【完結】お４枚鏡

お４枚鏡３

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　名前も年齢も分からないけれど、僕にとって彼女はたった一人の友達だった。

　もう何枚、彼女の姿を絵に描いたことだろう。

　放課後の美術室に通っているうちに、僕は彼女の正体を知った。それは僕の絵を見た年配教師の一言がきっかけだった。


「あら懐かしいわ。随分と古い制服を描いているのね。ご両親のどちらかが、わが校の出身なの？」


　僕の学校は女子も男子もブレザーだ。なのに、鏡の中の彼女はシンプルなセーラー服を身に着けている。先生の言葉が気になって調べたところ、それは僕の両親世代の頃に使われていた制服だということが判った。

　そして旧校舎で起きた事件を知った。


　次々に鏡を割った後に死亡した女子生徒。
　事件の後に取り外された鏡。
　教師や生徒によって語り継がれている怪談話。

　そして――鏡の中にいる彼女。


　それらの事実を並べることで僕は悟った。ああ、あの話はただの怪談話なんかではないのだと。




　最終学年に上がると僕はますますいじめを受けるようになった。

　おそらくは高校受験のストレスからだろう。
　僕に暴力を振るっていた不良生徒は金銭を要求するようになり。

　関わり合いを避けるために、クラスメイト達は僕の存在を無視し続けて。

　安定を求める事なかれ主義の担任教師は僕の訴えに耳を塞ぎ。

　子供に関心のない両親はそんなことには気付きもしない。


　自分を取り巻くものすべてが煩わしくて、僕は放課後の美術室に逃げ込んだ。そして、鏡に向き合い続けた。相手が生きているだとか、死んでいるだとかは気にならなかった。


　だって、僕を心配してくれるのも関心を向けてくれるのも、彼女だけだったから――。