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29 そろそろ本気を出させてもらうよ
しおりを挟む……実は、婚約破棄をされてすぐ――副騎士団長様から私に婚約の打診があった。
事件に巻き込まれた私に同情してくれたのだろうとか、気を遣ってくれたのだろうとか。
あまり本気にしていなかったから『元婚約者が捕まったばかりなので今は何も考えられません』とか何とか当り障りのない事を言って受け流していたんだけど。
……まさか本気だったとは。
副騎士団長様の家は、元婚約者と同じく侯爵家……とは言ってもそのレベルがまったく違う。
副騎士団長様の家は建国当初から続いている、何人も高官や王妃を輩出してきたような、清廉潔白で格式の高い、何かと評判の筆頭侯爵家。
一方の元婚約者の家は事業や投資の失敗が続いていて、借金まみれでプライドばかりが高く、ついには犯罪者まで排出(文字通り)してしまうような、何かと悪い噂には事欠かない名ばかりの侯爵家。
とてもじゃないが比べ物にならない。
正直。こちらが婿にとる立場とはいえ、元婚約者の家との付き合いすらちょっと面倒だなーとか思っていたくらいだったのに。
それが、ガチもんの侯爵家と縁続きになるとか……うん、無理!!
なんなら婚約破棄でショックを受けちゃったから…とか何とか言って両親には親族から養子でも迎えてもらって、私の方はもうお役御免でいいんじゃないかな……とか思ったり。
おっ! ソレ結構いいんじゃない?
うん! そーだ、そーだ! 商会の運営も順調だし、前世同様に結婚しない人生もそれはそれで気楽でいいかも。
よし、断ろう!!
「あの、申し訳「君には感謝をしているんだ」」
……なんか、言葉を被せられた。
勢いのまま断りたかったんだけど、まあ、しゃーない。聞くだけ聞こう。前世持ちとはいえ今世では貴族ですからね。爵位は絶対。ああ、郷に入れば郷に従っちゃう自分の環境適応能力が恨めしい。
「今回、事件が解決できたのは君の協力があったからだ。中でも、『コレ』のおかげで随分と早く容疑者へとたどり着くことが出来た」
そう言って。ス……っとテーブルの上に差し出されたのは。
「…………………………!!!?」
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