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17 婚約者からの……
しおりを挟む「オレとの婚約を解消してほしい」
婚約者からそんな言葉を投げかけられたのは我が伯爵家の応接間だった。人目の多いお茶会でも夜会会場でもなく、当事者である個人の屋敷で――ってところが、極めて常識的であるとも本気であるとも言える。
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「そんな。どうして、急に……?」
突然のことに。見慣れたはずの婚約者の顔を見るが、何を考えているのか分からない。
温かみのある薄い茶色の髪に夕焼け空のような柔らかなオレンジ色の瞳。どこまでも優しげな風貌からは想像できない冷たい声が部屋に響く。
フロード・トルキューンハイト侯爵令息
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恋愛感情はなかったけれど、小さい頃からお互いの屋敷を行き来しつつ、それなりに上手くいっていると思っていたのに。
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「…え……?」
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