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30 貴族トレカ
しおりを挟む……えっ。ちょ。何で副騎士団長様がソレを持っているの!? だって、それはごく一部の高位貴族令嬢だけがハマっている、例の……内緒の……絶対バレちゃいけない……。
「……いやぁ、ビックリしたよ。まさかこんなに便利な、貴族の顔が網羅されている資料があるなんて。しかも、持ち歩きやすいカード型。高価な魔道電話を使いこなしていることと、上流社会で流行の婚約破棄を巧みに犯行に取り入れている様子からして貴族が犯人だろうと当たりをつけて捜査をしていたが、被害者にコレを見てもらうことですぐに容疑者が浮かび上がってね?」
「へ…へえー。世の中には便利な物があるんですね!」
「ああ。うちの末の妹は両親から甘やかされてしまったせいか勉強があまり得意ではなくてね。貴族の力関係を覚えるのに随分と苦労をしていたのだが、見かねた学園の先輩がそれならいいモノがあるとコレを譲ってくれたそうなんだ。おかげで遊び感覚で全貴族の顔を覚えられて、結果的に妹にはいい縁談も見つかった。その点でもコレにはとても感謝をしている」
「あ、それは良かったですね!」
なるほど。前世持ちの特性ゆえ、かとばかり思っていたが、コチラに産まれた生粋の高位貴族令嬢でもそういうの苦手な子は苦手なんだな。事情は分かったし役にたって良かった……でも、なんで『副騎士団長様が』ソレを持っているのだろうか。
「末の妹が『大好きなお兄様のお顔が特にいっぱいあるのよ』と見せてくれたんだ。ビックリしたよ。俺には絵を描く許可を誰かに出した覚えなんてないからね。ことによっては高位貴族に対する不敬に当たる可能性もある」
「……!? そ……そんなつもりはなかった――んじゃないかと思いますよ!? それを作った人は、誰かの役にたてば、とか、そういう……その……」
「うん。俺もそうだろうとは思うよ。王太子妃殿下にもお聞きしたが、製作者には大層感謝しておられたしね。――でも、それとこれとは話が別だ。何せ、いちばん被害に遭っているのが俺だからね? 仕事柄なるべく無表情を心掛けていたのだが、まさかこんなにも様々な表情を見られていたとは」
「あうぅ…………」
ペラペラと。私が作ったカードをめくりながら言う副騎士団長様。……どうしよう。彼が所持しているカードを見るに追加デッキ分まで入っている。
しかも王太子妃様ルートまでバレてるし。もう逃げ場がない。ああ、もう。過去の私、何で助けてあげちゃったかな。でも困っているのを放っておけなかったし。
まさか、こんな形でバレるとは。
――考えてみれば。副騎士団長様の妹さんも高位貴族の御令嬢……こうなる可能性は十分にあった。私の考えが甘かった。
どうしようっ……どうしようもない!
誰か助けて!! 助けてくれるなら何でもします!!!
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