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24 彼に任せておけば大丈夫……
しおりを挟むバタバタバタ……バタン!!
「大丈夫か!? おい、コラ離れろ犯罪者が!!」
お巡りさんコイツです……と言う前に。
大きな足音と共に入ってきた人物が私と悪臭コロン男を引き離してくれる。
「何もされてないな!? 大丈夫か!!?」
まだあまり聞き慣れないその声が。王都の平和を守ってくれる正義の象徴ともいえるその制服が。
心の底から私を安心させてくれる。ああ、良かった、これで助かった……。
いつの頃からか。
幼馴染の婚約者との会話は緊張の連続になっていた。
彼が高位貴族に産まれたからか……前世持ちだったからか。選民思想から発せられる毒入りの言葉はいつも私の心を傷つけてくる。
今から思うと、免疫がついてそれなりに上手くやり過ごす方法を身に付けただけで、ちっとも大丈夫ではなかった。
元婚約者からは解放されたが、キツ過ぎるコロンの残り香が鼻孔と体にまとわりついて気持ちが悪い。呼吸をする度にソレが体内に入り込んできて、意識がボーっとしてくる。
……まさか、元婚約者の言葉だけじゃなくて香りまで毒入りだったりしないよね? 何か、息まで苦しいんですけど。
私の目の前で。
元婚約者は駆け付けてくれた人達によって捕縛され、身動きが取れなくなっている。……彼らに任せておけばもう大丈夫だ。
ホッとしたせいか足から力が抜けたけど、床に転びはしなかった。見るだけで安心させてくれる騎士団の制服が、しっかりと私を抱きとめてくれる。
ああ、こっちは香りの趣味もいい……自分の嗅覚を上書きするように大きく息を吸い込んで、私はどうにか口を開く。
段々と気が遠くなってきた……目は既に閉じている。
私が完全に意識を失うその前に。
コレだけは彼に伝えなければいけない。
「消臭剤……香り控えめのコロン……需要……ビジネスチャンス――」
「……ああ。俺が君の代わりにしっかりメモしておくから心配するな」
それだけ聞くと、私は安心して意識を手放した。
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