【完結】オレオレ!実は悪い女に唆されて夜会で婚約破棄をしちゃってさ……詐欺で前世を思い出した令嬢は人気の激レア副騎士団長様と事件解決を目指す

堀 和三盆

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19 婚約破棄

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「……あー、もう。しつこいな。ここまで言われて分からないかな。面倒だ。ハッキリ言わせてもらうけど、オレにはもっと相応しい女がいるんだよ」

「相応しい……女?」

「ああ。こっちは侯爵家なんだ。高位貴族に愛人が居るのは当たり前だろ。そうでなくたってオレは選ばれし者なんだ。それなのにお前程度を嫁にして、伯爵家ごときに婿へと入って、一生肩身の狭い思いをするのなんてゴメンだね。家の財政を立て直せば自由にしてもいいと親が言うから苦労して借金を返したんだ。ごねられた時の為に慰謝料もこうして用意した。だから、お前との婚約は破棄させてもらう!」


 ジャリン!!


 婚約者の送った合図を受けて、彼の側近が机の上に乱雑にコインの入った袋を置く。反動で、金色の中身がジャラジャラとこぼれた。



「…………」

「ははは。流石に慰謝料まで用意されてはショックで言葉も出ないか」

「そう……ね。確かにショックだわ。『そこまでして』私との婚約を破棄したかったなんて」

「当り前だろ。さっさと受け取って婚約破棄の書類にサインをしろ」

「サインはするわ。でも、コレは受け取らない。……そこまでしなくても、言ってくれればいつだって破棄には応じてあげたのに」

「は? 慰謝料はいらないのか? 本当に?? 伯爵家程度には十分な金額を用意してやったのに、後から欲しいって言ったってやらないぞ」


 渡された書類にサインをして婚約者に返すと、婚約者――元婚約者は軽くソレに目を通して側近へと渡す。
 嬉しそうな顔を隠しもしない。



「……ええ。だって、汚れたお金なんか受け取れないもの」

 机の上の傷だらけのコインに目を向けると、私は元婚約者にそう言った。




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