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2 種族の特性
しおりを挟むオーク崩れ……オークの中にはそう呼ばれる存在がいる。オークは雌雄のバランスが酷く悪い。それ故、他種族の女を攫って繁殖をするしかなく――それで多くの種族から討伐対象となり、数が減らされるからまた、手近な種族を襲う。悪循環だ。まあ、被害に遭うのはほとんどが力も弱く数も多い人間なわけだけど。
そんな中、無理強いすることなく、稀に他種族との間に真実の愛を芽生えさせるオークが存在する。それが、オーク崩れだ。
とにかく数を増やすための繁殖を求められる中、真実の愛を手に入れたオークはその相手のみとしか繁殖行動を取れなくなる。まるで生物として上位の種族たちが持つ『番』の習性のような――俺の、父親がそうだった。
何があったかは知らないが、人間の中で酷く虐げられた母親が瀕死の状態で俺の父親に助けられ、二人は真実の愛で結ばれた。
種としての生存方法の根本を覆しかねない大問題だが、ある意味、他種族へのアピールともなるので取り締まられたりはしないし、オークの国からもオーク崩れの存在は認められている。
ただし。オークはその特性上、繁殖行動を取りやすいように身体の方が進化を遂げている。どういう仕組みかは知らないが、数多くの子を成せないオークのオスは短命なのだ。
オークである父と人間の母。二人の間に授かったのは俺一人。割り切って他の人間と子を成せば避けられたのだろうが、母に真実の愛を誓った父は、母以外には目もくれず、既にその短い寿命を終えている。
そして。
オーク崩れの子供である俺もオーク特有の繁殖行動を取ることが出来ず――近いうちに死ぬ。それを知った母親はショックを受けていた。
それはそうだろう。愛し合う両親から愛情たっぷりに育てられ、オークとは違う価値観で育てられた自分。
母がとった子供へのその教育が、息子の死期を早めることになるなんて。想像もしていなかったに違いない。
オーク崩れの子供はこうなることが多い。だからこそ、世代が続かず放置もされるのだ。他のオークに影響を与える前に死に絶えるから。
母親は色々思うところがあるようだが、俺としては考え抜いた結果だし、そもそも精神的に受け入れがたいので無理なのだ。それに、オークに産まれながら母親の愛情を一身に受けて育ってきた自分を、不幸だとも思わない。
唯一心配なのは残していくことになる人間である母親のこと。
母は――夫と子供に先立たれるオーク崩れの妻たちは、今後種族を問わず支援施設へと保護されることになる。同じ境遇の仲間を集め、そういう道筋をつけた。ギリギリ間に合った。
ただ、維持費用が掛かるので、出来るだけ生きているうちに稼いでおきたい。だからこそ、死の直前まで働けるこの仕事を受けられたのはありがたかった。
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