちの愛は本物だわ。泣いたり怒ったり笑ったり。お姉さまみたいに私に色んな感情を見せてくれる。他の方は何故か愛しか見せてくださらないの。

 私が偽物の愛に振り回される度にメイズ様は怒って離婚だっておっしゃっているそうだけど、私が謝れば受け入れてくださるし、変わらず愛を囁いてくださる。真実の愛ではないかもしれないけれど、子供たちに父親は必要よ。だからいくらでも謝るわ。きっと彼ならば子供たちも私も幸せにしてくださると思うの。

 だって、お姉さまがそうおっしゃったから。


 笑ったり、怒ったり、のびのび育ちまっすぐ私に愛を伝えてくれる子供達を見て、私は無性にお姉さまにお会いしたくなった。

 そして、ようやく手がかりを掴んだの!!

 お姉さまは帝国の魔術治療院で働いていらっしゃるのですって!!




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