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11 知識を活用しちゃう人☆
しおりを挟むお茶会や夜会などへの前世風飲食物のご提供――。
私が立ち上げたケータリング事業は新しもの好きの貴族の間であっという間に流行って、私の経営する業者を使っているか否かで、お茶会の格が分かるとまで言われるようになっている。
先だっては非公式ながら、王城への提供も行った。
美味しいものなど食べ慣れている筈の貴族や王族が、新たなケーキを楽しんでくれているのが感じ取れて嬉しかった。
甘い物は人を笑顔にするよね。完璧な淑女と名高い王妃様の口角が通常より数ミリ上がったのは気のせいではないと思う。王太子妃様もこっそりウインクしてくれたし。
それとは別に。甘い物が苦手だ、という男爵が初めてケーキを美味しいと思った、なんていう話を聞いた時にも嬉しくて泣いた。
甘い物が苦手な人でも食べられるように、と甘さ控え目ケーキの開発を急いだ甲斐があった。多様性の時代から来ましたのでね。ええ。
もちろん、楽しい事ばかりではない。前世の味を再現する為、試食に次ぐ試食でドレスのサイズが合わなくなって、婚約者からは「また太ったのか……」なんてため息交じりに言われて泣いた。
けれど、それをきっかけにマタニティー事業を思いつき、試しに出入りのデザイナーと共同開発した授乳しやすいドレスは乳母たちの間で好評となっている。
手を広げすぎて忙しくなったせいで自然と痩せたくらいだ。――あ、ダイエット本なんかも需要あるかも。コルセットで無理やり締め上げるのは健康的にもどうかと思うし。メモメモ。
「ははは。バイタリティー溢れるご令嬢だな」
「え? あ、すみません。声に出てました?」
メモを取る生真面目な副騎士団長様そっちのけで、自分が手持ちのアイディア帳にメモを取りまくっていた。
慌てて顔をあげて副騎士団長様のお顔を見ると……おっと、自然ないい笑顔ですね。
例の過去の人脈の皆様に、賄賂代わりに新たなレアカード作って送っちゃう?
――おっと。いけない、いけない。
また前世モードに入っていた。自重しなくては。
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