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6 遊んで学ぼう! 貴族トレカ☆
しおりを挟むえー…、突然ですが。転生ガチャとしては上位に食い込んでいるといえる、『伯爵家』の一人娘として生まれた私。
女の自分では爵位を継げない為に婿をとらなければいけないけれど、幼い頃からの婚約者とはそれなりに上手くやっているし、何より前世でも男性経験皆無だったのでその辺が全自動でどうにかなるのは非常にありがたい。
なので、何も問題はない――のだけれど。
思い出す前から軽く前世を引きずってでもいたのか、婿をとったとしても社交上必須である貴族の名前とか爵位とか繋がりとかあれやこれやの――その辺の七面倒臭い貴族の複雑な力関係がちっとも頭に入らない。
身分制度? ハァ? 何ソレ美味シイノ??
ああ、結婚するまでにはこの状態をどうにかしなきゃ、どうしよう……。
――と、いったところで。例の事件をきっかけにして前世を思い出した私。
死ぬまでの青春全てをオタ趣味に捧げていた私はそこそこ絵が描けた。なので、前世でのトレーディングカードを参考に、遊んで学べるようにと『貴族トレーニングカード』……通称『貴族トレカ』を作りあげ、遊び感覚で社交に必要な相手情報の知識を得ることに成功したのだ。
最初は今後も顔を合わせる機会が多いであろう、同年代の貴族令嬢、貴族令息から。
作って遊んで覚えて。作って遊んで覚えて。
そしたらだんだん楽しくなっちゃって。
第三弾、第四弾と徐々に範囲を広げ、性別関係なく様々な年代を網羅して――今では騎士爵の末端までもが頭に入っている。
ただ、カードを手描きする上で気が付いたのだが、誰も彼もが当り障りのない貴族特有の作り笑顔。
万が一見つかった時の言い訳用に三割増しで美形に仕上げているのだが、実戦で役立つように――と、表情だけは現実路線を準拠している。
なので、そこだけはどうにもならなかった。
同じような表情ばっか描いているとぶっちゃけ飽きる。
貴族の数、結構いるのに。
そんな中。
どのパーティーでもいっそ不機嫌ともいえるほどに無表情で素の顔をしている侯爵家の五男様は毛色が違っていて、描いている段階で非常に楽しくいい気分転換にもなったのでよく覚えている。
しかも、そこそこカッコいいので三割増しだと超美形。
市井担当の騎士団とはいえ、この年齢での副騎士団長就任は中々の出世コースなので、カードゲームとして使う上での攻撃力も非常に高く、デッキに一枚は入れたいと御令嬢方からも大人気のカードなのだ。
――あ、実はこの貴族トレカ、とある御令嬢達の間で隠れた人気になっております。
…最初はせっかく作ったから誰かと遊びたくて、ごく親しい友人だけに一部を複製してあげていたんだけどねぇ……。
友人と盛り上がって遊んでいるところを同学年にいらっしゃった王太子殿下の婚約者様に見つかっちゃって…………。
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